「え?東京に戻る?」
「そーなの。お父さんがね」
「どうしても東京のお家に置いてるツボを持ってきたくて」
学校が始まって数週間。
食事の最中にそんな話題が出てきた。
何やら東京に戻る話をしていたが
理由はお父さんが気に入ってるツボの事だった。
「送るのはダメなの?」
「お父さんがとっても大切にしてるものだから」
「傷とか割れ目とか付けたくないんだよ〜。だから本社視察も兼ねて、ちょっと行こうかなぁ〜って」
「お母さんもお父さんの仕事だったら付いていかなきゃいけないの。だから一応ちゃんにも言っておこうと思って」
お母さんが心配そうな面持ちで私に言う。
ふと――――。
「ねぇ、私も行っちゃダメ?」
『え?』
二人にそう尋ねると、驚いた表情で私を見ていた。
そりゃあ驚くでしょうよ。
何たって学校始まってるし・・・しかも今年は高校受験を控えてる。
そんな多忙すぎる毎日を過ごさなきゃいけないのに
「何を言い出すんだこの子は?」と思われたに違いない。
「で、でもちゃん・・・学校が」
「んー・・・5日くらい休んでも、ウチの授業基本遅いから問題はないと思う」
「アナタ、どうしましょ?」
「お父さん達は2週間くらいの滞在だぞ?2週間の穴は流石に痛いだろ?」
「あぁ5日くらい時間くれればいい。そしたら勝手にコッチに戻ってくるから・・・ねぇ、ダメ?」
私は何とか説得してみる。
すると、お父さんはため息を零し――――。
「じゃあ5日だぞ」
「ありがとう、お父さん!」
「学校のほうにはお母さんが明日連絡しておくから、気にしないで」
「うん。お母さんもありがとう!」
そう言って、私は5日間だけの東京滞在を認められたのだった。
それを蔵に伝えに行ったら
凄い勢いで「何で!?何でなん!?・・・何で東京行くん?」と迫られた。
その凄い勢いで、彼は部活が終わり
速攻で私の家にやってきた。
「何しに行くん?」
「用事」
「何の用事なん?」
「人のプライベートに首突っ込むな。用事は用事なの!だから、明日から私居ないから」
「・・・・・・」
私の言葉に、蔵は黙り込んだ。
荷造りをしていた私は、振り返り後ろを見る。
すると蔵はジッと私を見る。
「何?」
「高校、一緒行く言うたやん」
「は?」
「約束破るんか?」
「あのねー」
誰が高校の希望変えるために東京に戻るのよ!
それだったら最初っから東京に住んでるわよ!!
私はため息を零し、ベッドに座っている蔵のところに行く。
「もう進路調査票も提出しておいて、今更高校変えるバカが何処に居るのよ?」
「じゃあ何で東京行くん?そうとしか考えられへんわ」
「・・・友達に会いに行くのよ」
私はため息を零し、ようやく彼に本当の事を話す。
「友達?謙也の従兄弟か?」
「違う。・・・幼馴染に会いに行くの。その子が神奈川の立海大付属中に通ってるから、私はその子に会いに行くだけ」
「男か?」
「女の子よ。他に質問は?」
私の答えに、蔵は一つ頷いて私を引き寄せ抱きしめた。
「最初からそう言うてや。・・・高校変えるんか思て、心配したやんか」
「・・・ご、ごめん。でも、高校は変えないよ・・・蔵と同じ学校行くから」
「当たり前やん。俺、離しとぉないもん。他の男にかて・・・渡したくないわ」
嘘なのか、本当なのか分からない。
でも、私にこうやって愛の言葉を囁いてくれるのは・・・蔵だけ。
もう彼以外・・・私に「好き」や「愛してる」とは言ってくれない。
蔵だけ・・・蔵だけが、もう私には必要なの。
そう思いながら私は彼を抱きしめた。
「?」
「私が居ない間、浮気しないでね」
「アホォ、するかいな。俺には自分以外考えられへんわ。も浮気すんなや」
「しないわよ」
私がそう言うと、蔵が私を見上げる。
視線で訴える・・・「キスがしたい」って。
頬に手が触れて、ほのかに香ってくる包帯の匂い。
顔を徐々に近づけると、お互いの吐息が混ざり合い・・・唇が触れる。
分かって。もう、私は・・・貴方以外、誰も好きになれないの。
次の日。
私は東京行きの新幹線に乗った。
ふと、携帯がバイブレーションで何かを伝えた―――メールだ。
受信ボックスを開けると、入ってたのは蔵からだった。
20**/04/** 08:04
From:蔵
Title:気ぃつけてな(^o^)ノ
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おはようさん。
多分もう新幹線ん中やと思うけど
気ぃつけてな。
5日間は寂しいんやけど、まぁ一年の新人戦近いから
みっちり一年生しごいて気ぃ紛らわすわ(笑)
何かあったらいつでもメールしぃ?
