神様、コレは罰なんですね。


今まで彼に何も話さなかった私の罪。

彼に黙っていた・・・私にアナタは天罰を与えたんですね。



アナタを怨んだりしません。


だって、全ては私が悪いのだから。


彼に何も言わなかった、私が・・・わたしが・・・――――。












悪い子、だったんですね。






だけど、自分が悪いと分かっていながらも
もう少しだけ・・・時間が欲しかった。






彼にちゃんと話せる日が来る、時間が欲しかった。




罰はその後、充分に受けるつもりだった。

でも、あまりにも早すぎる天罰に戸惑いと、悲しみと、痛みが襲い掛かってきた。















「・・・んっ」


体が痛い。

無理矢理蔵に犯されて、体中が酷く痛い。


目を開けたら、泣いてたせいか・・・目が重い。


私はベッドから体を起こした。






「・・・痛っ」


「起きたんか?」


「!!」




体を起こしたときに痛みが生じ、私は思わず口から
痛みの声を上げると、蔵が・・・離れた場所で私を見ていた。

制服のボタンを全部開けっ放しで、ズボンのベルトも緩まれたまま
少しだらしのない格好だった。

蔵がそんな姿でベッドから起き上がった私を見ていた。

私を見る目はやはり・・・冷たい。




私は顔を下に俯かせると・・・洋服がかけてあった。

間違いない・・・蔵の服。





「服破ったからな・・・・それ着て帰り。返さんでえぇわ」


「・・・・・・」





冷たい言葉に、体が震える。


目が熱くなり、涙が零れる。



分かってる・・・こんな事になったのは自分のせいだって。


だけど・・・だけど―――。





「いらないわよ、こんなの。嫌いになったんだったら・・・優しくしないで」


「別に優しくしてるつもりないわ。人目があるから言うてんねん・・・それ着て、帰れ」


「いらないって言ってるでしょ!!」





私は自分にかけてあった、洋服を蔵に投げつけた。





「嫌いになったんなら優しくしないでよ!!こういうのを優しさって言うのよ!!
人のこと無理矢理犯しといて・・・優しくすれば、戻ってくると思ってんの?大きな間違いよ!!」


「別にそういうことしてるつもりないわ!」


「私も・・・私も、アンタのそう言うところ嫌いなのよ!!ヘンに優しくすれば戻ってくると思って
こんなんじゃ、跡部とアンタは一緒よ!!優しくしないで!!嫌いになったなら徹底的に突き放しなさいよ!!」


「じゃあ勝手にせぇ。・・・帰れ・・・お前の顔、二度と見たないわ」






蔵は怒りながら、服を拾い上げ私に言う。


心に刃が突き刺さった。




痛くて・・・痛くて、取れない。


息が出来なくて・・・苦しい。


涙が溢れて・・・止まらない。






「・・・こっちこそ・・・もうアンタの顔、二度と見たくないわ・・・」




そう言って私は破られた服のまま
露になった部分を手で押さえ、部屋を飛び出した。


部屋を出て、エレベーターに乗ろうとした瞬間
角で誰かとぶつかった。




「す、すいませ・・・前見てなく」



「何や、やん」
「おぉ、やっか」



「謙也、千歳・・・それに、みんな」




顔を上げると、いつものメンバーが私服姿で現れた。




・・・どないした?」
ちゃん?」


「・・・・・・」



ユウジと小春ちゃんに声を掛けられ私は黙り込む。


ダメ・・・ダメよ

みんなに・・・みんなに、バレちゃう。





・・・どぎゃんしたと?服がたいぎゃ、ボロボロやばってん」




「っ!!」



千歳の言葉に、心臓が酷く跳ね上がる。

そして思い出す・・・。












『お前の顔、二度と見たないわ』









蔵のあの言葉。




ダメ・・・此処で、泣いちゃ・・・ダメ!




