作者:78さん  >148-153@二冊目


「ばれんたいんでー、ですか?」 昼過ぎの執務室。
景麒は耳慣れぬその言葉を、戸惑いつつ舌の上で転がした。
目の前には隣国の麒麟。しかも、窓枠に腰掛けている。行儀の悪い相手を、あからさまに睨んでやる景麒だったが、どうやら効果はなさそうだ。彼は諦めたように溜息をついた。
「で、それがどうか致しましたか?」
聞いてくれよ〜!と表情で如実に要求してくる延麒に、景麒も仕方なく水を向けてやる。こう見えても彼は景麒より遥かに年長なのだ。
相手は目を輝かせ、楽しそうに話し出した。
「ばれんたいんでーってのは蓬莱の行事で、日は2月14日だ。その日は、女が好きな男にチョコレートって
いう菓子を贈る。店で買ったり、手作りしたりするな」
まあ、手作りって言ったって溶かしたやつをもう一度固めるだけだけど、と延麒は笑う。
「それは手作りとは言わないのでは?」と律儀に突っ込んでから、景麒は黙り込んだ。
予想通りのその反応に、延麒はにやりと笑う。
「・・・・・気になるか?」
「え、延台輔!!!」
みるみるうちに赤面し、景麒が怒鳴る。
わかりやすいヤツ・・・と心中で呟いて、延麒は、ぴょんと身軽に腰掛けていた窓枠から飛び降りた。
「まあまあ、図星だからって怒るなよ♪ほら、手、出せ」
してやったりと笑いながら、延麒は持っていた小箱を手渡す。
「チョコレートだ。昨日、蓬莱行ってきたんでついでに買ってきた。おとといがばれんたいんでーだったから、投げ売りしてたな」
延麒によれば、しーずんが過ぎると売れ残りがせーるになるのだという(景麒にはさっぱり解らなかったが)。
「・・・・・そうでしたか。しかし何故、そのちょこれーととやらを貴方が私に下さるのです?女性から男性に贈るもの、と先ほど仰ったでしょうに」
しかも、景麒は常から甘いものを敬遠しているのだ。
延麒は頭を掻く。
「別にお前にってわけじゃない。陽子とお前にだ。それと、食わず嫌いはよくないぞ」
もうコドモじゃないだろ?と笑う延麒は、どう見たって自分をコドモ扱いしているようにしか見えない。
恨めしく思いながらも、律儀な景麒は返事をした。
「・・・・・はあ」
「わざわざかーなり溶けやすいヤツ、選んできたんだぜ〜?感謝しろよな」
「賞味期限があるから早めにな〜」といたってお気楽に呟く延麒に、はあ、とまた曖昧な返事をした景麒は、次の瞬間、思わず瞠目した。
彼の脳裏にふっとひらめくものがあったのだ。
「・・・・・延台輔。溶けやすいとは、いかほどに?」
「・・・・・固形ではあるけど、人肌で十分イケる。気に入ったか?」
延麒の目がきらりと光った。
それを見返す景麒の目も、意味ありげな光を灯す。
「・・・・・ええ、とても。ありがとう御座います」
陽子の運命や如何に?!



夜更けに陽子の部屋を訪れた景麒は、何だかそわそわと落ち着かなかった。ただ、何となく彼の機嫌が良いらしいことだけは解ったが、それだけでは手がかりとしては不十分だ。
それにしても妙だな・・・と陽子は思った。
(・・・・・どうしたんだろう。今日はしないのかな。私はそれでもいいけど・・・)
彼が訪れたからといって、毎度毎度行為に及ぶわけではないし。
ただ同衾して、会話のみの時もある。
「景麒、いったいどうしたんだ?」
「い、いえ!」
「なんか変だぞ、お前・・・・」
陽子はじいっと見つめるが、景麒は視線を合わせようとしない。
「・・・・なんか、さっきから口元が緩んでるような気がするんだが」
「そ、そのようなこと、ございません!」
彼にしては珍しく声を荒げて反論すると、まるで表情を隠すように景麒は陽子に背を向けた。
あからさまなその態度に、陽子の疑惑はますます深まる。
「いや、そうは言ってもだな・・・」
絶対緩んでる、お前どう見たって怪しいよ・・・と言おうとして陽子は固まった。
大きく息をついてくるりと振り返った景麒が、わくわくとしたとてつもなく嬉しそうな笑顔を浮かべていたのである。
(ど、どうしたんだ景麒ーーーーーーーーーーッ!!!)
珍しすぎる、しかも怪しげな景麒の笑顔に、陽子は夢か?と頬をつねってみたい誘惑に駆られた。
ゆっくり寝るのもいいかなと陽子は思っていたが、どうやらそう思っていたのは彼女だけだったらしい。
気づいた時には既に押し倒され、衣をあらかた剥かれていた。

「け、景麒・・・ッ」
暴れる陽子には構わず、景麒は開封済みの小さな箱に手を伸ばす。茶色い粒を一つ摘むと軽く包むように、その手に握った。
握ることしばし。
景麒はおもむろに、その手を陽子の胸元に滑らせた。
「ッッッ?!」
とろりとした妙な感触に、陽子の身体が跳ねる。
「な、何ッ・・・・」
「ちょこれーとです。延台輔より頂きました・・・・お懐かしいですか?」
景麒は続けてもう一粒摘み、こんどは口に含む。肩を抱いて無造作に陽子の唇を塞いだ。
「んッ」
陽子の口内にも、懐かしい甘みが広がる。もっとも、陽子自身はそれどころではなかったが。
甘い、甘い接吻の後、景麒はそのまま陽子の肌に舌を這わせた。塗りつけたそれを、ねっとりと舌で舐め取り、嬲る。薄紅色の蕾を、強く吸う。
執拗な舌使いで景麒は陽子を責めた。
「・・・・・ああ、これは・・・とても甘いのですね・・・」
「や、あ、ああ・・・あんッ・・・」
身悶える陽子を押さえつけ、さらに舌を進める。
「・・・・延台輔の仰る通り、食わず嫌いはよくないようです」
「ああッ、あッ、こ、こんな・・・・ッ」
故意にじらされていると感じて、陽子はたちまち濡れてくる。
「け、景麒ッ・・・・」
涙交じりの陽子の抗議をさらりと無視して、景麒は笑う。
三つめの粒を溶かすと、今度は蜜の滲む陽子の秘所にそれを塗りつけた。じわじわと蜜と混ざり合うそれは、不思議な艶を放って男を誘う。
「・・・・・これなら克服できそうです」
強引に足を開き、秘所を舌でゆっくりと撫ぜる。
「・・・・ッ!あ、ああッ」
快感のほどを訴えるように、陽子が金の鬣を掻き回してきた。
円滑な舌の動きに翻弄される彼女の表情をちらり、と盗み見て、その甘さに景麒は恍惚とする。
「一国の宰輔ともあろう者が、食わず嫌いなど褒められたものではない。私は克服しなくてはならないのです」
そ、そんなのこじつけじゃないか!!!と陽子は心の中で叫んだ。が、こぼれるのは切なげな喘ぎのみ。
彼女の抗議はしごくもっともなものではあったが、意味のある音声として相手に伝えることは到底出来そうにもなかった。

「ご協力いただけますか、主上?こんなに濡れてさぞお辛いでしょうが、いましばらくお付き合いいただきますよ・・・」
「や、そ、そんなぁ・・・ッ」
もはや、二つの身体に満ち満ちる熱は止めようもなく。
そしてこの後、明け方まで陽子は嬲られ、啼かされることになるのだった。

二日遅れのバレンタインは大変だった、というお話。

                     《終わりなのでつ》


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