六陽発情期ネタ。
作者889さん
「よぉ」
「‥‥‥‥降りてください、延台輔。今すぐに」
景麒は眉間に皺を寄せる。
はいはい、と面倒臭そうに返事をして、金の髪の少年は窓枠から飛び降りた。その様子をもはや
諦めの境地といった顔で見遣って景麒は溜息をつく。
「それで‥‥‥本日はまた、どのような御用でいらしたのですか」
「まあまあ。そんなにつんけんするなよー」
笑いながら運ばれた茶に手を伸ばす。
「用っていうか‥‥‥抜け出してきたんだ。俺、今アレだからさ」
「アレ?」
「そう、アレ。ああ、お前もだったよな?」
「‥‥‥‥貴方には関係ないでしょう」
「しらばっくれるなよ。調べはついてんだぜ〜?」
景麒は再び溜息をついた。「アレ」で解ってしまう自分が、少々悲しかったりする。そして、その心境は如実に声色に出た。
「‥‥‥‥それなら女官にでも添い伏しさせれば宜しいでしょうに、何ゆえこちらにおいでになるのか」
「お前、自分が問題ないからって軽く言うなよ」
「ですが、延台輔」
六太はむすっとした顔で茶碗を卓に置く。
「あぁ?だってお前は陽子に慰めてもらってんだろ?」
「‥‥‥‥それは、まあ」
それは動かしようのない事実である。景麒は渋々頷いた。
「いいよなー。ウチなんて、最近は周期が来ると離宮に隔離されるんだぜ。尚隆のやつ、いろいろ
面倒臭いとか餓鬼にはまだ早いとか言いやがって!妓楼なんざ行くだけ無駄だし、蓬山に行けば
入り浸りすぎて玄君に叩き出されるしさ」
「それはお気の毒に‥‥‥」
景麒は深く同情したが、はっと気づいて相手に向き直った。
「お気の毒だとは思いますが、雁にお帰り願います。慶の民に手を出されてはたまらない」
「そう言うな。少しでいいからさ、ここに居させてくれよー。陽子にも会いたいしさ」
にかっと笑う六太を景麒は睨む。
「‥‥‥‥まさかとは思いますが」
「ん?」
「主上に手を出すおつもりではないでしょうね?」
「あはは‥‥‥‥」
「‥‥‥‥‥‥‥‥延台輔‥‥‥‥貴方という方は‥‥‥!」
いいかげん忍耐の限界に来て、景麒が使令を総動員しようとした、その時。
扉がぱたりと開いて、彼の主たる少女が小走りに駆け込んできた。
「景麒!延台輔がおいでだと聞いて来たんだが‥‥‥」
「よう、陽子ッ」
「主上‥‥‥‥‥‥‥‥」
苦虫を噛み潰したような顔の景麒を愛想笑いでやり過ごし、陽子は六太に向き直る。
「今日はどういった用向きで?延王もご一緒なのですか?」
「少し立ち寄られただけだそうです。それより主上、政務の方はどうなさったのですか」
「勝手な説明すんなよ景麒。ああ、今日は俺一人で来たんだ」
「延台輔!」
いちいち口を挟む景麒を、何だかいつもと役割が逆だなぁ、などと思いつつ陽子はたしなめた。
「景麒、お客様だぞ?そういう態度は礼を欠いていると思う」
すると、六太もすかざず言葉を添える。
「なあ、俺、陽子と二人で話がしたいんだ。悪いけどさ、人払いしてくんねぇ?」
「あ、はい。わかりました」
これを聞いて、景麒の眉間に更に深く皺が寄る。
「主上、せめて私は残らせてくだ」
「台輔も退出せよ。勅命だ」
陽子は最後まで言わせてはくれなかった。
景麒が渋々といった様子で退出したのを確認して、六太は切り出す。
「なあ、陽子。景麒の奴さ、今アレなんだろ?」
「アレ?‥‥‥‥‥‥あ、あぁ発情期です、か‥‥‥‥?」
