「・・・・・・・・・」


「朝からテンション低いで白石。何や、お前のそのローテンション」


「アカン・・・終わりや。俺の人生、終わったで」


「は?」



次の日。

俺は教室の、自分の机の上で突っ伏した状態やった。
謙也に声を掛けられ、俺はを上げる。




「何があったん?お前、あんだけ昨日浮かれてから電話貰うんやーって騒いでたやろ?」


「・・・・・・・・・と、ケンカした」


「またぁ?・・・お前ら・・・よぉケンカするな」


「ちゃう!元はといえばお前らが悪いねん!!」


「原因を俺らに押し付けんな、どアホ」


「お前らのせいでと俺、ケンカしたんや!いや、ケンカちゅうか・・・一方的に切られたっちゅうか」




そう、俺の沈んでいた原因は昨日のこと。


もちろん、から電話貰てもう俺のテンション最高潮。
携帯を片時も離さず、電話がかかってきたときには
すぐさま自分の部屋引っ込んで、出た。










か?」

『ディスプレイに私の名前表示されてるでしょ?いちいち名前呼ばなくていいわよ』

「あ・・・・あぁ、せやったな。何や自分から電話貰う思たら、テンションおかしいねん」

『アンタのテンションは元からおかしいでしょ』

「ヒドイで、〜」





昨日も聞いたの声やけど
ホンマ、離れてるだけでめっちゃ寂しい。

せやから、毎日・・・毎日・・・の声は聞いてたいんや。

それが俺にとって当たり前のことやったから。





『昼間、電話出れなくてゴメン。幼馴染に会ってたの』

「おぉ、やっぱりか。どやった、久々の再会は?」

『まぁまぁ悪くなかった。小学校卒業して以来だから・・・連絡はちょこちょこしてたんだけどね。
会った瞬間、懐かしむかと思ったんだけど・・・大して、それはなかったわ』

「まぁ小学校卒業での再会ちゅうのは大して変わらんからなぁ。何処の学校に通ってるって言うとったっけ?」

『立海。彼氏も居るって言ってたし、イケメンだって』

「へぇー」





耳に響いてくるの声は
何や、昨日聞いたときの声とちょっと違っとった。

俺は相づち打ちながらその声を聞いとったけど
自分の耳に彼女の声を入れるたび
少し心臓が高鳴った。






「なぁ」


『何?』


「自分、声変わった?風邪引いたか?」


『え?別に風邪も引いてないし、声変わりなんかしないわよ・・・男の子じゃないんだから』


「そ、そやな。スマン、変なこと聞いたわ」





思いがけず聞いてしもたが、俺の耳がおかしいんか?

いやいや、耳はえぇほうや。
せやけど、何でこんなに大人っぽくの声が聞こえねやろ?


こっち(大阪)とあっち(東京)での環境の違いか?

いや、東京から大阪に越してきたの声は
今とあんまり変わらへん・・・せやけど、何や・・・大人っぽい声に聞こえる。






『蔵?どうしたの?』


「え?あぁ・・・いや、何でもないわ」





突然のの声に俺は我に返る。

「なんでもない」と言葉を濁し、彼女を安心させた。





『そっち、変わりない?』

「おぉ。もうすぐ新人戦や・・・金ちゃんがめっちゃ張り切ってるわ」

『そっか。アンタもあんまり頑張りすぎるんじゃないわよ。体一つしかないんだから』

「お・・・おう」



の俺を心配する声に
何や、心臓がすっごくうるさく鳴り始めた。

いや、たまーにこういう風に心配してくれんねんけど
今日の・・・何や、いつもとちゃうような気ぃする。

いや、や。
電話貰て、緊張してんねや多分。










『それやから、お前の目にはまだキラキラが見えへんっちゅうんじゃ』







ふと、今日の放課後のユウジの言葉を思い出した。


いや、今それとこれ・・・関係ないやん!!!
ハートも、キラキラも・・・の大人っぽい声とは何も関係ない。

関係ないのに、何出てきてんねん!アホユウジ!!





