六太×陽子
作者219さん

陽子は鏡に映る自分の姿を見る。
そこにいるのは戸惑った表情の紅い髪の女だ。
陽子は小さくため息をついた。
着ているのは祖国蓬莱でいうところの遊女のような着物。
黒字に金の豪奢な刺繍が施されている。
その下には瞳に合わせたか碧の着物。
金色の帯は前で大きく結わえられている。
胸元は大きく開いており、すっと夜の冷たい空気が入りこんできた。
これらの着物は陽子自身で選んだものだった。
王専用の衣装部屋をひっくり返して、歴代の王が保管した着物の中から一番大人っぽいものを選んだのだ。
しかしどうにも十代半ばで年齢が止まってしまった陽子には着物の方が勝ちすぎている。

なぜ陽子にしては珍しく、こんなに衣装にこだわるのかというと、理由は六太だ。
いつからか、それはよくわからない。
ただ陽子は隣国の麒麟に対して、普通以上の感情を抱いていた。
恋愛感情。
それなのだろう、と思うが、蓬莱であまりそういう経験をしてこなかった陽子はどういったらいいのか分からなかった。
ただ、思うのは六太が自分のものになってくれたらいいのにという単純なことだった。
「勿論、延王から麒麟を奪うわけにはいかないし、わたしの半身は景麒なんだがな……」
そうぽつりと呟いたとき、陽子の寝室の外にいた女官が陽子に声をかけた。
「延台輔がいらっしゃいました」
「入ってくれ」
陽子は慶の難民の問題を話し合いに来ていた六太に、夜自室に来るよう、昼間伝えたのだった。
六太はいつもながらににこやかに入ってくる。
「よう。いったいどうしたんだ?なんかの相談ごと?」
そして陽子のいつもと違った服装に目を見開く。
「あれー、どうしたの?随分と色っぽいな」
「に、似合いますか?」
「うんうん。すっげー綺麗!絶対尚隆なら押し倒してる」
六太はそういって笑う。その笑顔が可愛くて、陽子はまた胸がちくりと痛む。
「延王だったら、ですか?……延台輔にはこれでは不服でしょうか?」
「え?」
六太は目をぱちくりとさせる。
陽子は着物を自らはだけさせた。
途端に端正な身体が現れる。
六太は予想だにしなかった陽子の行動に慌てた。
「え、ちょっ…陽子」
そう言って、近くの卓にかかっていた絹の布を陽子にかける。
「延台輔…。六太くん、わたしは六太くんが好きだ。本当に」
言いながら与えられた布を床に落とす。
陽子は身体が熱くなってくるのを感じた。そして何故だか泣きたくなる。
「好き。……お願いです」
六太はしばらく無言で陽子の目を見つめていたが、ふっと微笑して陽子を抱きしめた。
「うん、俺も陽子大好き」
六太は陽子に口づける。
最初はただ触れているという感じだったのが、しだいに強くなり、舌が陽子の口の中に入ってくる。
やさしく舌を絡められ、陽子は頭がぼうっとしてきた。
「ん……」
六太は片手で陽子の頭を支え、もう片方の手で陽子の小柄な胸を撫でた。
身体がびくりとなり陽子は六太を見つめる。
濡れた目で見つめられ、六太は陽子を先ほどの絹の布の上に押し倒した。
布越しに冷たい石の感触がする。
何度も何度も口づけを交わしながら、六太は陽子の胸の突起を撫でる。
「んん…。あ…」
自然と甘ったるい声が自分の口から発せられ、陽子は戸惑ったように目を泳がした。
そんな陽子を六太は面白そうに眺め、耳を舐める。
「きゃ…ぁ」
「陽子って反応いー。ね、真面目な景女王がこんな自ら男を誘ってるなんて知ったらみんなどう思うかなぁ。しかも相手は隣国の麒麟」
耳元で言われ、陽子は顔を紅くする。
「俺のどこが好きなの?」
陽子は答えようと口を開くが、胸の上で動く六太の手の動きに翻弄され、出てくるのは甘い声だけである。
「ちゃんと答えてよー。それとも俺じゃなくてもいいの?」
「そ、そんなこと…!あっ…」
