作者:257さん >580-584、622-627

 ――さすがに匠の国、というべきか。
 範の王城の路門をくぐり、殿堂へと案内されながら、陽子は心中密かにため息を吐いた。
 建築様式には詳しくない陽子にも、周囲の建物や装飾の美しさが飛び抜けていることはわかった。
 美しいけれども華美ではない、品のよさは氾主従のひととなりによるものだろう。鼻につくほどに主張せず、しかし確かに感じ採れる格式の高さは三百年の治世の重みか。
 こちらに比べると、確かに雁の建物は無骨な感を否めない。同じく長い治世を誇る国でも、王によってこれほどの差が出るものか。
 慶はどうだろう――と陽子は考えて苦笑した。
 どう考えても範より雁に近くなりそうな気がする。もちろん、今は民の暮らしを立て直す方が先で、まだまだそんなことを考える余裕はないけれど。
 そんなことを考えているうちに殿堂に着いた。その途端、陽子は柔らかなものに抱きつかれた。
「――氾台輔」
 多少ふらつきながら、何とか持ちこたえて相手の名を呼ぶ。
「わたしが陽子とお呼びしてるのですもの、梨雪と呼んでくださいな」
 陽子の胸から顔を上げて、氾台輔・梨雪はにこやかに笑った。
「泰麒の件以来ね。お元気でした?」
「その節はお世話に……」
 礼を言いかける陽子を制して、梨雪はようやく陽子から離れた。
「それは後ほど。主上がこちらでお待ちです。――どうぞ」


 そういえば、氾王も堅苦しいことは嫌いな方だった――外殿での謁見ではなく、くつろいだ形でもてなしたいと告げられ、客殿へと案内されながら、陽子は思い返す。
 王同士の対面ともなれば、当然、それなりの手順や礼が必要になってくる。それが嫌なばかりに、お忍びという形で慶を訪れた人なのだ。
 そういう気軽な面は、延王と似ているかも知れない。
 似てる、などと言ったら互いにしかめ面をしそうだが。――天敵同士なのだ、延王と氾王は。
「何か?」
「いえ、何でも」
 梨雪が振り向いたので、陽子は慌てて笑いをかみ殺した。すでに客殿の扉は開かれ、氾王の姿が見えていた。
「これはようこそ参られた」
「氾王におかれましてはご健勝のご様子でなによりです。先だっては、泰麒捜索にご協力いただき、ありがとうございました」
 礼をとっての陽子の口上にクスクスと氾王は笑いを漏らす。
「相変わらず真面目なことだね」
「感謝しているんです、本当に。氾台――梨雪にも、ひとかたならぬご尽力をいただきました。ありがとう」
 後半は梨雪に向かって頭を下げる。どういたしまして、と明るい声が返ってきた。
 泰麒捜索から半月、陽子はあの時協力してくれた五国に礼を言うため、旅に出ていた。
 王自ら行かずとも、代理の者をたてればという意見もあったが、自分の我が儘だったからと反対する官を押しきった。
 王と麒麟、双方が長期留守にするわけには行かないので、景麒は残してきている。
「ときに陽子」
 しばらく歓談した後、不意に氾王が切り出した。
「慶国に行ったときから気になっていたのだが、その格好は好きでしていることかえ?」
 問われて、陽子は改めて自分の格好を見回した。
 他国訪朝ということで、さすがに普段のような官服を纏ってはいない。ちゃんと女性の服を着ているし、礼を失しない程度に整ってはいるが、それでもこの世界の常識に照らせばあまりに簡素な服である
ことは確かだ。
「私は胎果なので、こういった服の方が得意で……あの、お気を悪くされたでしょうか」
「なんの、私とて人のことを言えたものではない」
 女ものの扇で口元を隠して、氾王は含み笑いをした。稀代の洒落者で通っているこの男は、好んで女装をしている。
