いつも顔を真っ赤にして、楽しい反応を返してくれる。
だから相棒イジリはやめられない。
だけど今日は……イタズラがすぎたのかもしれないな。
『純情な劣情』
「おい、起きろ」
「……すぴ〜」
「……いい根性してるじゃねーか、え? アルファ」
俺がとっくに起きてるってのに、相棒のガキハンターはまだ高イビキだ。
その幸せそうな寝顔を見ていると、こっちまで幸せな気分になってくる……わけもなく、腹が立つわけで。
「起きろっつーの、このクソガキ!」
「痛っ!!」
怒りにまかせて、ろくに中身も詰まってないだろう頭を殴ってやる。
恨めしそうな視線は無視。
「リッツさん……普通に起こしてくださいよぉ」
「お前がさっさと起きないから悪い。殴られたくなかったら俺より早く起きるんだな」
「そんな理不尽な」
「ガキのくせに生意気言うんじゃねぇ。ほら、さっさと支度しろ」
「はーい。……」
布団の下でもぞもぞし始めるアルファ。早くしろ、と急かしてもそこから出ようとしない。
「おい、何やってんだ」
「い、いや……ちょっと。少し向こう向いててくれません?」
……明らかに怪しい。
「なんでだよ」
「いや、ほんと何でもないんで。だから少しだけ向こうを……」
「何でもないんなら……これ剥いじまっても問題ないよなっ」
アルファの布団を思い切り剥ぎ取ってやると、そこには……
元気にテントを作っている奴の股間があった。
「……若いねぇ、アルファ君」
生理現象なのか、そっち系の夢見て興奮してたのか。
「勘弁してくださいよ、ほんとにもう……」
そうとう恥ずかしいのか、アルファは涙目になっている。
そんな相棒の姿を見て、自分でそうだといえるほど悪戯好きな俺が黙っていられるはずがない。
「……トイレ行ってきます」
「まぁ、待ちたまえアルファ君」
ベッドから立とうとするアルファの肩を掴み、ズボンを下着ごと引きずりおろしてやる。
「だぁ〜! 何するんですか!!」
「お兄さんが君の元気なそいつをスッキリさせてやろうってんだ。大人しくしてなさい」
「スッキリって何言って……ひっ」
アルファ自身を掴んでゆっくり擦りあげてやると、奴は小さく呻いた。
「ほら、気持ちいいだろ? わかったら俺に身を任せなさいよ」
「う、うぅ〜……」
「うんうん、素直な子はお兄さん大好きだ。そんなアルファくんには大サービスしてやるぞ」
我ながらふざけた口調でそう言うと、奴自身を掴んだままにっこりと笑いかける。
「もうこのくらいで勘弁してください……あぁっ!?」
奴自身を口に銜えこむ。本当はここまでする気はなかったんだが、アルファの反応があまりにも楽しかったからだ。
「んぅっ……リ、リッツさ……」
こいつのことだ、女相手の経験だってないに違いない。
未経験の感覚に瞳を潤ませ、体を震わせている。
「あ、あふっ、うぅ……だ、だめっ……もうだめです、リッツさんっ」
アルファはそう叫ぶと、俺の頭を押さえ込んだ。
もうって……早すぎるぞこの野郎!
そう思うと同時に、俺の喉の奥に熱いものが流し込まれた。
「お、お前……ごほっ。……早すぎだ馬鹿!」
文句を言ってやる。だがアルファは俯いたまま反応しない。
……いたずらが過ぎたか? ひょっとして傷つけちまったかな。
「ごめんごめん。ちょっとした冗談のつもりだったんだ……えっ?」
気がつくと、体勢が逆になっていた。
顔を真っ赤にしたアルファが、俺の腕を掴んでベッドに押し付けている。
……これって、やばいんじゃないか……?