あ、電話でもえぇで!夜寂しくて、眠れんときは
俺に電話しぃや!自分が眠くなるまで付き合うたるわ。
って俺が次の日起きれんくなるわな(笑)
ほな、帰ってくるとき電話かメールしてな。
新大阪まで迎えに行くわ。
その後帰りに2人でお好み焼き食うて帰ろうな!
約束やで!ほなな!
---------------END---------------
メールの文面を見た私は思わず笑みが零れた。
「ちゃん、どうしたの?」
「ん?・・・何でもない」
お母さんに聞かれ、私は言葉を濁して
すぐさま返信メールを打ち込んだ。
新幹線は凄いスピードで私を大阪から離し、東京へと向かわせたのだった。
----------ブー、ブー、ブー!
「メール、メール・・・っと。・・・お!」
授業1時間目始まる前。
携帯が俺にメールが届いた事を知らせた。
俺はすぐさまポケットから携帯を取り出し、受信ボックスを開く。
相手はもちろん・・・や。
朝練終わりに、俺はすぐさまメールを作り
教室に入ったくらいに彼女にメールを飛ばした。
それのお返しメールが俺の受信ボックスに投函されとった。
20**/04/** 08:23
From:
Title:ありがとう
--------------------------------
おはよう。メールありがとう。
とりあえず東京土産くらいは買ってきてあげる(笑)
5日間、浮気以外はしないでね。
一年生の新人戦が近いからって、一年生を
しごきすぎるのも程ほどに(笑)
アンタも一つしか体ないんだから気をつけなさいよ。
ていうか、私が勝手にメールや電話しなくても
アンタから全部してくるでしょ?
まぁ5日は暇してるから、好きなときにすれば。
とりあえず安眠は出来るから、寝る前の電話はしない。
むしろ電話代勿体無いからしないわよ。
帰る時にはまた連絡する。
その時は・・・まぁそうね、お好み焼き食べて帰りましょう。
じゃあまた5日後に。
---------------END---------------
「棘含みすぎやで、」
ホンマ素直やないっちゅうか。
まぁその棘に隠された素直なを見るのも
俺は楽しくてならんのやけど。
コレが愛なんか、そうでないかなんて分からへん。
メールやもん・・・分かるわけないわ。
まぁ面と向かっておるときも・・・・・どっちか分からんけどな。
でも、メール見るだけで・・・何ややっぱりニヤけるな。
恋人みたいなフリしてるけど、ホンマもんの恋人みたいな感じでいつもドキドキするわ。
「白石、携帯眺めながらニヤつくな。キモいわ」
「やかましいわ、謙也。からの愛のメール貰ったんや。・・・ホンマ可愛えぇお嬢様やで」
「お前、まだアイツの事可愛えぇってしか見えてないんか?」
「もー、えぇやろその話は」
俺の言葉に謙也が昨日の事を引っ張ってきた。
謙也たちの目には、はキラキラして見えるのに対し
一方の俺の目には、はハートがぎょうさん見えるという。
その言葉で俺は未だに言われ続けとる。
「可愛えぇから可愛えぇねん。それでえぇやんか」
「それでホンマにお前、えぇって思てんのか?」
「は?どういうことや?」
謙也の言葉に、俺は疑問を飛ばした。
可愛えぇからそれでえぇやろ?
何で、そうやってキラキラやハートにこだわるんやこいつ等?
「分かったわ。・・・お前、近いんか」
「は?何が?トイレか?」
「お前、こういうときだけえぇボケかますなぁ〜」
「おおきに。って・・・何が近いんや?俺が何に近いんや?」
謙也がまたワケの分からん事を言うてきた。
近い?何が?
「あー・・・それやったら、何となく分かるわ。お前が何での事可愛えぇって言い続ける理由が」
「は?謙也、どういうこっちゃ?・・・分かるよう説明せぇ」
「自分で考えれ〜。オモロイ事分かったわ・・・後で小春たちに教えたろ」
「俺で遊ぶなやお前ら」
「が居らんくなったんや、俺らで遊ばれて気ぃでも紛らわせ。5日言うても・・・長いと思うで、お前にとってはな」
「・・・・・・・・・」
謙也の言葉に、俺は黙った。
5日・・・は此処には、大阪には居らん。
そして、俺の側から居らんくなった。
1年前は・・・それが当たり前やった。
が居らんで当たり前やったんや・・・アイツが此処に来るまで。
隣に、が居らんで・・・当たり前、やった。
でも、今思えば――――何や、寂しい。
5日・・・・・・ちょっと長いな。
「まぁ冷やかして遊んだるわ。未だがキラキラして見えんお前を」
「っ!人が感傷浸ってるときに余計なお世話やボケ!」
まずは、こいつ等をどう黙らせるか問題やな。
ホンマ、キラキラうるさいねん!!!
ハートやあかんのか?キラキラやないとあかんのか?
俺にはハートにしか見えん。可愛くしかが見えん。
ホンマ何やねん、ハートとキラキラの違いは?
の居らん5日で、俺は何としてでも
完璧(パーフェクト)に答え、出したらなアカンな。
Question
(問題!ハートとキラキラの違いは?誰でもいい、答えを教えて!!)