初めて、君とポケモンバトルをしたときから
何かを感じていた。






「マツバ〜・・・マツバー・・・マッツバくぅ〜ん」

「!・・・何だミナキか」

「親友に向かって、何だとは何だ。それよりも聞いてくれ!またスイクンが現れた!!」



僕の友人、ミナキは(自称)スイクンハンター。
そんな彼から聞かされるのは伝説のポケモン・スイクンの話ばかり。

正直ウザイ。
だからいつもミナキのスイクン話は右から左に受け流し状態だった。




「今度は何処に現れたんだい、君の恋人は?」

「此処を下っていった、ボングリの木がある草原で!」

「へぇ〜」

「またあの子。ホラ、君に挑戦してきた・・・。あの子が其処に居たんだよ!」

「なんだって!?」



僕は思わず振り返り、ミナキを見た。



「彼女居るところにスイクン有りだ。この前もタンバシティの北側でスイクンを見つけたとき
側にはあの子が居たんだよ。ちょっと憎らしかったからバトル仕掛けた」

「お前、何してんだ!相手は女の子だぞ」




僕はミナキの胸倉を掴んで怒鳴った。
その態度にミナキは慌てて言葉を返す。




「何ムキになってんだよ!君同様、僕だってコテンパンに打ちのめされた。それでも僕は負けないよ!
あの子よりも早くスイクンをゲットしてみせる!!」


「おい、ミナキ!」


「マツバ。必ずスイクンを捕らえたら真っ先に君に見せてあげるよ!!」



僕の言葉も最後まで聞かぬまま
ミナキはその場から立ち去っていった。


彼女居るところに、スイクン有りか。



確かに、彼女には初めて会ったときから
何か強烈なものを感じていた。

僕でも分からない何かを。





「馬鹿馬鹿しい」




そう自分の気持ちを掻き消すように、僕は資料と睨めっこを始めるのだった。





それから事あるごとに
ミナキはスイクンを見つけては、取り逃がし
僕のところに愚痴を吐きに来ていた。

その度に彼の口から零れる、彼女の存在。



ミナキが去っていった後でも
僕の中での存在がどんどん膨らんでいった。

気づいたら、四六時中
彼女のことを考えていた。




ふとある日
舞妓たちが、彼女の噂をしていた。






「コウメ」

「おや、マツバはん。どないしはったんえ?」

「さっき、あの子のこと・・・話してなかった?」

「あの子?あぁ、はんのことですかぁ?えぇ、話してましたよ・・・とってもいい子どす」

「そ、そう」

「もしかして、マツバはん・・・・・はんのこと、気になりますの?」

「え?」




舞妓のコウメの言葉に僕はドキッとした。


というか、何だこの感情。




「いやぁ〜、あの子えぇ子どす。マツバはんやったらお似合いですわ」

「ちょっ・・・や、やめてくれ」

「マツバはん、それが”恋“どすえ。今度この町に立ち寄ったら話しかけてみたら?」

「僕は、別に」




必死で胸の鼓動を抑えるも、目の前のコウメは
分かったような口ぶりで僕の言葉を切り返していく。





「お顔に書いてあります。あの子とお喋りしたいって・・・フフフ」

「コウメ!」

「では、失礼します」






コウメはクスクス笑いながら、演芸場へと向かっていった。

僕は髪の毛を掻いて気持ちを落ち着かせるも
どうも落ち着かない。

心臓が・・・気持ちが、高鳴る。

無意識に、脳裏に・・・彼女が現れる。






「僕は・・・・・僕は・・・・・・」





強烈に飛び込んでくる、瞳。

僕は敗者だ・・・それだと言うのに、優しかった。



ねぇ、君は僕をどうしたいんだ?