「じゃが、陽子のために服をあつらえておっての。趣味に合わないかも知れぬが、受け取ってもらえる
と嬉しいのだが」
 そういうことかと陽子は破顔した。
「もちろんありがたく。氾王のお見立てでしたら、確かなものに決まってますから」
「ああ、よかった!」
 梨雪が手を叩いた。
「じゃあ、さっそく着替えてきましょうよ」
「え、今から?」
 戸惑う陽子の手を梨雪が引っぱる。
「陽子の服はわたしも選んだのよ。早く着てもらいたくって仕方なかったの」
 困惑して氾王をみやると、酒杯を手に目を細めている。
「梨雪は陽子のことが大層気に入ったらしい。子供の我が儘じゃと思うて、つき合ってやっておくれ」
「あら、陽子を気に入ったのは主上もでしょう?」
「確かにの」
 くつくつと喉を鳴らして氾王が笑う。その声に送られながら、陽子は客殿の奥へと引っ張られていった。
「おお、思った通りじゃ。よく似合う」
 しばらく後、照れくさそうに頬を染めて姿を現した陽子に、氾王はいたく満足したようだ。
 陽子の鮮やかな髪の色を殺さぬよう、全体的に暗めの落ち着いたトーンでまとめているが、帯だけは金緑色の思い切った柄のものを締めている。
 それが、陽子の紅の髪によく映える。
 陽子自身も、鏡に映った自分自身の姿に感嘆してしまったほどだ。
 しかし、落ち着かない。
 実は陽子は今、下着をつけていない。この衣装には必要ないものだから、と梨雪に取り払われてしまったのだ。
 蓬莱でも着物を着るときは下着をつけないものだから、そう言われて特に疑問も抱かなかったのだが、こうして男性の視線に晒されてみるとどうにも心許ない。
 わかるわけない、自意識過剰だと自分を叱りつけてみても、不安は収まらなかった。
「さて……実はもう一つ、陽子に贈り物があるのだよ」
 陽子の不安に気づかぬ体で、氾王はゆっくりと卓から立ち上がった。
「そんな! これ以上はいただけません。こちらがお礼をしにうかがっているのに……」
「そのように言わず、一目だけでも見ておくれでないかえ。今度は、陽子の好みに合っていると思うがの」
 氾王が手を叩くと、下官たちが白い布に覆われた何かを運んできた。蓬莱で言うところの飛び箱のような形をしたそれは、陽子の足下にそっと置かれた。
「布を取ってみてごらん」
 下官たちが扉の外に姿を消し、ふたたび3人だけになると、氾王が陽子を促した。躊躇いつつ、陽子は布を持ち上げた。
「あ……」
 白い布の下から現れたのは、木馬に置かれた乗鞍だった。全体に複雑な形押しの文様が入っていて、素人目にも、見事な細工だとはっきりわかる。
「気に入ったかえ?」
「はい……いえ、でも、いただけません。こんな見事な……」
「いいのだよ、私が上げたいのだから」
「お近づきの印よ、ね?」
 梨雪にも勧められ、ようやく陽子は頷いた。
「おお、安堵したわえ」
 いささか大げさに胸をなで下ろして、氾王はおどけた。
「陽子に受け取ってもらえなんだら、棄てるしかないところであった。では陽子、試しに乗ってみてくれるかの」
「こ、ここでですか」
「もちろんだとも。あぶみの長さなど調節せねばならぬゆえ。さあ、さあ」
 怯む陽子を急かすようにして、強引に氾王は鞍へと乗せてしまう。
「ぁっ……」
 陽子が小さな声を上げる。何もつけていないその場所に、なめらかで冷たい革の感触。
「いかがかな、どこか不都合なところはないかえ?」
「は、い……大丈夫です」
 背の高い氾王は、陽子が木馬に乗ってようやく目線の高さが同じになる。切れ長の瞳にのぞき込まれ、火照ってきた頬を隠すため、慌てて陽子は俯いた。
「ふうむ、ちとあぶみが短いかの」
「ぁぅっ」
「ぁぅっ」
