作者:552さん >552-554、571-574、577-580 @二冊目

「失礼しますね」
夜半、茶を飲んでくつろぐ桓たいの部屋に現れたのは眉間に皺を寄せた女史だった。
「失礼、なんて考えてない顔だな」
茶化してみたが、笑わない。大事な用があるのだろうと察して入室を許した。
「主上のストレス解消の相手は、もうしないで欲しいの」
座るなり、前置きもなく話し始めた。
「…あぁ、そのことか」
勉強詰めの女王のストレス解消は他国とそれとは全く違うものだ。宰輔、冢宰、百官ことごとくに嫌な顔をされているが、王じきじきに頼まれてしまえば桓たいに断る術など無い。
「今日なんて、あなた思いっきり突き飛ばしてたでしょ」
茶を飲んで視線をずらす桓たいを、祥瓊はねめつける。
「手首ひねったのよ?」
「あぁ…」
まともに顔が見られない。顔を見た瞬間から落ち着かなくなり、隣に座った瞬間から自分の胸は早鐘の如く高鳴っている。
「突き指までして…」
自分の分のお茶を注ぎながら祥瓊は捲くし立てた。
「台補はとても心配してらっしゃったわ」
「…あぁ」
視界に入れてはいけない。深呼吸をして、茶碗の柄を凝視する。
「うん…」
こちらを見ようともしない。上の空の桓たいを見やって、祥瓊はため息を一つ…
「青将軍、聞いてらっしゃるんですか!?」
桓たいの手から茶碗を剥ぎ取って詰め寄る。
「このままお続けになれば、いくら陽子から言い出したことでもご自分の立場が悪くなるんですよ!」
「わっ!…わかって…るさ」
早く立ち去ってくれないだろうか。こんなに近くに寄られては、我慢にも限界というものがある。
――なにせ今は四月なのだから。
自分が半獣であることは宮内の者なら誰でも知っている。祥瓊だって例外ではないだろう。しかし今がどんな時期なのかを分かっている者は数少ない。
――祥瓊だって、例外ではないだろう…。
「分かった分かった。ご忠告ありがとうよ」
「気をつけてね。陽子もあなたも、大事な人なんだから」
祥瓊は安心したように身を引いて残りのお茶を飲み干した。
上を向く、白い首…その下の、緩やかな曲線…。
――例外では、例外ではないだろう…。
視線が体を嘗め回すように動いているのを自覚して、軽く頭を振った。思考がぼやけて自分の考えが捻じ曲がっていくのを止められない。
――見ては…見ては駄目だ。
「で、話はそれだけか?」
何か喋って気を紛らわせようと、桓たいは茶を淹れ直そうと手をのばす。
その手を祥瓊が制した。
「私が淹れますから」
触れる、柔らかな白い指…視線がはずせない。
触れた手から電流が流れる…。
「禁軍の将軍に女史が茶を淹れさせたなんて…」
手を触れまま、祥瓊は桓たいを仰ぎ見る。
「笑われてしまうわ」
電流が体中に走って…。
――理性が、飛んだ。
細い手首を掴み、桓たいは正面から祥瓊を見つめた。
「今が何月か知っているか?」
掴まれて驚いたのは祥瓊だ。
「四月でしょ、それが何か…放して?」
「分かってるのか?」
「何のことよ?いいから、放して頂戴っ」
引っ張っても、ビクともしない。
「ふざけてるの?もう、放してよっ」
全力で引っ張っても、桓たいは放してくれなかった。
――恐い。
恐怖を感じて身を翻しても、もう遅い。
「っ嫌!!」
腰に手を回されて背中を厚い胸板で押される。重さに負けて腕を曲げれば、首筋に熱い息を感じた。
「嫌だったらっ!放して!放しなさい!!」
渾身の力を振り絞って抗っても、体のどこも言うことを聞かない。声を荒げて何を訴えても声は黙殺されている。
桓たいは無言のまま、祥瓊の体を押さえつけて腰紐を奪い取った。
襦裙の前を大きく広げて荒々しく全身を撫で回す。
「ぃあぁっ!」
圧倒的な力が自分の体を征服にかかる。
