作者:504さん >504>529>886>887>888>889
「どうした景麒、いつにも増して無口だな、具合でも悪いのか?」
仏頂面はいつもの事だが、朝議の間中一言も喋らず、心なしか顔も赤い。
背伸びして首筋に触れると、やはり少し熱い。
陽子に触れられた所に甘い痺れが走り、景麒は慌てて身を引く。が、陽子が景麒の服の端を掴んでいた為バランスを崩し、陽子にもたれかかる様に倒れこむ。
「景麒!お前やっぱり具合悪いんじゃないか!」
「いえ…決してその様なことでは…」
顔を赤くして否定する景麒を、陽子は問答無用で抱きかかえる様に立たせる。
必死に陽子から距離を置こうとする景麒だったが、陽子は気づいてしまった。
幸か不幸か、陽子は慎みがない(by楽俊)うえ、この類の事に疎い。
そして、疑問は即解決しないと気がすまない。
「お前、服に何か隠してるだろ!」
「隠してません!!」
珍しく大きな声を出す景麒。
「嘘付けっ!何か硬いのがあったぞ!!」
それはアレですなどとはもちろん言えず(言ってもおそらく通じない)うろたえる景麒に、陽子は信じられない行動に出た。服に手を突っ込み、景麒が必死に隠そうとしていたモノを掴んだのである。
「ほら、やっぱりなんか隠してた」
満足そうに微笑む陽子。景麒はもはや言葉もない。
「しゅ…主上っ……っ」
陽子の柔らかい手に刺激され景麒の体温が一気に上昇する。
「いけませんっっ!!」
景麒の官服をめくってとことん追求しようとする陽子をどうにか振りほどく。
「主上私体調が優れないので失礼します何日かすれば直りますから絶対に私の部屋には近づかないで下さいねうつるといけませんからっっ!!」
息もつかずにまくし立てると、景麒は脱兎の如く走り去る。
「あっ!こら、まだ話は終わってないぞっ、待てってばっ!」
腐っても麒麟、足だけは速いらしくあっという間に見えなくなった。
「私に隠し事をするなんて、許さないからな、景麒!」
陽子が大人しく引き下がる訳がない、という金波宮の常識を忘れる程景麒は動転していた。
陽子が不敵な笑みを浮かべていたのは言うまでもない。
−−−−−−−−−− その夜−−−−−−−−−−−
自分の身に起こっている自然現象と陽子のトドメの一撃で寝ようにも寝付けない景麒。
本日何十回目かの溜息をついて寝返りをうち――――――………
「って、しゅ、しゅ、主上っ、な、なんでこんな所にっ…」
そこには寝台の枕元に頬杖をついて無邪気に微笑む陽子の姿があった。
「ふふん、お前が私に隠し事なんかするからだぞ、ちゃんと説明してもらうからなっ」
景麒は頭を抱えた。身体中が綿のようで、陽子の言葉がどこか遠い所から聞こえるような気がする。
「……本当に、知りたいのですね?」
「くどいぞ、景麒、私たちの間に隠し事はなしだ!」
ほがらかに言う陽子の頬に、景麒はそっと手を添える。
「では、こっちにいらっしゃい」
身体を起こし陽子を促す。
「ん?うん」
何の躊躇いもなく陽子は寝台に腰掛ける。
「もっと、近くに」
潤んで熱を帯びた紫の瞳に吸い寄せられるように、陽子は景麒の隣に身体を滑り込ませる。景麒はそっと陽子の身体を抱きしめる。
「え?なあに、景麒」
ここまでされても分からない陽子に景麒は苦笑する。
「今宵は冷えますので、暖めて差し上げているのですよ……」
そっか、と納得する陽子の唇に、何か暖かいものが押し当てられる。
景麒の唇だと気づき反射的に身を捩るが、いつの間にか覆いかぶさっていた景麒の重みでほとんど意味を成さない。
