「この花は、分かる?」
「あ、知ってんで。オオキンケイギクやろ?
花言葉は『いつも明るく』、『煌びやか』っていう意味やね」
「へぇそういう意味があるんだね、初めて知ったよ」
ある日の休日。
私のカッコえぇ彼氏さん・・・幸村精市君のお家に遊びに来とった。
精市君は男の子に似合わずガーデニングが趣味。
お家の庭に、色々お花植えて部活がオフで休みの日はこうやって
庭でお花の手入れとかガーデニングの本読んでる。
んで、私も精市君のお庭の花を見るんが好きやったから
2人で花壇に座り込んで、花の事についての話で盛り上がっとった。
「ホント万里は物知りだね。花屋の娘なだけあるのかな?」
「そんなんないって。精市君かて、花めっちゃ詳しいやん正直ビックリや」
「万里程じゃないよ。俺、花言葉までは知らないからさ。
花言葉はとても魅力的じゃないか。”綺麗な花には棘がある“って言葉があるど
それは花じゃなく、その裏に隠された『花言葉』って言うのが俺はその棘の部分だと思ってるんだ」
時々精市君、かっこえぇなぁって思うときある。
いや、いつもかっこえぇねんけどな。
言うてることホンマのように聞こえるし
花のこと、大切にしてるところとか見ると「あぁこの人ホンマは繊細な人なんやなぁ」とか思ってしまう。
精市君ってそんな人、やっぱりかっこえぇ〜。
って、私・・・完璧に惚気てるわ。
「ん?俺の顔に何か付いてる?」
「え!?あぁ、いや何でもないねん!気にせんといて!!」
花と楽しそうに戯れてる精市君の横顔を見ながら
思わず心の中で精市君のこと考えとって、いきなりバチィ!目線合ったから
めっちゃ心臓動いてる!!!!
「なんでもない」って言葉で濁したけど・・・精市君、笑ってる。
アカン、その笑顔眩しいわ。
(いや、笑顔眩しい前提・・・私の心バレてるようや。)
「万里・・・俺のこと、考えてた?」
「え!?・・・ああ・・・ぃや・・・あのぅ・・・・・・・・・ごめんなさい」
「何で謝るの?別に謝る必要ないだろ?それに、俺だって
花言葉を教えてくれる万里の横顔見て、万里のこと考えてたからお互い様」
「え?」
精市君の言葉に、心臓バックバク。
関西人並みのストレートアタック攻撃、しかも笑顔込みで。
精市君の言葉ってホンマ、時々ストレートやわ。
特になんや「私のこと」となると、精市君の言葉は変化球なし、直球ど真ん中来るから
私の心臓にドストライクや。
うぅ、精市君好き指数増して行くやんかぁ〜。
「でも、不思議に思う事が一つ」
「え?・・・な、何?」
すると、精市君が不思議そうな顔をして私を見てきた。
「凄く花言葉に詳しいからさ、やっぱり”花屋の娘“だからかな〜って思うんだけど。
昔からやっぱり花、好きだったの?でも花が好きじゃないと、花言葉まで覚えられないよね」
「ホンマは・・・私、最初・・・花、嫌いやってん」
「え?そうなの?」
私は立ち上がり、青々とした空を見上げる。
「花屋の娘やから、花のこともっと勉強せなアカンとか・・・花屋の娘やから、花の事は知っとかなアカンとか。
お父ちゃんとお母ちゃんにずーっとそう言われとってな、耳にタコ状態。もう花見るのもイヤやった」
「でも、じゃあ・・・何で?」
後ろで精市君が立ち上がった気配を感じて、私は振り返り彼を見た。
「ある、常連さんがなめっちゃ花に詳しい人で・・・私が花嫌いって知って ある1本の花を私にプレゼントしてくれたんよ」
「ある1本の花?何の花?」
「スペアミントっちゅう花。花言葉は『情の温かさ』。
花屋はただ花を売るだけやのぅて、買うてくれるお客さんの想いも
花と一緒に売ってる人の心に、優しい太陽のような温かさを与える仕事だって私にそう言うてくれた」
小さい頃の話や。
花屋の娘に生まれた自分をあの頃ホンマに恨んだ。
