陽子の出張おもてなし・延麒編
148さん
「今更何を嫌がる?いいから行って来い!陽子がお待ちかねだぞ」
尚隆はそう言って六太を部屋の中へ突き飛ばした。
「何だよ!俺は別に――」
言い掛けた六太の目の前で彼の身の丈の倍ほどもある扉は閉ざされた。
「ったく………あれ?…陽子?」

振り向いて広い客室を見廻したが陽子の姿は無かった。寝ているのかと牀榻を覗いてみたが其処に
も居ない。微かな水音が聞えてくる。六太は音のする方を見遣った。
部屋の反対側の端にも扉がある。どうやら湯殿のようで音は其処から聞えてくる。

六太はその扉を少しだけ開け、何故か声を顰めて話し掛けた。
「陽子?風呂に入ってんのか?」
やはり聞こえなかったのだろう、返事はなかった。
扉の向こう、床の上に籐籠があり、陽子のものらしき小衫が畳まれている。
水音に混じって陽子の息遣いが聞こえる。何か声を洩らすのを押し殺しているような、ひどく切な
げなその息遣いが六太の好奇心を掴んで離さない。
引き寄せられるように六太は歩を進める。

湯船の方に衝立があった。吐息は一層切なさを増し、声を抑えることが出来なくなっているようだ。
いけないと思いつつも六太は足を留める事が出来ない。衝立に身を隠し、隙間から陽子の姿を覗き
込んだ六太は思わず息を呑みこんだ。


――湯殿に入った陽子は小衫を脱ぎ、綺麗に畳むと湯船へと向かった。
汲み上げた湯を身体に掛けて汗を流し、洗った髪を纏め上げる。そして湯船に身を沈めるとふう、
と深く息をついた。疲労が湯に流れ出して行くようで心地良い。
とまれ余り悠長にしてもいられなかった。こうしている内にも六太が部屋に来るかもしれないのだ。


陽子は湯船から上がると、常世では非常に高価だと言われる花の香りのする石鹸を手に取った。
湯に浸したそれを軽く泡立て、身体に塗り付ける。そこに香りを沁み込ませるかのように腋や乳房
を念入りに擦る。掌に乳首が固く尖り始めてころころと転がる。
「…ぁ、ん…」
――だめだめ、こんなとこで気分出してる場合じゃないって。早く洗わなくちゃ…
陽子は自分を窘め、疼く乳首に名残り惜しささえ感じながらも肝心の場所へ指先を延ばした。
ほんの少しだけ付けた石鹸の刺激を僅かに感じる。花びらをくすぐるように撫でる。
「ん…」
花弁の合わせ目に隠された小粒の真珠を弄びたい欲求と闘いながら花芯へと指を沈めてゆく。
爪で傷を付けない様ゆっくり丁寧に内壁を擦る。湯桶に指先を濯いでは内奥の、尚隆の残した欲望
のしるしを拭い取るようにそっと送り込む。

いつしか無意識のうちに指の動きは忙しなくなり、床の上に座り込んでだらしなく脚を開いていた。
気が付けば空いた左手は乳房を包み、固く勃起した乳首を摘んでは弄ぶ。
まるで誰かの手によってそうされることを望むかのように。
最早湯など手に取らなくとも溢れ出した充分な潤みが指先の活動を助けてくれる。本来の目的を忘
れてしまった指は爛漫と咲き誇る花びらを彷徨い、密かに隠された宝玉を探り出す。
「あ、はぁ…ん、…いぃ……」
――いけない!もうやめなきゃ…やめなきゃ…でも、だめ……もう、行くとこまで行くしか……
陽子は触れてはいけない宝玉を指の腹に捉え、もはや遠慮なく擦り上げる。
優しくゆっくり、時には強く、自分が最も良くなれるよう、指先は淫靡な調を奏でる。
「あ、いいの…気持ちいいの…あん、…すご…すごくいい……あっ、もう…」
――いきそう………六太くん、もう来るころかな…早く仕度……でも、あと少しだけ……

陽子は目前に迫る頂をじりじりと先延ばしにして愉悦に浸る。頭の隅に消えかけていた懸案から、
固く閉じていた目を薄く開いて衫を畳んだ籠の方を見遣る。刹那に凍りつく意識と身体。
衝立の陰から呆然と自分を見ている金髪の少年を凝視して――

