新学期が始まって、進級して
んでもって、テニス部に心強い部員が入部した。
元九州二翼の一人・・・千歳千里。
そして、新一年生暴れん坊の遠山金太郎。
特に金太郎の場合、あまりにも暴れん坊過ぎるゆえ
ちょっと制御するのが問題やった。
が、金太郎が俺の左腕の包帯を【毒手】と勘違いしてくれてるおかげで
何とか俺はコイツを上手くコントロールする事に成功した。
千歳はフラフラしよって、部活にもちょこっとしか顔出さんけど
それなりに実力はある・・・目の事で何やこっちに転校してきた言うてたな。
たまーに顔出す程度やけど、面倒見はえぇほうや。
そして、新人戦近いある日の事。
試合形式の練習の最中の事。
俺はコート外で1年の練習を見ていた。
「蔵リ〜ン」
「何や小春?今忙しいねん」
すると、突然小春が俺に声を掛けてきた。
横にはもちろん相方のユウジも居る。
「ちゃん・・・・・・綺麗になったなぁ〜」
「は?・・・何や、急に」
小春の言葉に、コート上に向けていた目を
横にすぐさま向けた。
横に顔を向けると、小春はおろかユウジまでニヤニヤしとる。
き、キモいわ。
「ほんま、ちゃん綺麗になったなぁ〜」
「は?何言うてん・・・は可愛えぇで」
「おいおい、白石。可愛いやのぅて綺麗の間違いやろ?」
ユウジがそう言う。
「どないしたんですか?」
「何や。一年見とらんと、何の話してんねん」
「オモロそうですね、混ぜてください」
すると何やら面白そうな匂いだと分かったのか
銀に謙也と光が混ざってきた。
「なぁ、3人とも。ちゃん、綺麗になったと思わへん?」
「白石のヤツの事、可愛えぇ言うねん」
「せやから、可愛えぇって言うてるやんか。俺間違うてないわ」
小春とユウジの問いに、3人は目を合わせ
すぐさまこちらを見て――――。
「そーいえば、何や・・・綺麗になったな」
「言われてみればそうですね。先輩、どないしたんですか?」
「うむ、確かに。さん、綺麗になりましたなぁ」
「なっ?!お前らまで何言うてん!!」
3人は小春とユウジと同じ事を言う。
「ほぉ〜れ、見てみぃ白石。綺麗になったやんか」
「ちょい待ち。ホンマ、俺よく分からん!・・・可愛えぇの間違いやないんか?」
俺が未だそれを言うと、全員が俺を見て―――。
『間違いやな』
そう言い放ってきた。
綺麗?・・・綺麗なんかは?
可愛えぇの間違いとちゃうんか?
いや、どっちのも俺としてはえぇねんけど
何や、皆だけそないな風に見えてんのか?
俺にはさっぱり見えへんで。
「蔵リン・・・ちゃんの後ろ、どないな風に見える?」
「は?今度は何や?」
すると小春はさらに俺に質問してきよった。
「ハートに見える?それとも、キラキラして見える?」
「おぉ、その方が分かりやすいわ小春!」
「確かに。理解してない白石部長にはその方がえぇですわ」
「で、どうなんや白石」
ど、どうと言われても。
俺はのことを考えて・・・一つ頷いて――――。
「ハートが見える。おぉ、ハートがぎょうさん見えるわ」
「・・・アカン、コイツ重傷や」
「ホンマそれでも彼氏なん、蔵リン?」
「が可哀想やな。気ぃついてもらえへんちゅうので」
「白石部長ご愁傷様です」
「白石さん、無になって冷静に考えてください」
「何やねんお前ら!!さっきからワケの分からん事言うて」
可愛いに綺麗?
ハートにキラキラ?
ホンマ何やねん!!
それとが綺麗になったと何の関係があるんや?!
俺にはが綺麗やのぅて、可愛くしか見えてないわ!!
表現一緒や!・・・ん?一緒なんか?
