寝所にて
作者81さん
「王を選ぶのは俺達麒麟にとって勿論重要なことなんだけどさ、
選んだのが王か女王かってのが麒麟にとってはかなり重要なんだよな。」
寝台に横になったまま聞く陽子の隣で雁国の麒麟は言葉を続ける。
「王が道を誤ったり誰かに殺されない限りは同じ王に仕え続ける訳だろ?
勿論短命の王朝もあるが奏のように大王朝になるときもある。
王や麒麟は基本的に誰かと婚姻関係を持つことはないから
王と麟、女王と麒は必然的に夫婦みたいなものなんだよな。
でもさ、俺みたいに王と麒になっちゃった場合は悲惨なワケ、
だって俺みたいに見た目は子供でも中身は大人な男な訳だし
まあ大人の男であるかぎりは色々とあるワケで、
尚隆なんかは一人で街に下りて適当に遊んでるみたいだけど俺はこの髪だし子供にしか見えないだろ?
かといって後々面倒なことになるから宮中で働いてる奴に手を出す訳にもいかないんだよ。」
「色々大変なんだな」
呟く陽子にうなずいて上目遣いにちらりと扉の傍に怒りに震える人物を見やる。
「だからと言って主上に手を出して良いことにはなりませんっ!」
最近何かと忙しく、なかなか主と一緒に過ごすことができなかった景麒なのだが、
珍しく今夜は早く仕事が片付き、久しぶりに甘い夜をとうきうきしながら陽子の元へやってきた。
扉を叩き、返事を待ちきれずに扉を開けると寝台の上には愛する主と隣国の麒麟。
ショックのあまり言葉もない景麒に対しての六太の言い訳が冒頭の言葉だったのだ。
「・・・えーと、そろそろ俺帰るわ、じゃあな陽子」
そそくさと服を身に付けて窓から逃げるようにして六太が去り、
気まずい空気が流れる中、陽子は俯いてぼそぼそと弁解を始める。
「その、六太くんも周りに女の人が居なくて寂しかっただろうし
私も最近仕事ばかりに追われていてストレスが溜まっていたし・・・って・・・わっ?景麒っ・・・んっ!」
陽子を寝台に押し倒し、深く口づけた後で景麒は主の目を見つめて囁く。
「私が主上と離れていて寂しくないとお思いか?すとれすが溜まっていないとでも?」
再び強く口づけされて陽子は目を閉じ、そっと景麒の背に手を回す。
──今夜はどうやら眠らせてもらえそうにない、明日の仕事に支障がでないと良いのだが。