 木馬の腹に添えられた陽子の脚を、氾王が引いた。刹那、陽子は身体を震わせる。
 形押しの文様の、少し尖った部分が、ちょうど敏感な部分に当たったのだ。
「陽子、痛いところとかあったら遠慮なく言ってね。足回りとか平気かしら?」
 無邪気な顔で、梨雪も陽子の太股をなでさする。その刺激が、今の陽子には辛い。
「だい、じょうぶ……、ちょうどいいみたい」
 何とか笑顔を作って、陽子は鞍から降りようとする。その体を氾王が止めた。
「まあ、待ちや。もう少しじっかり調べなければいかぬであろ」
 そう言って、陽子の体を鞍へと押しつける。
「ひゃ……っ!」
「どうしたの、陽子?」
 梨雪の問いに何でもない、と必死に陽子は首を振った。顔の熱さはもはやごまかしようがないところ
まできている。
 いっそ熱があるとでも言って退出してしまおうかと陽子が考えたとき。
「そうそう、この鞍には素敵な仕掛けがついていてね」
「ひゃあああああ!?」
 いきなり、鞍の頂部……つまり、陽子の秘所が当たっている場所が蠕動を始めて、たまらず陽子は声
を上げてしまう。
「な、なに……? ぁっ」
 ただでさえ凹凸のある文様の入った革が、細かに振動して敏感な部分に刺激を送りこんでくる。たま
らず、陽子は鞍の上で体をくねらせた。
「ふふ、やっぱり陽子の声って可愛い」
 喘ぐ陽子を下からのぞき込んで、梨雪が含み笑う。
「まだ青いかと思うていたが、何ともいえぬ艶のある貌をする……」
 腰を浮かせようとする陽子を、氾王はしっかり鞍へと押さえつける。
「は、氾王、離しっ……あぁっ」
「この鞍はね、陽子」
 震える陽子の耳に、氾王はささやきかける。
「我が国の技術の粋を集めて、そなたのために特別に作らせたのもなのだよ」

「お、お願い、で……とめ……っ」
 陽子の懇願など聞こえぬように氾王は続ける。それは、優しいとさえ言えるような声だった。
「わかるかえ、文様のひとつひとつが、微妙に違う動きをしておるだろう? そこのからくりには、大層苦労したそうだよ。女体は柔らかいもの、少しでも傷つくようなことがあってはいかぬからの」
「あ、ふ…あぁっ、んんっ……ふっ…………は、はなし…あ……っ」
 氾王をふりほどこうともがいていた陽子の手は、いつしか彼にすがるようなものになっていく。
 絶えず送りこまれてくる甘美な刺激に、体の力が抜けかかり、支えてもらわなければ落ちてしまいそうだ。
 だが、その陽子の手を、あっさりと氾王は離した。
 バランスを崩して、慌てて陽子は鞍の前立てにしがみつく。
「あぅっ!」
 その勢いで文様に強く秘所を擦られ、陽子は悲鳴を上げた。
「まあ、危ない。ちゃんと革帯を締めないと」
「な…に……」
 パチンパチンと乾いた音が響く。朦朧としていた陽子は、数瞬遅れて事態を理解した。
 太い革のベルトで、両の太股がガッチリと鞍に止めつけられてしまっている。これではもはや逃げられない。
 逃れようと身をよじれば、さらなる快感が体を襲う。
「あ、あ……っ、ああんっ!」
「これも、もういらないかしら」
 クスクスと笑いながら、梨雪が上着はそのままに、裙の帯を解く。
「やぁ……っ!」
 陽子は顔を覆う。もっとも秘められるべきその場所を晒される恥ずかしさに、全身が燃えるような心持ちがした。
「あら、鞍が濡れてしまっているわ。どうしたのでしょう……ねえ、陽子」
 陽子は羞恥に頬を染め、ただふるふると首を振る。
「そう、わからないの。困ったわね。あまり濡れると、もうひとつの仕掛けが動いてしまうわ」
「え……ぁっ」
 梨雪の言葉と同時に、何かの作動音のような低い振動が陽子の体に伝わってきた。
 何か……あがってくる!?