「いやぁ―――っ!」
女と云うのは咄嗟の時には取敢えず被害者になれるものだ。混乱する陽子は手許にあった桶を思い
切り投げつけた。凍っていたのは陽子だけではなかった。
六太は額を庇おうと咄嗟に横を向く。それが精一杯。側頭部に桶を食らって意識が飛んだ。
「きゃ―――っ!六太くん!」
陽子が再び悲鳴を上げた。

「――くん…六太くん?」
霞む視野の中陽子が心配そうに覗き込んでいる。陽子が白いな、と思ったら頭と胴に白い織布を
巻いているだけだった。何やら心地良いのは陽子の膝枕だからだった。
「大丈夫?……死んじゃったかと思ったよ…」
陽子は涙ぐんで言った。
「な…何言ってるんだ?んな簡単に死ぬ訳ねーだろ……脳震盪って奴だよ」
六太は呆れて言う。
「ご、ごめん…痛かった?」
「思いっきり投げてくれるんだもん、痛いに決まってんだろが」
「ほんとにごめん…」
側頭部を撫で擦る六太を陽子は心底申し訳なく思い、膝の上に横たわる六太に何度も謝った。

「ところで陽子、随分と大胆な格好だったけど…尚隆じゃ満足できなかったか?」
途端に陽子は耳まで真っ赤に染めて狼狽する。思い出しても消えてしまいたいほどに恥ずかしい。
迂闊と言われればそれまでだが、まさか見られているなどと予想すらしなかった。
だからあれだけ大胆になれたのだ。
「え?ち、違うよ!あれは……あの…わたし…だから…つまり…洗ってる途中だったんだ……」
徐々に消えて行きそうな声で陽子はその真意を明かした。本当にただ洗うだけのつもりだったのだ。
初めのうちは。
「変わった洗い方するんだな、陽子は」

「だって、気持ち良くって……ん?……そうか…ずっと見てたんだ…もう起きろ!」
陽子はむっとして揶揄する六太を押し退ける。板の間に思いの外軽い六太が転がった。
「そっちこそ、こっそり覗くなんて卑怯だと思わないか!」
「その格好に男言葉は似合わないぞ、陽子」
身を起こした六太は陽子の詰問をはぐらかした。
「茶化すな」
据わった目でじろりとねめ付ける陽子。王たる貫禄も付いて来た陽子の睥睨に六太は身を縮ませる。
「ごめんなさい!…ま、まああれだ、…綺麗な裸を見たいってのは男の性だから、許してよ。
陽子はすごく綺麗だったぞ。寧ろ俺はありがとうと言いたい」
六太は真剣な眼差しで言った。
「分かったよ!わたしが迂闊だった……もう!……だけど…いや、いい…」
ぷいと横を向いて陽子は膨れる。六太はぷっと噴き出した。
――別にわたしじゃなくても、裸の女なら誰でも良かったのか?
そう訊きたかったのだけれど。

「さてと、ついでだから俺もひとっ風呂浴びるかな…」
冗談混じりに言う六太に陽子は少しの間黙っていたが、六太の腕を掴んで立ち上がる。
「あ、お、おい!…」
「ほら、向こうが露天になってて、気持ちいいよ…背中流してあげるから早く脱いでおいでよ」
言いながら陽子は湯船へ向かう。
「あ、ああ…」

「陽子は…その、恥ずかしくないのか?」
袍を脱ぎながら六太は尋ねた。
「わたしだって恥ずかしいよ…でもちょっとだけ慣れたかも……」
湯船に浸かって背を向けた陽子は露台から蒼空に映える高岫山を眺めながら答えた。
六太は石を丸く削った腰掛けに座り、腰に手拭いを掛ける。


「陽子さぁ……何だか変わったみたいだ…」
背中を陽子に擦って貰いながら六太はぽつりと言った。
陽子は微かに笑みを浮かべ、静かに答える。
「わたしはわたしだよ。何も変わってない…いや、ちょっとだけ変わったかな……」
一つ一つ言葉を手繰り寄せるように陽子は緩やかに言う。
「わたしのことを想ってくれる人には精一杯、心から応えてあげたい…そう思うようになった…
それが王としてのわたしの、あるべき姿、かな?…それしか出来ない駄目な王だけどね……
あ!もしかして…わたしと延王とのこと、妬いてるのか?」
そう言って陽子はくすりと笑った。