突然舌で突起をころがされ、陽子は更に声を高くする。
「はぁ…あ…好きなの。六太くんが。…あ」
その答えに満足したように六太はにっこり微笑み、また陽子に口づけた。
片手はやさしく身体を撫で、もう片方の手は帯をしゅるりとほどく。
着物はすっかりはだけ、陽子の身体があらわになった。
部屋の薄暗い蝋燭の明かりの中、陽子の身体はぼんやりと浮かび上がる。
「きれい」
六太は唇を離し、まじまじとみつめる。
陽子は羞恥心から六太から顔をそらた。
「そ、そんなに見ないで下さい…」
「い・や。自分から誘っておいてー」
「だ、…だって」
言い返そうとして、六太と目が合った。
陽子は思わず身体を隠そうとする。
「今更、そんなことする?だめだよ、陽子。手どかして」
紫の瞳で見つめられ、陽子はおずおずと手を元の位置に戻した。
六太の視線が身体中にからみつくのが分かる。
自然と身体が上気してくるのが自分でもわかった。
「ね……六太くん?」
「んー?ほっとかれるのは辛い?陽子がそんなに淫らだとは思わなかったな」
六太はそう言って苦笑し再び胸を舐め上げる。
「ひゃ…あ。や…!」
「厭って、陽子が望んでることをしてるのに」
笑い含みに六太が言う。
陽子は自分でも声を抑えようと思うのだが、本能の部分がそれを許さない。
しだいに六太の手が下におりてきて、陽子の秘所に触れた。水音が部屋に響く。
「や……。あ…」
「すっごく濡れてる」
六太が耳元で囁く。
「いやぁ……」
「厭じゃないよ。そんなに俺が欲しかった?」
音を立てながら六太は陽子を愛撫する。
「あ……!」
びくりと陽子は身体を震わせた。六太の指が陽子の中に入ってきたのだ。
華奢な六太の指はすんなりと陽子の中に入った。
六太はゆっくりと指を動かす。
「ん…あ…ぁ」
ぼんやりとした表情の陽子を横目で見つめ、六太は顔を下へと近づけ、突起を下で舐めた。
「きゃぁ…あ!や…ろ、六太くん…だ、だめ」
「ダメ?そんなに感じてて?」
六太は指を二本に増やし中をかき混ぜる。
「あ…ん、あ!」
次第に陽子の興奮が高まってくるのを感じ、六太は指をそっと抜いた。
突然やんだ快楽に陽子はぼんやりと六太を見る。
「本番前にいかないでよ」
陽子は上気した顔で六太の目を見つめた。
すぐに、すぐにこの隣国の麒麟が欲しい、そう思った。
「お、お願い…六太くん」
「ふふ。かわいー、陽子」
六太はまた下に手を伸ばす。
「ん…」
「ほんとにぐちょぐちょ」
「そ、そういうことは言わないで」
「そだね、あまりいじってると陽子いっちゃいそうだし」
六太はそう言って、乱れた自分の衣類も剥ぎ取った。
そして陽子を抱きしめる。
素肌がふれ、ぞくりと背中が粟だった。
ふと、涙が陽子の頬を伝う。
「好き。好きなんです。延台輔」
陽子は六太の背中に腕を回す。
六太は優しく陽子に口づけ、ゆっくり体を起こし、自身を陽子に挿入した。
「あ……六太、くん」
「いたくない?」
「へ、平気…」
六太はゆっくりと腰を動かす。
次第に陽子の甘い声が大きくなり、陽子自身の腰も動きだす。
「あん、……あ!あ!」
「よ、陽子」
動きが更に速くなり、二人の荒い息と甘い声が部屋に響く。
二人はしっかりと抱きしめ合った。

目が覚めると、となりで六太がすやすやと寝息を立てていた。
陽子は昨日の自分の行為を反芻し、顔を赤らめた。
散らばった衣類が朝の光の中淫らに広がっている。
陽子と六太には昨日陽子が着ていた黒い着物がかかっている。
「わ、わたし、あんな」
「んん…?」
六太がぼんやりと目を開く。
「……陽子ぉ。俺、陽子の麒麟になりたい」
六太はそう言うとまた深い眠りの中に入っていってしまった。



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