いつもの桓たいとはまるで別人だ。
キスもなければ愛の言葉もない。ただ必死に己の猛りを静めようと、必死で体をぶつけてくる。背中から手を回し豊かな胸を形が変わるほどに捏ねまわし、あらわになった華奢な肩にむしゃぶりついて滑らかな肌を嘗め回す…。
「ひっ!!やっやだっやめ…!!」
髪を解いて激しく散らす。うなじに噛み付いて、嫌がる脚を自分の脚でこじ開けた。
「や…だぁぁぁっ」
拒絶の声が桓たいを昂らせる。この細く温かなものを自分の物にしたくてしょうがない。激しく貫いて…めちゃめちゃに壊してしまいたい…。
「っひぅっ…や…離してぇっ」
自分の腕から逃れようと必死にもがく祥瓊の姿に血が騒ぐ。捕まえて、決して逃れられないように体から重心を奪って押し倒す。激しい衝動は抑えを知らず、身動きの取れないでいる祥瓊に貪るように愛撫を繰り返した。
「あうっ…ひっ…」
祥瓊の声が遠くに聞こえ、自分の心音だけが耳奥でドクドクと脈打つ。
このまま食われてしまいそうな恐怖に、祥瓊は涙を流して悲鳴をあげた。
「やぁぁぁっ!!…お願いっお願い止まってぇっ!青……桓たい!桓たい!!」
「…」
名を呼ばれて我に返った。動きを止めて、静かに祥瓊から手を放す。
「…降りて」
冷や水をかけられた様に体が硬直して動けない。
「離れてよっ」
「…すまない」
体を離して頭を下げた。あの瞬間から、自分は自分でなくなっていた。
――強姦だな。
拒絶の叫び声を聞きながら桓たいには分かっていた。
祥瓊が例外でなどありえない。今は女史でも元は公主。半獣の性など知りようがないではないか…。
それでも止められなかった。やめられなかった。自分が半獣だと、強く自覚した。
「その…我慢が出来なくて…」
襦裙の前をかき合わせて桓たいから離れ、祥瓊はそっぽを向いた。
「……四月だから?」
一拍の間があく。
「…知ってたのか?」
驚いて、僅かに顔を上げながら桓たいは問う。
「そんなに世間知らずだと思ってた?」
紫紺の瞳に涙を溜めて、それでも祥瓊は薄く笑っている。
――だったら…。
「だったら何故近づいた!?からかったのか?」
手をついたまま完全に顔を上げる。
「半獣をからかって、楽しかったか!?」
――侮られたか。
半獣は国によっては差別を受ける身だ。禁軍将軍を賜るなど、例外中の例外。
激昂したが、冷静な自分にも気がついた。
…卑屈だ。普段は気にもしない。差別される相手によって、こうも気分が違う。
「出て行け。早く消えてくれ」
苦しくて悔しくて、桓たいはそのまま下を向いた。
「二度と部屋にはくるな…」
暫くして祥瓊の気配が動いた。しかし、立ち上がった気配はこともあろうか更に近づいてくる。
「…違う」
搾り出すように小さくつぶやく。
「分かってた。どんな時期なのか。それでもここに来たかった」
予想もしなかった告白に、桓たいは顔を上げる。
「桓たいなら、良いって思った。」
「じゃあ…」
あきらめたはずの欲望が少しばかり頭をもたげる。知らず知らずに手が伸びた。
「でも、」
祥瓊が桓たいをまっすぐに見つめる。
「あんなに乱暴にされるなんて思わなかった」
ぴしゃりと言われ、うなだれた。
「恐かった」
「…すまない」
「本当にそう思ってる?」
紺青の髪を一束手に取り、優しく口付ける。
「思ってる」
チュ とかわいい音をたてて何度も何度も、さながら許しを請うように口付けた。
「本当に悪かった」
髪に、耳に、口付けを降らせる。
「優しくできる?」
そっと顔を覗きこむ。桓たいの目から先程の険が抜けていた。髪に口付けて、こちらの言葉を待っている姿勢がなんとも愛らしい。
「こうか?」
力を入れすぎないようにゆっくり抱き寄せて、唇の端に遠慮がちに唇を重ねた。