「・・・っ」



!!」



私は皆の間をすり抜け、そのまま丁度開いたエレベーターに乗った。

扉が閉まったと同時に私は中で崩れ落ち――――。

















「うっ・・・うぅ・・・ひっ・・・ううっ・・・」














泣いた。



分かってた。

コレは私への罰だったって・・・今まで彼に何も言わなかった私の罰。



嫌いと言われて当然、顔も見たくないと言われて当然。


何も言わなかった私が全部悪い。



ふと、首にさがった星のネックレスが目に飛び込んでくる。
私はそれを見るなり握り締めた。



「よかった・・・・・・ょかっ・・・た・・・」



この子だけが無事なら何よりだ。

気絶している間に外されてるのかと思った。
何せ蔵が「外せ」と頭に血を上らせながら言うほどだったから
私が気絶している間に外されたのかと思った。


この子は外せない。


跡部への未練で付けてるわけない。


この子は・・・この子の中には。








「蔵・・・っ・・・蔵、ごめんなさい・・・ごめん、なさい・・・っ」








アナタとの大切な思い出がたくさん、詰まっているのだから。





























ガンッ!!!





「おい、千歳!」


「千歳、落ち着けって!!」



「これでも、落ち着いとっとよ・・・。どぎゃんね、白石・・・頭は冷えたね?」



「・・・・・・知らん」




が部屋を去った後。

千歳を先頭に、メンバーが部屋に入ってきた。


部屋の光景を見られた瞬間、俺は千歳に殴られた。



俺はしりもち着いて、顔を伏せながら言う。
口切れて正直痛いわ・・・それと・・・心も、めっちゃ痛い。







に何ばしたとね?」


「何もないわ。俺らのことや・・・赤の他人のお前らには関係ない。首突っ込むな」


「部屋の状況からして・・・何もなかて?・・・ふざけたこつば抜かすな!!」


「やかましいわ!!俺らの事情に首突っ込むなや!!お前にとやかく言われる筋合いないねん!!」






俺との問題や。

いや、もう2人の問題やない・・・問題もないわ、終わったんや関係は。



せやから――――。





「お前にいちゃもん付けられる筋合いないねん!!俺がどうしようが、が泣いてようが勝手や」


「何ばいいよっとかお前はっ!もういっぺん、殴られんば気がすまんごたかな!!」

「千歳落ち着けや!!」
「銀さん、千歳はん押さえて」

「千歳はん。落ち着いてください」




俺にもういっぺん殴りかかろうした千歳を謙也や銀が押さえる。


殴れんと分かったのか、千歳は「離してくれ、もう殴る気もなか」と言うと
2人は千歳から離れた。

すると千歳は踵を返し、扉に向かう。



「ち、千歳・・・何処行くん?」




「白石が行く気がなかなら・・・俺が行く。はたいぎゃ泣いとった」



「行かんがえぇで。アイツは嘘つきや・・・嘘つくんが上手な女やで。泣き顔かて・・・嘘に決まって」



「頭ば冷やせ・・・白石。お前・・・そぎゃんヤツじゃなかったろ?に対して」



「気が変わったんや。人間の気なんて・・・いくらでも変わんねん」






は嘘つくんが上手い。

俺も・・・俺もその嘘で・・・もう心はボロボロや。






「俺はと約束ばした。・・・が泣いたときは俺が助くぅって・・・この前は俺がに助けられた。
だけん今度は俺がば助ける番だん。お前が行かんとなら・・・俺が行く」




「おい千歳っ!」



「千歳、ワイも行くっ!!」



「金太郎さんっ!!・・・行ったら」



「勝手にさせとけ!!・・・行きたいなら、行かせたらえぇやん」



「白石」

「蔵リン」





謙也や小春が二人を止める声に俺はすぐさま自分の声で遮った。

そして、俺は一人蹲った。




もう、もう放っといてくれ!


俺は・・・もう、のことなんか・・・好きやないねん。

アイツは俺に跡部クンの影重ねてただけなんや。

ネックレスも・・・跡部クンのこと忘れられへんから、外さへんねん。




俺は・・・俺は跡部クンの身代わりやったんや。




こんな事さえ知らんかったら・・・俺、傷つかんでよかったんか?

