涙の景麒君日記〜景王舒覚編〜
□月▼日
昨夜は女官の甲花(こうか)と乙葉(おつよう)が忍んできた。
いつもは互いに張り合って一緒に来ることなどないのに、昨日は消灯の時間が過ぎるや、すぐにやって来た。私がそうし向けたのだが。
二人を並べて可愛がるのは楽しい。
一人と口を吸いあっている間にもう一人が魔羅をしゃぶってくれるし、一人の女陰を使っている間に別な一人の乳房を弄れるし。たまにはこういう楽しみもないと宮廷の生活に彩りがない。

甲花は口を吸うのが上手い。
唇の合わせ方が巧みで、一旦舌を入れてくるともう口の中だけで昇り詰めそうになる。
甲花に口を吸わせている間に乙葉が大きな乳房で魔羅を扱く。柔らかくてひんやりとした乳房の感覚が堪らない。
女官たちはこういうことを一体どこで覚えてくるのだろう。
昨夜は二人でも口を吸い合っていた。
乙葉の上に甲花が乗って乳房を愛撫し、その甲花を後ろから私が突いた。私の腰の動きで乳房が擦れ合うのが気持ちよいらしく、二人とも夢中になっていた。
最後は私の魔羅に乙葉が跨って腰を振り、私の口で甲花が達し、その間ふたりでずっと舌を絡めていた。涎が滴って私の腹の上に零れた。

今度は別な女官も呼んでやってみようか。

●月◎日
舒覚様に呼ばれた。
蓬山から帰ってきてからというもの3日と置かずに呼ばれる。
正直憂鬱だ。
私が初めての男だったらしいのは仕方ないとしても、もう少し抱き甲斐のある反応をして欲しいと思うのは、男なら当然じゃないだろうか。
横たわったままの舒覚様の細い身体を抱いて、適当に愛撫して、正常位で数回突くだけの行為は、私には虚し過ぎる。
誰か舒覚様に女の歓びなどというものを教えたい強者はいないのか。
―――牙峰・・・、でもいいか、この際。


◇月▼日
乙葉が暇を取って国に帰ったそうだ。
甲花も近々配置換えがあって忙しいとかで、近頃はゆっくり抱けない。
一昨日、書庫に連れ込んで慌ただしく逢瀬をした。私の愛撫を受け入れながらもどこか落ち着かずに周囲を気にしていたのは、いくら奥まった一角とはいえ昼下がりの書庫という場所のせいだったのだろうか。
それにしても、王宮内で目につく女官が減ってきているような気がする。
こんど下官か内宰にそれとなく確かめてみないと。


○月×日
甲花は和州のどこだかの郷城へ配置換えされてしまった。
このところ舒覚様としかしていない。
誰ともしないよりは良いが、この状態が続くと身体がおかしくなりそうだ。
王気を認めて誓約をしたはずの主とこんなに身体の相性が悪いのは、国のためにも良くないことだと思う。しかし初めて見つけたあの時から、どうしても舒覚様に気持ちが向かないのだ。
ひ弱な、冷静さに欠ける娘だった。王となるには何かが決定的に足りなかった。
しかし天意は頑として舒覚様を王だと指し示していた。
私が神獣である限り、自分自身の気持ちがどうであっても天意には逆らえない。

本来私の守備範囲の年齢ではないのだが、司裘の奚女に可愛い少女が入ったと聞く。
今度お茶の仕度でもさせてみようか。


▼月×日
何と言うことだ。
司裘の奚女から聞き出した話では、舒覚様は私の手がついた女官を次々に王宮から追い出しているというのだ。
それで甲花も乙葉も・・・。
配置換えならまだいいが、仙籍を剥奪された者もあるという。ましてあの少女は故郷の家族への仕送りもあってここで働いているというのに。
先に教えてくれていたら、私だって未熟な蕾を散らしたりはしなかったのに。