「ばっ……な訳ねーだろ!違うよ!…でもあのさ、聞いてもいいか?………楽俊のこと…」
陽子の手が止まる。背を向けている六太にはその表情は窺えない。
「好きだよ。ううん、大好き…楽俊はわたしにとって掛け替えの無いひと……もしも、わたしが王
じゃなかったらきっと……」
そう答えた陽子の声は何処か寂しげに聞えた。
「まさか、結婚できないからって、別れるつもりなのか?」
我ながら意地の悪い問いだと六太は思う。だがどうしても言わずにはいられなかった。
陽子の言葉の一つ一つ、そこから陽子の心の奥を僅かでも知りたい、そう思っていた。
六太の背を見詰めながら陽子は首を振る。
「ううん、わたしはずっと楽俊の傍に居たい。別れたい訳無いよ……でも、楽俊はきっとそのうち
愛想尽かしちゃうかも知れないな…そうなって欲しくないけど……こんなわたしだから…」
「そっか……」
六太は陽子に返してやれる言葉を見つけられなかった。

「やだな、折角おもてなしに来たのに、なんか暗くなっちゃうじゃない!」
陽子は努めて明るく言い、六太の背に湯を掛ける。そして立ち上がり、六太の目の前に膝を突いた。
思わず六太の視線はその胸元に釘付けになる。

湯に濡れて貼り付いた白い綿布、それは普段は官服に、或いは幾重にも着させられた襦衫に全て隠
されていた陽子の胸のふくらみを緩やかになぞる。
剰えうっすらとその頂きにある蕾を浮き立たせ、同じ色あいの暈をも透かして存在を示している。

「陽子…その………胸、透けてるぞ…」
六太はどう反応して良いのか悩んだ挙句、ぼそりと言った。
「言わないで。そんなふうに言われると余計恥ずかしいよ………」
頬を染め顔を背ける陽子。分かっていた。本当は恥ずかしかった。それでも思い切って隠しもせず、
六太の前に身を置いたのは、裸同然で接しているのに一向に食指を動かさない彼を挑発したかった
から。彼の心が知りたかったから。指摘されたのは予想外だったが、その律儀さは麒麟たる所以か。
そして刺さるように注がれる六太の視線を陽子はただじっと受け止める。
それが陽子に対する好意なのか単なる雄の本能なのかは分からないまま……

――まずい!六太は己の肉体が視覚によってごく自然に反応し始めたことに赤面した。
手拭いを掛けた腰を心持ち引く六太。
陽子はこんもり盛り上がりつつある手拭いをちらりと見遣り、六太の膝の間に割って入る。
「ずっと…待っててくれたんだね」
近付く陽子から逃げるように六太は視線を逸らす。
――そうさ、ずっと待ってた…陽子が尚隆に抱かれてるのかと思うと、俺は…
「別に、つーか…あれだ…そう、景麒と世間話を…だから待ってた訳じゃ…いや、…少しだけ…」
――聞いてもいい?それは、どうして?ただそこに抱かせてくれる女がいるから?それとも――
「ごめんね……待たせちゃったのと、さっきのお詫びに、前も洗わせて…」
陽子は俯いたままそう言うと掛けていた手拭いを取り去る。
「お、おい…洗うって一体何――」
そうしてゆっくりと顔を沈めた。
「口で……」
其処から先は言葉にならなかった。まだ固くなりきっていない六太の分身を陽子はそっと含んだ。

舌でなぞられると分身は見る見る漲って行く。尚隆のそれと較べれば小振りだが、あどけなさの残
る少年の容貌にはひどく不似合いなその姿かたち。陽子はその分身に丹念に舌を絡めてゆく。
「ん…んっ、ふ…ん……」
くぐもった吐息が湯殿に響き、時折ぴちゃぴちゃと濡れた音がそれに混じる。まだその行為の経験
が多くない陽子だけにその技には拙さがあったが、六太が快楽の波に呑み込まれるには充分だった。

だが何よりも、六太を激しく奮い上がらせるのは陽子のその姿――
――伏し目がちな翠の瞳、緩く前後に揺れるその頭に巻いていた織布がはらりと落ち、しっとりと
濡れた髪が肩に懸かる。それは許されぬことと知りながら、強く心を惹かれる少女――
紛れも無く彼女が眼前で己のものを口に含んでいるその事実こそが。
夢ではない、そう思った瞬間、倍増する快感に六太は一気に昇り詰めてしまう。
必死に堪えていたものが堰を切って己の分身を駆け上り、陽子の桜色の口中目掛けて迸る。
「あっ!駄目だ陽子っ!」
「んっ!…ぐ…」
余りに咄嗟の出来事に陽子は心の準備も出来ないまま、生まれて初めて男の精をその口に注がれる。
愕くほど大量の白濁液を口中に浴びせられ、陽子はけほけほと咳き込んだ。