花を見るだけでもイヤやった・・・花なんて何処にでも咲いてる、どこにでも生えてる雑草と
同じやって・・・そう自分の中で、決めつけとった。
いや、そうでもせんと・・・やっとられんような気ぃになってた。
せやけど、よぉ店に来とった常連さんが私にスペアミントの花を見せてくれた。
それと一緒に花言葉をその人は教えてくれた。
「花屋はただ、花を売るだけが仕事とちゃう。来る人はいろんな想いを持った人が買いに来る。
花屋はな、そんな色んな想いを持った人たちに優しさを、喜びを与える仕事やって、教えてくれた」
スペアミントは元々、ハーブの一種でよくお茶や料理に使われることが多い花。
渡された時香ってきた香りは、ペパーミントのような爽やかな香りやのぅて
穏やかで甘い香りがしとった。
それを香ったとき、店先で仕事をしとるお父ちゃんとお母ちゃんの顔が映った。
笑ってた。穏やかな顔をして・・・とても、優しい笑顔でお客さんを向かえとった。
買っていくお客さんも皆・・・笑顔やった。
「それからや。私が、花をもっと勉強せなアカン思たのは。あと花の事を勉強するだけやのぅて
花言葉もたくさん、たくさん・・・勉強した。花はただ咲くだけやのぅて、何かしら意味を持って生まれてる。
それが花言葉やって・・・勉強してるときに思たんや。コレが理由やな」
話を終えると、風が吹く。
ふと、我に返る。
ア、アカン!?
ベラベラと昔のこと喋ってしもた!!!!
思わず私は背後に居る精市君を見た。
すると精市君は笑みを浮かべてた。
焦る私の表情とは裏腹に・・・笑ってる・・・しかも優しい笑顔で。
「せ、精市君?」
「素敵な話だね。そういう理由で万里が花を好きになったなんて。もし、その人が
その花を万里にあげなかったら・・・きっと、万里と俺は出逢わなかったかもしれないね」
「え?・・・あぁ、ぅ、ぅん」
精市君は優しく微笑みながら私の頭を優しく撫でてくれた。
あまりにも恥ずかしい自分の過去曝け出したけど、精市君はただ笑みを浮かべて
「素敵な話」って言うてくれたし・・・ホンマ、花が嫌いのまんまやったら
精市君とも出逢わんかったかもしれへん。
「あ、そうだ。万里にさ・・・ちょっと見てもらいたい花があるんだけど」
「え?」
「こっち」
話を終えると、精市君は私の手を握って別の花壇へと連れて行く。
そして私と精市君は花壇の前に立つ。
「この花、なんだけど」
「え?こ、これ?」
連れてこられた花壇に植えられた花は・・・内側は白く、外側は赤い。
2色に分かれた花が緑色の葉っぱに混ざってポツポツと咲いとった。
「これ、ちょっと前に植えて今日咲いたばかりなんだ。でも品種がよく分からなくて。
万里だったら花に詳しいだろ?俺もとりあえず調べたんだけど・・・こういう1つの花に2色に分かれた花って
結構種類多いから区別つけにくくて」
「うーーん」
「どう?分かりそう?」
とりあえず、目利きはしてみる。
「アカン。分からん」
「だよね」
このような品種、確かにぎょうさんある。
1本の花に付く色が1色とは限らへん。
2色も探せば品種によっては結構あったりする。
「うーーん。何や分からんの悔しい」
「気持ちは分かるけど、植えた俺が覚えてないのが一番悪いから。万里は気にしないで」
「で、でも精市君っ」
「大丈夫、種類が分からないからって枯らしたりはしないから。
母さんがおやつ用意してくれてるから食べようか」
「う、うん」
そう言うて精市君は私の手を引いて、室内へと連れて行く。
私は彼の後ろを歩きながら、先ほどの花が植わった花壇を見る。
「万里?どうしたの?」
「え?あぁ・・・いいや、何でもないわ」
精市君に声を掛けられたけど、濁した。
さっきの花が気になりすぎて仕方ない・・・こうなったら
精市君に内緒で調べるしかない。自分自身も何や気になるけど
きっと分かったら精市君喜んでくれると思うやろう?
