作者:254さん >254-257、 268-271@2冊目


「よ、陽子……?」
「どうされましたか?そもそも教えてくださったのは貴方でしょう?」
 尚隆を榻に押し倒すような格好で陽子はくすり、と笑って、細い指を滑らせた。
 その指は正確に尚隆の胸元を掠め、帯を解き、精悍な胸をあらわにする。
 呆気に取られた顔をしている尚隆には構わず、陽子は躊躇うことなくそこに顔を埋めた。濡れた唇が素肌に触れて時折、紅い痕を残した。
 そうしながらも陽子の手は尚隆の素肌の上を滑り器用に袍を剥ぎ取っていく。
 ぞくぞくするような昂揚感が陽子を包んだ。身体がかっ、と火照ってくるのが分かる。
 胸の突起を口に含みながら、陽子はちら、と尚隆を見上げた。
 何時の間に我に返ったか、興味津々という顔で見返してくる尚隆を慌てさせてやりたくて、かりっ、と歯を立てる。
 うっ、と息を飲むのが分かった。
 陽子は満足げな笑みを浮かべると、再び舌を這わせた。しなやかな指が素肌を滑る。この男が陽子にそうするように、胸元に、脇腹に、背筋に、触れるか触れないか、ぎりぎりの愛撫。
「随分と……、熱心な歓迎振りだな、陽子」
 やや上擦った声で尚隆が言う。その余裕げな口ぶりが悔しい。
「……たまには……、こういうのも良いでしょう?」
 陽子の右手が軽く勃ち上がった尚隆のモノを捉えた。ゆっくりと撫で上げて反応を探る。
 尚隆が小さく溜息を漏らした。
「ふふ……、こんな貴方を見るのはとても気分が良い」
 陽子は軽やかに笑って、尚隆を覗き込む。空いている左手で頬に触れると、そのままゆっくりと唇を重ねた。
 されるがままになっている尚隆の舌に自分のそれをねっとりと絡め、きつく吸い上げた。撫で続けている尚隆のモノが大きさと固さを増す。
 陽子の背筋をぞくぞくとした悦びが這い上がった。身体の中心が火を燃やしたように熱い。そこはきっともう、蕩けているだろう。
 初めて尚隆の腕が伸びて、乱されていない袍の上から陽子のやわらかな胸に触れた。
 陽子は口付けを振り解いてその手を遮る。
「駄目です。じっとしていて?」
 悪戯げな瞳をきらめかせて、陽子は尚隆を見る。口元には艶やかな笑み。
 そのまま陽子は跪くと尚隆の下衣を取り去り、すっかり勃ち上がったモノを取り出す。
陶然とそれを見詰め、先端をちろり、と舐める。
 ぴくり、と尚隆が震えた。
 陽子はさも可笑しそうにくつくつと笑うと、根元から丁寧に舐め上げる。
 時折、ちら、と上目遣いに目線を向ける。尚隆は相変わらす平然としているように見えるが、その息が上がってきていることに陽子は気付いていた。
 焦らすようにちろちろと筋に沿って舌を動かし、その下にある宝玉を柔らかく揉みほぐす。さらに大きさが増すと、棹に手を添えて口に含む。
「……ふふ、こんなに大きく……」
 じゅっ、じゅっ、と音を立てて吸い上げるとさすがの尚隆が声を漏らした。
 陽子はどくどくと脈打つそれに舌を絡ませながら上目遣いに尚隆を見る。二人の視線がぶつかって尚隆が口を開いた。
「……随分とお上手でいらっしゃるな、慶女王。ここまで教えたつもりはないのだが……っ……」
 未だ余裕綽々、という口をきく尚隆に陽子は軽く苛立って顔を起こした。尚隆に馬乗りになるような格好で口を開く。
「口の減らない方だ……」
 握ったままの棹を上下にしごく。
「教えてくださったのは貴方ですよ。こうすると気持ちが良いのでしょう?」
 手の動きをさらに早めた。
「ああ、また大きく……、ふふふ……」
 艶やかな笑みで尚隆の顔を覗き込んだ。ちろ、と紅い舌を出して尚隆の唇を舐める。
「くっ……陽子……!」
 切羽詰った声で息を呑む尚隆に、陽子はにやりと笑みを浮かべた。
 棹の根元をきつく握り、迸りを塞き止めた。
「何処へお出しになりたいですか?このまますぐに手を離して差し上げても宜しいのですよ……」
 陽子は尚隆の耳元に濡れた唇を寄せて囁く。手の中のそれは赤黒くそそり立っている。
 尚隆は眉根を寄せて陽子を見た。大きく息を吐く。
「陽子の中で……。陽子の中は……その手の数十倍良く絡みつく」
 わずかに覗く陽子のしなやかな太腿を撫で上げ、口の端を上げて尚隆が言う。
 陽子はかっ、と頬を染めたが、そのままゆっくりと長袍の裾を捲り上げた。
「では、お望みのままに……」
 熱く濡れたそこに高ぶりを押し当て、体重をかける。
 ぐちゅ。
 淫らな音を立てて陽子がそれを飲み込んだ。
「お楽しみはこれからですよ……」
 潤んだ瞳をした陽子はそう言って腰をくねらせた。
「あぁ……」
 尚隆のモノを根元まで飲み込んでしまうと、溜息ともつかぬ喘ぎ声を漏らして陽子は腰を揺らした。
 くちゅくちゅと、水音が更なる興奮を誘う。