「ご、ごめん…俺、我慢できなくって……大丈夫か?」
六太は真っ赤になって咽る陽子に狼狽し、陽子の背中を撫でさする。
陽子は涙を流し、息を整えながら唇に垂れた余滴をそっと拭った。
「はぁ…はぁ、…うん…大丈夫、ちょっと咽せちゃっただけ…ちょっと口濯いでいい?」

「…なんか格好悪い…」
口に含んだ水を吐き、ぽつりと呟く陽子に六太は項垂れ、自嘲する。
「だよなぁ…我ながら情けないよ…」
「え?ち、違うよ、六太くんのことじゃないんだ…わたしが…あんまり慣れてないから…」
陽子は慌てて己の言葉の意味を説いた。

「そんなことないぞ!…あ、…いや、慣れてるって意味じゃなくて…つまり…すごく良かったぞ…」
「そう、良かった……」
優しく微笑む陽子を見て六太はひどく後悔していた。
未だ脈動すら収まらぬ猛々しい己の分身を、六太は手拭いで圧し包む。
もう少し、もう少しだけ陽子の唇を、舌を身体に感じていたかったのに――

「あ、あのさ…」
「なに?」
息の懸かるほど近くに、見上げる陽子がいる。六太は途切らせてしまった先の言葉を探す。
――尚隆なら簡単に、しかもその気になるように言うだろうな。けど俺にはとても言えない…
言ってしまうと本気になりそうだから…いや、もう、なってるんだ――
陽子はその瞳で誘うように見詰めている。
潤んだ瞳は咽せたせいか、或いは再び呼び起こされたもののせいなのか、心の内は読み取れない。
「…六太くん…あのね、…」
六太は先刻も見たその瞳にまた引き込まれ、そして何か言い掛けた陽子を抱き締める。

「俺……陽子が欲しい」
更に陽子を強く抱き締め、その唇を求める。だが陽子は困ったようにふっと顔を背けて言った。
「今はだめ……」
「そんな、今更どうして…」
六太はあからさまに不満を込めた口調で問い詰める。
「ここではいや………先に上がって待っててくれる?」
じっと見詰めて問う六太に視線を合わさぬまま、陽子は身体を固くする。
「ここにいちゃ駄目か?」
「明るいところで見られるのは…やっぱり恥ずかしいから…」
実際、既に股を広げてあられもない姿を披露しているのに今更なのだが、恥ずかしかった。
――本当はすぐにでも抱かれたい。だけど、嘘を吐いてでも、あなたの本心を確かめたい。


「分かった…けど…その前に、何つーか…折角だから俺も陽子の背中流してやるよ…なんて」
「え?………背中だけなら…」
陽子は小さく頷くと石の腰掛けに座り、巻いていた綿布を弛めて背中を見せた。
「背中流したら先に上がってくれる?」
両腕で前は落ちないよう抑えている。六太は陽子のその言葉、その仕草に何か冷たいものを感じる。
「何だよ、そんなに俺には見せたくないのかよ…尚隆には見せたくせに!そんなに俺は邪魔者かよ!」
多分に嫉妬の色に染まったその言葉が陽子の背に刺さる。はっと振り向き、見上げた。
「違う!違うの…」
「違わないだろ、変に期待なんかさせないで、嫌ならいやだってはっきり言ってくれればいいんだ。
別に俺は無理強いしようとなんて思ってないから!」
六太は吐き捨てるように言った。
「違う、嫌じゃないよ……」
「だったら…」
言い掛けた六太を押し留めて陽子は自分の思いを吐露する。
「景麒や尚…延王みたいにわたしを辱めて歓ぶんじゃなくて、六太くんとは綺麗に結ばれたいって
思った…でも違うよね。それはわたしの独り善がりな思い込みだ…」
六太はきまり悪そうに言った。
「…ごめん、俺も言い過ぎたよ」
「ううん…わたしが悪かったんだ」
陽子は首を振った。六太は陽子の肩に手を掛けて背を向かせる。
「背中流してやるよ…そしたら俺、向こうで待ってるから………」
「うん…ごめんね……」

