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■ しょーとすとーりぃ

桃太郎


 昔々、あるところにおじいさんとおばあさんが住んでいました。
「おじいさん。そろそろ行きますか」
「そうじゃのぉ」
 おじいさんは山へ芝刈りに、おばあさんは川へ洗濯に出掛けました。
 こうしておばあさんがジャブジャブと洗濯をしていると、川上がら瑞々しい桃が、どんぶらこぉ、どんぶらこぉと流れてきました。
「おやまぁ。こんな季節に桃だなんて」
 季節は春。普通であれば、桃はようやく花を咲かせている季節です。
 不思議に思いながらも、おばあさんは流れ着いた桃を家に持ち帰りました。
「おじいさん。今日は川上から桃が流れてきましたよ」
「ほぉ、おいしそうな桃じゃのう」
「いやですよ、おじいさん。夕ご飯のあとにしてくださいね」
「あははは、すまんすまん」
 おじいさんとおばあさんは夕食のあと、桃を半分ずつ食べました。
 桃はとろけそうなほど甘く、瑞々しく、ほっぺたが落ちそうなくらいでした。
「ほんにおいしい桃じゃのう、ばあさんや」
「ほんにおいしい桃ですねぇ、おじいさんや」
 おじいさんとおばあさんはニコニコと笑いました。夫婦になって、すでに50年――子宝には恵まれませんでしたが、おじいさんとおばあさんは、こうして笑いあえる時間が何よりも幸せに感じていました。
 しかし。
「んっ?」
 おじいさんは、身体がポカポカしてきたことに気づきました。
「どうしました、おじいさん」
 おばあさんは胸元を押さえながら尋ねました。おばあさんも、不思議と身体が火照りだしたことを自覚したのです。
「いやね、風邪をひいたのかも……」
 おじいさんは最後まで言い切ることなく、キョトンとした顔でおばあさんを見ました。
 見慣れているはずのおばあさんの顔のしわが、不思議と薄らいでいるように思えたのです。
「まぁ」
 おばあさんも目をパチパチさせながらおじいさんを見ていました。
 おじいさんの顔の皺も、みるみるうちに薄らいでいたのです。そればかりか、真っ白になっていた髪と眉、長い髭も少しずつ黒ずんできているではありませんか。
 曲がっていたお互いの背中も自然と真っ直ぐになっていきました。
 老いて痩せ細った身体に肉がついていきます。
 あまりにも驚いたふたりは、目を見開き、口もポカーンと開けたまま、お互いの変化をマジマジと見つめ続けました。その間にもふたりの身体はどんどん若返り、ついには20代の盛りの時まで若返り、さらにさらに若返っていきました。
 変化は10分足らずで終わりました。
 向かい合って座るふたりは、十二支の1巡り分――すなわち12歳の頃にまで若返っていました。変化をその目で見ていたふたりでしたが、目の前にいる少年と少女が、長年の連れ添いであると理解するには、さらに数分の時間が必要でした。
「……ばあさん……かい?」
 少年になったおじいさんが恐る恐る尋ねました。
「おじいさん……なんですか?」
 少女になったおばあさんも恐る恐る尋ね返しました。
 そこで、はたと二人はあることを思い出しました。しばらく前、この家に立ち寄った旅の薬売りが話していたことです。曰く、川の上流にある山には仙人様が住んでおり、そこの桃を食えば不老長寿になるという噂がある……
「あの桃は仙人様?」
「そうですよ、おじいさん。あぁ、なんということを……もったいない、もったいない」
 おばあさんは東北の方角に向かって両手をあわせました。
 おじいさんも同じように両手をあわせました。
「なんまんだ、なんまんだ……仙人様、知らぬこととはいえ、勝手に桃を拝借してしまって申し訳ありません……」
 その夜、夢枕に立った仙人様はこう言いました。
「いや、1個だけだから別にいいよ。気にしないで。じゃ」
 翌朝、おじいさんとおばあさんは、もう一度、仙人様の山に向かって両手をあわせるのでした。




 おじいさんが“そのこと”に気づいたのは、仙人様へのお礼を終えたあとでした。
「ほぉ、これはこれは」
「まぁ」
 おばあさんも“それ”に気づき、ほんのり頬を染めながら口元を手で隠しました。
 二人とも寝起きなので浴衣姿です。ただ、確かめるようにあぐらをかいて座ったおじいさんの股間が少しだけ盛り上がっていました。
「どれどれ」
