-------------------------------------------------------------------------------- SS -------------------------------------------------------------------------------- 米→英:若米の話 -------------------------------------------------------------------------------- 米→英。若いメリカとアーサー。 『いってらっしゃい、を言わせないで』 「アーサー、帰る?」 アーサーの服の裾を掴んだ手。 寂しくて、寂しくて。 帰って欲しくない。 行かないでくれ、とありったけの思いをその手にこめた。 「ん?あぁ、明日ちょっと行かなきゃいけないところがあるからな」 「いやだ」と駄々をこねるのは簡単だった。 でも、俺はにっこりと笑って、 「いってらっしゃい」 と言ったのだ。 「アーサー、帰るのかい?」 いつもの問答。 「あぁ。いつも幾らもいてやれなくて悪いな」 この台詞も何度聞いただろう。 少しだけ。 少しだけ募った寂しさから逃れたくて、どうせ彼は帰ってしまうのはわかっていたけど、彼の腰に抱きついた。 「なんだ、アル。寂しいのか?」 髪を撫でてくれる手は優しい。 だけど尚更悲しくなった。 肯定も否定もせず、顔を押しつける。 「そうだよ」と素直に答えることはできなかった。 はぁ、 と不意に聞こえた小さなため息。 「お前何も言わねぇから」 ズキン と胸の中央が痛む。 俺が何も言わないのがダメなのかい? 嫌だ、帰らないで。 そう言ったら君は帰らないでくれるのかい? 頭の中はいろんなことでぐちゃぐちゃになった。 「寂しいって言ったらここにいてくれるのかい?」 この一言にどれだけの勇気を必要としただろう。 ヒーローの弱音なんて格好悪い。 「寂しい思いさせてごめんな。でも俺も国だから、いろいろ状況が許さないんだ」 わかってた。 わかってはいたんだ。 だから俺は全てを飲み込んできた。 言いたいことも、吐き出したい感情も。 だってこうして口にしたら、君は困るだろう? 「知ってるんだぞ。俺、アーサーの邪魔なんてしないんだぞ」 にこりと笑う。 この笑顔にも、もう、慣れる。 「いってらっしゃい、アーサー」 **************** メリカはきっと我慢強い。自称ヒーローだからな。 寂しいときに弱さを見せて甘えることができない少年時代。