スズの小道で、僕は一人佇み
聳え立つスズの塔を見上げていた。

すると突然携帯が鳴り響いた。





「はい?」

『マツバはん。今から、はん呼んで・・・ホウオウに相応しいかどうか見極めますゆえ・・・踊り場には近づかんといてください』

「え?」




舞妓のコウメからの電話に僕は驚いた。




「ちょっと待って、コウメ。が何故っ?!」

はんは、もしかしたらホウオウを呼び出すことが出来るやも知れません。うち等はそれを見極めるために
あの人の後を付け、時には先回りをして見張っておりました。
はんがもし、うちら五人・・・倒すことが出来たら、あの人に』

「無茶だ!・・・はまだトレーナーをっ」

『マツバはん!』





すると、電話元でコウメが僕に怒鳴った。
あまりに突然かつ、舞妓が声を荒げることはないので驚いてた。





『あんさんがこの町を代々守ってきた家系の末裔だというのは周知の事実。
もちろん、あんさんがはんに好いてるのも、知っております』


「コウメ」


はんを危険な目に晒したくないのは、彼女を好いてる男としてそれは当然かもしれまへん。
せやけど、うちらは確信してます』
























『あの子なら、きっとホウオウを呼び出せると』













コウメの言葉に、僕は何も言えなかった。


確かに、初めてと会ったときから何かを感じていた。
それと同時に僕は彼女に惹かれてしまった。

何かを感じていた予感よりも、僕はに対する好意のほうが勝っていた。


僕だって、ホウオウの出現を求め
日々修行をして、いつかは舞妓たちに認めてもらえる・・・そう、思っていたのだが。






「神様は残酷だね」


『マツバはん?』


「僕よりもを選んだんだよ。ホント、酷いね」


『マツバはん』


「よろしく頼むよ。きっとの事だ・・・手加減はしないと思う」


『はい。では、失礼します』






そう言ってコウメとの通話を切断した。


ふと、風が吹いてきた。
何とも言えない、温かく心地よい風が吹いた。






「風が変わった。・・・・・・・・・は此処に来るんだ」







僕はそう呟き、スズの塔を見上げていた。



















しばらくして、舞妓たちやってきた。

そして、コウメの横にが彼女達から受け取った
とうめいなスズを手に持って歩いてくる。







「マツバさん」








僕の姿を見るなり、彼女は少し苦しそうな表情を浮かべている。

「先に行ってます」とコウメが彼女に会釈をし
僕にも同じように会釈をしてスズの塔へと入っていった。


スズの小道には僕との二人だけが残った。






「・・・・・・すいません、あの・・・私」


「知ってるよ。ホウオウに君が選ばれたんだ・・・良かったじゃないか」


「でも・・・私よりも、ずっと昔からマツバさんはっ」


「うん、僕はずっと昔から・・・・・ホウオウが現れるのを待っていた。彼と一戦交えるのは僕だって、そう思ってた。
だけど・・・・・・正直なところ、悔しいよ」


「っ!!」




君を責めているわけじゃない。

だけど、何十年とこの町を家族全体で守ってきた
僕の一族としては・・・・・本当に悔しい気持ちでいっぱいだ。

一族の最後が僕だけで・・・・・ようやく、ホウオウが現れる年として
エンジュの町を、ジムを、スズの塔を
すべて任されたというのに・・・・・・――――。






「ホウオウは僕じゃない、君を選んだ。・・・・・・それがどうしても、悔しい」


「・・・・・・・・・ごめん、なさい」


「君が謝ることないんだよ、。だって、ホウオウは僕に力がないから・・・現れなかったんだ。
だから、いいんだよ


「マツバさん」




僕はそっと、彼女を抱きしめた。


抱きしめたの体は微かに震えていた。






「・・・怖いかい?ホウオウに会うのが」


「・・・はぃ」


「大丈夫だ。神様だからって怖がらなくていいんだよ」


「マツバ、さん」


「さぁ、行っておいで。神様をあまり待たせちゃいけない」


「はい」





そう言って、は僕の腕をすり抜け
スズの塔へと入っていった。

僕はスズの塔の天辺を見つめ、それに続く空を見ていた。



雲行きが変わった。

それに、風がまったく吹かなくなった。



ホウオウが来る。




50年前も、そう・・・・・・こんな風に現れたのだろう。


























数分後、塔の天辺が虹色に輝き
勇ましいまでの鳥の鳴き声が聞こえてきた。

激しい轟音と共に、急に静かになった。


何が起こったんだ?


は無事なのだろうか?


そう思った瞬間、舞妓たち連れてが目の前にやってきた。
どうやらあなぬけのヒモを常備していたのか
彼女達を連れて塔の天辺から降りてきた。





「やりましたなぁ、はん」

「は、はぃ」

「さすがははん。うちらが見込んだお人どす」

「ぃ、いえ・・・そんな」






舞妓たちは口々に彼女を褒め称える言葉を投げかけていた。
ふと、彼女の手に持たれていたハイパーボール。






「あ、マツバさん」




すると、が僕の姿を見つけ急いで駆け寄ってきた。






「これ・・・・・マツバさんにあげます」



「えっ!?」
はん?!」
「急に」
「何言うてますの!?」
「お気は確かどすか?」


「え?・・・これって」





彼女の手のひらに持たれたボールを僕は握った。


この中に・・・ホウオウが?





