注ぐ木漏れ陽


 昼下がり…ゆるりとした時間が流れていた。
 その中を一人の青年―ヒューズ―が辺りを見回しながら歩いていく。
「いねえなぁ…どこ行ったんだ、ロイのやつ…」
 ふぅと溜息を吐いたヒューズは目を遣った生垣の向こうに黒い物を見つけていた。 覗きこむと件の青年が木漏れ日の中、寝転がっている。
「こんなとこで寝てたのか…」
 ヒューズは小さく笑うとロイの横に立った。
「ロイ、起きろよ」
「ん…?」
 ロイはぼんやりとした表情で目を開けた。
「ヒューズ…」
 体を起こしたロイの横にヒューズもしゃがんだ。
「何の夢見てたんだ?」
「…さあな。覚えていない」
「はは。あんま良い夢でもなかったか?」
 ヒューズは笑ってロイの頭をポンポンと撫でた。
「む…子供扱いするな」
 ロイの手がヒューズの手を追い払う。ヒューズはひでぇな、と言いつつゴロリと転がった。
 二人の間に沈黙が下りる。鳥の囀りが長閑さを象徴するかのようだった。
「私は…」
「…?」  不意にロイが口を開いた。
「いや、なんでもない」
「なんだよ、途中で止めるな。気になるだろうが」
「ほんとに何でもない」
 チラッと目を開けてロイの顔を見たヒューズはそれ以上問い詰めるのをやめた。
 意地でも言いやしねぇな…と呟いた声はロイの耳には届かなかった。
「それよりヒューズ…私を探していたようだが何だったのだ?」
 ロイの言葉にヒューズはポンと手を打った。
「おー、忘れてた。教官がおまえのこと探してたんだよ。なんか頼みたい事があるってよ」
「おい!」
 その言葉にロイは慌てて立ちあがった。
「そんな大事な事を忘れるな!」
「怒るなって。あ、葉っぱ付いてるぞ」
「そんなのは」
 ヒューズも立ちあがるとロイの髪についている葉を払ってやった。
「いかにも寝てました、って感じじゃ駄目だろ」
「わかってる」
 ロイは服を整えると走り出した。
「こけるなよー!」
「うるさい!」
 ロイの姿が建物の角を曲がり見えなくなった。
「ああいうところが構いたくなるんだよな…」
 ヒューズの独白は風に吹かれて消えた。




2005/11/11 UP

100打記念:日向 様リク。
リク内容:士官学校時代でほのぼのヒュロイ。
コメント:日向 様、リクエストありがとうございました。
こんなので良かったのでしょうか…?
ほのぼのと言うよりお馬鹿なだけですが
その辺は大目に見てくださいね。

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