久々に風邪を引いた。

まぁ学校に部活動と、高校入ってすぐの生活リズムに
体が付いていかなかったのだろうと言われ、俺は病院に着ていた。


自分的には症状は軽いほう。
熱も微熱だし・・・と思っていたが家族が用心のために行けと、病院に俺はいた。






「(案外、人居るんだな)」





診察がすぐに済むだろうと思っていたが
色々の始まりから来るものなのか、待合室には結構な人が居た。

あんまり待っている時間が勿体無いと思った俺は席を立ち、受付に行く。






「あの、俺後どんくらいですか?」


「はい?えーっと」


「高尾です」


「高尾さん・・・・・・あと20分ほどお待ちいただくことになります」





20分もかよ。


病院内広いし・・・どっかでジュース買って時間潰すか。




俺は受付に「じゃあ15分前には戻ってきます」と言って、その場を離れ
病院内をうろつくことにした。




売店でジュース買って、適当にフラフラ。
携帯の時計を見ても、経った時間はほんの3分。
あと10分以上の時間、何処で潰せばいいんだよ・・・とジュースを飲みながら考えていた。




暇つぶし、目を動かしていると、余計なモンが見えてくる。



人混みにまぎれた、誰かとのやり取り。

視覚で何でも、色んな情報が俺の目に入ってくる。







「(たまに不便だよな、この目)」






嫌でも色んな情報が目に飛び込んでくるから、時々不便とは感じる。
試合やってるときは大いに助かっているけれど・・・・見たく無いモノまで見て、いや見えてしまうから面倒だ。






「戻るか」





これ以上目を動かすと余計な体力を使いそうで嫌だと悟った俺は
早々に待合室に戻ることにした。


持っていた空になった缶ジュースをゴミ箱に投げ捨てたら、見事に入った。

真ちゃん風に言えば「俺のシュートは落ちん」だな、と
クツクツしながら笑っていたら・・・・・・。






「ダメですよ、ゴミを投げちゃ」




「あ?」





注意された・・・しかも、通りすがりの、俺と同い年くらいの女の子に。






「いくら中身が空でも、人に当たってしまえば怪我をします。だからちゃんとゴミ箱に直接入れてください」



「あ・・・・・すんません」



「貴方・・・入院患者さんじゃないみたいですね」



「え?あぁ、そうですけど」





いや、そらぁ誰が見たって入院患者じゃねぇだろ。

何処見て言ってんだコイツ?






「やっぱり。服の匂いで分かります。お洋服箪笥から出した服の匂いがするし、洗剤の匂いが
病院のものじゃないですからね」



「え?」





目の前の子は俺に笑って見せた。

確かに俺の今着ている服は箪笥から出したもんだし、洗ったばっかりで乾いた物だ。

目は開いているのに・・・何言ってんだ?


もしかして・・・―――――。







「アンタ・・・目・・・見えないのか?」




「はい。目が見えない代わりに、残りの感覚で補っているんです。
耳が聞こえる分、不便でないだけで助かってます」







彼女はそう言って笑った。


じゃあ、さっきの空き缶をゴミ箱に入れたのが俺だった分かったのも・・・洋服の匂いとかで分かったってことか?







「アンタ・・・すげぇな」



「そうですか?私よりも、此処からの距離でゴミ箱に空き缶を投げて入れた貴方のほうがよっぽど凄いですよ。
バスケか何かされてるんですか?」



「あぁ。高校でバスケやってる。入りたての1年坊主だけどな」



「高校一年ってことは・・・私と同い年ですね。声が大人っぽいから思わず敬語になっちゃってました」






やっぱり、コイツも同い年だったか。


何か・・・もっと話してぇな。
多分・・・いや、絶対・・・飽きないと思う。



待ち時間、もう少しあるだろうし・・・時間潰しにはいい話し相手かもしれない。






「あの、さ」



「はい」






ちゃん!こんな所に居た!もう、目が見えないんだからウロウロしちゃダメでしょ!」






話を続けようとしたが、看護婦に邪魔された。





「すいません」


「欲しいものがあるならナースコール鳴らしてって言ってるじゃない。耳が聞こえないわけじゃないんだから」


「だって。病室つまらないから、お散歩」


「そういう時もナースコール鳴らす。車椅子持ってきてあげるから」


「車椅子は嫌です」


「またそういう事言って。とにかく戻りましょう」


「はーい」





そう言って看護婦は自分の腕に、彼女の腕を乗せた。
すると彼女は俺の存在を忘れていなかったのか・・・・・・・。









「風邪・・・早く治るといいですね」



「え?」








その一言と会釈をして看護婦と一緒に去って行った。




俺は彼女の前で一言も「風邪」という単語は言っていない。
なのになんでそれが分かったのか、疑問でならなかったがそれはすぐに分かった。



待合室に戻ると、丁度名前を呼ばれ、診察室に入る。


医者に喉元を見せたところ、少し腫れていた。
分からないようだけど喉の腫れで声が少し掠れていたらしい。









『風邪・・・早く治るといいですね』








目で見えない分、音で、耳で、鼻で・・・あの子は全てを見ているようにしている。




俺とは違う。



違うからこそ、何故だろうか・・・少しだけ、興味が沸いて
もう少し話してみたくなった。




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