「マツバさんにあげます。そんな神様みたいなポケモン、私が持っててもダメだと思って。
それだったら、この町を守ってるマツバさんが持ってた方が何かとお役に立てそうですし」





「だから、あげます。ずっとマツバさんが追い求めてたポケモンだから」




はにっこりと笑みを浮かべて言った。
僕はホウオウの入ったハイパーボールを見て、すぐさまに返した。





「マツバさん」


「これは君が持つべきものだ」


「え?・・・で、でもっ」


「言ったろ?僕は選ばれなかったんだ・・・ホウオウは君を選んだ。選ばれもしなかった僕に、ホウオウが懐くわけないだろ?」


「だけど・・・っ」


「いいから。これは君が持つべきものだよ・・・・・それよりも」


「えっ・・・あっ」




僕は手を前に出していた、の手を引っ張り
自分の腕の中へと収めた。

その場にいた舞妓たちは小さな可愛らしい驚きの声を上げていた。






「マ、マツバさん・・・あ、あのっ」


「君が無事に戻ってきてくれたからよかったよ」


「マツバ、さん」


「大好きな君なんだ・・・怪我一つ負ってほしくないからね」


「・・・・・・はぃ」






惜しいけど・・・君が無事なのであれば、それでいい。



ホント、惚れた弱みだよね。




























「マツバさーん」






それからしばらくしたある日。
スズの小道に僕が佇んでいると、がやってきた。




「どうしたの?カントーの方に行ってたんじゃ」


「いえ、ちょっと戻ってきました。ジムの人に聞いたら、此処に居るって」


「あぁ、そう。で・・・何か用かな?」




すると、はニコニコしながらバックからあるものを取り出した。




「ジャーン!新しいデジカメ買ったので写真を撮ろうと思って」

「え?・・・そのために戻ってきたの?わざわざカントーから」

「はい。どーーーしてもこの子とマツバさんと三人で写真が撮りたくて」

「この子?」



は突然、腰に下げていたバックルから
縮小したボールを元のサイズに戻し、ポケモンを外へと出した。


現れたのは――――。






「ホウオウ」






虹色に輝く大きな翼。
壮麗なるその美しい姿。

書物でしか見たことのない、姿が
実物が・・・僕の目の前に現れていた。




「はい、この子と三人で写真撮りましょう」
「ギャース!」







そのために、君はわざわざカントーから此処まで戻ってきてくれたのか。




「いいよ。撮ろう・・・三人で」

「やったー!やったね、ホウオウ」
「ギャース!!」


ホウオウはすっかり彼女に懐いたのか、喜ぶとホウオウも喜んでいるように見えた。



ホウオウを真ん中に、両脇に僕と

タイマーにしていたデジカメがシャッターを切り、写真が撮れた。




が嬉しそうにデジカメを取りに行くのを僕は見ていると――――。















<ありがとう。長年、私を待ち続けてくれた者よ>














ふと、誰かに話しかけられたと思い辺りを見回すも誰もいない。

ということは、と思い僕は隣に居るホウオウを見た。
すると、かの鳥の目には優しさが溢れていた。



その優しさは、まるで・・・・・・・・・。







「マツバさん、見てください!良いの撮れましたよ」





が嬉しそうにデジカメを持って僕の元へとやってきた。





優しさは、本当に君と同じだ。


そして、ホウオウは初めから・・・君を待っていたんだと、僕はそう思った。
自分と同じ、何かを持った・・・主を待ち続けたんだ。




それが、君だったんだね―――






「ねぇ、

「はい?」

「また僕と勝負しよう。今度はそうだね・・・・・条件付で」

「え?条件付?」

「そう。・・・僕がに勝てたら――――」































「僕と結婚して」


「は?」

「!!」



「そうしたら、もホウオウも手に入るから一石二鳥と思うんだけど」



「マ、マツバさんっ・・・さすがにそれはっ」



瞬間、の言葉を遮るように
ホウオウが自らの羽で、を自分の元へと引き寄せた。





「ホ、ホウオウ?どうしたの?」


「・・・・・・」




睨まれてる。


ていうか、ホウオウはオスか?
伝説系のポケモンは性別が判別できないと書物に書いてあったはず。


いくら神様だからって、僕が「すいませんでした」と引き下がらないよ。




「とにかく、僕が勝ったら結婚してよ


「さ、さすがに・・・この歳で結婚は早いかなぁ〜」

「ギャース!!」

「ほ、ほらぁ。神様もそう言ってるようですから」




「ホウオウ。君、神様だからって僕との愛を邪魔しないでくれる?神様なんだから優しく二人の愛を見守るのが神様の役目だろ?」

「ギャーース!!!」




「ふ、二人とも落ち着いてよ。ていうか、マツバさん・・・キャラが変わってます」




「いいの!のためならキャラ変更くらいするさ」

「え?!それはちょっと」





僕はため息を零し、腕を組んだ。





「まぁ、神様の君が許さなくても・・・・・僕はと結婚するよ、必ずね」


「・・・・ギャーーース!!!!!」


「ふ、二人ともぉお〜」






憧れから、今度はライバルに変更かな。





憧れの羽恋敵の牙に変えて
(君は多分史上最強の恋敵かもしれない)

inserted by FC2 system

テレワークならECナビ Yahoo 楽天 LINEがデータ消費ゼロで月額500円〜!
無料ホームページ 無料のクレジットカード 海外格安航空券 海外旅行保険が無料! 海外ホテル