作者:587さん >587-589、594-596、599-602 @二冊目
玄英宮の夜。
くぐもったうめき声が奥の院の尚隆の私室から漏れてくる。
月光の届かない牀榻の奥に、なにやら蠢くかげがあった。
襦裙をまとったままで寝台に横たえられた陽子、その上には同じく夜着をつけたままの尚隆が覆い被さっていた。 陽子の胸は大きくはだけられ、つかみ出された小ぶりの乳房が尚隆の執拗な愛撫を受けていた。
「やはりな・・・」
「・・・・?」
「随分敏感になってきたようだ」
いいながら尚隆は堅くふくらんだ陽子の乳首に舌を絡めた。
「三日前の夜は、こんな風に大きくはならなかったぞ。覚えているか?」
「はい・・・」
陽子の乳首を交互に吸い上げ舌でねぶると、それはさらに大きく堅くしこる。
「どうだ?」
「・・・気持ち・いい・・・」
あがった息の隙間からようよう言葉を紡ぎ出す。
「ぅふっ・・・は・はぁ・・・・」
陽子の反応を確かめながら、尚隆は口で吸い、舌を絡め、歯で優しく甘噛みをする。そうして陽子の左の乳首を責めながら、右の乳首を指の腹で擦り挙げた。
「見るがいい」
尚隆の声に導かれて、陽子は自分の胸を見た。
「あ・・・・」
尚隆の唾液にまみれた左の乳首が、大きくふくらんでいる。そのうずきが股間に直接伝わってくる。右のそれも、明らかにくりくりと立ち上がってきていた。
「自分でやってご覧、どうすれば気持ちがいいのか」
女の身体で愛撫に最も反応しやすいのは乳首だ。それ以外の快感を覚えるのはもっと後の話。それを尚隆は良く知っている。
尚隆の言葉に操られるように、陽子は両手で自分の乳房をもみしだいた。
乳首をいじる。ころころと転がすようにつまみ、指の腹でその頂点をさわっとこする。弄っているのは胸なのに、何故か下半身が熱を持ってくる。夢中になってこね上げていると、尚隆の指が陽子の下腹部に伸びた。長く器用な指が陽子の花芽を探り当て、ゆっくりとしごき出す。
「は・・・あぁ・ん・・・」
知らず知らずのうちに、尚隆の手を挟むように両の太股をこすりあわせていた。
その股を割って尚隆が脚を入れてきた。陽子は同じ動きのまま股間を男の太股にこすりつける。その部分が熱くとろけてきている。
尚隆がもみ上げるように脚を動かすと、二人の接点がにちゃにちゃと粘つく音を立てた。
「良く濡れるようにもなった」
尚隆は陽子の滴らせた露を指ですくった。
その指をひと舐めしたあと陽子の口にふくませる。陽子は従順にそれをしゃぶっている。
「おまえの味だ」
いいながら指ごと陽子の口を吸った。
指を抜きざま舌を押し入れる。そのまま陽子の口をむさぼりながら、手は忙しく陽子の襦裙を肩から引き下ろして胸全体をなで回す。自分の夜着の前をはだけ、陽子の胸に肌を合わせる。乳首のこりこりとした感触を自分の皮膚で直に感じ取っている。
尚隆の手はさらに陽子の帯を解く。襦裙をはだけながら口は首筋から胸に伝い、乳首を弄び、腹に向かう。臍に舌を差し入れ、さらに下へ。脚を大きく広げさせ、淡い茂みを舌でかき分けてとうとう目的の場所へとたどり着く。
「あ・・・、そこは・・・」
陽子の手が弱々しく尚隆の頭を押そうとする。しかし構わず陽子の花芽をさぐりあて、じゅっと音を立てて吸うと、陽子の奥からは更にあまやかな露が湧きだしてきた。 事の初めは3日前の夜。陽子が初めて玄英宮に迎えられたその晩。
尚隆は密かに一人で陽子の部屋を尋ねたのだ。
寝付かれずにいた陽子は夜着の上から慌てて薄物を羽織って延王を迎えた。
延王・小松尚隆。胎果であり、自分の後ろ盾になってくれようという男だ。
「どうだ。王になる決心は付いたか」
椅子に座った延王は、真正面に立つ陽子の顔を見据えた。
「いいえ、私はどうしても自分が王だとは思えません。ただ・・・」
「ただ?」
「景麒を助け出さねばならないということはわかりました。そうしないと何も前には進めません」
陽子もしっかりと尚隆の目を見つめ返す。
その瞳の強さに決心がついた。
「よし。今の内にもう一つ、おまえに教えておかなければならないことがある」
「はい?」
「おまえが受けるか受けないかはさておき、おまえは景麒と契約を済ませている。つまり、おまえは王だ。するとどうしても狙われることになる、他国の者に」
陽子の顔には、とまどいと不安の陰が交差した。
「そんな・・・」
「ただ剣をとって戦うことならまだたやすい。しかし他にも狙われる手だてがある」