『蔵?ホント大丈夫?何かさっきから黙ったり、喋ったりしてるけど』


「だ、大丈夫や。の話に相づち打ってるだけやん、自分が心配すること」


『ゴ、ゴメン』


「え?」





途端、が俺に謝ってきた。





「ちょっ、ちょい待ち。何で、謝るん?俺なんもしてないで」


『いや。やっぱり・・・疲れてるときに電話するの、申し訳なかったかなって。新人戦近いし・・・蔵、後輩や
金ちゃんたち教えるので・・・疲れてるのに、ホントゴメン』







アカン・・・何してんやろ俺。

にこないな声させて・・・俺、アホや。
ちゅうか元はといえば、ユウジが出てくるのがアカンねん・・・消えろアホ。






「謝らんといてぇな。自分悪くないし・・・俺、全然平気や。それに電話欲しい言うたの俺やから
の声聞いたら・・・めっちゃ元気になんねん」


『蔵』


「せやから、謝るのはナシや。俺は大丈夫やから」


『・・・ぅん』







もし、もし目の前にが居ったら・・・多分抱きしめてた。

寂しそうな顔浮かべて、小さく蹲ってると思う。
そんなの姿があったら・・・俺、絶対抱きしめてるわ。

あーー何や、電話っちゅうのがもどかしい。



ホンマ・・・、時々こうやって可愛いから困るわ。








『蔵リン・・・何でキラキラ見えへんのか。近いんやって?』
『らしいなぁ。しゃあないねん、近いから分からへんのは』







ふと、電話元のを考えた瞬間
ユウジが引っ込んだかと思たら、今度は小春まで出てきよった。


うるさい!うるさいわホンマに!!


何が近いねん!!
答えも教えんと、平気なこと言いなや!!


アカン・・・また集中力が途切れる。









『ワイ、ねーちゃんのこと・・・逢うた時からキラキラして見えてたで。ハート、見たことないわ』







あー、金ちゃんまで出てきよったぞ。



うるさいわ・・・ガキのお前に、恋愛の何が分かんねん。
分かりもせんと、平然と言いなや小猿が。



うるさい・・・うるさいわ・・・。







『お前だけやで白石。のことキラキラして見えんのは』



うるさい。



『まぁしゃーないねん。蔵リン、近いねんから』



うるさいって・・・。



『そーですね。近いからしゃあないですわ』






もう・・・もう――――。











『気ぃついてもらってないちゃんが一番かわいそうと思わへんのん?』













「もう、えぇ加減にせぇ!」


『え?』


「あっ」




小春の言葉に、俺は思わず声を荒げて、叫んだ。
が、どうやら俺はそれを口から見事に零してしまいの耳へと入ってしまった。







・・・あの、ちゃうねん・・・あのこれはな」


『・・・・・・あっそ』


「え?」



俺はすぐさま軌道修正を行うも
電話元のは盛大なため息を零し低い声で俺に言い放つ。






『もう、いい。電話しないで』


「あ、せやから・・・、これには深いワケが」


『うるさい!あんたの声、二度と聞きたくない。電話もしないで!メールもしないで!!
大阪戻ってもあんたと口も聞きたくない。迎えにも来なくて良いし、お好み焼き食べに行く約束もナシよ』


、せやから」


『聞きたくない。もう電話もしないで、メールもよ。じゃあね』


っ、俺の話を」














ガチャッ!・・・ツー、ツー、ツー・・・・・・


















「お前らのせいやぞ・・・にある種の絶縁宣言されたやんか」


「電話中に考え込むお前が悪いねん、自業自得や」




おかげさまで俺はこの通り・・・沈みたい放題。


朝、家を出る前に謝罪メールを飛ばすも・・・・・・返信なし。
電話で謝ろう思て繋いで、出たかと思ったら切られる始末。

もう今日で何回メール飛ばして、何回電話掛けてるか分からん。

俺はそのくらい・・・思いっきり後悔してる。

そして思いっきり・・・・・・――――。





「お前らが昨日、あんなこと言うからや」


「せやから、俺らのせいにするなっちゅうねん」




謙也たちに全ての原因を押し付けた。

俺は悪くない・・・悪くないねん!
こいつ等が俺に変なこと言い続けるからアカンねん!!




「ホンマ、お前ら・・・後でシバく」

「キラキラが見えて無いから俺らは言うてんねん。見えるまで言い続けるで」

「もうえぇ!元はといえば、それのせいで俺との仲が拗(こじ)れたんや!元に戻らんかったらどないすんねん!」






それでネックレス外されたらどないするつもりや!?


俺との関係終わってまう。

こんな変なことで、ネックレス外されたらたまったもんやないし
が離れていくんは絶対に嫌や!

拗れたまま・・・過ごすんは・・・俺は嫌や。







「呪ったる・・・お前ら一生呪ったる。と関係修復出来んかったら末代まで呪ったる」


「はぁ〜・・・ホンマにお前は」







俺は机に突っ伏しながらそう謙也に投げかける。


イヤや・・・こんなちっちい事でと別れるんは嫌や!