精市君が喜んでる顔・・・私、見たいねん。
好きな人の喜んでる顔が・・・私は見たいねん。
それが私の、彼だけの”花屋“としての仕事やと思うから。
-------PRRRR・・・ガチャッ。
『はい、日々谷です』
「神奈川に居る日々谷さんとこの娘万里ですぅ」
その日の夜、私は大阪の実家に電話を掛けた。
理由はもちろん!昼間、精市君の家で見た花のことや。
電話に出たのはお母ちゃんやった。
『なんや、万里か。元気にしとるか?』
「ぼちぼち。ちゅうかこの前帰ったばっかりやろ、元気にしとるわ」
『威勢がえぇ事は元気な証拠や。お母ちゃんも安心やで』
お母ちゃんは私の対応にも笑みを含んだ声で対応してきた。
『で、珍しいやんか。自分から電話かけてくるんは。何かあったん?』
「ん〜・・・ちょぉーっとお母ちゃんに聞きたい事あんねんけど」
『聞きたい事?何や?やましい事とちゃうやろなぁ?』
「あほぉ、そんなんちゃうわ。なぁお母ちゃん・・・1本の花に2色、内側白、外側赤の花の名前知ってる?」
『何やそないな事で電話してきたんか万里?』
そないな事言うな!
私にとってはめっちゃ重要なことやねん!!!
「えぇから早よ答えれやクソババァ」
『母親に向かってババァはないやろ万里。教えたらんで?』
「ごめんなさい、麗しくいつまでも美しい私の母上様。よっ、日々谷フラワーショップ永遠の看板娘!」
『それでえぇねん。永遠の看板娘とか照れるやんか〜』
扱いづらい母親やなぁ。
ホンマこの人のお腹の中から生まれてきた私ってなんなん?とか時々思うわ。
「で、分かったん私の今の説明で?」
『いや分からん』
「もう東京土産買うてきたらんぞ」
『あほ!そんなん実物も見んで、ただ口だけの説明で分かるかいな』
お母ちゃんの言葉、確かに正論や。
多分この先は言うたらんでも分かるわ・・・品種多すぎて区別つかへんのや。
『せめて写真か何か送ってきなさい。そうでもせんとお母ちゃんかて分からんわ』
「写真、あったらえぇねんな?」
『それでも分からへんかったら学者にでも聞くんやな。
いくら花屋いうたかて分かる花と分からん花くらいはあるんやから』
「・・・・・・」
お母ちゃんの言葉に私は少し自信を無くした。
確かに、花屋でも・・・分かる花と分からん花くらい・・・ある。
今の私がそういう状態や。
でも、精市君に・・・私、喜んで欲しい。
精市君に、笑って欲しい。
精市君に――――。
『ありがとう、万里。大好きだよ』
もっと、愛してほしい。
私は花のように美しくもないし、綺麗やない。
花言葉みたいに、裏の意味とかそういう顔もない(いや、あったら怖いけどな)。
ただ、ただ純粋にもっともっと好いてほしいんや。
精市君が育ててる花みたいに。
「精市君!」
「万里、どうしたの?」
アレからめっちゃ調べたけど・・・品種が多すぎて敵わん。
こうなれば、精市君にあの花の写真を貰うしかない。
「この前の、あの、花の写真とかない?」
「え?この前?・・・・・・あぁ、あの2色に分かれた花のこと?」
「せ、せや!それの写真とか・・・ない?」
「あぁ、あるよ。咲いた日に綺麗だったから携帯のカメラで写真を撮ったんだ・・・ちょっと待ってね」
そう言うて精市君は携帯を開き、少しして「これだよね」と言いながら
携帯の画面を私に見せる。
画面に映ったのは、紛れもなくあの日精市君の庭で見た2色に分かれた花。
「これ、メールで送ってくれへん?」
「え?いいけど?・・・どうするの?」
「え!?・・・あぁ、いや、な。ほらぁ綺麗やったし、私写真撮るん忘れてて」
ナイス!
