【ポケモンリーグ本部より速報!
新たなるチャンピオンが3人、誕生。


大地の王リーフキング・ヒビキ。

水上の姫君アクアプリンセス・コトネ。

炎の女王フレイムクィーン・


以後、これら3名が新たなるチャンピオンである。
勇気ある者は、いざポケモンリーグへ!】










「大きく取り上げすぎじゃない、コレ?」

「いいの、いいの!コレくらい派手にしたほうがいいんだよ」

「コトネ、あんまり自信過剰になりすぎるなよ?負けたらどうするんだよ」

「先鋒のヒビキくんが負けなきゃいい話でしょ?それに私たちの中でちゃんが一番強いから」

「や、やめてよ。そんなに強くないから」




前チャンピオンのワタルさんを下し
私たちは、無事ポケモンリーグ公認のチャンピオンとなった。

ワタルさんみたいに【ドラゴンマスター】という通り名が
私たち3人にも付けられて、私本人はというと結構恥ずかしかったりする。


しかも、全部通り名を付けてくれたのはワタルさん。



「これが俺的にはこれがにぴったりだよ」とワタルさんは
笑いながらそんなことを言った。


ジョウトのジムリーダーの人たちにも会いに行くと
アカネちゃんやミカンちゃんは「いいなぁ〜」と言って
イブキさんは「よかったじゃない。お似合いよ」と言う。



でも、エンジュシティ・ジムリーダーのマツバさんは――。






「女王?・・・王女の間違いじゃないの?女王って言うのはね
イブキさんみたいな人に付ける様な通り名だよ。僕のに女王なんて付けるなんてまったくワタルは何を考えてるんだか」







と、何処の部分を怒ってるのか分からない。
そして私はその部分にどうツッコミを入れていいのか分からない。


訂正するにも、もう此処まで広まってしまっては
訂正の仕様がないので私は渋々受け入れる。








「やぁ、みんなお揃いだね」


『ウツギ博士!』



三人で他愛もない話をしていると
其処にウツギ博士が現れた。

そう今現在私たちはワカバタウンに戻ってきているのです。

私はカントーのジムリーダー挑戦も終わり
休息がてら、故郷に戻ってきていた。
私が戻ってくると、其処にはコトネちゃんやヒビキ君も居た。






「丁度みんな揃ってることだし、話したいことがあるんだ。研究所にきてくれないかな?」




ウツギ博士はニコニコしながら
私たちにそう言って、白衣を翻しながら研究所に戻っていった。

私たちはというと「なんだろ?」と顔を見合わせながら
とにかく言われたとおり研究所に向かうのだった。











「実はコレなんだけどね」





研究所に向かうと、博士は
机の上に一枚のチケットを出した。




「何ですかコレ?」

「シンオウ地方行きの船のチケットだよ」



『シンオウ地方?』




博士の言葉で私たちは声をハモらせ、尋ねた。




「シンオウ地方って?」

「此処から北に上っていった土地のこと。ジョウトやカントーにはいない珍しいポケモンがたくさん生息しているんだ」

「へぇ〜すご〜い」

「それで、そこでポケモンの研究をしているナナカマド博士に僕の研究資料を見てもらおうと思ってるんだけど」

「だけど・・・なんですか?」






私が博士に問いかけると、博士は頭を掻きながら――――。





「本来なら、僕が直接持っていった方がいいんだけど・・・僕、此処を離れるわけには行かないからね」

「た、確かに」

「それで、君たち3人の中で1人・・・シンオウ地方に行ってきてほしいんだ。もちろん、僕の資料をナナカマド博士に渡して
シンオウ地方を観光がてら、あっちのポケモンを図鑑に収めるのもいいし」