祥瓊の大きな胸が、自分の胸に軽く当る。気持ちを落ち着けて、自制して…先程と同じ愚を繰り返すわけにはいかない。
「ん…上手…」
前を緩めて、襦裙を引きおろす。押し倒してめちゃめちゃにしてしまいたい衝動をグッと堪えて首から肩に愛撫を施した。
「…ふふっ」
祥瓊はくすぐったそうに身悶えて、桓たいの腰紐に手をかける。
着物を脱がされていることに桓たいは気がつかなかった。否、気づく余裕がなかった。鍛えられた自分の掌は硬い。半獣ゆえに力が強い。なすこと全てが気になった。
――嫌われたくない。もぅ、恐がらせたくない…。
祥瓊の手が桓たいの背中に回る。直に触れられて、初めて自分の姿に気がついた。
ビクリと体が震える。直接触られただけでこの有様。
「桓たいの体は綺麗ね…」
胸に手を置いて激しく唇を吸い上げる。
「む…うはぁっ…」
置かれていただけの手が蠢いて、両の乳首を捏ね上げた。
――やばい。
著しくやばい。優しくするといったのに、ただコレだけで箍が外れそうになる。
――まずい。
「あ、なんか考えてる」
片腕を首に回して祥瓊がにじり寄った。
「何か他の事考えてるでしょ」
意地悪い笑みを浮かべる。あいた手で筋肉の線を下からゆっくり撫で上げて、コリ、と乳首を甘く噛んだ。ピクっと震える桓たいを見て祥瓊はクツクツと笑う。
「お仕置き…」
耳元でささやかれて、心臓が跳ね上がる。
「考えてないよ」
これ以上撫で回されては敵わない。桓たいは祥瓊の両手を掴んで背中に回し自由を奪った。
「祥瓊の事意外、考えてない」
舌を絡めて唇を塞ぎ、所々に口付けを降らせながらやわらかい胸まで舌を這わせる。中心に紅く痕を残して先端を口に含み、片方は力を入れすぎないように最新の注意を払って揉みしだく。
「桓た…あぅっ」
急がなければ。長引くようでは自制が効かない、我慢し続ける自信がない。
力の抜けた祥瓊の体を組み敷いて、考えを巡らせた。
愛撫をしては動きを止める。体はじっとりと油汗をかいている。
眉間に皺を寄せて、呼吸を整えて――
「桓たい?」
豊満な胸を支えている細い背に力をいれず触れ過ぎずの控えめな愛撫。
「…我慢、してない?」
――してないわけがないだろう。
我慢して我慢して、真っ白になりそうな意識をかろうじてつないでいる。
「してる」
祥瓊の脚が直に当る。意識を会話に集中して、電流の走る体をなだめすかす。
「しないと壊す」
ため息混じりに答えた。
体位をずらし紫紺の視線から逃れる。まっすぐ見つめられれば、それだけで考えがまとまらなくなる。祥瓊から降りて隣にうつ伏せに寝転んだ。
「止めておこう」
何をしてしまうか分からない自分が恐い。二度と触れられなくなるような事はしたくない。
なにせ四月だ。我慢しながら抱くこと自体、無理がある。
「――いい」
桓たいの髪に祥瓊の指が絡む。
「いいの」
唇を重ねる。顔が近くて、熱い吐息が感じられる。
「それでもいいの。――めちゃくちゃにして欲しい…」
耳に優しく手が添えられた。
「恐いんじゃなかったのか?」
「もう、恐くない。…我慢しないで…ね?」
見つめる瞳は艶めいて、許しを与える唇からは紅い舌が覗いている。
見つめられ、求められて…桓たいの箍は完全に外れた。
「知らないぞ」
のしかかり、腕を回す。
「知らないからなっ」
「いい…のぅ」
答えを待たずに舌を滑り込ませる。強引に絡めとり、きつく吸い上げた。胸を揉み、先端を尖らせる。
「くっんっ…桓…た…」
脚を割って秘所に指を絡ませる。濡れているとはいえ、自分のそれを受け入れるにはまだ準備が足りない。
――まだ早い。
分かってはいたが、止められなかった。強引に脚を押し広げて興奮した男を差し入れる。
「ひぅっ…あぁっああ…早っ…いぃっ」
一度では入りきらない。引き抜いて、勢いをつけて再度押し入る。
