「今終わった。ホテルに居るわ」


『分かった。じゃあすぐそっちに行くね』


「すまんな。ほな待ってる」


『うん』






流しソーメン大会から何故か焼肉大会にまで発展して
それに参加してきた俺らは、ようやく宿泊先のホテルに着き
各々の部屋に戻ってきた。

俺はに電話で「来てもえぇで」という電話をして
彼女は嬉しそうにそれを受け、電話を切った。







「かぁ〜・・・口ん中がまだ気色悪っかよぉ〜」






すると俺と同じ部屋になった千歳が口の中を
洗面所で濯(ゆす)いで、手にミネラルウォーターを持って
俺の居る部屋に戻ってきた。






「ありゃ、もう一種の凶器たいね。うん」


「千歳」


「ん?どぎゃんしたとね、白石?」


「すまんが・・・今からが来んねん。席外してもらってもえぇか?」





俺は今から部屋に
が来ると千歳にそう言うた。






「ほんなこつね?おぉ、よかねぇ〜・・・俺もから慰めてほしかぁ〜」


「何言うてん。自分には1ぺん貸したやろ?もう貸さんで」


「冗談やっか。アレだけで俺は充分たい。まぁどうせ、金ちゃんや謙也たちと風呂入りに行く予定だったけんね」





そう言うて、千歳はバックから衣類やタオルを持って
ドアまで歩いていく。

ドアノブを捻り、少し開けて・・・千歳は振り返る。





「なら・・・ごゆっくり」


「アホォ・・・さっさと行け」


「アハハハ・・・んなね」





千歳は笑いながら部屋を後にした。

残ったのは俺一人。
手に握り締めた携帯を机に置いて、椅子に深く寄りかかり考える。






「・・・はぁ・・・もう、何やねん」




昼間、あんな現場を目撃して
挙句夜まで、跡部クンや謙也のイトコを見るとは。

しかもあの跡部クンは何事もなかったように居った。




昼間・・・あんだけ、に辛い顔させといて・・・余裕過ぎる表情に腹立たしかった。



正直殴ってもおかしくないで。

俺の彼女や・・・そう・・・は――――。








「俺の彼女の・・・はずなんや」







は俺の彼女や。

嘘でも、なんでもない・・・俺の彼女や。


胸張って・・・そう言い切れるはずなんに・・・今がそれが苦しい。






理由は分かりきってる。





「俺は・・・無理やったんや。の忘れたいこと忘れさせれへんかった。アイツの目には・・・・・・俺なんか、映ってないんや」






そう。


アイツの目には、端(はな)っから俺なんて映ってなかったんや。


俺の姿に、は跡部クンの影を重ねてたんや。


俺がをからこぅたり・・・一緒に帰ったり、デートしたり、キスしたり、体重ねたり。


俺の目にはちゃんと、っちゅう一人の女の子の姿映ってた。
それやのに・・・俺は一人で浮かれとっただけなんや。



の目には、最初っから・・・白石蔵ノ介っちゅう男の子なんて映ってなかったんや。

アイツの目には、ずっと前から俺やのぅて俺の姿に跡部景吾っちゅう男の子の影を重ね合わせて―――。












『バカじゃないアンタ』





『・・・ヘンなの』





『ちょっ、何考えてんのよ変態!』





『・・・ゴメン、ゴメンね・・・』













『蔵・・・大好き』








アレも、コレも・・・全部、自分の目には・・・俺なんて映ってなかったんやろ!




俺が好きや言うだけで
が幸せそうな表情浮かべとったのは

俺が言うんやのぅて、跡部クンが言うたように聞こえてたから

それに満足して・・・あいつは・・・笑ってた。

俺やのぅて・・・・・・俺に、跡部クンの影・・・重ねて・・・・・・アイツは、は―――。








ふと、我に返る。

外から軽快なサンダルのヒールの音がする。
俺は椅子から立ち上がり、扉の方へと向かいドアノブを捻り開ける。









「わっ!・・・ビ、ビックリしたぁ。何で分かったの?」


「自分のサンダルのヒールの音、聞こえてきとったから」




扉を開けると、目の前にが立ってた。
今からインターフォンを押そうとしとったところやったらしい。
手が空を切り、横に納められた。





「よぉ、部屋分かったな」


「うん。此処に来る前、千歳たちとバッタリ会って。千歳と同じ部屋っていうから、番号聞いたの。
フロントに聞く手間が省けてよかった」


「そうか。・・・中、入りよ」


「うん。お邪魔しまーす」



そう言って俺はを中に招き入れ
彼女が入るのを確認すると、ドアを閉めた。


俺はの横を通り過ぎ、彼女に背を向け窓の外を見る。






「大会・・・残念だったね。去年と同じで」


「しゃあないねん。・・・俺らの実力がまだまだだっただけや」


「でも、蔵・・・頑張ったよ。お疲れ様」


「あぁ」





俺はまだ彼女に背を向けたまま、振り向かない。




「く、蔵?・・・どうしたの?何かヘンだよ」



「・・・なぁ、


「何?」




































「俺ら、別れよう」






「え?」





俺の言葉に、は驚きの声を上げた。
「別れよう」と切り出した俺も、心臓が酷く高鳴ってる。




「ちょっ・・・冗談キツイ。寝ぼけてるの蔵?」


「俺、マジで言うてんねん。・・・別れよう。俺ら・・・始めから合わんかったんや」


「バカなこと言わないで。お昼と今が態度違いすぎる・・・何かあったの?」


「何もない。ただ、そう思い始めてきただけや」


「嘘。お昼あれだけ私に女神だの何だの言ってたヤツが・・・いきなりおかしいよ。何かあったとしか思えない。
蔵に限って・・・そんなこと、言うはずない。嘘つかないで」




嘘つかないで?