「うーん、いい話だけど・・・・・・」
「わ、私は・・・ちょっと」


「どうしたの?ヒビキ君、コトネちゃん?」






博士の言葉にヒビキ君とコトネちゃんは
悩むようなうなる声を上げていた。

私も頭にハテナマークを浮かべながら二人の表情を伺っていた。








「いやっ・・・実は、僕・・・まだカントーのジムリーダー・・・4つほど倒してなくて」

「えっ!?」

「わ、私も・・・色々回ったりしてたら・・・忘れてて。ホラ」








コトネちゃんはバックのバッチケースにしまっていた
ジムバッチを見せてくれた。

確かにカントーのジムバッチはまだ2〜3つしか埋まっていない。





は?」






二人の爆弾発言に、博士はおそるおそる私に尋ねてきた。








「私は・・・ちゃんと8個。ジョウトのバッチ合わせて16個ありますよ」







そう言いながら、バッチケースを開けてみんなに見せた。
ジョウトのジムバッチとカントーのジムバッチ、合計16個。
きちんとバッチケースに収まっていた。





「い、いつの間にっ」
「出た時期私たちと同じなのに」

「ウロウロはしてたけど、ちゃんと1日中にはジムリーダーを倒そうって決めてたから。
早く倒したほうがその分たくさん余裕が出来るからと思って」

「うーん、じゃあが今一番余裕あるんだね」

「え?・・・えぇ、まぁ」





ウツギ博士の言葉に私は頷いた。

すると博士は机の上に置いてあるチケットを取り――――。







「?」

が行くのが一番だね」

「え?」

「大丈夫。答えは急がなくていいよ、とにかくチケットは預かってて」























”じっくり考えてごらん“























「・・・・・・」




〜・・・どなんしたん?」

さん、気分でも優れませんか?」


「ふぇ?・・・あぁ、いや・・・」





ウツギ博士の研究所を出て数時間後。
私はジムリーダーをしているイブキさん、アカネちゃん、ミカンちゃんの
4人でお茶をしていた。






「何や、浮かない顔してるで。何かあったん?・・・もしかしてマツバとケンカしたか?」

「ち、違うよ!そうじゃなくて」

「だったら、何をボーっとしてるんだ。マツバとケンカをしてないのなら呆然とする必要ないだろ」

「そ、そうなんですけど」

「私たちに話せないことですか?」

「・・・・・そういう、わけじゃ」






ダメだ。
私一人が沈んじゃってるから、みんなにまで
その気持ちが伝染して行ってる。

私は溜め込んでいる気持ちを目の前にいる3人に吐き出してみるのだった。








「へぇ〜・・・シンオウか。えぇやん!行きぃーよ」

「うん。シンオウには珍しいポケモンがたくさんいると聞いている」

「私もよくシンオウ地方に足を運んだりしてますが、素敵な所ですよ」

「うん、そうなんだけど・・・」

「なにぃ?・・・何か不安なことでもあるん?」





私が博士からのことを話すと
三人は「行ってみたら?」という答えが返ってきた。

そりゃあ私だって行ってみたいし、珍しいポケモンに出会ってみたい。


だけど・・・・・――――。






「分かった!」

「え?」




「マツバと別れるんが恋しいんやろ!」



「えっ!?」





アカネちゃんの発言に私は思わず素っ頓狂な声を上げた。






「あー・・・それなら納得いくな」

「ホント、さん・・・マツバさんのことお好きなんですね」



「ちょっ、ちょっと待ってよ!!そういうのじゃないから!!」




別にマツバさんと別れるのが恋しいとかそういうのじゃない!

そりゃあ、カントー行ってる間も
時々はマツバさんのこと考えたりしてるけど
リニア乗ったり、ポケモンの”そらをとぶ“で帰ってこれるし・・・・。






「えぇねん、えぇねん。好きな人を恋しがるのはえぇことや!」

「それでシンオウに行くことを躊躇っているのか?」

「マツバさんは関係ありませんから」

「じゃあ、どうしてですか?マツバさんは関係ないというのでしたら何故?」





ミカンちゃんの言葉に私は
フッとため息を零した。






「不安・・・なの」



「不安?」
「何でなん?」




「だって、知らないところに行くんだよ?ジョウトでもカントーでもない・・・凄く遠い所に。
そんなところで、私みたいなのが通用するのかって思ったり・・・もし、怖い思いとかしたりしたらって考えたら・・・」