 裾を左右にわけると、ふんどしに収まる逸物が大きくなっていました。
「いやですよ、おじいさん」
 おばあさんは恥ずかしがっていますが、目はなかなか、おじいさんの股間から離れません。ふんどしに覆われていないおじいさんの太股は、老人だった頃のそれと違って、少年特有のピチピチとしたものだったのです。
 そんな生娘らしいおばあさんの仕草に、おじいさんはムラムラとくるものを感じました。
「なぁ、ばあさんや」
 おじいさんはおばあさんの手首を握りました。
 おばあさんは身をよじりながら、ようやく顔を背けました。
「いやですよ、おじいさん。お天道様が昇ったばかりじゃありませんか」
「今日も曇りじゃよ。お天道様もお見逃しくださるそうじゃ」
「だめですよ、おじいさん。田んぼと畑を見に行かないといけないじゃありませんか」
「田んぼも畑も待ってくれるさ。それよりおまえの畑を――」
 おじいさんは、しまった、と思いました。
 おばあさんが顔を伏せているのです。
 ふたりは子宝に恵まれませんでした。原因はおじいさんにあります。若い頃のおじいさんは浮気者でしたが、他の女性との間にも、ひとりとして子供が作れなかったのです。そのせいで余計に、若い頃のおじいさんは浮き名を流しました。おばあさんは、それが不憫でなりませんでした。今もそうです。おじいさんは、つい昔の癖で艶めいた言葉を滑らせてしまいましたが、自分の迂闊さを深く反省しました。
「ばあさんや、聞いてくれ」
 おじいさんは、おばあさんの両肩をつかむと自分のほうを向かせました。
「ばあさんが気にすることはなーんにも無いんじゃ。わしも、種なしのことなど、とうに気にしておらん。不憫なのは、こんなわしと連れ添うてくれたばあさんのほうじゃ。だから、そんなに悲しい顔をしないでおくれ。そうだ。せっかく若返ったんじゃ。今から、他にいい男を――」
「おじいさん」
 おばあさんは唇をわずかに尖らせながら、ムッとした表情でおじいさんを睨みました。
「それ以上言ったら、怒りますよ?」
「いや、しかし……」
「わたしはおじいさん以外の男に興味ありません」
 おばあさんはそう告げると、少しだけ顔を伏せました。
「でも……おじいさんが、わたしのことをいらないっていうなら、それでもかまいませんよ。また昔のように都に上っても……」
「馬鹿いうな、お時ちゃん」
 おじいさんはキリッと引き締まった顔をさらに引き締めながら、力強く言い放ちました。
「俺の嫁さんはお時ちゃんだけだ。天神様に誓っただろ?」
「タロさん……」
「お時ちゃん……」
 在りし日の少年と少女に戻ったふたりは、しばらく見つめ合うと、自然とまぶたを閉ざしていきました。少しずつ顔と顔が近づいていき、唇と唇を重ね合いました……




 唇を重ね合うのは久しぶりでした。夜のほうはおじいさんが60を数えるまで毎夜3回はやるという絶倫ぶりでしたが、それ以後はさすがのおじいさんも勃つものが勃たず、おばあさんも腰を痛めたので控えるようになり……いつしか清らかな夜が当たり前になっていたのです。
 しかし今の二人は仙人の桃で若返っています。
 そのうえ昔は、12歳といえば元服(成人)する年頃でした。七五三、足して十五に、家を継ぐ、三十路すぎたら、南無阿弥陀仏。これが当時の常識だったのです。ですから、ふたりが子作りをするのは、なにもおかしなことではありません。むしろ自然なことです。なにしろ、それが当時の常識なのですから。
「あっ……」
 おじいさんがグッと腕を引き寄せると、おばあさんは身体を預けてきました。
 おじいさんは、おばあさんの後頭部を撫でながら、空いた左手でお尻を撫でました。浴衣越しでしたが、ムチッとした十代の若々しい柔肉の感覚がなんともいえず、おじいさんを興奮させました。
「相変わらずここを撫でられるのが好きじゃのぉ」
「そんな……恥ずかしい…………」
 おばあさんは顔を真っ赤にしながら、おじいさんの胸元に顔を押しつけました。その仕草が懐かしくもあり、可愛らしくもあり、おじいさんの逸物は今にも爆発しそうになりました。
「若返ったせいかの。おまえに入りたくて仕方がないわい」
「もう……ですか……?」
「ほれ、見てみぃ」
 おじいさんは片膝を立てつつ、バッと浴衣の裾をめくるとふんどしの横からいきりたった魔羅を覗かせました。
「まぁ」
 これは少しだけおばあさんも驚きました。
