景麒と泰麒
作者134さん
景麒はしばらく話の糸口を探していた。
小さな麒麟は身を竦めるようにする。
「・・・自分が情けなかったからです。このままずっと女仙をイか
せられないのか、と思って」
言っているうちにまた涙を睫毛に溜める。
「お泣きくださいますな。また私が女仙たちに叱られます。」
泰麒は目をしばたたく。
「景台輔でも女仙に叱られたりするんですか?」
「しますとも。女仙は麒麟に遠慮がない。私の場合だと、『勝手だ』とか、
『終わったらすぐ寝すぎ』、だとか」
「泰麒は女仙がそんなに気になりますか?」
「はい。あんなによくしてくれるのに。せめて喜ばせてあげたいのに、
そんな日は来ないんじゃないかと思ったら・・・」
「女仙を気になさいますな。あれは泰麒のお世話を申し上げるためにいるもの。
泰麒が女仙の主なのですから」
「でも・・・」
泰麒は俯く。
「ぼくにはそんな風に思えません」
「泰麒は変わっていらっしゃる」
「そうでしょうか・・・」
それがまた、切なげな声だったので景麒は慌てた。
・・・・
「恐れながら・・・景台輔は・・・・なんと申しますか、
こう・・・・泰麒と路線が同じとは申し上げかねる方・・」
禎衛に皆まで言わせず、玉葉は声をあげて笑う。
「確かに、景台輔はお強いが勝手な方よの。しばらく泰麒と
お付き合いあそばして、少し泰麒を皆習われるがよろしかろう」