かげろう


 オレは気付いてた。決して"明確"な答えなんかではなく"曖昧な"違和感でしかない。 でも、オレはそれが間違えようのない事実だと知ってた。
「うっ…」
「大佐ってホント強情だよなー。たまには素直になってみれば?」
「んく…!」
 大佐の堅くなった物を握って上下に擦るとビクビクと震えて滴が零れ落ちる。
「こっちはこんなに素直なのにな」
「鋼、の…」
 閉じていた秘孔は薄いピンク色の液体に濡れて、オレの指を飲みこんでいく。
「もう良さそうじゃん?声、我慢すんなよ。大佐の声好きなんだから」
「ぁはぁ、はぁ、はが…のっ!」
 大佐の熱に当てられながら深くを抉るように突き上げる。何度も、何度も…。
 いつか溶けて混ざり合ってしまえば良い。熱が消えてしまう前に。


 体を繋ぐだけが愛じゃないのは分かってる。仕方ない。それ以外の方法を思いつかなかったんだ。 …オレは知らないふりをしてる。手に入れたぬくもりは手放せない…んだ…。
「なあ大佐…」
 大佐は目を瞑ってて、聞いてるのかどうかは分からなかった。
「大佐…アンタの中には誰が居るんだ?」
 大佐の眉がピクリと震えた。
「聞こえてるんなら答えろよ」
「……何をだね…」
 大佐の目がオレを捉えた。
「アンタの中に居る誰か」
「なんのことだ」
 いつもと変わらない声音だった。
「アンタは…ヒューズ中佐の事が好きだったんだろ?」
 大佐は押し黙っていた。
「中佐も気付いてた…」
「!!」
 驚いてるのがちょっと可笑しかった。
「てか、みんな気付いてたって。そりゃそーだよな。 アンタの視線の先には常にあの人居たんだから」
「違う」
 小さい声が返ってきた。
「違わない。アンタは認めたくないんだ。中佐の事が好きだったことも、 中佐が…死んじまった事も!」
「違う!」
 大佐が、がばっと身を起こした。
「ヒューズは親友だった!ヒューズが死んだ事は、認めたくないと言えばそうだ。だが、 ヒューズは居ない。それは事実だ」
 痛い、な…胸ん中が苦しい…。
「じゃあ…なんでアンタの目はそんなに虚ろなんだ?いつまで経っても、 ちっともオレの事なんて見ないじゃんか…」
「そんな、ことはない」
 目を逸らす辺りが、そうだって言ってんのと一緒だって気付けよな…。
「アンタはオレを代わりにしたんだ」
「違う!」
「違わねぇ」  まあ、オレだってそこに付け込んだんだから責める権利なんてないけどさ。
 苦しいんだよ、もう…。
「オレな…アンタのそんな姿見てたくないんだよ」
「鋼の…?」
 大佐の手がオレの頬に伸びてきて思わず振り払った。
「……」
 そんな痛そうな顔すんなよな。
「もう全部終わりだ。アンタとは…大佐とは仕事でしか会わないよ」
「鋼の、私は…」
「オレはアンタの御託なんて聞いてるヒマないんだ」
 アンタのためだ…オレのためでもある。
「鋼の」
「じゃあな、大佐」
 顔を見たくなくて、見られたくなくて、後ろ手にドアを閉めた。




2005/12/04 UP

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