 おじいさんの股間には見慣れた黒藪がなかったのです。しかし、それ以外は何十年も前に見た若いころのおじいさんの逸物そのものでした。大きさはほどほどですが、亀頭の傘が、きのこのように大きく張り出しています。こうした男性器を、昔の人は雁高魔羅(かりだかまら)と呼んでいました。魔羅十選の第2位にランクインする当時の女性に人気のあった形です。
 今、おじいさんのその先端からは、透明な先汁がわずかに漏れ出ていました。
「ほんに若返ったんですねぇ……」
「触ってみるか? 固いぞ?」
「いえ、そんな……」
「可愛いのぉ。ささ、どうじゃ」
 おじいさんはおばあさんの手を自らの魔羅に誘いました。
 おばあさんは、恐る恐る、いきりたつ逸物に触れてみました。おじいさんの棹は鉄のように固く、燃えさかる炭のように熱く、別の生き物のように脈動していました。
(これがわたしの中に……)
 在りし日の秘め事を思い出したおばあさんは、無意識のうちに、キュッと女陰の奥を縮めました。その瞬間の血流の流れだけで、めまいがするほどの気持ちよさがありました。12の頃といえば、まだ痛みだけが先走っていたように記憶しています。しかし、女としての盛りを遊び人で絶倫のおじいさんに責められ続けたおばあさんは、触れてもいないのに女陰から蜜を垂らし始めていました。
「ぅお……これ、遊ぶでない、遊ぶでない…………」
 おじいさんの言葉で、おばあさんはハッと我に返りました。
 逸物を握る手が、自然と裏側の雁と竿の付け根をさすっていたことに、今さらながらおばあさんは気づきました。そこはおじいさんの数少ない弱点のひとつです。なかなか勃たなくなってからも、ここを舐めると固くなったものでした。
「気持ちいいですか?」
「ああ、もう果ててしまいそうじゃよ」
 顔をしかめて快感に耐えているおじいさんは、少年の姿に戻っていることもあって、おばあさんには可愛らしく思えて仕方がありませんでした。
 ですが、我慢しきれないのはおじいさんだけではありません。
「だめですよ。ひとりで果ててしまっては」
 おばあさんは魔羅から手をどけると、帯を緩め、そっと下に手を差し込んで腰巻きの紐もほどきました。
「ちゃんと……可愛がってくださいまし……」
「お、お時ちゃん!」
 おじいさんはおばあさんに覆い被さりました。浴衣の裾は、おばあさんが脚を開きながら、自分で左右にどけました。おじいさんは顔をおばあさんの首筋に埋めながら、右手で握った魔羅を女陰に押しつけました。おじいさんの逸物も熱を帯びていましたが、おばあさんの観音様はそれ以上に熱く火照っていました。
 おじいさんがそうであるように、おばあさんの股の茂みもありませんでした。
 それでも、充血した女陰はわずかに口を開き、とろりと白濁した蜜を垂らしていました。
 場所を間違えることなど、ありえません。おばあさんを女にしたのはおじいさんですし、おじいさんを男にしたのはおばあさんです。ですから、呼吸の合わせ方も慣れたものですし、おばあさんは当然のように全身の力を抜いていましたし、おじいさんは、そんなおばあさんの呼吸を無意識のうちに読んでいました。
 おばあさんが息を吸いました。
 おじいさんは腰を沈めました。
 それでも身体は若返っています。盛りの時にはすんなりと入っていたおじいさんの魔羅も、この時ばかりは、亀頭の中程までしか入りませんでした。
「痛むかの?」
「少し……」
 おじいさんはハッとなりました。
「もしや未通女(おぼこ)に?」
「あれの痛みとは……ちょっと、苦しいだけですよ……」
 おばあさんは息を吐き、今度は細く、長く、息を吸い込んだ。それにあわせ、おじいさんはゆっくりと腰を押し出した。今度は亀頭がヌルッと入り込んだ。ヌルヌルとしていながら、坩堝(つるぼ)のように熱く、痛いほど強く締め上げてきた。
「大丈夫かの?」
 おじいさんは再び尋ねました。
 おばあさんは答えず、両手と両脚をおじいさんの身体に巻き付け、グッと抱き寄せました。途端、おじいさんの逸物は強ばった肉をかきわけながら、ズルッと中に押し込まれました。これはさすがにおばあさんも痛かったらしく、歯をくいしばり、痛みに耐えていました。
「馬鹿が……痛かろうに…………」
「そうでも……ないです……よ?」
 汗だくのおばあさんは、ニコッと微笑み返してきました。
