地下鉄に乗って、体が揺られる。
東京から離れ、どんどん神奈川へと私を運んでいく。






何年ぶりだろうか。
に逢うのは・・・と、思い返してみたら数年ぶり。


最後に逢ったのは、確か小学校の6年生?いやもうちょっと前かもしれない。



とにかく久しぶりだった。


久々に逢ったはとても、綺麗だったけど
どこか儚そうだった。

以前と変わらない・・・ただ、どことなく・・・明るくはなったんじゃないかな?と
ずっと友人、いや幼馴染として接してきた私が
唯一見つけ出せたのはそこだった。







「逢わないだけで、こんなに人間・・・変わるものなのかなぁ」






は私よりも早くにあそこを離れた。

その間もまぁやりとりはしてたんだけど
あそこまで分かるように、彼女の変化に驚いた。






「恋人のフリ・・・か」





はそう言ってた。

婚約者を忘れようとした
だけど、忘れきれない彼女を救うと言ってくれた彼女の恋人クン。

そして、彼に本気の恋心を向け始めた



確かに私も雅治とは期限付きの恋人っていうおかしな関係で
も、恋人のフリとかそういうおかしな関係してるねってあの時は笑って話してた――――けど。



















何 か が 違 う。












いや、違って当然だと思う。



ははっきりと恋人クンが「好き」という認識を持っている。
関係上伝えきれないと分かっていたとしても・・・・あの子は恋人クンを「好き」だと言っていた。


だけど、私はどうなの?
期限付きの恋人で・・・「好きだよ」って上辺だけの言葉ですませて・・・・・・。




それで終わり?




圧倒的に違うのが見えていた。











「私・・・雅治のこと・・・どう、想ってるんだろう?」









今まで、考えた事も無かった。
雅治が私のことどう想ってるとか・・・考えた事無い。


「期限付きの恋人」で「不安を取り除いてくれる存在」。



それだけ?


私の中で、雅治ってそれだけの人・・・なの?









「違う。もっと・・・こう・・・・・」









胸の中でわけの分からない、モヤモヤした気持ちが膨張していく。




不安を取り除いてくれるのなら、雅治だけじゃない・・・精市さんだっている。



あの人は、どんなときでも私が寂しいときでも辛いときでも
精市さんは側に居てくれた・・・こんな私を、あの人は優しく・・・受け入れてくれた。







血の繋がりがない、兄妹だとしても。





でも、でも・・・・精市さんの優しさと雅治の優しさは・・・・・・違う。








「どう・・・違うの?」






優しさは、同じはずなのに・・・2人の違いはなに?




精市さんと居て、感じるのは・・・安堵。


雅治と居て、感じるのは・・・―――――。







安心感と、安堵、なにより・・・・・・楽しい。







騙される事も、それはある時はある。
だけど、騙されたりもするけど・・・結局笑って・・・安心する。

心が、あったくなって・・・落ち着く。



側に居てくれるだけで、ただ、其処に雅治が隣に居てくれるだけで
















、好きじゃよ』
















すべて、雅治に委ねて・・・何もかも、忘れてしまう。





ふと、我に返った。








「何考えてんの、私。バカね・・・忘れちゃだめじゃない・・・龍二のこと」







決して、忘れちゃいけない。

この心の中から、消し去ってはいけない・・・大好きだった、龍二。







「私が雅治の事、好きだなんて・・・ありえないし」







それに、好きになっちゃいけないよ。
天国で龍二が泣いちゃう。



そう、雅治は私の不安を・・・悲しみを、取り除いてくれるだけの・・・人なんだから。


だめだよ・・・私が人を好きになるなんて・・・だめだよ。








【次は、立海大駅ーっ・・・立海大駅ーっ・・・お降りのお客様は車内にお忘れ物がないようお気をつけください】







考えてたら、あっという間に立海の最寄り駅だった。
電車が止まり、扉が開く。

階段を上り、駅構内へ。すると改札の先には――――。











「ん?お、早かったのぅ。もうちょっとばっかし遅くなると思ったんじゃが」


「雅治」






雅治が居た。
待ちくたびれ?なのか手には棒状のアイスを持って、私を出迎えた。





「アンタ、何で此処に居るのよ」


「さっき電話したじゃろ?覚えておらんのか


「・・・ごめん・・・忘れてた」





そうだった。

雅治が電話で私を呼び戻したんだった・・・電車の中で色々と考え込んでいたから
その事をすっかり忘れていた。





、どうした?」


「え?」


「暗い顔ばして・・・友達と、何かあったんか?」







すると、雅治が私の頭を撫でる。


フッと・・・胸の中でモヤモヤしていた気持ちが・・・消えていく。

重苦しかったのが、息苦しかったのが・・・なくなっていく。







「何でもない、ごめん雅治」





私は答えた。

頬が優しく綻び、口端が綺麗に笑みを作り上げた。


まさしく、自然な笑顔が出来ていた証拠。
作ったものじゃない・・・それは自分でもよく、分かる。








「そうか。まぁお前さんが大丈夫なら問題はなかろう」


「ゴメン。・・・・何か、お腹すいちゃった」


「ほんなら、アイスくらいなら俺が奢ってやるぜよ。今日はサービスじゃ」


「うわっ、雅治がそういうことするとか・・・マジで明日槍でも降ってくる?」


「コラコラ。そぎゃん言い方するヤツには奢ってやらんからの」


「あー、嘘うそごめんってば雅治っ」







まだ、よく分からない。

でも、きっと自分の中で気づいてるはず。











『 本当は 雅治の事 好きなの かもしれない 』










でも、決して忘れちゃ行けない人が私にはいる。
だからこそ・・・そんな気持ち、気づかないほうがいい。



いや、気づかないフリさえすれば・・・・・・上手くいくはずだから。





それをFakeに見せるため
(私自身を欺くために私は私に嘘を付く)

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