の言葉に、俺は心がズキッと痛んだ。


俺は窓にむけていた体を振り向かせ、の顔を見た。





「嘘付いてんのはどっちや。俺やない・・・お前の方や


「え?」


「何で、黙ってたん・・・跡部クンとのこと」


「!!」




俺のその一言での目が大きく見開き、驚きの顔を見せる。





「跡部クンとの事・・・何で俺に言わんかったん?」


「そ、それは・・・っ、昔の事だし・・・知らなくても、いいことだから」


「せやかて、ちょっとくらい何かあったことは教えて欲しかったわ。・・・・・・婚約してたこととか」


「く、蔵・・・・・・な、何で知ってるの?」




は驚いた表情で俺を見る。
俺は彼女の視線を遮るように、顔を横に向けた。






「昼間。自分が中々戻ってけぇへんから・・・探しに行ったんや。そしたら、跡部クンと話してるところ・・・見たんや」



「・・・・・・・・・」



「正直、信じられんかった。俺・・・・・・跡部クンの身代わりやったんやな」



「ち、違うっ!」


「何がちゃうねん!!」


「っ!?」





彼女の反論する声に、俺は大きな声で更に反論をした。






「アレだけの光景見といて・・・どこが違う言い切れるんや、。忘れたい事って跡部クンとのことやったんやろ?
まだ、跡部クンのこと好きやから・・・好きやから・・・俺と、あんな関係結んだんやろ」


「そ、それは・・・っ、それはもう前のことよ!!確かに前は、蔵のことそういう風に見てた。
そこは自分でも、酷い事してるって・・・分かってた。でも、でも今は違うの!今は、私本気で貴方のこと・・・」


「嘘つくなや。せやったらなんでネックレス、俺が言う前に外してくれんかったん?」


「・・・・こ、これは・・・その・・・」







俺の言葉に、はネックレスを握り締める。
まるで・・・それを本当に大切に・・・そして――――。




















まだ、彼への未練を断ち切れてない彼女の姿が目に映る。










の後ろに、彼女に背を向けている跡部クンの姿が浮かんできた。





やめろ・・・やめれや。






「・・・外せ」


「え?」


「ネックレス・・・外せ」


「ぃ・・・嫌っ」





イライラが募り始め、俺は不安でつけてて欲しいという願いを
押しのけ、無理矢理ネックレスを外すように言う。

しかし、彼女はそれを昼間同様拒む。






「外せや。・・・跡部クンへの未練ないんやったら外せるやろ!俺とほんまの恋人同士なったんやったら
そんなん俺の気持ち関係なく外せるやろ!・・・外せ」


「嫌っ!・・・コレは、コレは外したくないの!!」


「外せ!」


「嫌っ!!」






外してくれ。


外してくれや、


俺のことホンマに好きやったら、外してくれや。


お前がそれ握り締めて、泣いとるだけで

俺は心が苦しい。お前が俺以外の他の誰か好いてることが苦しいねん。


跡部クンとかそんなん関係なく。







せやから、頼む・・・・・・。







、外せ」


「ヤダ!・・・絶対に、絶対に嫌よ!!」


「お前が外されん言うんやったら」


「!!」





拒み続けるに俺はネックレスを掴む彼女の手を握り
その手を退かし、ネックレスを無理矢理外そうとする。




「いっ・・・イヤッ!!・・・イヤ、やめて!!」


、外せ。俺の言う事分からんのか!」


「分かってるわよ!!でもコレは外せないの!!」


「せやったら外せや!!こんなん付けてるから、いつまでも未練引きずってるだけにしか見えんねん!」


「ヤダ!!やめて、蔵っ!!」


っ!!」


「イヤッ!!」






瞬間、甲高い音がした。

俺の頬に痛みが走る。


目の前のに、俺は頬を叩かれた。

あまりのことで俺の脳内真っ白に染まり――――。









「く、蔵っ・・・ゴメン。引っ叩くつもりは・・・」


「もう、えぇわ」


「え?・・・きゃっ?!」





俺はの腕を握り、そのままベッドに放り
彼女の体に馬乗りをし、服に手を掛け―――――。












「いやっ・・・やっ・・・いやぁあ!!」










無理矢理破った。



肌が露になり、俺はその肌に噛み付く。

何をされるのか分かったのか、は足をばたつかせ俺の体から剥がれようとする。





「やっ・・・いやっ!!蔵、蔵やめて!!いや、いや!!」


「お前に外す気がないんやったら、もう知らん。せやけど、俺とお前の関係はこれで最後や。
お嬢様・・・さぞ楽しかったやろ?俺に跡部クンの影重ねて・・・」


「く、蔵・・・、違う・・・ちがぅ・・・」


「もう聞き飽きたわ。お前の目に・・・俺なんて最初っから映ってなかったクセに・・・お前なんか・・・お前なんか――」




























壊レテ、消エテ、無クナッテシマエ!!





