 少し落ち着きを取り戻したらしい尚隆に気付いて陽子は動きを止め、尚隆の胸に指を滑らせた。
「……随分と、余裕がおありになるのですね……。さすがは延王様といったところか……」
 指で愛撫しながら、時折尚隆を締め付けては反応を探る。何度も息を呑む尚隆に、陽子はさも可笑しいというように笑った。
「もっと……気持ち良くして差し上げます……。して、欲しいでしょう?」
「そうだな……」
 再び腰をくねらせはじめた陽子を見て、尚隆は身を起こした。
「こういうお前も嫌いじゃないが……、俺はお前の好い声が聴きたくて堪らんのだ」
 そう言ったが早いか尚隆は陽子の帯を解き、すべての衣服を取り去る。陽子の肩から袍が滑り落ち、小ぶりだが形の良い胸があらわになった。
「……あっ……」
 反射的に胸元を隠そうとする手を押し止めて胸を揉みしだく。すでに上を向いている先端に口付けると待ち望んだ声が聞こえた。
「……はっ……ん……」
 陽子は首をふるふると振って身を捩ろうとする。今まで陽子のされるがままになってきたが、今そんなことを許すほど、尚隆もお人よしではない。
 舌先で先端を弄びながら下から突き上げる。
「ああんっ!……ぁあああ……」
「先ほどのお礼と言っては少なすぎるか……。なぁ陽子?」
 快感に首を仰け反らせた陽子の首元に顔を埋めて尚隆は囁く。ついでとばかりに首筋を舐め上げる。
「あっ……んっ……」
 陽子は堪え切れなくなったように尚隆の首に手を回し後ろに倒れ込んだ。尚隆に組み敷かれるような格好になり、陽子は口付けを強請った。
「んっ……ふ、っ……ん……」
 そんな陽子に誘われるように舌を絡め合い、口腔内を犯し合う。
 ぐちゅぐちゅと、繋がった場所からは止め処なく蜜が溢れていた。
「気持ち良いか……?もっと……、鳴いてくれ……」
 尚隆は陽子の足首を掴み、ぐいっとM字に広げる。一度自身を引き抜き、じゅぷじゅぷと音を立てて浅い場所を掻き回した。
「あん……、いや……っ……」
「なら、どうして欲しいんだ?ん?」
 尚隆はわざわざ動きをぴたりと止めて尋ねる。
「……もっと……っ、もっと奥まで……奥まで欲しい……っ!」
 涙目を向けて言う陽子に満足げな顔を向けて尚隆は腰を進める。溜息のような喘ぎ声は上がった。
「はあああぁん……」
「……好い貌をする……。教えた甲斐があったというものだ……」
 一段と陽子の内部が絡みつくようになってきたので、尚隆は動きを早めた。がくがくと揺さぶるように最奥を突き上げる。
「は、あ、あぁ……、あああぁ……」
「……忘れていた、が……。陽子はこれが、……っ、好きなの、だったな……」
 息を切らせながら尚隆が呟き、隠れた陽子の肉芽を弄る。
 陽子の腰が跳ね上がった。
「あんっ!」
 さらに締め付けがきつくなり、尚隆は息を止める。そろそろ限界が近かった。
 尚隆は陽子の顔中に口付けを降らせながら動きを緩めた。
 その時だった。
 陽子が脚を尚隆の腰に絡め、下半身にぎゅっ、と力を入れた。
「……くっ……、よ、陽子……っ!」
 うろたえた尚隆の声。
「私も……、忘れていま、した……。貴方はこれが、お好きなのですよ、ね……?」
 紅潮した頬に勝ち誇った笑みを浮かべて陽子が言う。
「っ……、そんなに締めたら……っ!」
「逝きたければ、先に、お逝きになっても構わない、のですよ……。もう一度、頑張れるなら、の話ですけど……」
「陽子っ……!」
 苦しげな顔で見詰める尚隆に陽子はもう一度、馬乗りになり腰を揺らす。
「やはり……、こちらの方が良い……」
 陽子は満足げに呟いて腰の動きを早めた。形の良い乳房がふるふると震えた。
「……っ、……随分とそそられることだ……っ……」
 苦し紛れに言って、尚隆は手を伸ばすと膨らみを包み込むように触れた。
 その瞬間に陽子の内部がさらにきつく尚隆を締め付け、尚隆は欲望を吐き出していた。
 陽子もまた、最奥に熱い迸りを感じて、快感の果てまで落ちていった。


 陽子は、尚隆の胸にもたれて荒い息を静めていた。
 何時ものように尚隆が陽子の赤い髪を撫でている。突然、尚隆のくつくつとした笑い声が響いた。
「どうなさったのですか?」
「いや……、淫らな身体になったことだと思ってな」
「自分で教えておいて、何を今更……」
「……お前以外では勃たたなくなりそうだ……」
「だとしたらそれはお歳のせいですよ」
 さらり、と言って陽子はにこり、と笑った。それを尚隆は憮然と見詰める。
 そろそろ、何もかもにおいて隣国の女王に敵わなくなってきつつある延王であった……。





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