それにしても可愛い娘だった。
お茶を運ばせて、労いだのために榻の私の隣に座らせ、一緒に果物の砂糖漬けを食べた。
口の横に砂糖がついているよと言って、肩を抱いて舐め取ってやった。
ぴくっとしたが、座ったままで逃げようとしないのでそのまま唇を吸う。
小さくてふっくらとした唇だった。
何度も啄んでは離すことを繰り返している内に、私の方へ身体が倒れてきたので、そのまま胸に抱き取って改めて口づけをする。
ため息を吐くように口を開いたところで唇を舐め、そのまま口中へ舌を差し入れた。
固まったままじっとしているので「お前も舌を動かして良いのだよ」と教えてやると、仔猫が乳を飲むようにそっと舐めてきた。
その舌の小さくて柔らかかったこと。
ひとしきり口づけを楽しんでから、首筋に舌を這わせた。
襦裙の胸元に手を這わせると細い手で私の手を掴んだが、「いやですか? 無理強いはしません」と言うと、私を見つめて黙って首を横に振る。
怯えて気が変わる前にと思って服を脱がせてしまうと、全身を羞恥で紅潮させて「優しくして下さい」などと・・・。
ふくらみかけの乳房をなんども愛撫しているうちに、小さな粒のような色づきの薄い先端がくりっと立って、それを吸う私の頭にしがみついてきた。
私も袍衫を脱ぎ捨てて肌を合わせる。こんな風に女と素肌を合わせる気持ちの良さを味わうのは久しぶりだった。
すべすべとした秘所を指先で何度も弄ってやると、いつの間にかじんわりと中から湿ってきて自分から腰を擦りつけてきた。
初めて私を受け入れたときはさすがに辛そうだったが、手足を絡ませて必死に抱きついてくるのがそれは愛おしかった。

しかし、あの話を聞いてしまったからにはもう二度と抱けない。
舒覚様に見つからないと良いのだが。


▼月○日
あの少女も暇を出されてしまった。ただ一度のことなのに、盆を持って私の部屋から退出するところを舒覚様に見咎められたらしい。
あの話を聞いてからは、私も城中の女には手をつけていない。
城中の女と言っても、年端もいかない子供か、遠い昔に女であったような老女ばかりだ。
このままでは身体がおかしくなりそうだ。
決して自分のためではないが、もうこれ以上看過するわけには行かず、舒覚様の所へ行った。
話が噛み合わない。
私がお話ししたかったのは、王が根拠のない感情で人事を行ってはならないということだったのだが、舒覚様は金波宮には女はいらない、ご自分さえいればいいのだとおっしゃるばかり。
結局最後は取り乱した舒覚様と身体を重ねて、話は有耶無耶のままに終わってしまった。


◆月▲日
今日も昼間から舒覚様に求められた。
私を榻に横たわらせて、ご自分は襦裙の胸をはだけて乳房を私の口に宛う。
黒ずんだ乳首を吸わせ、舌で何度も転がさせる。
次に裳裾をからげて秘所を私の顔の上に押しつけ、淫らな水が染み出す場所を何度も舐めさせる。
私の物が充分に堅くならないと筋の浮いた手で乱暴に擦ってしごき立てる。
そして互いに服を身につけたままで私の上に跨り、腰を振り立てて大きな声を挙げる。

いつから、こんな風になってしまわれたのか。
以前の、横たわったままでも恥じらいのあった、舒覚様の方がまだましだった。
他の男では駄目なのだ。舒覚様は私とだけ交わりたがる。
こんなことなら、もっと丁寧に愛撫の味をお教えすればよかったのだろうか。
しかし、あの当時はそれを厭われて、頑なに拒否されたのだ。
そして今は、乳房と秘所だけの繋がりを求める、淫らな女に成り下がってしまわれた。
これは、台輔としての私が、失格だということかも知れない。
そうなのだろう。
主上を、お諫め出来なかった、無能な台輔。
王宮内の女性(にょしょう)は、本当に、舒覚様お一人になってしまった。
そればかりか、国からも、女を追い出そうとなさっている。
常軌を、逸して、いる。しかし、私の言葉など、最早、聞き入れては、下さらない。



●月■日
このところ、身体の調子が悪い。
それでも、舒覚様は、毎日のように求めてくるし、彼処だけ勃てば、後はどうでもよいというご様子だ。
それにしても、全身に力が入らず、頭が重く、気力が出ない。
これは、多分、麒麟の病気なのだろう。
王朝の終わりを告げる、あの病気なのだろう。


※このあと景麒が再び日記をつけるようになるまでには長い月日がかかる。
 それはまた別の話である。


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