「ひゃあぁぁっ」
 入り口に当たる革の感触に、陽子はのけぞった。
 鞍の一部がじりじりとふくれあがって、陽子の中に侵入してくる。
「や…嫌だ……っ、止めて…あぁああああっ」
「もうちょっと楽しみたかったのに……陽子って、感じやすいのね」
 梨雪の指が繁みをかき分け、するりと内に潜りこんだ。
「ああ……熱いわ」
「はぁっ、やめて、やめ、りせっ、ふあっ、ああっ、ああんっ!」
 梨雪が花芯をとらえ、2本の指でやわやわと揉みしだく。体の奥では、蠕動する文様が内壁に微妙な刺激を与え続ける。
 ひっきりなしに背筋を駆けのぼる快感に、陽子はもう気が狂いそうだった。その意識を引き戻すように、冷静な声がかけられる。
「美しいものだねえ、女性(にょしょう)2人がたわむれる姿は」
 はっと陽子は目を瞠った。視線の先には、少し離れて立つ氾王の姿。
 見られている……!
「いやぁ……っ!」
 自分がどのように浅ましい姿をしているのかという認識と、その姿を異性に見られているという羞恥が陽子を襲う。
「主上、そのように苛めるものではありませんわ」
「苛めているのはそなたであろ」
 ゆっくりと近づいてきた氾王が陽子の頬に手を置いた。そのまま、肌の感触を楽しむかのように、首筋へと滑らせていく。
「あっ、は、ぁ……っ、んんっ」
「おや、これだけで感じるのかえ? 本当に感じやすいのだねえ」
「ち、ちが……ぁぁああっ」
 ぐいと襟元が広げられ、こぼれ出た乳房に氾王の唇が寄せられた。
「ほら、もうこのように固くなって……」
「ひゃっ、ぁぁぁぁぁ…………っ」
 いきなり先端を強く吸われて、陽子は全身を強ばらせた。
「おや、達してしまったか」
「主上に触れられて我慢できなかったのでしょう。本当に淫乱なのね、陽子は」
 2人の言葉に、いたたまれずに陽子は身体を震わせる。
「ど……して、どうして、こんな……」
「あら、言わなかったかしら」
 可愛らしく、梨雪が首を傾げる。氾王も、ゆったりと笑みを広げた。
「私たちは陽子が気に入っているのだよ、とてもね」
 そう言って、2人はこぼれ落ちる陽子の涙を唇で拭った。


 もう、何度達してしまったのか、陽子にはわからなかった。
 いまだ戒めは解かれず、全裸で鞍にくくりつけられた格好で、切ない嬌声を上げ続ける。
 氾王の舌が、梨雪の指が、陽子の感じるところを暴いて、執拗に責める。快感に全身が支配され、何も考えられなくなる。
 だが、やがて……陽子の中に新たな欲望が兆してきた。
 ――りない。
 物足りない。
 体の内の蠕動は、まだ続いている。けれどもそれは陽子を煽るだけで、本当の高みにまでは連れていってくれない。
 無意識のうちに陽子の腰が揺れて、鞍に擦りつけるような動作をしてしまう。
 めざとくそれに気づいた氾王が陽子の耳に囁いた。
「……欲しいのかえ?」
 欲しい。
 そう答えそうになって、陽子はギリギリの理性で踏みとどまった。
「ふむ、いらぬのか……梨雪」
 首を振る陽子を楽しそうに眺めながら、氾王は陽子から手を離した。氾王に名前を呼ばれた梨雪も、陽子を嬲るのをピタリと止める。
「あ……?」
 突然愛撫を止められて、陽子の貌に不満の影が過ぎる。鞍の仕掛けまで止められたわけではないが、さんざん高められた体にとってはもどかしいだけの刺激だ。
「あ、は……、ゃぁ……んんっ」
 陽子の腰の動きが大きくなる。
 ――もっと強く、もっと奥まで、もっと激しく。
 欲しい。
 陽子は首を振る。言えない、それだけは。
「どうしたのだえ?」
 優しく氾王が問いかける。
 陽子は潤む目で氾王を見上げる。
 その時、つと梨雪が近づいて、ペロリと陽子の胸を舐め上げた。