景麒が唇を離すと、やはり陽子は怒ったような顔をしていた。
「いきなり口塞いだりしたら苦しいじゃないか!息が出来ないだろ」
もしかしなくても怒りの焦点がずれている陽子に、景麒は軽く眩暈を覚える。
「申し訳ありません」
「やっぱりお前、体が熱いぞ。具合が悪いんだろう?」
寝台に押し倒された状態でいきなり口付けられたにも関わらず、陽子は落ち着き払って心配げに問う。
いくら厳格な家で育てられたとはいえ、陽子にもほんの少しは知識がある。
が、「あの景麒」という認識が陽子の判断をいつも以上に鈍らせた。
「ここの所政務が立て込んでたから、疲れてるのか?風邪かな?ほんとに大丈夫か?」
やっぱり誰か呼ぼう、と立ち上がろうとするが、しっかり押さえ込まれていて身動きが取れない。
「景麒、離して。動けないってば」
「――……嫌です。出来ません……」
意外なほどしっかりした胸板を押しやろうと手を突っ張っていた陽子の動きが一瞬止まる。
「――どうして?」
この生真面目な麒麟が意味も無く自分の命に従わないなんて、初めての事だ。
「―しばらく私の傍に来てはいけないと、言ったでしょう?」
「だ、だって具合悪そうだったから……」
「言うことを聞かなかった主上が、いけないのですよ。私は最初にちゃんと言いましたからね……」
熱っぽい瞳で陽子を見ると、普段の無表情からは想像のつかない艶めいた笑みを浮かべる。
訳が分からずただ見ていると、ふいに景麒は陽子の首筋に顔を埋める。
熱い息に身震いして景麒の鬣を引いてみるが、突然首筋を舐め上げられてしまう。
「…あっ…!…やだ、くすぐったいってばっ!いい加減はなせっ、麒麟の病気なんて私には分からないんだからっ……」
「いえ、主上でなければ直せません」
構わず陽子の帯紐を解くと、褐色の肌が覗く。首筋から徐々に移動し今度は胸に顔を埋める。
「景麒……?なに、してるの……?どこが悪いんだ……?」
(人肌を求めるなんて、熱のせいだろうか……?)
一度思い込んだらとことんの陽子、ここまで来ても中々別の可能性に頭が回らない。
真剣にそう考えていると、突然胸の頂に甘い痺れが走る。
「や…っあぁん……」
軽い電流が走った様な刺激に、思わず陽子は甘い声を漏らしてしまう。
身動き出来ない為頭だけ起こして見ると、景麒が両の頂を指で転がしている。
何が起こっているのか分からない陽子が呆然と見ていると、陽子の視線に気づいた景麒が、今度は舌先で頂をつついてみせる。視線が絡み合い、陽子の頬が一瞬で朱に染まる。
「ちょ、ちょっと待てっ!何してるんだっ!いきなりなにを――」
やっと狼狽し始めた陽子を組み敷いたまま、膝から太腿にかけて素肌を直に撫で上げる。
こちらの肌着は着物に似た仕組みになっている為、帯紐を解かれると簡単に大切な部分が露出してしまう。
何だか分からない内に押し倒されてしまった事にようやく気づいた陽子は、慌てて前衣を合わせて足を閉じようとするが、一瞬早く景麒が膝を割って身体を潜り込ませる。
「こ、こら、王命だぞ、私の上から離れなさい!」
「……その命は、聞けません。何故来たのです?傍にさえいなければ、我慢できたものを……。
今だけは、押さえられません……」
いつもは忠実な麒麟があっさりと王の命令に背き、柔らかい繁みに指を這わせる。
「――っ!だめ、景麒!!」
「大丈夫ですよ」
全く噛み合っていない返事をする景麒。
意思の疎通がままならないのは常の事だが、この状況でそれはかなりまずい。
おまけに今日の景麒は、鈍い陽子から見ても通常の状態でないのは明らかだ。
