景麒×陽子
作者487さん
(※月の影 影の海ラストの「裸で御前には・・・」の直前からの続きだと思ってください。)


「本当にお変わりになった」
「うん、たくさん勉強をさせてもらった」
「正直申しあげて、もう一度お目にかかれるとは思っておりませんでした」
自分と離れ、何も知らない異国の地に一人で放り出されたのだ。
助けに来る事はおろか、この娘が──自分の主が生きていることさえ難しいと思っていた。
陽子はうなずく。
「私もだ。──人の形にはならないの?」
一瞬景麒は戸惑う素振りを見せ、陽子は首を傾げる。
軽く溜息をついた景麒は獣から人へと姿を変える。──と、途端に陽子は後ろを向き、真っ赤になってうつむいてしまった。
考えてみれば衣服をまとっていない獣の姿から人へと戻れば裸なのは当然なのだが
景麒と会えた、助け出せた安堵感と見慣れぬ獣の姿への違和感から何も考えずに軽く口に出してしまった言葉。
今までに誰かと付き合った事もなければ成人男性の裸体など父親しか見たことのなかった陽子である
一瞬とはいえ、若い男性の衣服をまとわない姿を見てしまい、頭の中が真っ白になってしまった。
「この姿に戻ることをお望みになったのは主上ですが」
「・・・その・・・服を着てないなんて考えてなくって・・・」
今更ながら何てことを言ってしまったんだろうと陽子は後悔するとともに、つい恨みがましく言葉を口にする。
「戻る前に一言言ってくれればよかったのに」
憮然とした声で景麒が答える。
「主人である貴女の命に従うのが私の使命ですから」
そう言って近づいた景麒に不意に後ろから抱きしめられて陽子は硬直する。
顔にそっと手が触れて軽く後ろを向かされ、景麒の唇が陽子の口を塞ぐ。
「んっ・・・!」
そのまま体の向きを変えられ、正面から抱きしめられて更に深く口付けされ、そっと景麒の舌が入ってくる。
舌を絡められ、優しく髪をなでられてだんだん陽子の頭はぼうっとしてくる。
「お止めになりますか?」
薄く微笑んだ景麒に見つめられて顔が朱に染まるのが分かる。
思わず俯き、恥ずかしさで言葉が出ないが景麒の背にそっと手を回して軽く抱きしめる。
主人の了解を得た景麒はそっと陽子の顎に手を沿え、上を向かせて再び口付け、胸元からそっと手を入れる。
優しく胸を揉まれ、一枚ずつそっと服が脱がされていく。
首筋に、耳に、胸にとそっと口付けられていくにしたがって陽子は何も考えることができなくなり、
初めて異性に触れられる恥ずかしさと押し寄せる快感に体の奥が熱くなり、力が抜けて行くのが分かる。
今にも崩れ落ちそうな陽子をそっと抱え上げ、景麒は部屋の隅にあった榻(ながいす)に横たえる。
優しく胸に舌を這わせつつ、そっと陽子の下腹部に手を伸ばす。
「・・・!!」
途端に緊張して固く閉じた陽子の足に景麒は苦笑し、優しく頬に口付けて耳元でそっと囁く。
「主上、力を抜いて楽にして頂けますか?」
潤んだ目で景麒を見上げた陽子はそっと頷いてそろそろと足を少しだけ開き、景麒の手が優しく触れる。
口付けを繰り返し、胸を愛撫しただけだというのに陽子はすでに潤っており、指で愛撫し、指先を軽く挿入すると
陽子の体がぴくっと反応して甘い声が漏れる。
敏感な部分に触れられて思わず出てしまった自分の声に陽子は驚き、赤面するとともに
これから初めて異性を受けいれるということに対しての不安と恐怖が急に押し寄せてくる。
そんな陽子を気遣って景麒は指の挿入を止め、今度は舌と唇で優しくゆっくりと愛撫していく。
「やっ・・・あぁっ!」
一番敏感な部分を舐められて思わず大きく反応した陽子を見て、景麒は続けてそこを責める。
「ああっ・・・はぁっ・・・あっ・・・ああああっ!」
陽子の体が硬直し、そして弛緩する。軽く達したのを見て、景麒は今度は指を挿入していく。
「あっ・・・んっ・・・」
異物が挿入される慣れない感覚と快感に戸惑いつつも不安や恐怖はもう陽子にはなかった。
景麒の指が二本に増やされ、あまりの快感に甘い声を発する陽子の中からは蜜があふれ出て
景麒を受けいれる準備が出来ていることを知らせる。
景麒は指を抜き、陽子に覆い被さるようにして榻に乗り、そっと口付けて主人に問う。
「もうよろしいか?」
陽子は頷き、景麒は自身に手を添えて陽子に当て、そっとその先端を挿入する。
「っ!!!」
あまりの痛さに体が強張り、苦痛に歪んだ顔からは涙が零れ落ちる。
まだ早かったかと体を離そうとする景麒の背に陽子の手が回され、しっかりとしがみつく。
「大丈夫だから・・・私は大丈夫だから・・・」
涙をこぼしながらも気丈に振舞う主人をみて愛おしさに景麒の胸は震える。
溢れる涙を舌ですくい、景麒は耳元で囁く。
「どうしても辛かったらいつでも仰ってください」
そう言って景麒は一気に自身を最後まで沈める。
「あっ、ああっ、ああああぁっっ!!」
苦痛に耐えかねて盛らされる声と、初めて異性を受けいれるあまりにきつい陽子の中に
動かずじっとしているのは正直辛いものがあったが、景麒は陽子が落ちつくまでしばらく動かずに待つ。
やがて苦しさで乱れた陽子の息が整い、涙の浮かんだ瞳で少し困ったように景麒に微笑む。
その瞳に優しく口付け、胸を愛撫しながらそっと動くと陽子の甘い声が部屋に響く。
「ああんっ・・・はぁっ・・・ああっ・・・んっ・・・」
まだ苦痛を伴ってはいたものの、段々と押し寄せてくる快楽の波に陽子は押し流され、
少しずつ激しさを増していく景麒に翻弄されて陽子は喘ぎ、景麒の名を呼ぶ。
「ああっ・・・んっ・・・あっ・・・景麒っ・・・景麒っ!ああぁぁぁぁっっ!!」
陽子の中がきつくしまり、陽子が達すると同時に景麒も己の精を一気に放つ。
しばらくして気が付いた陽子は自分に掛けられた服を見、既に服を身に付けて榻の端に座る景麒を見る。
服で体を隠すようにして起きあがって景麒と並んで榻に腰掛け、そして静かに問う。
「・・・私は何もこの世界について知らない。でも私を景麒が選んでくれるのなら出来るだけのことはしたい。
──不甲斐ない私だがおまえは私を支えてくれるだろうか?」
景麒は陽子の足元に跪いて言う。
「天命をもって主上にお迎えする」
首を垂れてその額を陽子の足に当てる。
「御前を離れず、詔命に背かず、忠誠を誓うと誓約申しあげる」
景麒は顔を上げ、主の顔を見る。
陽子は景麒の顔をしばし見つめてから軽く口付けし、そして微笑んだ。
「──許す」

これが陽子と景麒にとっての、物語の始まりである。

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