何やこいつ等のおかげで、俺の脳みそがおかしゅうなったわ。
「何の話してんのあんた達」
「お、や」
すると、がいつの間にか扉のところに立っていた。
俺はふと、を見る。
「ハートにしか見えん」
「は?」
「あ〜〜何でもないわ、ちゃん。ほれぇ、そのベンチ座り」
俺の言葉に、は素っ頓狂な声を上げるも
小春のフォローではベンチへと進む。
ホンマ・・・え?俺だけ?
「お、が居ったいね」
「千歳や。よぉ」
「おぉ。謙也にみんな居るね」
すると、放浪者の千歳が現れた。
相変わらず鉄下駄の音がコート内の響き渡る。
「ん?・・・、お前さん・・・また綺麗になったね?」
「は?」
「ちょっ、千歳!??」
千歳の発言には表情ポカーンとし始める。
一方の俺は驚きを隠せない。
千歳はニコニコしながらの頭を撫でる。
「ほんなこつ、は・・・むぞらしかよりもキレか(綺麗)ね」
「そ、そうなの?よく分かんないんだけど」
「女ん子はそんなもんたい」
仲睦まじくやるのえぇけど、彼氏俺やぞ!!
(いや、正確には彼氏のフリしてるちゅうポジションやけど)
思わず千歳を睨みつけると、こちらの視線に気づいたのか
千歳は苦笑いを浮かべながらの頭から手を退かした。
「あーーねーちゃんや!」
「金ちゃん」
すると、さっきまで練習していた金ちゃんが
の姿を見るなり、すぐさま試合を中断して彼女の元へと駆ける。
普段、はあまり表情を表に出せへんけど
何でか金ちゃんの前になると、お姉さんみたいな柔らかい表情になる。
「なー、ねーちゃん」
「何?」
「何や、ねーちゃん。いつもキラキラして綺麗やな!」
「ええぇ!?!?」
「蔵リン」
「金ちゃんに先越されてどないすんねん、お前」
ちょい待ち!!!
俺、金ちゃんにまで先越されたん?
嘘や・・・キラキラして見えへんぞ!!
俺には、俺には・・・ハートにしか見えん!!
「え?そ、そうなの?」
「おう!キラキラ、お空のお星さんみたいや!」
「あ、ありがとう」
金ちゃんの言葉に、はホンマに嬉しそうに笑う。
待て・・・それ俺に向ける笑顔とちゃうんか!?
何で?何で俺だけハートにしか見えへんねや?
俺は何度も目を擦ってを見るも―――――。
「アカン。やっぱりハートにしか見えん」
「アンタさ、頭大丈夫?」
は呆れながら俺にそう言う。
いやホンマやって!!
の後ろはハートにしか見えん!!
キラキラして見えるんはおかしいで!
俺はそう思いながら目を何度も擦る。
「何してんの・・・そんなに目、擦ったら傷つくわよ」
「〜」
は俺の手を止めた。
ちょっと目、擦りすぎて痛いし
何や・・・心まで痛い。
何で?何で俺だけみんなとちゃうねん。
「あーもう、ホラちょっと目・・・充血してる。そんなに強く擦るからよ」
「せやかて」
みんなの事、キラキラして見えるのに
俺だけ何でハートにしか見えへんねや?
と、問いかけてみたかったが・・・確実に呆れられるからやめとこ。
「てか、自分・・・今日迎えとちゃうんか?昼、そう言うてなかったか?」
「あぁ、ちょっとね。蔵に伝えたい事があって。昼言うの忘れたから此処に来たの」
「え?俺に?」
伝えたい事?
何やろ?
は俺を見上げ、真っ直ぐな眼差しで――――。
「私、しばらく東京に戻るから。学校来れないの」
「はぁあ?!」
爆弾発言に俺は思わず素っ頓狂な声を上げたのだった。
Difference
(ハートとキラキラ、綺麗と可愛い。どう違うんや?)