不安だった。

確かに、ジョウト・カントーでは
私は【フレイムクィーン】っていう通り名があるけれど
そんなの他の場所に行ってしまえば、そんなもの使い物にならないかもしれない。

むしろ歯が立たず、すぐにやられてしまうかもしれない。


知らないところに行く恐怖と、どうすればいいのかという恐怖に
私は押し潰されそうになっていた。








「【フレイムクィーン】の名前が聞いて呆れるな」

「イブキさん」





するとイブキさんが腕を組みながら私にまっすぐと視線を向けてきた。





「お前は何故この名前を手に入れたか分かるか?」


「え?」


「それはお前がワカバタウンという小さな町から飛び出して、たくさんの土地を回り
たくさんの人と出会い、戦いを繰り返していったからだろう?」


「・・・はぃ」


「ワカバタウンから飛び出したとき、どんな気持ちだった?」




イブキさんはゆっくりと私に尋ねてくる。
私は目を閉じて、ワカバタウンをヒビキ君やコトネちゃんと共に出たときの事を思い出した。






「凄く・・・ドキドキしました。不安でいっぱいでした・・・でも、ポケモンと一緒に
いろんなところを巡れると思ったら・・・楽しみが増してきました」



「その気持ち、忘れたらあかんで」


「え?」





目を開けると、アカネちゃんが笑みを浮かべながら私に言った。




「ウチ、と初めてバトルしたときめっちゃワクワクした。
うちらジムリーダーはトレーナーみたいに旅が出来るわけでもない。ただ、ジムという
広いようで狭い箱の中で挑んでくるトレーナーを待ってる・・・毎日そればっかりやった」


「アカネちゃん」


「せやけどな!がウチのジム来た時・・・ウチ、ビビッ!て来た。
”あ〜この子、えらい大物になる“って直感でそう思った。狭っ苦しい箱の中で
自分が良いと思うトレーナーを待ち続けるのはツライことなんや。
それはウチがジムリーダーとして生まれてしまった運命やから」


「運、命」


「旅に出れること、他の所に行けること・・・それはトレーナーさんにしか出来へんことなんよ。それをは幸せと思わなん。
怖がったらアカン!怖がってしまったら、ポケモンも一緒で逃げてしまうで」




アカネちゃんは私の肩に
手を置いて嬉しそうに話をしてくれた。





「大丈夫ですよ、さん」

「ミカンちゃん」



すると、今度はミカンちゃんが私の手に自分の手を重ねてきた。





「怖がらなくても大丈夫です。だってさんはポケモンを、人を思いやる心があります。
その気持ちはきっと何処に行っても変わらないと思うんです」



「思いやる、心」



「それに、初めは誰でも怖いものです。見知らぬ土地に行くというのは。
でも、私たちは一人じゃありません・・・ポケモンという大切なパートナーがいます。
彼らが私たちの側に居てくれる限り、一人じゃないんですよ」





ミカンちゃんはゆっくりと私に語りかけるように喋る。





「それに、ポケモンだけじゃない。私たちだって繋がっている」

「イブキさん」




イブキさんが先ほどの真剣な表情から
柔らかい表情を浮かべて私を見ていた。




「どんなに離れていても、お前は私たちの友達だ。困ったことがあったらいつでも言え。
離れていても、その繋がりは決して消えたわけじゃないんだ。ちゃんと繋がっている・・・たとえ遥か遠く離れていても」



「遠く、離れていても」



「お前は私たちの上に立っている人間だ。お前の一声があれば、私たちだって立ち上がる。
それはチャンピオンとしてでもあるが、一番は”友達“としてお前のために立ち上がる。お前は一人じゃないんだ。
ポケモンという仲間が居る、私たちという友達がいる・・・そうだろ?」



「・・・・・・はぃ」



「怖がるな、恐れるな。お前なら、きっと・・・シンオウに行っても立派に歩き進める。私は信じたいんだ・・・







そう言ってイブキさんは私の頭を撫でてくれた。
そうか・・・そうなんだ。

私は、不安だったんだ。



新しい土地に足を踏み入れることが。


その土地でうまくやっていけるかが。


皆と離ればなれになってしまうのが。



怖かった。









「ありがとう・・・アカネちゃん、ミカンちゃん、イブキさん」


「焦らんでもえぇねん。ゆっくり考え」
「そうですよ。答えを出すのはさん本人です」
「それに、私たちが賛成でも・・・お前を想う男がどういう反応をするかが気がかりだけどな」


「アハハハ・・・マツバさん、ですよね」



私は苦笑いをしながら言う。

マツバさんがどんなことを言うか分からないけど、一生懸命・・・―――。





「行きたい気持ちをぶつけてきます」





「お!」

「じゃあ、さん」

「そうか」




















「私、シンオウ地方に行きたい。行って、たくさんのポケモンや人に逢ってみたいです」







また新しい一歩を踏み出したい。




そう、ワカバタウンを飛び出した時
怖かったけど・・・いつの間にか楽しい気持ちがいっぱいなったあの時のように。





初めの一歩の前
(新たな一歩を踏み出す前の準備を)

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