「ひゃん! …ぁぁ……お、おねがい、もぅ……」
 一瞬だけ与えられた快感が、陽子の理性を浸食する。
「どうして欲しいの、陽子。言ってくれなくちゃわからないわ」
 とろけるように甘い梨雪の声が、陽子に絡みつく。陽子はギュッと前立てを握りしめた。
「ぁ……ぁん…、お願い…………し…」
 言わされる羞かしさに眩暈がする。けれども、それは同時に彼女の知らない熱を体の奥に灯した。
 その一言を口にしたら、自分はどうなってしまうのだろう。
 不安と期待があい混じって、陽子の熱を高めていく。
「……陽子?」
「………………欲しい」
 氾王に促され、ついに陽子はその一言を口にした――。


「あぁ、ん……ふぁあああ……っ」
 力の抜けた体を梨雪に支えられ、氾王にまたがる形で、陽子は腰を落としていく。満たされていく悦
びに、陽子は熱く吐息を漏らす。
「ほら陽子、見える? あなたのいやらしい場所が、主上のものを美味しそうに飲みこんでいくわ」
「ぁあんっ、……や、そんなこと、言わない……っ」
「だめよ、ちゃんと見なくては。止めてしまうわよ?」
 梨雪の言葉と共に、氾王が腰を引く。陽子は恥ずかしさを堪え、背けていた視線を下へと移した。
「ぁ、ぁ……っ」
 男の体の上に乗り、自ら腰を落としていく。その欲望に満ちた姿。浅ましい、と思えば思うほど体が熱くなる。
「ふっ……あぁあああああっ」
 ぐっと両腿に力を入れ、陽子は一気に氾王自身を飲みこんだ。
「ぁ……あ、ん……」
 余韻に震える陽子に、氾王が笑いかける。
「よくできたねえ。では、ご褒美だ」
「ああっ! ああ、んぁ、ああぁ、ふぁっ」
 激しく突き上げられ、揺すぶられ、陽子は喘いだ。繋がった場所から、快感が電流のように流れていく。
「すごい……陽子、聞こえる? あなたの淫らな水音が」
「ああぁぁぁぁ、やぁ、ぁん、ああ、あぁんっ」
「うふふ、可愛いわ、陽子。髪を振り乱して、奥までくわえ込んで……そんなに気持ちいいの?」
「ぅぁ、ん、ふ……あ、い、いい、気持ちいい、深っ……て、ひゃあああん」
 ひょいと氾王が体を起こした。そのまま、くるりと陽子の体を回転させ、後ろから抱きかかえる形にする。
 内奥を抉られて、陽子は嬌声を上げる。
 朦朧とする目の端に、淡い金色が映った。それが梨雪の鬣だと気づいたのは、花芯に温かくぬめる感触を受けてからだ。
「やぁぁぁっ、梨雪っ、だめ……そこ舐めっ、おかしくなる……っ」
 両足の間に埋められた梨雪の顔を引き離そうとする。だが、快感に陽子の体は引きつり、まるで「もっと」というように逆に押しつける結果になってしまった。
「よいのだよ、陽子。狂うといい」
 わななく陽子の胸をまさぐり、形を変えるほど激しくもみしだきながら、氾王が呟く。それは陽子にというより、まるで自分自身に言っているかのような響きを持っていたが、翻弄されている陽子は気づ
かない。
「常であれば、我らは狂うことは許されぬ。だから、せめてこの一時は――」
「ぁぅ、やぁっ、も、もう、……いっ、ゃ……あああぁぁぁっ」
「いちばん綺麗なそなたの姿を見せておくれ――…」
 真っ白に染まった陽子の意識に、氾王の言葉が遠く響いた……。


「ときに陽子、私はまだ満足していないよ?」
 軽く意識を飛ばしていた陽子が我に返ると、氾王がにっこり笑顔で見下ろしていた。
「ええっ!」
「あら、私なんか全然よ?」
「ええええっ! ……あ、あ、やぁんんんん……っ」
 陽子が解放されたのは、結局朝になってからだったとか。

―どっとはらい―


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