あからさまに表現してしまったことに気づいて、流石の陽子も顔を赤らめた。
「そうそう。で、陽子が相手してやってるんだよな?」
「ええ、辛そうで見ていられなくて‥‥‥‥それが何か?」
「うん。実はさ‥‥‥‥」
怪訝な顔の陽子に、六太は思いっきり抱きつく。
「えッ?!な、ななな何ですか、どうしたんですか延台輔ッ」
「俺もなんだよ」
「は?」
「俺も、なんだ。辛いんだよ‥‥‥」
その言葉の意味するところを理解して、陽子は固まった。これは引き剥がした方がいいのだ
ろうか?と思いながらも、それは失礼にあたるような気がして腕を彷徨わせる。
見れば確かに辛そうだ。この微妙な、苦しげな表情には見覚えがある‥‥‥‥と、いうより
相手をしてやる前の景麒そのままだ。見るに見かねて己が身を与えてやってからは、あまり
見ることもなくなっていたが。
そう陽子が回想する間に、六太は陽子の腰に腕を回していよいよきつく抱きしめた。
「‥‥‥陽子‥‥‥‥」
やっぱダメかな‥‥‥でも、もうカラダの方は盛り上がっちゃってるんだけど、と六太は内心
がっくりする。諦めて腕を解こうとした時、その背に陽子の腕が回され、柔らかい感触が六太を
包んだ。
「‥‥‥夕餉の後、私の部屋までいらしてください。景麒や女官には話を通しておきますから‥‥‥」
驚いて、六太は陽子を見つめる。陽子は苦笑し、でも、と付け加えた。
「胎果の誼、ですからね?」
その夜。
キィ、と扉が開いた。そのまま六太は滑り込む。
「陽子」
「‥‥‥‥こちらへ。延台輔」
寝台へと招かれ、六太は手を掛けてその上に乗る。ギシリと寝台が軋んだ。
「‥‥‥‥いいんだな?」
「ええ」
短い問答を終えると、互いに腕を差し伸べあい、抱きしめあう。
唇を深く深く合わせた。
「ん」
そのまま六太は陽子を押し倒し、一気に夜着の前を開く。
「や‥‥‥ッ」
肌を初めて見られる羞恥に、陽子は思わず身体を固くする。それに構わず乳房を強く揉むと
艶かしい喘ぎ声が漏れた。
胸元に顔を埋めて、六太は乳首を吸い上げ、ねっとりと舌を這わせて嘗め回す。
「‥‥や、ああ‥‥‥ッ」
迫り来る快感に身体を震わせながら、陽子は六太の金の髪を掻き乱す。
柔らかに甘い香りが漂う。おそらく陽子の夜着に焚き染められているのだろう。その香りは
六太により陽子の性を感じさせた。自分とは違う性を持つのだと、当たり前だけれども思い
知らされる。
六太は舌を這わせながら夜着を乱していき、ついには陽子の肢体をあらわにした。
「あ‥‥‥」
小さく漏れた声に、思わず顔を覗き込むと、頬を染めて陽子は目を逸らす。見つめ返す瞳は
潤んで美しかった。
ぐっとこみ上げてくる欲望が、六太の心身を覆いつくしていく。
「‥‥‥悪いな。我慢できそうにない」
そう言って、陽子の反応を待たずにぐい、とやや乱暴に陽子の足を開かせる。指の腹で彼女の
秘所に触れると、そこは既に湿り気を帯びてきていた。
欲望に従って更に指を走らせる。
「あ、あぁ‥‥‥ッ!ん、んぅ、ふぁあ‥‥ッ」
六太の指を、ぬめる愛液が濡らしてゆく。そのまま、陽子の内部を指で探り、掻き回した。
ぐちゅ、と淫らな音が響いて、陽子が泣きそうな顔で六太を見つめてくる。その様が扇情的でたま
らなくて、六太はさらに激しく指を動かした。
陽子が目をぎゅっとつむって身を捩る。