「ア、アルファ……怒ってんのか?」
「怒ってませんよ。ただ……」
「た、ただ?」
続きを聞くのが怖い気もしたが、とりあえず聞いてみる。
「ただ、あなたを抱きたいだけです」
その言葉に、さっと血の気が引く。
「じょ、冗談よせって……あっ」
胸の上をアルファの指が滑る。こいつ本気だ。本気で俺を犯る気だ。
男との経験が無いわけじゃないが、あまりいい経験じゃない。というか最悪だった。
だからこそ勘弁してほしい。相棒であるこいつ相手ならなおさらだ。
「くぅ……やめろっ、このクソガキがっ」
腕を動かそうとするが、押さえ込まれていてまったく動かない。
そうか、こいつはいつも弓引いてるから……支援プリーストの俺なんかとは腕力が段違いってことか。
くそ、腹立つぜ。ひ弱そうな外見してるくせに。
「怒ってないんだったら……なんでこんなことすんだよっ」
「あなたが悪いんですよ! 僕だって男なんです。いつまでも子供じゃないんだ!
好きな人にあんなことされて……耐えられるわけないでしょう!」
吐き捨てるようにアルファが叫ぶ。
「お前……」
「あなたが好きです。ずっと、ずっと好きでした。あなたの相棒になってから、少しずつ惹かれていって……
この気持ちはずっとしまっておこうと思ってました。でももう耐えられません。あなたを……愛しています」
アルファの目は真剣そのものだ。とても嘘を言ってるようには見えない。
そっか……こいつずっと、俺のことを。
腕の力を抜く。なぜか抵抗する気にはなれなかった。
男に抱かれることなんかもうごめんだと思っていた。でも、なぜか今は嫌じゃなかった。
「……好きにしろよ」
「えっ?」
「続けろって言ってんだ。俺に恥をかかせるんじゃねーよ」
戸惑いを隠せないといったふうなアルファに笑いかけ、奴の手を俺自身へと導いてやる。
ゆっくりとアルファが指を動かし始める。
最初は稚拙で快感とはほど遠かったその動きに、少しずつ俺の体が反応し始める。
「はぁ……んんっ、なんだかお前……上手く、なってないか」
「そ、そうですかね? ただ僕はリッツさんの顔を見ながらやってるだけで……」
「見るんじゃねぇ、クソガキ!」
人の感じてる顔をじっと見てるなんて悪趣味にも程がある。
「く、くっそ……見るんじゃねーって言ってんだろっ」
「だって……見ていたいんですもん」
がくがくと体が震える。悔しいがそろそろやばい。……お願いだから、見るのをやめてくれ。
だがアルファはそれでも顔を見続けてくる。最低だ。
「く、うぅ……あぁっ」
大きく体を震わせ、俺はアルファの手の中に白濁を吐き出した。
乱れた息でアルファの方を見ると、奴は赤い顔で俯いていた。
「なにしてんだよ」
「リ、リッツさんの今の顔……すごく色っぽくて、ドキドキしちゃいました」
「……バカか!」
もう最悪だ、こいつ。
「お、おい。何してんだクソガキ!」
「えっ?」
慣らしもせずに俺の中に突っ込もうとするアルファに怒鳴ってやる。
「いきなり突っ込もうとする奴がいるか。こういうのは慣らすもんなんだよ。
ケツにセルフヒールなんて悲惨なことすんの嫌だからな、俺」
「す、すみませんっ」
アルファの指が、さっき俺が放った白濁のぬめりを借りて侵入してくる。
この感覚にはどうも慣れない。慣れたら終わりって気もするが。
「……辛いですか、リッツさん」
「当たり前だろうが……ふぁっ!」
アルファの指がある部分を掠めたとたん、俺の体が大きく跳ねた。
「リ、リッツさん?」
「く、くそ……もっとゆっくりしろよ! くっ、うぁっ、やめろってっ」
そこを触ると俺が感じるということがわかったのか、アルファはしつこくそこを触ってくる。
「ひっ……くっ、ううