〜・・・お腹すいたぁ〜」




とある日の本丸昼下がり。

は体をふらふらとさせながら双子の妹のが居るであろう
食堂へと腹を空かせたままやってきた。







お姉ちゃん。お昼、はお姉ちゃん抜いたんだっけ」


「書類来てて、ご飯食う時間逃した」





洗われたお皿を拭きながらを出迎えた

の前に座りあまりの空腹にそのまま机にと突っ伏した。







「ゴ、ゴメンね気が付かなくて。持って行ってあげれば良かったよね」


「いいけどさぁ。何でもいいから適当に食べたい」


「適当にって言っても・・・・・・あ、そうだ!じゃあすぐ作るね」


「よろしくおねがいしま〜す」







の為に嬉々としてが作り出す料理。
しかし、この「料理」がこの後とんでもない勘違いを巻き起こすとは
双子の姉妹は気づきもしなかった。
















「あー・・・小腹がすいたな」


「さっきご飯食べたばかりだろ薬研くん」


「ガキは食べ盛りだからなぁ」


「うるせぇよ、鶴の爺さん」


「てめっ、誰がジジイだ誰が!」


「おじじだろう、鶴」


「黙れ、名前小ぶりのクセに図体のでかい狐が」


「何だとおじじ」


「はいはい。廊下で喧嘩しないの2人共」




同時刻。本丸内の廊下。

本日休息を貰っている薬研藤四郎、燭台切光忠、鶴丸国永、小狐丸は
食堂へと足を進めていた。

数時間前、昼餉を摂ったにも関わらず
小腹が空いたのか食堂へと4人揃って向かっていた。









『は〜い、お姉ちゃん。お待ちどうさま』

『わーい!!のご飯!!いっただきまーす!!』




「むっ!主様の声・・・っ!!」


「え!?この距離から聞こえてんの!?」






食堂から数十mと離れた場所から小狐丸がの声を察知。
頭の上に付いた耳を嬉しそうに動かし始める。
彼の動物的本能というものか、光忠は驚きのあまりツッコミ。






「そういえば大将、昼飯来てなかったな」


「お国の仕事に没頭してたんだろ」


「有り得るね主の事だし。僕が気付いて持って行ってあげれば良かったかな」







が昼食に食堂に来てないことを思い出す薬研の言葉に
鶴丸はの行動に気付き、また燭台切は気遣いの声をあげた。





「主様が居られるのなら行かねば」



「あっ、狐!!」

「動き早っ!?」

「狐の兄さん、あんなに速い動き出来たっけ?」





途端。食堂にの姿があると分かった小狐丸は
恐ろしい速さでそちらにと向かう。

あまりの速さに鶴丸はおろか、燭台切と薬研は驚く声をあげつつ
すぐさま小狐丸の後を追う。


食堂に近付くにつれ、段々と2人の声が聞こえてくる。






『久々だけど、たぬきうどん美味しいな』




「は?」

「なっ?!」

「た」

「たぬきうどん・・・だと?」






の声に食堂に入る4人の足が止まる。

そして食堂の入り口で4人は声を潜め
中の2人の声に耳を傾ける。






、美味しいよ。たぬきうどん』


『丁度おうどんの麺残ってたし。簡単だからお姉ちゃんもすぐ食べれるでしょ』


『流石は私の妹〜。つか、たぬきうどんとか久々に食べる』






「たぬきうどんって。たぬきの兄さん?」


「え?たぬきうどん?同田貫くん?」


「いや、部屋にいる気配しねぇだろ」


「狐よりたぬきとは。主様、解せませぬぞ」







中に居るに悟られないように
4人は小声で会話を始める。その内容は「たぬきうどん」という
彼等にとっては名前が未知のものであり、更には太刀である同田貫正国の姿が浮かんだ。