「陽子って綺麗だよな…」
六太は陽子の背を擦りながら静かに話し掛ける。
「そんなことないよ、みんなは男みたいだって言うし…街じゃ普通に男の子と間違われるし…」

陽子は背を向けたまま首を振った。
「俺は初めてお前に会った時から綺麗だなって思ってたぞ……ま、いきなりそうは言えないから、
あの時は冷やかしたけどな」
「そうだったね…でも、うれしいよ…」
遠い昔の懐かしい出来事を思い出すように陽子は呟いた。
――教えて欲しい、その言葉の裏にあるあなたの心を。どうか言葉で伝えて欲しい…

「ああ、濡れた髪って色っぽいな……それに、いい匂いがする…」
六太は陽子のしっとり濡れて結い上げられた髪を解く。それはぱさりと肩に落ち、濡れて色濃く艶
めく緋色の髪は六太の心の奥底にふつふつと沸き上がる感情に拍車を掛ける。
その髪を一掴み、すっと口許に近付けて唇をあてる。
「だめだよ、また濡れちゃう……」
俯いて、陽子は言ったがそれは口先だけのこと、六太のすることを諌めた訳ではない。
寧ろそれはこれから取るであろう自分の行動に対する言い訳のような口調だった。

「ごめん陽子、やっぱりもう我慢できない」
背後から抱き竦める六太の手が胸元に留まる陽子の手を引き剥がす。
「あっ…」
指先を柔らかく、だが適度に張りのあるふくらみが押し返す。
「あん……だめだよ…六太くん、嘘吐きだね…」
陽子が発するその声も、悪さをする腕を掴むその手も弱く、行動を阻止するには程遠い。
「だってこの状況で男が我慢できる訳ねーじゃん。陽子が誘い上手過ぎなんだよ」
「そんな…わたし誘ってなんか……んっ…」
そう、嘘吐きは、わたしの方だ――
くすぐられて頭を擡げる乳首が疼く。六太は肩越しに陽子に囁く。
「その恥ずかしくて仕方ない、ってのに男は弱いのさ」
「だってほんとに恥ずかしいんだ…」

陽子は身を竦める。それも偽らざる本心だった。
心を許せる相手に求められたからと云って、いきなり嬉々として身体を曝け出すことなど到底出来
ない、そこまで慎みがない訳ではない。
――決して演じている訳じゃない。だけど、わたしの心は嘘吐きだ――

「だからこそさ」
六太は陽子を振り向かせ、唇を重ねた。
「ん………」
陽子は半身を向けて瞼を閉じる。
撓垂れ掛かった陽子の柔らかな重みに辛うじて保っていた六太の理性が消し飛んだ。
「もうだめだ!我慢出来ねー!俺はここでする!いいな陽子!」
「え?…う、うん」
血気に逸る六太に気圧されて陽子は頷いた。殆ど同時に六太は陽子の乳房にむしゃぶりついた。

「あ…はぁ」
――でも、こういう乱暴なのって初めてだな……楽俊は、わたしがいくら積極的になってもいつも
何処か遠慮がちだし…景麒や尚隆は上手過ぎて完全に向こうの手管に嵌められちゃうし…
「あ…んっ…そんなに強く吸ったら、…痛いよ…」
乳飲み子のように乳首を咥えて強く吸い上げる六太に陽子は訴える
――何だか六太くんて五百年も生きてるとは思えないな、こうしてると見た目通りの子供みたい…
陽子はどこか可愛ささえ感じる六太の髪をそっと撫で、己が胸にその頭を抱き寄せる。
――もう、どっちでもいい。欲望だけでもわたしを抱いて…わたしを嫌いじゃないのなら…

強く吸われ、伸びた乳首を六太の舌先が舐り、唇が扱く。
「あ、あん……」
陽子は感じ易く、寧ろ弱点と呼んで差し支えないその突起を執拗に責められて思わず仰け反った。
腰掛けに座ったままの不安定な姿勢が心許無くて、陽子は腰を軸に身体を廻して壁に凭れ掛かる。

六太は吸い付いたまま陽子の動きに追従した。陽子の身体の位置が落ち着いたところで置き去りに
されていたもう片方の乳首を同じように強く吸い上げる。
「ああっ…だ、だめっ…強くしないで…あ、い、いいの…」
六太は空いた乳房を鷲掴みにして指の間に乳首を挟んだ。吸い上げられ舐られて赤みを増した乳首
を強く擦られると、陽子は子猫のような鳴き声を上げながら首を振る。
「ひっ、いやぁー…ぁぁん…だめぇ…」
六太はその声を愉しむかのように両手で乳首を転がし、弾き、揉み解す。
「やだ、だめ…そんなにされたら…」

