理想郷


 あの日、姿を消したエドの生をロイは信じていた。
 自身の目で見た時は驚いたが、風が吹き込む思いだった。
「生きていると、思っていたよ…」
 以前と変わらず飛び出していった熱に焦がれる。
 それと同時にある予感も有った。
 破壊された街が、悲鳴を上げる。悲しみの鐘が鳴る。
 目の前で起こる破壊音。
「しつこい…」
 グッと指を擦ると一瞬の火花と爆発が起こる。
「早く戻って来い、鋼の…」
 ロイの呟きが聞こえたわけではないだろうが、中から二つの影が飛び出してきた。
 アルがロイの方へと押し出され…次のエドの行動に二人は驚いた。
「鋼の…!?」
「兄さん!」
 二つに割られた未知の軍船。
「オレはこれを向こうへ帰す」
 この瞬間、予感が現実になった事をロイは知った。
「兄さんは!?」
 ロイは身を乗り出すアルを必死で押さえていた。
「向こうの門を壊す。お前はこっちの門を壊すんだ」
「そんなことしたら…!」
「絶対に忘れたりしない。生きている限り道は開ける」
 エドとロイの視線が一瞬合った。
 じわり離れていく向こうとこちらの世界。
「アンタの事もな」
 エドが身を乗り出しロイの胸元を掴んだ。
 錯覚と思うような軽い唇の感触。
「鋼の…」
 呆然と立ち尽くすロイの前で、エドは身を翻した。
「兄さん!」
 二つの間は更に離れ、エドを乗せた船が炎を吹く。
 門は開き、来た物を全て飲みこんでいった…。


 かつての部下と共にこの街を元に戻す作業を決めた。
 独り門の前に立ったロイはそっと呟く。
  「待っている、帰ってくるのを。それまでにこの街を復興させよう。君達の…君の為に…」




2005/08/11 UP

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