稟×撫子

300 :名無しさん@ピンキー:2006/04/07(金) 15:55:56 ID:glKzwj2L
冬の寒さが身を潜め、代わりとばかりに穏やかな日が増えてきた、三月も終わりに近付いたある日。
土見稟は、教室にてプリントと戦っていた。

理由は簡単だ。
期末試験最終日、稟は風邪を引いて休んでしまったのだ。
その日は世界史の試験だけしかなかった上、他の教科はクリアしていたことから、三日間の補習の後に再試験を行うことになったのだった。
無論魔王や神王が手を出さない訳がなかったが、稟自身がそれは納得しなかったし、その稟の意を尊重しようというセージ達の意見もあって、思い止まってくれたようだ。少しだけ開けられた窓から、爽やかな春風が入ってくる。
プリントの残りはあと半分と言うところで、稟は少しだけ休むことにした。

普段が騒がしすぎるぐらいに騒がしいからか、静かな中にいると気が変になりそうだ。
そして、もう一つ。

稟は未だに固定の恋人がいない。
迷っているとかじゃあない。
分からないのだ。
シア、ネリネ、楓、亜沙、プリムラ、麻弓、カレハなど、見渡せば彼の身近には美少女ばかりが揃っている上、麻弓は怪しいが他は皆慕ってくれている。

だが、稟は誰を好きか自分でも分からない。
かと言って適当に誰と決めるのは相手にも失礼だし、何より稟自身が許せないと思う。


「俺は優柔不断だよなー・・・」

ポツリと呟いた言葉は、静かに窓の外に飛び出していった。

309 :稟×撫子続き :2006/04/09(日) 00:02:59 ID:c2LuwBXx
それから幾らかして、漸く稟がプリントを片付けた時に。

「プリントは終ったかつっちー?まさか白紙とかはないだろう?」

いい笑顔の撫子が教室に入ってきた。

「解らない数問以外は、大体出来てます」
「そうか。よし、それならいいんだ」

何処が解らないんだ、と笑顔のままの撫子は、やはり稟が真面目な事に機嫌をよくしているのだろうか、稟にはわからない。
ただ普段呆れ顔が多い撫子だけに、心からの笑顔はとても綺麗で・・。


(って俺は何考えてるんだ・・・)

自分がそこまで優柔不断だったのかと稟は少しヘコンだ。
それから一時間弱で稟の解らないと言っていた問題も全て解けたのだが。
決められた拘束時間はまだ一時間以上も残っていて・・・。

「で、つっちーの本命は誰なんだ?」
「やっぱりその話ですか・・・・」

どうやら稟にとっての修羅場は今から始まるようだった。



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