尚隆×陽子
 作者876さん

首筋に吐息と口付けを受けると、それだけで頭がぼんやりしてくる。
ふわふわとした、幸せな浮遊感に漂う。

”もっと”
”もっと、この人を、この人の傍にいたい”
”もっと触れて欲しい”
”この人をもっと感じたい”
”この人だけがただ欲しい”

自分がそんな事を考えられる立場ではないのに想いが止められない。
今、ふれられている事が幸せでたまらないのに涙があふれてしまう。
気付いて男が顔を覗き込む。
「すまない、やはり厭だったか?」
『違う…貴方のせいじゃない…貴方が悪いんじゃない…』
ふるふる・とかぶりを振ると優しく頭を抱き抱えられる。
心臓の音が間近に聞こえてなぜか余計に哀しくなる。

「お前にはちゃんと名前で呼んでほしい。"尚隆"と、呼んでほしい」

『…なおたか……』

声に出したらまた涙があふれてきた。


『尚隆、ダメなんだ…私は、王なのに……なのに………』
その後の言葉が紡げずに俯いてしまう。

”言ったらきっとダメになる”

「俺は延を滅ぼす王なんだそうだ」
え、と顔を上げると優しく微笑む尚隆の顔。
「お前がもし失道して王でなくなり死ぬのならば、俺も死のう。
 1人で逝くよりは2人の方が恐怖はやわらぐだろう?
 俺は陽子が好きだ。国など放っておいて一緒にいたいと思うくらい好きだ」
『私も…ずっと、尚隆といたい。でも、いたいけど私達は王だもの…』
「ならばいられる時だけでも一緒にいればいい」

返答を待たずに今度は荒々しく口付けられる。
一瞬怖いと思うものの頭の中が真っ白になっていく。

胸元をわって手が入ってくるが気にする余裕など無いくらいに真っ白になる。
少し触れられただけでそこから甘い電流が走っていく。

『尚隆…私は……貴方が好き…』

素肌を重ねるとそこからお互いに想いが伝わっていく気がする。
お互いの熱が伝わるだけで幸せになれる。
尚隆が胸の突起を口に含むと嬌声をあげてしまう。
尚隆の手が下の茂みにふれた。
ぴちゃ、と淫猥な水音が部屋に響く。
『ぁ』
口からもれる甘い吐息。
切なくて、哀しくて。
何かを求めているのにそれが何か分からない。
『尚隆ぁ…』
潤んだ瞳で見つめてしまう。

優しく陽子の秘所をさわり、充分用意が整っているのを尚隆は確かめる。
自分にとって大事な少女。
国よりも、自分の半身という少年の姿をした麒麟よりも、大切な少女に辛い思いをさせたくない。

『尚隆ぁ…何か分からないの、分からないの…何か求めてる感じするんだけど…』
困った顔をするので更に愛しくなって額に口付けをする。
自分の分身を入り口にあてがうと陽子の体がこわばってしまった。
「力を抜いて…怖くない。俺が陽子の物に、陽子が俺の物になるだけだ」
『うん・・・』
力の抜けていた腕をまた伸ばして尚隆に絡みつかせる。
「辛かったら言うんだぞ」
言うと同時に一気に貫く。
一瞬、内に抵抗があったと同時に掴まっている腕に力がこもる。
奥まで貫いて陽子の顔を見やる。
目を閉じ、辛そうに口で息をするものの気を失ったりしている様子はない。
入れたまま髪をなでるとふっと目を開けて微笑まれた。
『私はこれを求めていたのかな、ちょっと不思議な感じだ』
「そうか。まだ先は長い、今日はこれだけにしておこう」
『これだけって?何かあるの?』
不思議そうな顔をして聞くのが可愛らしい。
「大丈夫…ゆっくりと一緒に歩いて行こう…」

そのまま抱き抱えるように繋がったまま向かい合って横になる。
そのまま、2人は夢の中へとおちていった…………



目覚めると鳥の声が響き何だか空気が澄んで見える。
以前まではあんなにも辛かった別れの朝も、なぜこんなに清々しく感じるのだろう。

目をこすりながら起き上がる尚隆に微笑みかける。
『おはよう。次はいつ抜け出すか決めてしまおうか』
「そうだな、お互い忙しいし細目に連絡を取らんとな」



そして、慶国と延国はそれまで以上に親交を深めるようになったと言われる。


━━【その後】━━

祥瓊が戻ってきた陽子を見て一言。

「あら、おめでとう。これで陽子もついに大人になれたのね?」

真っ赤になってうろたえる陽子と、それを見て何だろうと首をかしげる鈴。
そしてその一言を横で聞いて相手が誰なのかと真っ青になった景麒。

しばらく陽子は相手を言うまで外出禁止令を景麒から喰らったそうです…

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