 それのいじらしさに参らない男などいるはずがありません。おじいさんはおばあさんの頭を撫でながら唇を重ね合わせ、舌を滑り込ませました。
 ふたりは舌と舌をからませあい、唾液を混ぜ合わせました。
 次第におばあさんの膣(なか)が柔らかくなってきました。トロトロとした熱い蜜も先端に感じられるようになりました。少しだけ強ばっていたおばあさんの身体も、すでに力が抜け、両脚は床に落ち、両腕も添え置いているだけになりました……
 おじいさんは腰を押しつけるように動かしました。
 雁が膣のひだをひっかかれるだけで、おばあさんはピリピリしたものを感じました。
 さらに動かれると、おじいさんのもの完全にがおばあさんの膣に入りました。広げられたおばあさんの女陰は、陰肉が巻き込まれ、陰芽の上の皮も引き延ばされていました。そこにグリグリと腰を押しつけてくるのですから、おばさんはたまらずのけぞってしまいました。
 陰芽はおばあさんの弱点です。他にうなじを舐められること、乳首をつねられること、お尻をなでられることにも弱く、それ以上に、おじいさんの雁高魔羅で膣の奥から入り口、入り口から奥までを激しくこすられることにも滅法弱かったりします。
 つまり、おじいさんに開発されまくっているのです。
 だからこそ、おじいさんが耳元で、
「……ここからが本番じゃぞ?」
 と囁いた時には、背筋にぞくぞくっとしたものが走りました。
 それはおじいさんも同様です。
 もう、我慢も限界でした。
 なにより、少女の姿をしたおばあさんが、盛りの頃のおばあさんと同じ反応を示しているのです。その落差に燃え上がらないようでは、男と言えないでしょう。
 おじいさんはおばあさんの両手を重ねました。指と指を絡ませつつ、おばあさんの手を顔の上あたりに押しつけました。まるで押さえつけているような感じですが、こうするだけで、おばあさんの膣はキュッとなるのがわかりました。
「わしの白いものを吐きだしてやるぞ。若返って最初の精じゃ。どろどろしたものがたっぷり出てくるじゃろうて。もしやすれば、仙人様の桃のお陰で、子だねもあるやもしれんぞ?」
 自分で言いながら、おじいさんはハッとなりました。
 おばあさんも、短い呼吸を繰り返しながら、とろけるような眼差しでおじいさんを見上げつつ、囁き返しました。
「孕(はら)ませて……もらえる……の……です……ね?」
「そうじゃそうじゃ。わしの子を――」
 おじいさんはグッと腰を引き、
「――孕め!」
 力強く、突き出しました。
 傘の広い雁がズルッと膣壁をこすりました。それだけでおばあさんは声も出せなくなり、小さく開けた口から涎をたらすのも構わず、身体を小刻みに震わせました。しかし、これは始まりにすぎません。
 おじいさんは、指を絡ませあったおばあさんの手を押しつけながら、まるで獣のような乱暴さで腰を引いては叩きつけました。動くたびにズチュッという音が響き、結合部からあふれ出た蜜が飛び散りました。抜かれる魔羅にはトロトロに柔らかくなった女陰の肉が吸いつくようにまとわりつき、押し込まれる魔羅と一緒に可憐な菊門もクッと閉じました。
 もう、おばあさんは、ひっ、ひっ、ひっ、と息を吸うのが精一杯です。
 突かれるたびに星が瞬き、雁で引っかかれることで意識が飛んでは戻され、飛んでは戻されを繰り返していました。もはや荒波に巻き込まれた木の葉と一緒です。しかし、嵐のように責め立てられることが、嬉しくて嬉しくて仕方ありませんでした。
 女として愛されている充実感を味わうのは、数十年ぶりです。
 幾つになっても女は女、ということでしょう。
 それは男も一緒です。愛する女が喜んでいるという満足感ほど、自信とやる気を与えるものはありません。
「ほら! 出すぞ! お時ちゃん、今度こそ、俺の子を――う゛っ!」
 おじいさんは背をのけぞらせながら、まるで女陰の隙間を完全に埋めるかのような勢いで腰を突き出しました。途端、耐えに耐えていた限界が訪れました。
 濁流のように精が吐き出されました。
 ビュクッ、ビュクッと膣の奥へと注ぎ込みました。
「ぁはっ――!」
 おばあさんもギュッとおじいさんの手を握りかえしながら、お腹をのけぞらせ、両脚を大きく広げました。ピンと伸ばしたつま先まで反り返っています。全身が小刻みに震え、口も大きく開けていました。
