恋人が亡くなって、一年。
新しい恋人がいます。
けど、その彼とは・・・期限付きの恋をしてるだけなんです。
「ちょっと、精市さん!聞いてよ、雅治がね!!」
「聞いてるよ。また仁王とケンカしたのかい?」
私、。
立海大付属中学校3年生です・・・・そして隣にいるのが同じ学校の幸村精市さん。
只今、精市さんの入院中の病院にて恋人の愚痴を聞いてもらっています。
「で、今日は一体・・・どんな理由?」
「雅治が、私のことまた騙したのよ!!あのペテン師!!どういう教育してるのよ、精市さん!!」
「教育って・・・。それよりも、いいの?」
「何が?」
「・・・あと少しなんだから、仁王とこんな関係続けていけるの。仲良くしたら・・・・?」
精市さんの一言で私は黙り込んでしまう。
そして、私は顔を下に伏せた。
「彼が死んで、もう一年・・・・かな?」
「うん。あっという間だったよ・・・・雅治とこんな関係続けてるの」
「龍二くん。彼がこの場にいたら、君はこんなにも仁王と仲良くはなかっただろう?」
「元々、雅治も龍二も仲良かったし・・・あんまり変わらないよ」
「でも、ケンカは良くないよ。後・・・数ヶ月、なんだから」
そうなのだ。
私は・・・仁王雅治と・・・期限付きの付き合いをしている。
こんな話を持ちかけてきたのは、雅治本人。
去年の、夏・・・雅治の友人でもあり、私の恋人でもあった中西龍二が
交通事故で亡くなって・・・・私が泣いているところ、雅治が・・・声をかけてきた。
『俺と・・・付き合ってみんか?』
唐突過ぎて、何が何だか分からない。
でも・・・・その気持ちが嬉しくて、現在に至る。
しかし・・・・・コレが期限付きの恋人。
「去年の夏から・・・・3年の卒業まで・・・それが条件だから」
「卒業を迎えたら・・・君たちは・・・・」
「今までどおり・・・“友達”にもどるよ。惜しくもないし・・・・悲しくもない・・・・」
「でも、寂しい・・・・?」
寂しい・・・・?
そんなこと・・・・思ったことがない。
だって・・・もう、今でも・・・一人ぼっちだから。
別に寂しいなんて・・・思ってない。
「雅治と友達に戻っても、寂しいなんて思ってない。私は・・・私のままで居続ける」
「後々になって、仁王に泣きつかないでね」
「しないそんなこと」
----------ガチャッ・・・・。
「ココに居ったか?」
「来るのが遅いよ、仁王。お姫様はご立腹だよ・・・・?」
「ほぅ・・・そうなんか?」
「お前とは口も聞きたくない」
「・・・・帰りになんか奢ってやろうと考えたんじゃが・・・お前がその態度じゃと、仕方がないのぅ」
「帰る。精市さん、ありがとう」
口も聞きたくないと思ったのに・・・・食べ物につくづく自分が弱いと気づく。
「気をつけて帰るんだよ。仁王、を頼むよ」
「おう。じゃあのぅ幸村」
「バイバイ、精市さん」
雅治は笑いながら、私の手を握る。
握ったその手は冷たく、ずっと私を探していたと思われる・・・・手。
「雅治」
「ん、何じゃ?」
「探した?」
「・・・・さぁなぁ」
ふと、目線を落とすと・・・指先がかすかに赤い。
やっぱり、探したんじゃない。
「嘘ばっかり・・・手、冷たいよ」
「俺は体温が低いからのぅ・・・・温かくてもすぐ冷え切ってしまうんじゃよ」
「・・・・・ごめん」
「謝らんでえぇじゃろ?からかった俺も悪いし」
そう言って、雅治は私の手を強く握り締めた。
あたたかくて、大きくて、優しい手・・・・でも、不安にも見える。
その大きく私に触れる手が・・・・貴方の存在が、私にとっては・・・・怖い。
でも、それが・・・何が・・・怖いのだろうか?
ただ、側に居て・・・安心するだけなのに・・・何が怖いというの?
いつまで、俺は・・・・嘘をつき続けるのかのぅ?
がにっこりと笑うだけで、それだけで
よかったはずじゃったのに・・・・いつの間にか、こんなにも、俺は・・・感情が揺れとった。
さっきだって・・・・が仲良く、幸村と話してる姿を見て・・・嫉妬だってしたくらいじゃ。
しかも、アイツが呼ぶ幸村は・・・とても優しい。
俺の知らん、の表情。
胸にこみ上げてきた、嫉妬の炎。
あぁ俺にもそんな顔してほしんじゃが・・・なんて、言えるはずもなく
ただ、心の中に静かな炎を燃やすだけ。
でもの手を握ったら・・・燃え上がっていた炎が徐々に消え始めた。
俺はいつからこんなにも自分の気持ちを
隠すために嘘を言い続けてきたんじゃ?
「アイツのため、かのぅ」
「えっ?雅治・・・何か言った?」
「いいや、別に何でもない・・・・空耳じゃ」
危うくに聞かれるところじゃった。
俺は空耳と上手く誤魔化した。
嘘を付き続ける理由を作ったんは・・・・龍二じゃった。
アイツが死んだから・・・俺は身代わりになった。
でも、それは俺自身の感情を押し殺すものと同じじゃ。
龍二が死んで良かったなんて、これっぽっちも思っちゃおらん・・・・むしろ、辛い。
『ごめんな・・・・雅、治』
『もう、喋りなさんな・・・龍二・・・頼むから・・・・』
『俺は・・・・ムリだ・・・・。だから、せめ・・・て・・・・』
『龍二・・・・』
『を・・・頼んだ・・・・ぜ』
『龍二・・・龍二!!!』
アイツに約束された・・・・のことを。
でも、それは俺にとっては重荷となり枷となる。
あの記憶が・・・俺を縛り付ける。
でもさらに俺を縛り付けたのは・・・・じゃった。
『俺と・・・付き合ってみんか?』
『雅治と・・・・?』
『あぁ。でも・・・条件付きじゃ』
『条・・・件・・・・?』
『期限付き・・・・今から、3年の卒業まで・・・・。な、してみるか?』
『・・・・ありがとう、雅治』
目から零れ落ちた一筋の涙。
それは・・・俺を縛るものでもあり・・・・俺を突き動かすもの。
のおかげで、眠っとった感情が目醒めた。
「」
「何?」
「好きじゃ」
「・・・・知ってる、私も・・・好きだから」
その微笑みが、俺を動かし・・・縛り付ける。
期限は残りわずか・・・・俺は、今でも心の奥底に秘めた想いを閉じ込め
彼女に嘘をつき続けていた・・・・。
僕らは期限付きの恋愛関係
(どうすればいいのか・・・お互いが分からぬまま時が過ぎていく)