「、お前さぁ・・・赤い糸って見える?」
高尾君の言葉に私自身驚き、点字の本へと向いていた顔を
声の方にと向ける。
「赤い糸?」
「そ。運命の赤い糸」
「高尾君が珍しいね、そういうの信じるんだ」
高尾君にしては珍しい質問だった。
結構リアリストな感じがするから、そういうロマンチックな事を
言ってくることに驚いた。
「信じるっていうか、まぁ誰しもそういうのってあるんじゃねぇの?」
言葉では「信じてるとか微妙」という感じだけれど
口調からして「もしかしたら存在してるんじゃないのか」と思っているような感じだった。
私は目が見えない分、他の感覚で人の「何か」を察知する。
特に高尾君とはよく喋ったりしているから、彼のそういうのが分かるようになっていた。
しかし、赤い糸が見えるか?と問いかけられたけれど・・・―――――。
「そうだねぇ。私、目が見えないからよく分からないな」
「だよな」
私には目が見えない・・・真っ暗な世界しか、私にはない。
だから自分の小指に結ばれた「赤い糸」の存在すら分からない。
「高尾君には見えてるの?赤い糸?」
「まぁ、な。でも、何処に繋がってるとかそういうのは分かんねぇ」
「そうなんだ。高尾君の赤い糸、きっと誰かに繋がってるんだよ」
「誰かって、誰だよ?」
「誰かだよ。それは私でも分からないよ」
私は笑いながら答えた。
私には、見えない・・・でも、暗闇の中。
自分の小指に結ばれた赤い糸が見えている。
それでも、暗闇の先で・・・赤い糸が何処に繋がっているのか、分からない。
ふと、赤い糸が絡まった手にぬくもりを感じた。
「?・・・・高尾君?手、握ってるの?」
「あぁ。・・・・いつか、の赤い糸見えるといいな」
見える日が来るだろうか。
このままずっと見えない日が続くかもしれない。
私の目には赤い糸は見えないけれど・・・・・・。
「高尾君の赤い糸の繋がってる先も見えるといいね」
私が笑いながら答えると、彼は笑いながら
「そうだな」とだけ答えた・・・その声は、何だかとても嬉しそうに
私の耳に聞こえた。
もし、もしもの話。
私の赤い糸の繋がっている先が・・・高尾君だったらいいな、と思った。
暗闇の世界、私だけの世界には小指にはしっかりと
赤い糸が何処かへと伸びているのが見える。
だけど、彼と同じように繋がっている先が未だ見えない。
私の目が見えないだけかもしれないけれど・・・。
『・・・・・・それがお前だったら、いいな・・・』
高尾君に、そう言って欲しかったのは・・・ちょっと自惚れ過ぎだろうか?
このいとが繋がるさきがあなたであればいい
(赤い糸の先に貴方がいれば・・・)