真偽を確かめるべく、更に4人は耳を傾ける。








『それにしても、出汁(だし)がいいね。すっごく美味しい』


『さっき取れた一番出汁だよ。自分でも結構自信あるから良かった』









「(だ、出汁!?たぬきの出汁!?)」


「(え?同田貫くんの出汁って・・・え、なんか怖いんだけど)」


「(そういえばさっき、俺っちたぬきの兄さんが風呂に行くところ見たんだけど。それと関係してる?)」


「(やめろ薬研!!変な想像しちまうだろ!!そういう話出すな!!)」





陰でコソコソと小声のやりとりをする、鶴丸、燭台切、薬研の3人。

ふと、先程から喋らない小狐丸を目にし鶴丸は声をかける。








「(おい、狐。お前も何とか言)」



「我慢ならん」



『(は?)』





瞬間、小狐丸は立ち上がり――――――。











「主様いけません!!そんなたぬきの出汁よりも、この小狐の出汁にしてください!!」




「小狐丸さん!?」


「は?こ、小狐丸!?何言ってんの!?」







大声を出し、食堂の中へと入りに縋りつく。
あまりに突然の登場での両名は驚きを隠せない。





「何やってんだバカ狐!!」

「ていうか、出汁の問題なのか狐の兄さん」

「何処らへんツッコミ入れたほうがいいのか分からなくなってきたな僕」




「あ。鶴丸さん、薬研くん、光忠さん」


「何してんだお前達」





小狐丸を追って顔を覗かせたが最後。
鶴丸達の姿を2人が目にする。





「や、やぁ主」

「しょ、食事中悪いな大将」

「驚かせようと思ってだな」



「何、こんなとこに居るんだアンタら」





未だ食堂の入り口の陰から動こうとしない3人に声を掛けた人物。
その声に3人はゆっくりと、首を動かす。其処に立っていたのは―――――。








「こんな所に居ちゃ邪魔だろ。中に入るならさっさと」



『出たぁああ出汁の素ぉおお!?!』



「あぁ!?誰が出汁の素だ、誰が!!」






4人が話題にと出していた同田貫正国が
風呂あがりの火照った体で首に手ぬぐいを掛け立っていた。












「アハハハハッ・・・何勘違いしてんだ、お前ら」


「まぁ確かに、皆さんが勘違いしてもおかしくないですよね」





4人の話には笑い、も苦笑を浮かべていた。
そして2人の側に勘違いの発端にされた同田貫も腕を組んで立っていた。


そして見事にそれが「勘違い」と気づいた4人は正座をし縮こまっていた。






「たぬきうどんっていうのは、天かすを入れたおうどんの事で。
語源には諸説あるんでどれが本当かは分からないんです」


「私が母さんに聞いたら、タネ抜きの転訛(てんか)って聞いたな。
天ぷらのタネを入れないからタネヌキが、訛りに訛ってたぬきって」


「え?私がお母さんに聞いたらキヌタって人のお家で始めたキヌタソバが訛ってたぬきって聞いたよ」




「いや、まぁ語源云々はともかくね・・・主に同田貫くんゴメンよ」


「面目ねぇ大将にたぬきの兄さん!!間違えとはいえ、すまない!!」


「驚く側に俺が付くとは・・・しかし、こういう驚きも悪くないな」


「でも、安心しました。主様がたぬきを食して居られてなくて。
主様のような高貴な方があんな武骨者食べれば腹を下します」





素直に謝る燭台切や薬研を他所に、鶴丸と小狐丸は全く反省をしていない模様。
2人の通常運転具合にはため息を零し、側に立つ同田貫を見る。







「約2名反省してないのが居るな、正国」

「やっていいならやるぞ」

「風呂あがりだがすまない。やれ」


「おい。ジジイにデカ狐、ちょっと暇してんなら付き合え」


「あぁ?今ジジイって言わなかったかたぬき」

「小狐だぞたぬき。デカくはない」





そう言って同田貫は鶴丸と小狐丸を引き連れて、何処かへと行った。


うるさいのが引き上げたと安堵のため息を零した
丼を持ち上げ、うどんを啜る。






「でさぁ、主」


「ん?」


「お咎めは、ねぇの?」





うどんを啜るの側で燭台切と薬研がおそるおそる尋ねる。
するとは食べ終わったのか「ごちそうさま」と言いながら箸を置き、2人を見た。







「派手に騒いでないから別にいいよ」


「でもさぁ」


「とりあえず」




2人を見て至極楽しそうな笑顔を浮かべるに、燭台切と薬研は顔を真っ青にさせた。
つまり「嫌な予感がする」という事だ。





「明日から3日間、お前ら4人は遠征ね。とりあえず、遠方に飛ばす人員考えてたところだったから
考える手間が省けたわ」


「えっ!?遠征・・・しかも遠方っ!?」


「キッツイのかましてきたな大将」


「勘違いして派手に騒ぎ倒す一歩手前だったからな。1週間内番よりマシだと思え。
じゃあね、ごちそうさま。夕飯にもし私が来なかったらご飯部屋まで持ってきて」


「う、うん。分かった」





そう言っては羽織りを翻しながら食堂を後にする。
は苦笑を浮かべつつ、2つの湯のみにお茶を注ぎながら―――。






「まぁ気を落とさないでください、お二人共」


「ありがとう、ちゃん」

「とりあえず俺らが悪いって事で納得したわ」






少し落ち込み気味の2人に出したのだった。




たぬきうどん
(勘違いから起こるプチ騒動) inserted by FC2 system

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