と・・・ずっと恋人のままでおっても良かったはずやろ?




神さん・・・酷すぎるで。

何で、なんで・・・幸せのまま、俺ら放っといてくれんかったん?
俺こんなん知らんでも・・・さえ居ってくれたらよかった・・・よかったんや。

それなのに・・・何で俺にこんな現実、突きつけたん?








俺、もう―――――。












を好きになる、資格・・・・・・ないねん。







酷く傷つけた。自分も傷ついた。

泣いてた。俺も泣いた。

俺は心が痛い。は心も体も痛い。




色々考えたら俺の心に、ぽっかりと・・・穴が開いた。



きっともう、埋まることのない・・・・・・大きな、おおきな穴が開いたのだった。























慌ててホテルを出たら・・・雨が降り出した。


私は勢いで走ったせいか息が上がり
服を掴みながら歩く。

行き交う人たちは急いで雨を凌ぐ場所で止まったり、道具を身につける。




雨粒が体に当って・・・痛い。






「うっ・・・ひっく・・・うっふぅ・・・」





アレだけ泣いても、私の涙は止まらなかった。


家に帰る前に思いっきり泣いておこう。
こんな状態でウチに帰ったら・・・お父さんもお母さんも心配する。

雨が上手く遮ってくれる。

雨が上手く涙を流してくれる。



雨が上手く――――。



























「蔵っ・・・く、らぁ・・・っ」







彼の笑顔も全部、消してくれるはず。








っ!」

「ねーちゃん!!」



「千歳・・・金ちゃん」




名前を呼ばれ振り返ると、千歳と金ちゃんがやってきた。
しかも2人もずぶ濡れだ。




「2人とも・・・ずぶ濡れ」


「お前さんもだろ?」
「水浴びしてると思たら、平気やでねーちゃん!」



金ちゃんが明るくそう言うと、私は少し頬が緩んだ。




・・・白石と、何かあったと?」


「・・・・・・」



千歳が急に真剣な声で私に言う。
私は彼の顔を見て、ゆっくりと顔を伏せた。




「蔵に・・・別れようって言われちゃった」


「え?」
「何で!?何でなん!!白石、ねーちゃんのことめっちゃ好きやったのに」


「私ね・・・蔵に嘘、ついてたから。蔵だけじゃないよ・・・皆にも嘘ついてたの」


「俺たち、にも?」





千歳の声に私は顔を上げることなく、一つ頷いた。




「私と、蔵ね・・・ホントは恋人でも何でもないの。恋人ごっこしてたの」


「遊んどったとか?」


「私が・・・忘れたいものを忘れるまでの期間。蔵と恋人ごっこしてた。でも、私が本気で彼を好きになって
彼も・・・私のこと、好きになってくれてて・・・・・・」






恋人ごっこをしてるときも、ちゃんと恋人同士になっても

私は幸せだった。


蔵がずっと側に居てくれる・・・そう思っただけで、死にそうなくらい幸せだった。




「でもっ・・・でも、私・・・蔵に、蔵に嫌われたくなくて・・・嘘ついて・・・」


「どぎゃん嘘ばついとったと?」


「忘れたいこと・・・・事じゃなくて、人なの。忘れたい人が居たの・・・氷帝学園の跡部景吾。知ってるでしょ?」


「おぉ・・・アイツか」


「私、去年まで・・・アイツと婚約してたの」


「!!」


「なー・・・こんやくってなんなん?」





私の言葉に千歳は喋らない。

金ちゃんの言葉に私はゆっくり口を開く。




「結婚の約束をすること。私にはそういう人が居たの・・・前ね」


「ねーちゃん・・・誰かと、結婚する約束してたん?」


「うん。でもね・・・約束、向こうが破っちゃってね。他の女の子のこと好きになっちゃったの」


「ねーちゃんのこと置いてけぼりにしたん?・・・最低や!!ねーちゃん、ねーちゃん悪くないで!!」



金ちゃんは私の話に声を荒げながら言う。
私はそんな彼の頭に手を置いて、撫でた。