我ながらえぇ感じに受け流したで!!
「なるほどね。いいよ、後でメールに添付して送っとくから」
「おおきに!ほな、また後でな」
「うん、また後でね」
そう言うて精市君と別れた。
コレで精市君から貰った添付メールをお母ちゃんの携帯に送れば
何とか分かる。もしお母ちゃんが分からんくても、そん時は植物園にでも行って聞いてくるしかないけどな。
まぁもうちょっと時間かかりそうやけど―――。
「待っててな・・・精市君」
私、絶対・・・精市君喜ばせたるからな。
「ちょっと、からかいすぎた・・・・・・かな?」
その日の夜
精市君から貰った添付メールをお母ちゃんに送ると
お母ちゃんは「また夜電話しなさい」とだけ返信して来た。
え?あれ見ただけで分かったん!?とか思いながら
夜を待ち、ようやく私は色々と済ませた後再び実家に電話した。
『はい、日々谷で』
「お母ちゃん分かったん!?あの花の正体分かったん!?!?」
『電話元でおっきい声出しなや万里。鼓膜破れそうやわ』
「あ、ごめんなさい」
思わず私はお母ちゃんが出た瞬間に大声を出してしもた。
ちょっぴり反省。
『次帰って来る時、えぇ東京土産買うてきぃや』
「分かった!分かりましたから、早く教えてぇな〜」
『こんなん花で悩むとか珍しいな万里。花の名前は教えたるけど、お得意の花言葉は自分で調べなさい』
「分かってるから、早よう教えてや!!」
「急かしなや」と電話元のお母ちゃんは言う。
いや、急かしなやとか無理な話や。早く知って、早く精市君に教えたらな。
『いっぺんしか言わへんからよぉ聞きや』
「おん、分かってる」
『あの花の名前は―――――』
「え?あの花の名前分かったの?」
「うん、分かったで精市君」
次の日がちょうど休みプラスの精市君部活オフデー。
私はお母ちゃんからの電話を切った後、すぐさま精市君に「明日家に行ってもえぇ?」とメールをすると
精市君は「もちろんさ」と返して、逸(はや)る気持ちを何とか押さえ込んで
彼の家へとやってきた。
でも、今日はお話程度やから庭やのぅて精市君のお部屋や。
「教えて万里。あの花の名前、何て言うの?」
「うん。あのな、あの花の名前ゴデチアって花で。和名が色待宵草(いろまつよいぐさ)って言うねん。
他にもな英名では『サテン・フラワー』とか『フェアウェル・トゥ・スプリング』っちゅう名前もあるらしいねん」
「へぇ・・・それ全部調べたの?」
「え?・・・ま、まぁな」
全部調べた・・・のはちょっと嘘やけどな。
ホンマはお母ちゃんに直接聞いたとか恥ずかしゅうて言えへん。
「じゃあ花言葉は?」
「え?」
「あるんだろ、花言葉。俺、万里が教えてくれる花言葉大好きなんだ。ゴデチアにも花言葉あるんだろ?」
「う、うん・・・ある、よ」
「じゃあ教えて」
精市君は笑顔で私に「花言葉を教えて」と聞いてきた。
確かに花言葉、調べた。
せやけど・・・1個だけ、ちょっと教えられへん花言葉がある。
で、でもそれを回避すればえぇだけの話やし・・・大丈夫やろ。
「ゴデチアの花言葉は、『静かな喜び』や」
「・・・・・・それ、だけ?」
「え?」
「いや、だっていつも万里は花言葉言うと2つか3つは出てくるから。1つはおかしいかなぁって」
何でこの人こういうのに鋭いん!?
い、言わな・・・アカンのん。
で、でも・・・・・は、恥ずかしい・・・。
むしろ私が口にするような言葉とちゃうような気ぃすんねんけど。
私が頬を赤らめ、目を左右に泳がせていると
ふと、精市君の手が私の頬に触れ・・・目線を合わせられた。
「せ、精市君っ」
「花言葉は、『変わらぬ熱愛』」
「え?」
いま、なんて?