「こうなるんだな」
言いながら六太は閉じた脚の間に強引に手を差し入れる。
「やっ…」
薄い叢を進む六太の指先にぬるつく花びらが纏わり付く。溢れる蜜が指を濡らす。
「もうこんなになってんなら、…入れてもいいか?」
「………いや」
陽子は小さく首を振り、消えそうな声で言った。
「嫌なのか?」
「…もっと触ってくれなきゃ…いやだ…」
含羞みながらも陽子は自分の欲求を正直に伝えた。
「分かった…じゃあ陽子が挿れてくれって言うまでな」
「わたし、そんなこと…言わない…」
「言わせてやるさ…」
六太は腰掛けている陽子の前に身を沈める。陽子がそうしたように。
「えっ?…だめだよ…見ちゃ嫌だってば…あ、あぁっ…」

「綺麗だな……ここが陽子の匂いが一番強いな…」
陽子の腰をずり下げて、息づく花園に舌を差し伸べながら六太は言った。

「…ん…それじゃわたし…は、ぁ…いつも変なこと…してる…みたいじゃないか…」
「いや、いつもとは違うよ…けど陽子…さっきみたいな悪戯してると、景麒に勘付かれるぞ」
――もう……ばれちゃったよ…陽子は心の中で呟く。なるほど麒麟は鼻が利く。
その鼻先を敏感な真珠の粒に擦り付けながら六太は溢れる蜜を啜る。
「やあぁっ……六太くん…ずるいよ」
陽子は六太の鬣を掻き毟りながら途切れがちに言う。その間にも六太の舌は届く限りに陽子の深い
ところを探索する。まるで泉の源を探そうとするかのように。陽子の額に浮き出る汗は胸の谷間を
伝って滴り落ちる。その汗と同じように陽子の泉は枯れることを知らない。

「子供の振りして…ぁん…ん、……こんなの…は、反則だよ…」
「それは陽子が勝手に思い込んでただけだ……陽子、もう欲しくなっちゃったか?」
見上げる六太に陽子は首を振る。
「…まだ…お願い、このまま最後まで…」
「そしたら欲しいなんて言わなくなりそうだから駄目」
六太は意地悪く更に顔を離す。

「…言うから…お願い…ここも……その…少し尖ってるとこ…」
上気した顔でおずおずと指差す先、そこは大きく開かれた脚の付け根、綻んだ花びらが織り成す蘭
にも似た佇まい。その合わせ目に薄紅色の真珠の粒が僅かにその姿を見せている。
「見られるのは恥ずかしいんじゃなかったのか?」
陽子は強く首を振る。そして掠れた声で言った。
「…お願い」
「いいよ…」
六太は再び顔を沈め、舌先にその小さな宝玉を捉えた。
「ひっ…あ、だめ…いや…あ、あ、…」
望んでさせた事なのに陽子の口を拒否の言葉が突いて出る。陽子の爪が六太の肩に食い込む。
六太は宝玉に磨きを掛けるように小刻みに舌を震わせた。

「あ――っ!」
それは陽子に悲鳴を上げさせる引き金となった。六太は尚も容赦なく舌を押し付け震わせながら、
跳ねる陽子を抑えるように腕を伸ばし、固く尖った両の乳首をきゅっと摘んだ。
「いやいやいやぁ――――っ 」
駆け上がる様に激しく達し、陽子はぐったりと六太に凭れ掛かった。


気が付けば牀榻に仰臥している。熱気に当たって上せてしまったのか、陽子は思った。
額に置かれた冷たい布が心地良い。六太が見下ろしていた。そして笑いながら言う。
「陽子もずるいな。自分だけいって気を失うとは思わなかったよ…」
「ごめん、…上せちゃったみたいだ………もう、大丈夫だよ」
陽子は見上げる。言外に匂わせるその意図を翠の瞳で伝えるように。
「大丈夫ってのは…そう言う意味?」
その思いを察してくれた六太に陽子は小さく頷いた……

