延王×廉麟『南の風』
作者5273さん
その人は南の風のような人。
いや、人ではない霊獣。
しかし、人の形を持ち人と同じ言葉を話す。
そしてとても優しい風を纏っていた。
尚隆は今宵も蘭雪堂に足を向けた。
少々時間も遅かったせいか、人影が見あたらなかった。
「誰もおらぬか…」
一人呟くと、近くにあった長椅子に腰をおろした。大きく息を吐くと、部屋の中で動く影を感じだ。
「…貴殿は…廉台輔か…」
廉麟は卓の上に突っ伏してうたた寝をしていたようだ。
肩で大きく息をすると、尚隆の姿を認め慌てて俯いた。
「申し訳ございません。見苦しいところを見せてしまって…」
すると尚隆は優しく笑いかけた。
「なに、今宵の探索でお疲れの様子。どれ、茶でも淹れて差し上げるか」
尚隆が立ち上がると、慌ててそれを止めようと廉麟も立ち上がろうとした。
「そんな延王殿にお茶を淹れていただくなんて…っ!!」
立ち上がりかけた廉麟だったが急に膝をついた。
尚隆も急須を手にとりかけていたが、すぐに異変に気付いて廉麟の脇に駆け寄った。
「どうされた?」
「少し、少しだけ足を痛めたようです…」
長時間の泰麒の探索のほぼ毎回に立ち会っている廉麟だったのでその疲労は濃くなっていた。
その上、どうやら今夜は蓬莱で足を痛めたようだった。
その意地らしいほどの奮闘ぶりを見ていた尚隆は優しく手を差し延べた。
「では茶はまた次にいたそう。俺の淹れる茶はいつもまずいと六太に言われているからな。
それよりも廉台輔、今宵はもう休まれるが良い」
いつもは無骨で、武人然とした雰囲気を持つ延王尚隆であったが今宵の優しさに満ちた言葉に廉麟も黙って頷いた。
そして差し延べられた腕をとった。
「あっ、そ…そんなっ…!」
尚隆はその細い腕に力を込めると、軽々として廉麟の体を抱き上げた。
「その足では寝所まで歩くのも至難と見受けた。寝所まで運んで差し上げよう」
少し悪戯心を込めた口調で述べた。
その逞しい腕にすっぽりと抱きかかえられた廉麟はただ、頬を染めて恐縮するばかりだった。
「雁国の延王にこのようなことを…本当に申し訳ございません」
麒麟の軽さは、自分のまわりにもいる六太のおかげで知っていた。
しかし、初めて麟を抱きかかえてみるとその軽さは少年の姿の六太とさほど変わらないものだった。
その美しい頬の紅色を間近にして自然と尚隆の表情もほころぶ。
「そんな恐縮しなくとも…。病人や怪我人を運ぶのは当然の行いだ」
そのまま抱きかかえたまま、廉麟の寝所となっていた部屋へ向かった。
かなり遅い時間になっていたので、他の者を見かけることもなく寝所へ辿り着いた。
抱きかかえた廉麟を気遣うようにそっと牀榻へと降ろした。
「本当にありがとうございました」
まさに恐縮然り。申し訳なさそうにしている廉麟の肩を叩く。
「廉台輔の働きは衆目にもわかっておる。ゆっくり疲れを癒すが良い」
そう言うと尚隆は少し苦笑気味に笑った。
その表情を見て廉麟は不思議に思った。
「何か…可笑しいことが?」
「いや、すまぬ。うちの悪ガキ、範の生意気小娘、慶の唐変木ばかりを見慣れていたが
そのように控えめで優しい麒麟はしばらくお目にかかっていなかったと思ってな」
すると廉麟は「まぁ」と釣られて微笑んだ。
「賢い延台輔、可憐な氾台輔、寡黙な景台輔に怒られてしまいます…」
尚隆も吹き出した。一通り笑いあうと、尚隆は少し真面目な表情を作った。
「そうなると廉王がうらやましいな。このように美しくも健気で逞しい廉台輔が側にいるなんて」
また尚隆の腕が延びた。指が廉麟の頬をかすめ、うなじ辺りの金の鬣を梳く。
一瞬、ビクッと反応をした廉麟だったが何も言わず大人しくされるがままだった。