「ゴデチア・・・色待宵草の花言葉は、『静かな喜び』そして『変わらぬ熱愛』だろ?」
「え?えぇえ!?」
精市君が微笑みながら、花の名前と花言葉を私に告げる。
そう、ゴデチア(色待宵草)の花言葉は、『静かな喜び』『変わらぬ熱愛』だ。
ちゅうか、何で!?何でなん!?
精市君、何で・・・知ってん!?私、一言もそんな事言うた覚えないし、素振りすらしてへんのに、何で?!?
私の脳内、パンクして何がなんだか分からん状態や。
「ゴメンね、万里。ちょっとからかったんだ・・・初めからあの花がゴデチアって知ってたんだ」
「え?から・・・からかったん、私のこと!?」
「本当にゴメンね。どうしても、君にこの花の花言葉を知っててほしくて。もしかしたら
知ってるんじゃないかってヒヤヒヤしてたんだけど、君にも分からない花があったからちょっと驚いたんだ」
「せ、精市く・・・酷いわぁ」
思わず目から涙がポロポロ零れた。
え?私の努力って何なん?
精市君喜ばせるどころか・・・何や、骨折り損のくたびれもうけっちゅうの?
精市君、あきれ返ってるやんか。
「あっ、万里っ・・・万里、ゴメンね。本当に、ゴメンね。騙したみたいで本当に悪かったよ」
「せ、精市君の・・・精市君の、アホッ・・・もう、もぅ、何やねんっ」
「ゴメンね、万里。ごめんよ」
泣く私を精市君は優しく抱きしめ宥める。
「でも、万里・・・これだけは聞いてくれ」
すると、泣き続ける私の耳元で精市君が言葉を零し始めた。
「騙したみたいで本当に悪かったよ、ゴメン。でも、俺・・・君への気持ちとか、全部変わらないからって。
俺・・・君の事ずっとずっと、変わらず愛してるよって・・・伝えたかったんだ」
精市君は抱きしめていた体を離し、私を見る。
私の目には未だに涙の雫がある。
「この花が咲いたとき、胸が熱くなったんだ」
「なん、で?」
「君への気持ちがまるで、この花に現れたように見えたんだ。
花言葉を調べたら『静かな喜び』『変わらぬ熱愛』。
内側の白い部分は君と一緒に居られる俺の『静かな喜び』。
外側の赤い部分はどんなことがあっても覆されない君への『変わらぬ熱愛』。
俺の、万里への気持ちがこの1本の花、全部現れた。そしてこれはまるで君を見ているようで・・・」
「・・・あっ」
精市君は私の手を握り、その手を自分の胸へと当てる。
心臓の鼓動が早いし・・・それに、服越しだけど・・・何や、精市君の体が熱く感じる。
「俺の心臓早く動いてる?」
「ぅ、ぅん」
「あの花が咲たときも、こんな感じだった。あの花はまるで君を見ているようだったよ万里」
「精市君」
「騙した事は本当に謝るよゴメン。でも、君への喜びとこの愛だけはホンモノだから・・・信じてくれ」
そんな風に言われたら・・・・・・・。
「信じるに、決まってるやんか」
「万里」
「私かて・・・精市君のこと・・・好きやもん。喜んでほしいから、調べたんやもん」
「そうだよね。ありがとう、万里」
そう言うて再び精市君は抱きしめてくれた。
変わらへんよ、絶対に変わったりせぇへんよ・・・貴方への私の愛情は。
しばらく抱きしめあい、少し距離を置く。
ふと、精市君は微笑み――――。
「万里」
「何?」
「愛してるよ・・・ずっとね」
その言葉と一緒に、彼の唇が私の唇に触れた。
庭に咲いたゴデチアの花。
いや、その花だけやない・・・彼の植えた花は優しくて、美しい色鮮やかな花を咲かせ。
そして・・・花に隠された花言葉は、彼が私に捧げる愛の言葉。
花言葉は、
(1つの花に込められたたくさんの愛の言葉)
--------------------(『立海!恋の海原祭』に提出。幸村精市/『花言葉は、』)