何で・・・何で俺の目にはハートしか見えへんねや!?
キラキラがちゃんと見えてたら・・・見えてたら・・・こないなこと、ならんかったのに。

何で俺の目にはいつまで経っても・・・のこと、ハートにしか見えないんや。

神さん・・・残酷すぎるで。









「距離」


「は?」




すると、突然謙也がそんなことを言うてきた。
俺は机から顔を上げる。








「距離や。もうそれ以上のこと、教えれへんで」


「謙也」


「あとは自分で考えよ。小春たちには言いなや・・・俺が教えたって」


「・・・・・・恩に着る!」


「末代まで呪われたらたまったもんやないからな」





ようやく、ヒントらしいヒントを貰た。


距離・・・距離か。


それと、ハートやキラキラ・・・何の関係があるんか分からん。
けど、それで分かるんなら。













とは、言うものの。

メールに電話・・・飛ばしても、の応答なし。


部活中も何や、気ぃ抜けた感じでこなしてきてしもた。
相変わらず小春やユウジに冷やかされて、どついてきたけどな。


謙也から貰た「距離」っちゅうヒント。


それとハートやキラキラと何の繋がりがあるんか・・・家に帰ってまでも
俺はずーっとそのことで頭を悩ませとった。




「クー・・・風呂入り」

「あぁ」




すると姉ちゃんが俺に風呂に入るよう促す。




「入りなさい」


「あぁ」


「蔵ノ介」


「あぁ」


「お前の耳は飾りか?聞こえてんのか、このどアホ」


「イテテテ・・・!痛いっちゅうねん!」




考え込む俺の耳と突然姉ちゃんは引っ張る。
あまりの痛さに俺はその手をなぎ払った。




「風呂入れ。聞こえんかったか?」


「聞こえとったわボケ。今考えごとしてんねん・・・邪魔すんなや」


「携帯握ったまま考え事か?ものごっつため息多いでお前」


「うるさい」


「ケンカしたんか、ちゃん・・・やったっけ?」


「・・・・・・・・・」



姉ちゃんの言葉に俺は黙る。

おぉケンカした・・・ちゅうか、俺が一方的に切られた。
んで、絶縁宣言された・・・あぁ、もう思い出しただけで俺泣けてくるわ。





「俺」


「ん?」


「俺・・・みんなと、の見え方・・・ちゃうんやって」


「は?どういう意味や?」





俺はそう言いながら、姉ちゃんに今までの事を全部話した。

みんなはキラキラに見えて、俺だけハートに見える。
それに、何が近くて・・・謙也が言うてた「距離」のことも
洗いざらい、全部・・・姉ちゃんにぶちまけた。





「何や、そういうことか」


「俺、に最低なことしてるん?キラキラに見えんだけで・・・俺、にかわいそうなことしてるんかな?」


「アンタとちゃん・・・・・・お互いの距離、近いねん。せやからアンタには、ちゃんのことハートにしか見えてないねん」


「え?」






お互いの、距離が近い?


それのせいで・・・のこと、ハートにしか見えてないのか?





「どういうこっちゃ?」


「あんた等付き合ってずーっと一緒に居んねんやろ?そらぁ、側にずっと居ったら・・・見えるもんも見えへんわ。
ハートは可愛い、キラキラは綺麗。・・・女の子はな・・・恋をしたら綺麗になんねん」


「え?」


「テニ部のメンバーにはそれが分かる。せやけど、アンタはちゃんの側にずーっと居るから気ぃついてへんねん。
当たり前やん・・・側に居るから、気ぃつかんのは」


「側に・・・居るから」




俺は、の側にずっと居ったから・・・ハートにしか見えてなかったんか?




「でも、何でメンバーはキラキラに見えんねん」


「アンタと違ぉうて、クラス離れたり・・・あの子と逢うのはたまーにやろ?まぁクラス同じ子には
それまで一緒とちゃうかったけど、キラキラして見えて当然や。逆にアンタは、ちゃんとずーっと一緒に
居るから・・・気ぃつかんだけや。其処の違いやな」




姉ちゃんの言葉に、俺の中のわだかまりが少しずつ抜けていく。


俺は、と距離が近すぎたから・・・ハートに見えてたんや。

あいつ等は、俺と違ぉうて・・・たまにしかと逢わんし・・・小春やユウジは
同じクラスやけど・・・今年から同じクラスになったから・・・そう見えて当たり前なんや。






「女の子はな・・・可愛いって言われるよりも、綺麗って言われたほうが嬉しいんやで?」


「え?」


「アンタしょっちゅう、ちゃんのこと”可愛えぇ、可愛えぇ“言うやろ?それって子供に言うことと同じやで?
ちゃんはそれで恥ずかしいかもしれんし、アンタは満足するけど・・・女の子は、可愛いよりも
綺麗って言われたほうが・・・嬉しいはずやで」


「綺麗・・・・・・か」



確かに、学年上がって・・・何処となくの雰囲気変わった。
前はこう・・・柔らかい感じやったけど、今はその中に凛とした何かが秘めてある。


口では上手く表現出来んけど
もしかして、昨日の電話でのの声・・・大人っぽく聞こえてたんはそのせい?