「あ、あぁ、あああッ!!!」
背を大きく反らし、ついに陽子は高みに駆け上った。ぐったりとして、熱く火照った身体を寝台に
埋める。
荒い息をつく陽子を見下ろしながら、六太は自分の衣を脱ぎ捨てた。
「‥‥‥‥いいか?」
陽子が、快楽に侵されて朦朧とした意識の中で頷く。
それを認めると、六太は自身を宛がい一息に陽子の身体を貫いた。
「や、あぁッ!え、延、台輔‥‥‥‥ッ!あ、んぅッ」
一気に満たされ、快楽の涙を流しながら陽子は喘いだ。曖昧だった思考がついに霧散して、もう
何も考えられない。
「陽子‥‥‥‥ッ!」
たまりかねて彼女の名を呼んだ。女の熱いそこは、すぐさまぐいぐいと締め付けてくる。
六太は歓喜に喘いだ。積もり積もった欲望をようやく解放できるのだ。彼は雄の本能に呑み込まれる
己の仁性を感じたが、そんなことはもはやどうでもよくなっていた。
陽子の身体に覆い被さり、激しく突き上げて彼女を追い詰める。
「あん、あ、いやぁ、ああんッ!」
甘く啼きながら、陽子が六太を抱きしめてその背に爪を立ててくる。
後は頂点を目指して上昇してゆくばかり。
より深く結びつこうとして二人が抱き合うと、終着点が見えてきた。喘ぐ陽子の身体が痙攣する。
「あ、あぁあああああ━━━━━━━━━━━ッ!!!」
陽子が極みに到達するのと同時に、中がきつく締まる。その動きに促されて、六太も長く身のうちに
くすぶっていた欲を彼女の中に注ぎ込んだ。ああ、と大きく息を吐く。
抱きしめていた陽子の腕は外れ、はらりと寝台に落ちた。
「陽子、その‥‥‥‥」
六太は顔を赤くしたまま目を逸らす。
「‥‥‥‥ありがとな。なんか‥‥‥‥すごく、嬉しかった」
「あ、いえ。お役に立てたなら、良いのですが‥‥‥‥あの」
「ん?な、何だ?」
軽く頷いて促すと、陽子はもじもじと彼女らしからぬ小さな声で続けた。
「いえ、その‥‥‥‥す、少しは楽になったでしょうか‥‥?」
「あ、ああ。だいぶ良くなったと思う。。なんだか、とてもいい気分だ」
嘘ではなかった。彼女の優しいぬくもりに包まれて、快楽と、それ以上のものを感じたと思う。
「‥‥‥‥このまま朝までいたいんだけどさ、やっぱマズいよな。慶で慶の麒麟を差し置いて
ソレやったら、いくら何でもなあ」
陽子は思わず苦笑し、次いで困ったように肩をすくめた。
衣服をおざなりに身につけると、帰るか、と六太は呟く。窓を開け放ち、使令を呼んでその背に
乗った。それじゃ、と言おうとして、陽子と目が合う。
「延台輔!」
使令の背から、六太は陽子を見下ろす。
「また‥‥‥‥いらしてくださいね」
はにかんだような顔に、気恥ずかしさを堪えて六太は小さく手を振った。使令はぐん、と高度を
上げて風に乗る。
夜明けが近づいていた。
39 :六陽発情期ネタ10・これで終わり。 :03/08/11 16:49 ID:3mKrucnW
脱ぎ捨てた衣を拾い上げて羽織ると、陽子は寝台に腰掛けた。そのまま、横向きに身体を横たえる。
彼を助けることは出来たのだろうか。
恋や愛ではないが、それでも大切なのだと、伝えることは出来ただろうか。
ふう、と熱を帯びた吐息をつき、まだ熱い身体を持て余す。
「‥‥‥‥あ」
もう一つ、大事なことを忘れていた。
「景麒、怒ってるかな‥‥‥‥」
陽子は大きく伸びをして、とりあえずは口喧しい半身への言い訳を考えることにした。