「くんっ!!…はんっんっんぁうっ」
「大丈夫か?」
涙を舐め取る。唇を噛んで耐えなければならない程の衝撃を、自分は与えている。
「…ん…すご…い 桓たいの、おっき…いいっっ」
のけぞる首を甘噛みし、きつくきつく痕を残す。
「あぅっ…駄目っまだ動いちゃ…あああっひっんん!」
「恥ずかしいことを…言うんじゃ…ないっ」
半獣故か大きいそれを湿りの足りない内部がぎちぎちと締め付ける。
「ふ…はっんっんっあっあっ…んっあんっ」
最初は苦しげな声に甘い声が混じり始め、繋がった箇所に余裕がうまれる。ピタ、と桓たいの動きが止まって、体内に熱い流れを感じた。
「桓た…」
「まだだ」
終わりかと、緊張のとれていた体に再度甘い電流が流れ出す。
動きに合わせてフルフルと揺れる乳房を口に含む。口付けでは我慢できず、それはもう殆ど噛み付いているのと同じ…
食っている。熊が…姫を…。
――半獣だな、やっぱり。
桓たいは苦笑した。何度達しても満足が得られない。何度も何度も欲望を内に解き放っては、角度を変えて押し入る。
「あっ桓た…ひぅっ…そこっあっ…いいっ!」
熱くとろける中が大きく波打って、祥瓊が達したことを悟る。気遣ってやりたいが、桓たいにはその余裕がなかった。何度欲望を吐き出しても終わりが見えない。
「祥瓊っ…しょうけ…いっ」
汗を飛び散らせて激しく腰を打ち付ける。互いの愛液が混ざり合い、何度も達したその証拠が卑猥な音をたて続ける。
「ん…熱…い…桓…い…溶けるっ…んっ…溶けちゃうっんっ」
自分から求めたとはいえ、それまでとはうって変わった激しい愛撫と襲いくる快感の波。腰の動きとは対照的に、握る手だけは包み込むように優い。桓たいの手に、すがるように指を絡めて祥瓊が強く握り返す。
「んンっあっあっはぁ…桓っ……たいっもうっ…もぅっぁっ」
「…足りん」
短く答えて桓たいは更に腰を揺り動かした。指を絡めあい、汗を飛び散らせて求め合うように腰を振る。
動きに合わせてジュフジュフと淫らな水音が室内に響く。
「凄い…音だな」
「そっそれは桓たいのが…ひうっ!!」
体を持ち上げられて、下から強く突き上げられる。太ももを伝って逆流した精液が桓たいを濡らし、熱く反りかえった男を飲み込むのには何の障害もなかった。
「桓…たっ……すっ…あぅっんんっ…もう…ン…っ!!!」
何度達したのだろう。それでも受け入れてしまう自分は、なんて淫乱な…。
油汗の滲んだ桓たいの顔を真直に見たのが最後、体を完全に桓たいに任せ、祥瓊は薄れる意識を手放した―――。


――抱きすぎたか…。
祥瓊の汗をふき取りながら、幾分落ち着いた気持ちで祥瓊の体を改めて見直した。
「こんなにいっぱい痕つけて…」
髪を整えながら祥瓊がつぶやく。
「何を着ても全部は隠れないわね」
「…すまん」
自分のつけた痕を擦りながら桓たいは何度目かの詫びの言葉を口にした。
謝らないでよ…祥瓊が振り向いて桓たいの体を拭き始める。
「次はもっと気をつけるから」
「次?」
クスクス笑う。
「次はもっと覚悟してこなきゃね」
首から肩を拭いて、胸まで降りる。ほてった体が冷やされて気持ちが良い。体中を撫で回されて、納まったはずの熱が再びよみがえる。
「…すまん」
「もう、謝らないでったらっ…?」
言った祥瓊の手から布巾を奪う。
「…もう一度…いいか?」
呆れたように祥瓊は笑った。
「日付が変わってもう五月だけど?」
軽く組み伏せて、
「そんなに簡単に治まるわけがないだろ」
許しの印か、祥瓊のキスを受けて桓たいは薄っすら微笑んだ。
「覚悟はできたか?」
――桓たいの春は、まだまだ続く
               <了>

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