不安と好奇心の影。
「それは?」
この娘は強い。これなら大丈夫だろう、きっと戦える。
「快楽だ。普通は搦め手からの情報収集に使われる手で直接王がおそわれることはなかなかないが、いざというとき王が一番の弱点になってしまってはいけない」
「・・・どういうことでしょう」
尚隆は立ち上がった。
「例えば、こういう事だ」
言うなり尚隆は陽子の頭を無造作に引き寄せ、唇を重ねた。
「ぐっ・・・」
ファーストキス、そんな言葉が陽子の頭をかすめたが、それよりも驚きと恩人に対するためらいが先に立ち反応が遅れた。
腰をも引き寄せ、しっかりと密着させながら、強引に舌が唇を割る。陽子の口中は尚隆によって蹂躙されてゆく。
そしてその夜、陽子は尚隆に純潔を奪われた。
しかしそれはそんな甘やかなものではない。尚隆が陽子に教えようとしたのは王として快楽と闘う方法。むしろ積極的に武器として扱えるほどに。
次の夜も尚隆は陽子の部屋を訪れ、陽子の全身をくまなく愛撫して、女の肉にはどんな快楽があるかを教え込んだ。
そして今日、三日目。
陽子は初めて自分から尚隆の部屋を訪れ、教えを求めた。その身体は男が与える快楽に敏感に反応するようになってきている。そして尚隆もまた今までよりも更に激しく執拗な愛撫を与えて陽子を試そうとしているようだ。
「・・・教えて・・・」
陽子は自分の股間に顔を埋める尚隆の髪を掴んだ。
「何をだ?」
舌を陽子の秘壺に差し入れている尚隆の声はくぐもっている。
「いつか、私が王になっても・・・、ん・・・また貴方に・・・こうして手ほどきを・・・。して・・はぁっん・・・もらえるのだろうか」
じゅぷっ。舌の動きに誘われて、更に多くの蜜が体奥からわき出す。
「教えて欲しいか」
「まだ、もっと・・ふうっ・・・奥がありそうだもの」
本当にこの娘は強い。
「それをおまえに教える相手は、慶国の麒麟になる」
蜜を啜り上げ、舐め回す尚隆。
「景麒に・・・」
自分から秘所を男の口に押しあてながら、陽子は蓬莱で一度会っただけの金髪の青年を思い出そうとした。
一度だけのその出会いが、自分をこんな境遇に陥れた。そして今、自分はその相手を救い出すことを全てに優先させようとしている。会いたい。彼に会わねば何事も進められない。
「麒麟はその国の王に最も忠実な生き物だ。他のどんな忠臣といえども王を裏切る可能性があるが、麒麟だけは決してそんなことはしない。だから、おまえは景麒には安心して身を委ねることが出来る」
尚隆は顔を上げた。口の周りが陽子の蜜にまみれてべとついている。
言いながら尚隆の胸にちりりと痛みが走った。
何回か会ったことのある、殆ど白に近い金色の鬣を持った麒麟。あの無表情で冷たい印象の若者が、この生命力にあふれた娘とまぐわい乳繰り合うのか。
「では、予王とも・・・?」
いつか自分を抱くことになる男を助けるために、自分はこんな事をしているのか。陽子の胸に、一度たりともまみえることのあり得ない、先代の女王への微かな嫉妬が芽生えた。
「おそらくはな。麒麟は絶倫の生き物だし、蓬山で女仙たちに閨房の技を教え込まれて育つ。生娘だった予王が景麒の身体におぼれ、他の女への嫉妬に身を焦がしても不思議はあるまい。
しかし景麒は、台輔としての役目としてしか王の夜伽を考えてはいなかったはずだ」
本当の中に少し嘘が混じる。
麒麟にとっては王と共にあること以上の喜びはない。ましてや麒と妙齢の女王の組み合わせなれば、夜の営みが役目としてだけで終わるはずはなかった。それは予王が本来の役目を忘れ、景麒に恋着したことからも明らかだ。
だが、それを今、この娘には言いたくない。この娘とあの麒麟が、これ以上ないほどの結びつきをするようになるだろうなどとは。
尚隆は陽子の体を起こすと全ての着物をはぎ取った。自分も全裸になり仰向けに横たわる。陽子の腰を引き寄せて自分の顔の上に花芯が来るようにした。そして反対に陽子への欲望でがちがちに堅くなっているおのが肉棒を、娘の口にあてがう。
「おまえの口で慰めてくれ」
わずか三日前には考えられもしなかったことだが、陽子は何のためらいもなくその猛々しいものに舌を這わせた。
舌にたっぷりと唾を乗せ、その表面を舐めあげる。口を大きく開けて反り返った太いものをほおばり、吸い込む。両の手で男の肉棒と玉袋をなでさする。
尚隆は陽子の舌使いが激しくなってきたのを知ると、自分も陽子の股間に口を付けた。