 そんなおばあさんの子宮は、まるでおじいさんの精をすべて受け止めるかのようにキューッと降りてくると、逸物の先端に子宮口を付けていました。じんわりと広がるお腹の温かさもまた、おばあさんの意識を震わせるには充分でした。
(今度こそ子供が……)
 絶頂を向かえ、意識が白い世界に飛んでいたおばあさんは、漠然とでしたが、そんな予感めいたものを感じていました。




 失神したおばあさんを布団に運んだおじいさんは、汗と精と蜜で汚れた互いの衣服をすべて取り払い、おばあさんが目覚めるまで腕枕をして寝顔を見続けていました。といっても、それほど間をおかず、おばあさんはうっすらと両目を開けました。
「すまんかったの……乱暴にしてしまって」
 おじいさんがそう告げると、おばあさんは何も言わず体をすり寄せました。
「これこれ。わしの魔羅はまだ収まっておらんのだぞ」
「まぁ」
 笑ったおばあさんは、おじいさんの逸物をそっと握りました。気絶している間に濡らした手ぬぐいで違いの身体を拭いていたため、ベトベトしたものは何もついていませんでした。ですが、固さは相変わらずです。
「昔は寝かせて貰えなかったこともありましたものねぇ」
「おまえの身体が良すぎるからじゃよ」
「お世辞ですか?」
「世辞ではないぞ?」
「じゃあ、おヨネちゃんともしたのはなぜですか?」
 おじいさんは言葉につまりました。
 おばあさんはクスッと笑いました。
「ちゃんとしてくださるんなら、タロさんの無茶には、これからも目をつむります」
「……面目無い」
「いいんですよ。おじいさんは御石神(みしゃくじ)の太郎坊ですもの」
 絶倫で雁高魔羅の持ち主であるおじいさんは、男性器信仰の中でも有名な御石神様に呪われている――だから種も無い――と言われていました。性神である御石神様は、同時に五穀豊饒をもたらす実りの神様でもあります。そのせいなのか、結婚してからというもの、おばあさんは一度も食べ物に困ったことがありません。稲を植えれば必ず実り、種を蒔けば必ず熟し、山に行けば恵みにありつけ、釣り糸を垂らせば大物が釣れる。おじいさんには、そんな不思議な力がありました。だからこそ、おばあさんは子宝については自分の領分であると考え、毎日、お祈りをしてはおじいさんに抱かれていました……
「わしは三国一の果報者じゃよ」
 おじいさんはおばあさんの額に唇を押しあてました。
「種なしの浮気男を受け入れてくれる女なんぞ、天竺まで行っても見つからんだろうて」
「観音様はどうですか?」
「バチ当たりなことを言うな」
 おじいさんは笑いながらおばあさんを抱き寄せ、その身体を自分の上へと乗せました。
「どれ、お時ちゃんの観音様でわしの魔羅を鎮めてくれんか?」
「しっかり、孕ませてくださいましね」
 おばあさんは逸物を握ると、トロトロと精が漏れ出ている女陰に押しあて、少しずつ飲み込んでいきました。最初はきつかったのですが、腰をくねらせていくと、少しずつ肉が軟らかくなり、奥がトンと叩かれ、完全におじいさんの逸物を飲み込むことができました。
「ふぅ……こんなに大きかったんですね。忘れていました」
 おばあさんはニコッと微笑みました。
「……お時ちゃん」
 おじいさんは、寝そべる自分の腰に跨る愛妻をつらそうな表情で見上げました。
「わしは頑張るつもりじゃが、子供ができるかどうかは……」
「できますよ」
 おばあさんは慈しむように下腹部を抑えながら、こう言いました。
「そんな気がするんです。桃の神通力のおかげで、ここにわたしたちの子供が……」
「桃の……」
 おじいさんも、おばあさんの下腹部を見ました。
「えぇ、桃の」
 おばさんは微笑みました。
「桃のような可愛らしい子供ですよ、きっと。女の子ならさぞ美人になるでしょうし……男の子なら、きっとタロさんと同じやんちゃ坊主ですね」
「それは困ったな」
 おじいさんも微笑みました。
「せめて桃から生まれる太郎坊は、わしと違って真面目であってほしいところじゃのぉ」




 昔々、あるところにおじいさんだった少年とおばあさんだった少女が住んでいました。
 少年の名は太郎坊。
 少女の名はお時。
 仙人様の桃で若返ったふたりの間に桃のような子供が生まれるのは、ここから十月十日後の話になります。

おわり
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