陽子がうろたえている内に、景麒は先程の愛撫で潤んだ秘部を優しく撫で、指で秘裂を割って入り口を刺激する。
胸への愛撫とは比べ物にならない刺激に、閉じようとしていた足の力が抜ける。
「は…ぁ…あぁ……」
制止の言葉の代わりに甘い喘ぎが漏れ、陽子はますます赤くなる。
陽子の困惑をよそに、今度は下腹部に顔を寄せて丹念に愛撫していく。
花弁の中心を舐められ、初めての甘美な快感に陽子は抵抗も忘れ、与えられる刺激に酔いしれる。
気力を振り絞って解放された上半身を起こすが敏感になった所を強く吸われ、堪らず再び寝台に崩れ落ちる。
「んっ…ああっ、けい…き、だめ…だってばっ……」
「主上は私をお嫌いですか?私では嫌なのですか?」
一旦愛撫を中断した景麒が、顔を上げて陽子と目を合わせる。
真摯な瞳に、何だか自分が景麒を苛めている様な気がして陽子は言葉を濁す。
「…いや、嫌いではもちろん無いけど……そうじゃなくて……」
「それならよいのです」
またしても話が噛み合わず、もしかして普段の会話が足りていなかったんだろうかと、陽子は霞がかった頭でぼんやり思う。
軽く歯を立てながら責められ、その思考もすぐに掻き消される。一番敏感な部位を甘噛みされ、急激な波の様な快感に陽子は仰け反る。
「っあああ…っ…んうっ……」
全身を朱に染めて乱れた息を整えていると、ふいに景麒が身を起こす。
もう組み敷かれてはいないが、腰に力が全く入らない上、頭もぼうっとしていて状況に考えがついて行かなかった。
「……主上…」
声に目をやると、いつの間にか衣服を脱いだ景麒が再び覆いかぶさってきた。
目が合ったので微笑むと、景麒も微笑み返してくる。
陽子の足を開かせて自分のものをあてがい、ゆっくりと入ってくる。
「…ふ、あぁぁっ……」
異物感と痛みに声を上げるが、満たされる快感の方が大きかった。
「主上、大丈夫ですか?」
気遣わしげに聞いてくる景麒に頷くと、そのまま更に深く腰を沈めてくる。
あまりにきついので一旦引き抜くと、思い切って一気に腰を進めた。
「…あっ…ぅ…ああぁ…っ…けい、き……」
切れ切れに喘ぐ陽子を深く突き上げる度、淫らな水音が響く。
突き上げられ深く中を抉られる度に快感が走り、堪らず景麒にしがみついた。
奥深くまで擦り上げられ、透明な液が太腿を伝って流れ落ち、痛みが快楽に取って代わる。
段々動きが早まり、指の先まで快感が身体中を支配する。
「…はあぁぁ…ん、…ああ…もう…はぁ…っ……」
初めて味わう強い快感に身体を震わせて、陽子は背を弓なりに反らす。
景麒も呼吸を荒げながら、強く痙攣して締め上げる陽子の中で欲望を放つ。
痺れる様な快楽が続き、陽子の意識は朦朧としてきていた。
景麒がそっと髪を撫でているのが分かったが、それを最後に陽子は意識を手放した。
「………発情期…?…」
「…はい。申し訳ありません…押さえがきかなかったのです」
……………………………………。
「…………とっ、とにかくっ、今日から私の言うことには絶対服従!!」
「そんな事わざわざ仰らなくとも、元々私は主上の下僕ですから主上の命には従いますが」
「だ―か―ら―、肝心な時に言うこと聞かなきゃ意味ないんだってば――っっ!!」
「…あの、主上」
「……なんだ、景麒」
「もう一度よろしいですか?」
「……………………」
しかしその後もやはり、景麒は陽子の言う事を聞かない時があったそうである。
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