「ひゃああぁ!!・・・ああっ、ぃ・・・イヤッ!・・・痛っ、痛い!!蔵、蔵やめて!!あぁあん」


「嘘つけや。やめて欲しくないクセして」





服破いて、愛撫もせんと

俺はの肌に、鬱血するほ噛み付いた痕を残す。


彼女の体をうつ伏せにして

下も緩めもせず、そのまま一気に挿入。


無理矢理挿れた瞬間、は悲痛な声を上げた。

挿れても、俺はすぐさま腰を動かし彼女の中を犯す。





「痛っ・・・ぃたぁ・・・やぁあっ、あっ・・・く、らっ・・・痛いっ!・・・い、やぁぁ!!」


「痛い言う割りに・・・ナカは俺んコト締め付けてるクセに。ホンマは気持ちえぇんやろ?
跡部クンに無理矢理犯されてる思てみぃよ。・・・自分、エェ気分なんとちゃうんか?・・・なぁ、っ!」


「いやぁぁあ!!」





バックスタイルでの挿入やから、俺は自身を深くのナカで突き上げた。

その瞬間、は甲高い声で啼く。
イヤという声は・・・今の俺には狂おしいほど、優しく・・・そして、痛く心に響く。




お前の・・・お前の目には・・・俺なんて、映ってない・・・!!




ネックレスも外されへんのは・・・まだ跡部クンが好きやから。




最初っから・・・俺らは・・・・・・俺らは・・・・・・――――。
























『あの・・・何か?』


『うぅん、何でもないわ。俺、白石蔵ノ介・・・お隣さんやから、困ったことあったら何でも聞いたってな』


『ど、どうも』













出逢ったこと自体・・・間違いやったんや。







いっその事。











「蔵・・・蔵っ・・・イヤッ・・・いやぁあ・・・ああっ、・・・あん・・・ああぁあん!!」


・・・・・・ッ」










出逢わなければよかったんや。





俺とお前は・・・始めから、出逢って・・・好きにならんほうが・・・よかったんや。






酷く軋むベッドのスプリング音。

卑猥に響く結合音。

拒み啼き続ける・・・の声。

純白のシーツに滴り落ちる白濁と・・・・・・鮮血。


踏み躙(にじ)られた・・・俺の想い。



なぁ、俺・・・もっとお前のこと知りたい望んだんが・・・間違いやったんか?


お前のこと、深く欲しい望んだんが・・・間違いやったんか?



なんて、問いかけても・・・は、きっと答えてくれへん。
俺の気持ちなんて・・・お前に届いてるはず、ないねんから。


最初から、ずっと。









「いやっ・・・やっ・・・あっ・・・あぁあっ・・・ぃ、ぃやあ!」


「イキそうな声やな。イけばえぇやん・・・啼きぃよ・・・ホラ、もっと・・・啼けばえぇやん。
俺のこと跡部クン思て、抱かれてると思えば・・・えぇやんか」


「ぃやっ!・・・いやあっ・・・蔵っ・・・蔵ぁあ・・・」


「俺の名前呼ぶな!その気もないくせに・・・俺の名前、呼ぶなや!!」


「やぁああっ!!!あっ・・・ああっ・・・・いやっ、やぁあっ・・・あっ、あぁあっ・・・く、らぁ・・・蔵ぁあっ」





シーツを握り締め、犯されながら啼くの姿に
俺は苛立ちを感じ攻め続ける。

やめろ・・・俺の名前呼ぶな・・・お前の声なんか・・・お前の声で呼ばれる俺の名前なんて・・・っ。







「・・・っ、お前なんか」

































「大嫌いや」







「!!・・・っ・・・あぁっ・・・―――あぁああ!!」






締め付けられ、ナカで俺は果て・・・それを受け止めたも果てた。


もう、心地がえぇなんて思わへん。
共に感じていた胸の温もりも・・・優しさも、全部ぜんぶ・・・――。











「これで最後や」










もう、二度と戻ることなんて出来ひん。





俺は、好きやった・・・・・・・愛してた、のに。



俺の愛は・・・お前に届かず、やっぱり他の誰かに行ってたんやな。



俺は一人で、お前を愛せるって思てただけなんやな。



お前と・・・ずっと、ずっと一緒に居れる・・・そう――――。















全部思い込んでただけなんやな。







ホンマ

最愛にして、最高の・・・バッドエンドやな。






Happy Bad End
(幸せすぎた恋人達の悲しきピリオド。”これで最後“と呟いた夜)

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