お前とアイツは一体どんな関係なんじゃ?



知りたくて、知りたくて。

でも俺には聞く権利がないとばかり思っとった。
しかし・・・知りたい気持ちは増すばかり。


知りたい。

しりたい。


お前と、アイツは一体どんな関係なんじゃ?



”秘密“とされた箱を俺は自ら触れようとしとった。



















事故の後、念のため、俺はを病院に連れてきた。

幸い、軽い擦り傷だけで済んだ。
の右手には綺麗な包帯が巻かれとった。


一応メンバーの全員に連絡を取った。皆ともは仲が良いからのぅ。








先輩、大丈夫っすか?」


「うん、軽い擦り傷だから」


「今度から気をつけるんだぞ。まったく」


「皆にも迷惑かけちゃったね」


「そんなこと思ってねぇよ。大丈夫ならよかったぜぃ」






赤也や真田、丸井などが
を心配してすぐに駆けつけてくれた。
は先ほどの泣き顔なく、ニコニコと笑っとるわ。










「仁王くん」


「何じゃ、柳生」







すると、柳生のヤツが眼鏡を上げながら、俺に話しかけてきた。






「本当にタイミングがよかったですね。一歩間違えば、本当にさんは轢かれていましたから」


「あぁ、ホント。奇跡じゃな」


「仁王くん?」







奇跡?


そんなモンじゃないわい。



偶然が、奇跡に変わったようなもんじゃ。



俺はが途方にくれて歩いているのを心配になって
部活も放り投げ、の後を急いで追ったら丁度あの現場に出くわした。


思いっきり腕を引っ張り、ぎゅっと自分の腕の中に収めた。








こいつだけは死なせちゃいかんと思い・・・・・必死じゃった。








俺の命に代えても、こいつだけは・・・だけは、死なせちゃいかん。






誰かのため?



誰のためじゃ?





のためか?



死んだ龍二のためか?






それとも―――――。










「俺の・・・ため、か?」


「えっ?仁王くんどうかしましたか?」


「何でもなか、気にしなさんな。それよりも・・・・幸村は?」


「あぁ、幸村くんなら今こちらに向かってると思います。先ほど電話があったので」














!」










すると、柳生の声を掻き消すように甲高い声が病院の自動ドアが開いた途端に聞こえてきた。



俺や柳生、そしてメンバー全員がそちらに振り向く。
すると、幸村の前方に・・・・女性がすばやく、の元へと駆け寄り抱きしめる。
しかし、は・・・目を見開いとった。











・・・、よかった・・・無事だったのね」


「・・・・・な、んで・・・・」


「精市に聞いたのよ。貴女が事故にあって怪我をしたって・・・それ聞いたら居てもたっても居られなくて・・・・」


「せ、精市さん・・・なんで・・・・」


「・・・・ごめん、黙って出てくるつもりだったんだけど・・・行くって、聞かないから」








幸村の少し情けない顔。そして、の体は・・・震えていた。
そして、幸村は女性の肩を優しく叩く。








「母さん・・・帰ろう。が困ってるだろ」





そうか、あの女性は・・・幸村の母親か。


しかし、何で幸村の母親がのことを知っとるんじゃ?