髪の毛を掻き乱しても、答えは出ない。

考えても、考えても、君のことばかり。




頭から、離れてくれないよ。





















「・・・・・・・・・」




スズの小道で僕は一人佇んでいた。
特に理由はない。

ただ、何となく・・・・・・一人で此処に居たい気分だった。








「うわぁ、エンジュシティにこんな場所があったんだ」




すると、背後から誰かが声を上げる。
聞き慣れた声に僕は思わず振り返った。





だった。









「あ、・・・・えーっと、ジムリーダーの・・・マツバさん」



「よく、覚えてたね・・・トレーナーのちゃん」





「記憶力だけはいいほうなので」と彼女は笑みを浮かべ僕に言う。
すると、彼女はすぐさま僕の隣に来た。





「よく来られるんですか?」

「うん。此処でホウオウっていう鳥を待ってるんだ」

「ホウオウ?・・・へぇ〜・・・・・・・・何ですかそれ?」




感心しておいて、いきなり落とした。

もしかして計算?と思って彼女を見たが
彼女はいたって真面目、本当に分からない表情を浮かべていた。




「ホウオウって言うのは、伝説の鳥ポケモン。50年前、焼けた塔で亡くなった3匹を蘇らせたポケモンさ」


「それって・・・ミナキさんが追ってる、ポケモンを蘇らせたポケモンなんですか?」


「そう。君、ミナキにあんまり関わらないほうが良いよ。無駄に体力奪われるだけだから」


「そうですか?とても面白い方だと思いますけど」




何処をどう見てアイツが面白いのか分からない。
ただのスイクン馬鹿としか僕には見えない。






「アイツに関わるとろくな事ないよ。長くアイツの友人しててホント良い事ないね」

「それも良い事ですよ、楽しい思い出です」

「そう?・・・毎回スイクンの話ばっかりで耳にタコ状態さ」

「ウフフ・・・マツバさんとミナキさんってホント仲が良いんですね」




そう言って彼女は笑う。

上から見る彼女はとても可愛い。
一つ一つの仕草に目を、心を奪われる。







「君さ」


「はい?」




















「好きな人とかいる?」



「え?」












途端、僕は我に返り口を手で塞いだ。


え?何・・・僕、何言ってるの!?






「あ、あの・・・マツバさん?」

「ゴ、ゴメン!今の忘れて!!・・・じゃ、じゃあ」







僕は気持ちを隠すように、その場を離れようとした。
だが、突然服の袖を掴まれた。

後ろを振り返ると・・・・・・顔を真っ赤にした彼女が見えた。








、ちゃん?」



「好きな人、います」



「え?」



「あ、あの・・・・・・その・・・・・・」





目線は僕に向けられてないけど
すごく目が泳いでる。

え?・・・も、もしかして・・・・・・・・・。







「ぼ、僕?」






自分で自分を指差すと、彼女はコクンと一つ頷いた。





「え?僕なの?」

「ご、ご迷惑だって分かってます。・・・・・・ジムリーダーさんにその、好きに・・・・・・なる、とか・・・・・・。
あの、でもそういうの・・・迷惑とか思ったら突き放してくださって構わないです。わ、私の片思い・・・・・ですから」






片思いとか、口にすることじゃないぞ。
一方的に思うから片思いで・・・・・・って何、僕は突っ込みいれてんだ?


でも、僕ももしかしたら――――。







「君に、片思い・・・・・・してたのかも」




「え?」





そう言いながら僕は
ゆっくり彼女を引き寄せた。




「初めて君に逢った時から、強烈に何か感じてた。それから、ずーっと君のことばっかり考えてた。
弟子たちに指導するときも、頭の何処かで君のこと考えてた・・・・・・ついに、僕の中から君が消えなくなった」



「マツバ、さん」



「コレが恋だって自分の中で否定してたんだ。
僕のような、負けたジムのリーダーが・・・・・・君のような優秀なトレーナーを好きになっちゃいけないって」



「そん、な・・・わ、私・・・優秀なんかじゃ」



「君は優秀さ、そしてポケモンとの絆もとても強い。でもちょっぴり抜けてるところがあったり
優しかったり・・・泣いたり、笑ったり・・・・・・僕は、そんな君が好きだよ」





僕がそう言うとの顔は林檎以上、もう茹でダコ状態。
そんな顔を見られたくないのか、顔を伏せた。

僕はそっと彼女の頬を包んで顔を見た。






ちゃんは・・・・・・いや、は・・・・・・僕のこと、どう思ってるの?」


「ゎ、私・・・・・私は・・・・・・あのっ・・・・・・・・」


「僕の事好き?」





そう言うと、は首を縦に振った。
これって、両想いだよね。





「うん、僕もの事好きだよ」


「マツバ、さん」






そして、僕は彼女の唇に自分の唇を重ねた。






僕と君が出会うのは、きっと決まってたんだ。


君が旅に出て

僕がジムのリーダーをして


きっと、神様が決めたことなんだよね。



でも、恋は・・・・・僕も、君も・・・神様でさえも分からないことだったんだろうね。






出逢いは必然。恋は偶然?
(出逢うことは決まってたけど、恋することはきっと偶然だね)

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