「仕方のないことだって分かってた。婚約者である私が何も言わなかったのが一番いけないって。
だから忘れるために大阪に来たの。・・・跡部の事、忘れるために」


「前、が言っとったことはこのこつか」


「大阪に来れば、全部忘れられるって・・・思ってたんだけど、なかなか上手く行かなくて。
それで蔵と恋人ごっこして・・・跡部との記憶何もかも、忘れようとした。このネックレスもね
跡部から貰ったものなの。捨てるにも捨てきれなくて・・・・・・でも、気づいたら」








跡部の事なんて、これっぽっちも思い出さなくなった。



その代わり増えていった・・・蔵との思い出。







「蔵との思い出だけが増えていった。楽しい事も、辛い事も、悲しい事も・・・全部ぜんぶ。
このネックレスの中に詰め込まれていった。・・・だから、捨てれなくなった。
もう、もう私の目には・・・蔵しか、映ってなかった・・・なのに・・・なのに・・・・・・っ」














『お前の目に・・・俺なんて最初っから映ってなかったクセに』







『俺のこと跡部クン思て、抱かれてると思えば・・・えぇやんか』





『その気もないくせに・・・俺の名前、呼ぶなや!!』




『・・・・・お前なんかっ』

























『大嫌いや』













「全部、ぜんぶ私が悪いって分かってる。あんな風に蔵を巻き込んだ私が悪いって。
悪い事をした私に、神様が怒って・・・こんなことしたのよ。蔵は蔵は何も悪くないの。
全部、全部私が・・・っ」


「もうよか!」





自分を責め続けていると、目の前の千歳が私を抱きしめた。




「もう、そぎゃん自分ば責めんでよかやっか。だっ(誰)でん、忘れられれんことはあっと。
忘れたかこともあっとよ。・・・そぎゃん自分ばっかり責めとってどうすっとね、


「蔵・・・悪くないもん・・・悪いのは、私だもん。蔵にもっと、もっと好きになって欲しかったから・・・蔵に」


「もうよか!!白石ん名前ば出すな!!」


「千歳」




千歳の腕の力が強く私を抱きしめる。






「もう、もう白石の名前ば言いなすな。そぎゃん・・・俺、見たくなか」


「ち、とせ」



「俺が守る・・・は俺が守っけんが、泣かんでくれ。ばツラかこつから・・・守るけんが」



「千歳・・・千歳・・・っ」



「泣かんでよか。お前さんは・・・何も悪くなかとだけん・・・泣かんでよかと。俺が守るけん・・・心配すんな」





彼の声に、私はまた泣いた。



千歳の腕の中で泣いてる間も、瞼の奥に浮かんでくる






笑った蔵の顔。






手を差し伸べて、私に「おいで」という彼の表情。



その手を握ろうとしても、もう・・・私、握る資格ないよね。

アナタに酷い嘘をついて・・・そして、もう一つの嘘があるから。




でもね、酷い嘘をついたのは本当にごめんなさい。




だけど、貴方を愛する気持ちは嘘も偽りもない・・・本物だったんだよ。
私の目にはちゃんと貴方が映ってたんだよ。



ずっと、ずっと前から・・・跡部じゃなくて、蔵・・・貴方がちゃんと映ってたんだよ。



何て言えば私・・・信じてもらえたのかな?

何て伝えれば私・・・貴方とずっと愛し合えたのかな?
















もう、きっと・・・貴方の耳に、私の声は・・・
届カナイ












嘘つきな私でごめんなさい。

泣き虫な私でごめんなさい。


もう、誰も私の側から離れていかないと思っていたのに





また一人。





私の側から、この世でもっとも大切な人が離れていった。





私はこれで3人の人間を失った。








Lose
(これで3人目。跡部と蔵と、そして・・・・・おかあさん)

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