「美しいな。その金の鬣も、透き通る肌も、瞳も、唇も…」
廉麟は黙ったままだ。
慶に来て依頼、廉麟の尚隆に対する印象は変わっていった。
もちろん麒麟にとって自らの主上への忠誠は絶対であったが、それとは違った気持ちが尚隆へ芽生えていた。
「もし…もしも廉台輔が望んでいただけるのであれば、このまま体を預けてみはしないか?」
尚隆はこれからしようとする行いに同意を求めた。
普通なら卑怯な、と思われても仕方ないが廉麟はしばらく間を置いて答えた。
「延王の御心のままに…。私に一時の癒しを…」
「…承知した」
そう言って、尚隆は廉麟の帯に手をかけた。
やや恥ずかしそうに顔を反らした廉麟のうなじに顔を埋めた。
「ぁん……」
小さくもらす吐息に尚隆は答えるように囁いた。
「…南の薫りがする」
それだけ囁くと手際よく着物を脱がせた。そして廉麟を横たえさせると、自らも脱ぎそのまま牀榻へあがった。
想像通り細い体に形の良い胸があった。手が胸に触れると想像以上に柔らかで温かかった。
優しく乳房を揉み砕くと、その頂を指でなぞった。その刺激に廉麟は大きく喘いだ。
「あぁ…ん…ひっ…!」
喘ぎに答えるように今度は頂に口を付け舌で転がし始めた。更なる刺激に廉麟は喉を震わせた。
舌はそのまま、下肢の方へ移動し、臍の下で一旦止まった。
舌で円を描くように舐めると、下肢がヒクリと動くのがわかった。
柔らかい股に肘を載せると尚隆は廉麟の耳に届くように言った。
「少々重いやもしれんが、我慢されたし」
そう言って肘をついたまま、金色の繁みに手をかけるとそのまま指を秘部へと忍ばせ割れ目をなぞった。
迫り来る快楽の波に廉麟はきつく牀榻の縁を掴んだ。
「…いゃぁ…ぁぁ…ぁん」
少し上肢を起こした尚隆は廉麟の表情を確かめると指で花芽を刺激すると、秘口へと指を差し入れた。
秘口は軽々と指を飲み込んだ。
もう一本増やして、今度はその二本指を浅く出し入れした。
甘い喘ぎをもらす廉麟は耐えられなくなり、膝を立てようとするが尚隆の肘がそれを邪魔した。
その動きに気付いた尚隆は秘口を攻めている右手はそのままに、両肘を退かし、左手で近くにあった枕をとった。
その枕を廉麟の腰に宛って腰に角度を持たせた。
指を抜き、その指は再び割れ目をなぞり始めた。
尚隆は顔を廉麟に近づけ、きつく閉じた目に接吻した。
「貴女の瞳が見たい」
そう言われ、恐る恐る目を開けると薄く笑む尚隆の顔が間近に見えた。
そのままお互い何も言葉を交わさず、尚隆は廉麟の耳朶を甘噛した。
「…んぁ…ん…もう…持ちませ…」
廉麟の途切れ途切れの言葉を聞き、尚隆はその望みのままにした。
己の硬度を増した自分自身をそのまま廉麟の秘部へ押し当て、一気に突いた。
「ひぃ……あぁん………っ!」
二人の影が牀榻に寄り添うように横たわっていた。
厚い尚隆の胸板の脇に廉麟は頬を寄せていた。
尚隆も優しく何度も金色の鬣を梳く。
「…延王は…物足りなくはありませんか…?」
何度か廉麟は高みに達した。しかし、尚隆は一度だけ精を放っただけだった。
すると尚隆は梳いた鬣に唇を寄せて言った。
「物足りなくはない。これ以上、廉台輔の体に負担をかけたくない。
だから今宵は台輔が満足してもらえればそれで満足だ」
その言葉を聞いて廉麟は安堵したかのように小さく息を吐き目を閉じた。
「これで明日からの探索の糧を得ました。このまま眠らせください…」
「良かろう。眠りに落ちるまで今宵は側に居よう…」
安らかな寝息が聞こえるまで側にいた尚隆は、やがて起きあがり廉麟を起こさぬようにそっと着物を羽織り寝所を後にした。
「あの鬣には南の甘い薫りがする…」
呟きながら、満足そうに自らの寝所に戻っていった。