利広×珠晶
作者5356さん
欲望を放ち終えて幾分硬度を失った『それ』が、胎内から出て行く『ズルリ』とした感触。
達したばかりの敏感な身体に追い討ちをかけるような感覚に、珠晶はまだ慣れずにいた。
「はぁ・・・ん・・・」
開きっ放しだった唇から声が漏れ、慌てて口を閉じたが遅かった。彼女の上から退こうとして
いた人物の瞳が悪戯っぽく細められる。
「・・・供王様はずいぶんと感じやすくておられる」
笑い含みの声の主は奏国王が次男、卓朗君利広だ。
「五月蝿いわねっ・・・そうさせたのは誰よ!?」
羞恥を誤魔化す様に翻った掌をあっさりと捕まえると、彼はその手に唇を押し当てたまま優しく
諌めた。
「すぐに叩こうとするのは良くないな。手を傷めるよ?」
「放っておいて。あたしの手よ・・・放しなさいっ」
利広はそれに応えず、珠晶の手を慰撫するように唇で触れる。指先を啄み、甘く噛めば彼女が息
を詰めるのがわかる。女王の名に相応しい気高さが臥牀の上では影を潜め、利広の前ではただの
意地っ張りな少女に変わる、それが楽しかった。
手を振り解き、彼に背を向けるように伏せると、彼は笑いながら珠晶の髪を撫でた。
やがて珠晶は口を開いた。
「ねえ、お願いがあるんだけど」
「なに?」
「黄海に連れてってくれない?」
利広の手が止まった。目を丸くしているだろう事は見なくてもわかる。
「そういえば、もうすぐ秋分だね。・・・どうして今頃?」
「このまえ雁国に行ったの」
「雁?」
「延台補と延王って、更夜・・・犬狼真君の友達だって聞いたわ。それで」
「・・・真君の?へぇ、そうなんだ」
正確には延台補の友達で、延王とは知り合いだって、と珠晶は補足する。
偶然から懐かしい名前を思い出し、顔を見たくなった。恭国も落ち着き始め、珠晶もだいぶ成長
したと思う。誇らしいそれを報告もしたい。
彼女の言いたい事をまとめると、こうだった。
「で、僕にそのお供をしろ、と」
ほんの少しいやみの混じった声音に珠晶は振り向こうとしたが、利広はそれより早く、彼女の
うなじに顔を埋めた。
「ひゃっ!?・・・あ、ちょっとっ!?」
細い腕を背後から押さえ、圧し掛かるようにしているから抗うことなどほとんどできない。肩を
強めに噛まれ、痛みに声も強張る。急に態度の変わった利広。一体どうしたというのか。
珠晶の戸惑いを無視して、利広は先程とはうって変わって乱暴に貪り始めた。背筋を舐め肩甲骨を
噛みながら手は彼女の脚の間へと回される。そこは先刻放ったものが溢れて潤い、利広の指を喜ん
で受け入れた。ぐちゅぐちゅと響く粘度の高い音と、珠晶の喘ぎが室内を満たしていく。
「やっ、ひ・あっ・・・りこ、う・・・なんでっ・・・?」
衾褥を掴み、背を反らして珠晶は問うが、答えはない。残滓で濡れた指が、すこし後ろの窄まりに
触れた。
「!!・・・や、利広っ!?・・・そこ、何っ・・・!?」
くりくりと円を描くように表面を弄られ、悲鳴を上げる。反射的に強張る体。
「ココも、慣れれば悦いらしいよ・・・?珠晶にはまだ早かった?」
やっと帰ってきた返事には、いつもの優しさではなく冷たい揶揄が含まれている。何故、彼はこんなに
怒っているのかわからず泣きたくなった。しかし利広の指が力を込められ、窄まりに押し入ってきた。
「いっ・・・や!嫌あ!!」
痛みと異物感と悲しさに、考えるより先に涙が溢れた。
珠晶が泣き出したのを見て、利広の頭が急速に冷静さを取り戻した。しまった、と思った。只の八つ当
たりだった。悪びれもせずに、他の男に会いたいと言った珠晶にカチンときて、少し意地悪としたくな
っただけなのだ。慌てて組み敷いていた腕を放し、上体をずらす。やっと自由になった身を捩って彼に
向き直った珠晶の平手が、利広の頬を強かに打った。
「利広が一緒なら安心だし供麒も黙らせられるから、だから連れてってって言ったの!」
利広の膝の上、腕の中で珠晶はまだ文句を言っている。
「・・・ごめん」
自分が一方的に悪いのだから、神妙に怒られているしかない。それを見た珠晶が、はあ、と大きくため息を
ついて、先ほど叩いた頬にそっと触れた。
「でもまあ、これは利広の焼きもちだったってことよね?仕方ないから許してあげるわ」
そう言って、するりと彼の首に腕を回し、抱きついた。
「ただし、次は本当に嫌だからね、覚えておいて頂戴」
「はい、女王様」
利広はそう返事をして、いつの間にか逆転していた自分達の力関係に苦笑するしかなかった。