の中の・・・何かが俺に信号、送ってたんか?



「コイツ、綺麗になったやろ?」って・・・俺に、そう教えてたんか?






「いっぺんでえぇからちゃんに”綺麗“って言うてみぃ?
まぁ、まずは面と向って突然怒鳴ったことを謝るのが先決やけどな」


「姉ちゃん・・・・・・ありがとう」


「どういたしまして。ホレ、風呂入れ」


「うん」




そう言われ、俺は立ち上がり
携帯を机の上に置いて風呂に入りに行く。

とにかく、が帰ってくるまで・・・いや、帰ってくる前までに何とか謝らアカン。

メールもぎょうさん書いて、電話もして・・・何としてでも
繋ぎとめるんや!


俺、こないなことで・・・と離れとぉない。

の中の何かが俺にずーっと信号送ってくれたんや。
綺麗になったコイツ見ろって・・・せやから、ちゃんと伝えなアカンねん。




、綺麗になったな』



って。



俺の口から、ちゃんと・・・・・・言うんや。


















−その頃、新大阪駅−



「おかえりなさいませ、お嬢様。お迎えに上がりました」

「すいません、魁さん」



予定より、早く私は大阪に戻ってきてしまった。

まぁに逢ったし
東京に居ても面白くないし、学校も5日休みを貰ったけど
やはり受験生という身、のんびりはしてられない。


新大阪駅に魁さんに迎えに来てもらい
車の中で会話をする。



「明後日こちらに戻ってこられるはずでしたが、いかがなさいましたか?」

「いえ、特に。用事が早く済んだので。・・・それに、私受験生なので」

「そうでしたか。では明日から学校に?」

「えぇ、まぁ」



本当は行くの億劫。

先日、蔵との電話で私はいきなり怒鳴られた。
理由は不明。

だけど、こっちがせっかく心配してるのに
そんな風に怒鳴られるとも思わず・・・ショックの余り、私は彼との通信・通話を切断していた。
「この際着信拒否してやろうかしら」と思ったぐらい。


ふと、携帯が鳴る。
メールが飛んできた。

こんな時間にメールを飛ばす奴なんか一人しか居ない。

私は携帯を開き、受信ボックスに入ったメールを見る。




20**/04/**
From:蔵
Title:ゴメン
------------------------------

、ホンマゴメン!
昨日のことはマジで悪かった。
別にのことで怒ってるんやないで。
せやから、機嫌直してくれ。
何べんでも謝るから、頼むわ!
機嫌直ったら、メールか電話くれ。
俺待ってるから。

-------------END----------------




今日でもう数え切れないほど蔵からメールが飛んできた。
いや、電話も結構な回数掛かってきてる。

でも、私は電話にも出なければ・・・メールも返信してない。


こっちは理由も分からないのに・・・そんな風に言われても困るだけ。

アンタが一方的に謝っても
理由も知らず怒鳴られた私としては、気持ちが最悪なままよ。





お嬢様、どうかなさいましたか?」


「い、いえ何も。少し寝ます・・・着いたら起こしてください」


「かしこまりました」



魁さんにそう言って私は、メールも返信せず携帯を閉じ
そして目も、閉じた。




ねぇ、何であんな風に私を怒鳴ったの?

やっぱり・・・嫌になった?

疲れてるときに電話しちゃったから・・・煩わしくなった?


お願い・・・理由を教えて。
どうして私にそんなこと言ったの?

このままじゃ・・・私・・・・・・息も出来ないよ。

死にそうなくらい・・・寂しいよ。



目を閉じて、手に私は携帯を握り締めた。

振動で私に着信を知らせるも
私はそれに出る気持ちもなく
ただ大阪の町を過ぎ行く車の中、浅い眠りに就いた。


蔵の笑った顔が浮かんで――――。








っていう優しい声だけが・・・私の耳に聞こえてきたような気がした。





Answer
(ようやく出た答え。あぁ、早く君に逢って伝えたい!)

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