暗い部屋の中には、互いの荒い息づかいとびちゃびちゃという淫靡な音だけが聞こえている。 ひとしきり互いをむさぼり合った後、
「麒麟を相手にするなら・・・」と尚隆が言う。
「こういう事も知っておいた方がよかろう」
一旦陽子から離れるとその身体をうつぶせに返した。四つんばいに手と膝をつかせる。
「腰をあげて、身体を支えろ」
素直に言うとおりにする陽子の腰を掴むと、尚隆は後ろからのしかかり、十分に濡れた陽子の中にゆっくりとおのがものを突き入れた。
「ひぃいゃあっ、あ、イヤっ」
「麒麟は本性が獣。獣はこういう繋がり方をしたがる」
その夜初めての結合だった。
浅黒くなめらかな肌。陽子の背中は筋肉質で腰に向かってぎゅっと絞るようにくびれている。その腰をがっしりとつかみ、尚隆がゆっくりと動きを送るたびに陽子ののどから声とも息ともつかないものが漏れる。男の突きに誘われて下に垂れた乳房が揺れる。
「どうだ?」
「いぬ・・・犬みたい・・・」
陽子の脳裏には、山を逃げ回っていたときに見た野犬の交合が浮かんでいる。
牡犬が牝犬にのしかかり、口からは泡をはきながら激しく腰を振っていた様が。そして白目をむき、這いつくばりながらも牡犬を受け入れていた牝犬の姿が今の自分に重なる。
しかし、考えを深める間もなく尚隆の肉棒が今まで当たったところのない場所をえぐった。
「あっ、そこ・・・。そこ、なんだか違うの、ほかのところとちがうのぉ〜」
自分も獣だ。日本にいるときにはこんなこと考えもしなかった。会ったばかりの男と、恋愛もしていない男とこんな事をするなんて・・・。快感の波に襲われて身体を支えきれず、陽子は肩から寝台に落ちた。
同時に・・・尚隆の中には微かなためらいがある。
尚隆が身体をあわせて倒れ込み、陽子のあごを掴んで顔を仰向けると口を吸って来る。
陽子も自分から上半身をひねり、激しく舌を絡め合う。尚隆の手は娘の股間に当てられ、指で花芽を揉みしだいている。
「吸って・・・! お乳を吸って・・・・・。いっぱい滅茶苦茶にしてっ」
「おまえの望むとおりに」
陽子の脚をあげて腰を繋げたまま素早く身体を回転させると、向かい合わせに抱き合う。小ぶりだが形の良い乳房を乱暴に揉みしだき、両の乳首を交互にきつく吸い上げる。
陽子の両足は尚隆の腰に絡みつき、手は男の頭を抱え込んでいる。
「ああ、いい・・・もっと・・・・・よくして・・・もっと!」
陽子の中に別の生き物が生まれようとしていた。
じわりと締め付けられる快感に頭の芯がしびれそうになりながら、尚隆はなおも冷静に観察を続けている。
この娘の強さは本物だ。僅か三日で、尚隆と互角とは言えないまでも退かないだけのものを身につけようとしている。まさに王に相応しい。
すでに何度もこの娘と交合いながら、まだ一度も身体の奥に精を放っていないのがその証だ。
一番の理由は陽子が怖がったから。
いくら胎果で王だとはいえ、蓬莱から来たばかりの身とすれば、男女の交わりが子を孕む不安につながってしまうのは無理もない。
しかし・・・、その不安は陽子ひとりのものではなかった。
それはこの娘が胎果だから。この国で五百年の治世を敷きながら、尚隆は未だかつて胎果でしかも仙でもある女と交わったことはなかった。
蓬莱の国で女の腹から生まれた娘と、同じ生まれ方をした男とがこの世界で交わったら・・・なにか思いも及ばぬことが起きてしまいそうな気がする。
・・・世迷い言だ。
「もう・・・いい・・のか・・・? 覚悟がついた・・・のかっ」
尚隆の動きにもそろそろ余裕がなくなってきていた。
「もう、いいっ。私は・・・わたしは、この世界で・・・」
陽子の脚はしっかりと尚隆の腰を挟み込み、尚隆にぴたりと合わせて腰を振っている。その吸い付くような淫らな動き。
片手で尚隆の背中にしがみつき、もう片方の手が何かを掴もうとするように虚空にさしのべられていた。
尚隆はその手を捉えた。二人の指がしっかりと絡み合う。
「な・・・なお、尚隆ぁ・・・・!!」
突然耳に届いた蓬莱での呼び方に男はためらいを捨てた。
「ようこ!」
この女に自分の全てを注ぎ込みたい。尚隆の腰の動きは激しさを増し、相手を壊しても構わないというほどに深く深く貫いてゆく。
陽子の啼き声は糸を引くように高く細くなり、それがますます男の理性を吹き飛ばす。
もう、これ以上は・・・・。
互いに激しく唇をむさぼり舌を絡め合う、指をしっかりと組合わせたふたりは、二匹の獣となって繋がったまま闇の中へと墜ちていった。〈 了 〉