二人は柔らかい唇の感触を確かるかのように甘く、優しく互いの唇を啄ばむ。
遠慮がちに探り合うように互いの舌先を突付いては離れ、離れた舌を銀の糸が繋ぐ。
長い口づけに甘い溜息を吐く陽子の流麗な顎、柔らかな頬、意外に細く華奢な首筋から肩へ、
愛しさを伝えるように唇は這い、指先は未だ乾かぬ髪を優しく梳る。
想いを寄せる少女の甘く切ない吐息は六太の耳をくすぐり、背に廻された、我が身を抱き締める腕
の強さがその心を惑わせる…

仮令切ない心の内を説いたところで、それは決して叶うことのない、他国の女王への恋慕の情。
ならばこの想い、死ぬまで胸に仕舞っておこう。
だがせめて今日だけは、心行くまで抱かせて欲しい、この精も根も尽きるまで応えて欲しい。
こうして恋しい隣国の君を抱けるのは今日が最初で最後かも知れないのだから。

「今だけ、好きな奴のことは忘れてくれないか?」
「…わたしは……好きなひとのことは忘れない……」
口を噤んで見下ろす金色の髪の少年を濡れた翠玉の瞳がじっと見詰め返す。
――忘れないよ、だってわたしは……
その言葉、互いの胸に秘めた同じ想いを口には出さず、陽子は目を閉じ、そっと二人は唇を重ねる。
天も民も許してはくれない二人なら、せめて仮初めの振りをして求めたい……

その愛しい娘の身体の隅々まで六太の指先は撫で、唇が這う。
その愛しい男の甘美な調べに陽子は揺蕩い、愉悦の波に呑まれてゆく。

やがて二人はお互いを求め合い、熱く燃える身体を繋ぐ。
身体の芯まで蕩けるような陽子の中に迎えられ、六太は敢え無く果て、夥しい精を放つ。

それでも六太は己の精が尽きるまで優しく、或いは獣のように、飽くことなく陽子を求めた。
陽子は厭うことなくそれに応え、求められるまま何度も身体を開いた。
感じるままに歓びを謳い、泣いた。羞じらいを捨て上になって腰を振り立て、四つん這いになって
尻を突き出した。疲れた身体を互いの指で口で昂め合い、褥を濡らしてしまうほど溢れさせては何
度も達し、内奥に、口中に精を受け止めたのは何度目か、もうそれも分からない程に宴は続く……


移ろう時に、窓外に聳えていた高岫山は闇に融け、天には星が瞬いている。
蒼茫の牀榻の中、陽子は解けてゆく心地良い疲れに目蕩みながら傍らを見遣る。
――あなたはきっと気付かない、この胸の切ない想い、許されないと知っていて、望んで止まないわたしの想いに……
だからせめて夢の中で、わたしの想いを伝えたい……

そこに静かに寝息を立てる稚けない少年の手を握り、そっと耳元に囁くその言葉―――


―――終章―――

「さあ陽子、夕餉の後にもう一勝負と行こうぞ!」
帳を撥ね上げ、まるで洗濯物を扱うように尚隆は片手でくたびれきった六太を掴んで肩に担ぐ。
「ええっ?」
飛び起きた陽子は掛けていた小衫を手繰り寄せて身体を隠した。
「何だ?こやつは干からびてるがお前は満腹した訳でもあるまい?そうそう、景麒から訊いたぞ、
何でも陽子は後ろが大層お気に入りとか」
好色そうな笑いを含して尚隆は言った。
「え?…!!……そんなの嘘です!出鱈目です!」
バカ景麒!覚えてろ!陽子は心の中で壁の向こうに毒突いた。
「見た目と変わらぬのその歳でな……いや恐れ入った」
その感嘆の口調は揶揄でしかない。
「ち、違います!あれは景麒が無理矢理したことですっ!痛かったんですから!あ……」
陽子は己の言葉に顔を朱に染めて俯いた。
「ははは…痛くしなければ良いのだな?心得た」
「もう!良くありません!」
寝台の縁、陽子は膨れ、床に届かぬ脚を振る。その様に尚隆は高く笑った。

「しかし、怒った陽子は格別に可愛いな…」
そして尚隆はその頬を指先で軽く撫で慈しむ。
「夜は長い。今宵忘我の果てに麗しき女王と添い臥すは、これではなく…俺だ」
「………はい、……尚隆…」
陽子は見上げ、静かに微笑む。
その揺れる翠玉の瞳、微かに煌くは悦楽への誘ない――

―了―

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