「でも、精市。・・・、今日は家にいらっしゃい・・・そんな怪我でも1人じゃ・・・」


「いや・・・あの、私・・・・でもっ」


「母さん!」



「ゆ、幸村・・・・?!」
「部長・・そんなに怒らなくても・・・」
「幸村・・・落ち着け」
「体に障るぞ、幸村」









するとイキナリ、幸村は女性を怒鳴りつけた。

俺も驚いていたが、メンバーも驚いていた。
唯一、真田や、柳のヤツらは違うみたいじゃが。

母親を怒鳴りつけた幸村を、真田と柳は宥める。


真田と柳の声掛けに幸村は、ため息を零し冷静になる。








「いい加減にしてくれ。が困ってるじゃないか・・・皆が帰ってくるんだから・・早く家に戻らなきゃ」


「・・・・精市、でも」


「今度、ちゃんとを連れて行くから。今日は家に戻って」


「・・・・わかったわ。・・・今度は必ず来てね」








幸村の言葉に納得したのか、ヤツの母親は帰っていった。

一瞬冷めていた場所が、どうにか温かさを戻そうとしていた。
俺はに近づく。









「ま、雅治」








すると、怯えた顔で俺に抱きついてきた。
体中が震えとる。俺は優しくの背中を撫でる。

目の前では、幸村がため息をついて、真田が話しかけている。
俺は震えるを宥めとった。









「大丈夫、大丈夫じゃよ。俺が付いてる・・・大丈夫じゃ」

「・・・・ぅ、ん」






ようやく震えがやんだのか、は俺から離れていった。

しかし、俺の腕にはを抱きしめてたぬくもりが残っていた。
もう少し、この腕にのぬくもりを感じていたかったんじゃが
まぁそうもいかんじゃろうなぁ。

フッと俺は鼻で笑った。



すると、幸村が俺に話しかけてくる。








「すまない、仁王・・何か温かいものを買ってきてくれないかい?」


「別に、構わんぜよ」


「ありがとう。皆も、迷惑かけたね・・・学校に戻って練習を再開してくれ」


「しかし、幸村」


「大丈夫だよ、真田。俺がいるから・・・皆、すまない」


「わかった。幸村の言うとおりにしよう、弦一郎」


「う、うむ。では、仁王以外・・・戻って練習を再開するぞ」








すると、真田はメンバーを引き連れて病院を出た。

柳生が去り際「しっかりさんを励ましてくださいね仁王くん。ファイトです」と
皮肉なんか、励ましなんか、よぉ分からん言葉をかけて行った。



俺は小さな小銭を持って、紙コップの自販機へと向かった。


そして、オレンジジュースのボタンを押す。
数秒でそれがコップに注がれ、出来上がった。

俺はそれを零さんように、のところへと持っていく。














「私・・・バカよね・・・・」












すると、が少し悲しげな声で幸村に言う声がした。
俺は物陰に隠れてその様子を窺う。










「あのまま・・・死んでたら、龍二の所に逝けるって思ったの・・・・・っ。私、ホント・・・バカ」



。そんなこと言わないでくれ」



「だってそうじゃない。これ以上、誰にも迷惑かけたくないし・・・自分の気持ちに気づいたの」



「だからって」



「辛いの・・・このまま、龍二の所にいけば・・・よかったのよ・・・っ」



・・・龍二くんは、そんなこと・・・望んでいない。君が生き続ける事が龍二くんの何よりの望みなんだ」

















ドクン!!













待て・・・何故、幸村が龍二の存在を知っておるんじゃ?
確かにが喋ったかもしれない。


幸村は知らないはずじゃ。

龍二がにとってどんな存在か、そしてにとって龍二はどんな存在か。



知らんはずじゃのに・・・何で、知っておるんじゃ?






俺以上に、が心を開いている幸村の存在。


いつもとケンカした時は
アイツは幸村の病院にいた・・・そして、楽しげに喋る二人の姿。



恥ずかしい話じゃが、その2人の姿に嫉妬すらしたんじゃぞ。




にとって幸村は・・・絶対の存在。


幸村との関係は一体・・・・・?











「仁王・・・どうした?そんな所に立って」


「あ、何でもなか。気にしなさんな」









幸村の声に、俺は我に返り、物陰から何事もなかったかのような素振りで出てきた。
そして、幸村の隣に座るにオレンジジュースを差し出す。









「ほい、オレンジジュースでよかったかのぅ?」


「ん。ありがとう・・・もう、帰ろうかなお腹空いちゃったし」


「じゃあ・・仁王、を家まで送ってあげて・・・俺は部活に戻るから」


「おう、まかせときんしゃい。さて帰るかのぅ、


「うん。ごめんね、精市さん」


「いいよ、俺も悪かったし・・・気をつけて帰るんだよ。仁王、頼んだよ」



「分かっとるよ」

「じゃあね精市さん、ありがとう」









は身支度をした。


俺もカバンを持っての横に並んで歩き病院を出た。



















「気づいたのかな・・・仁王のヤツ」

























「ねぇ、何か微妙にぬるくない?」


「ん?そうか。・・・・そこの自販機で代わりのを買ってきてもいいぜよ?」


「いいよ。せっかく買ってきてくれたんだから。最後まで飲む」






いつもの公園を通り抜ける。
もう、あたりは微かに暗い。子供の姿もなく、公園内には俺としか歩いていない。



は氷が溶け、水と混ぜ合わさったオレンジジュースを片手に飲んでいる。
俺はゆっくりとの後ろを歩く。





さっきから、心に引っかかる・・・と幸村の関係。


一体どんな関係なんじゃ?

別に知らなくてもいい・・・けど、少しだけでも

俺にも、心を開いて欲しい・・・・たとえ切ない期限付きの恋人であったとしても。



お前ために現れたなこの、哀れなピエロに教えてくれんかのぅ。
















「なぁ・・・・・・」


「何?」





は優しく声を出し、振り返る。

俺は意を決して・・・口を開く。







ピエロの前に、箱が出てきた。


ピエロは・・・・秘密とされた、箱に触れて――――。














「・・・・・お前と、幸村の関係は・・・一体なんじゃ?」












箱に触れた。




箱は、驚く事もせず・・・ただ、ゆっくりと蓋が開いた。





辺りは静寂だけが包む。
























「私と、精市さん・・・・・義兄妹なの」























生温かい風が通り過ぎ、心が固まった。




箱の中に入っていたのは・・・・似ても似つかない、二つの人形があった。


まるで、血の繋がりを示さない・・・幸村とのようで。





哀れなピエロは、箱から現れた人形に触れることすら出来ず
ただ開いた箱を見て・・・呆然としていた。






ピエロが開けたパンドラの箱
(禁断の箱の中に入ってたのは、二つの顔の似てない人形の兄妹だった)


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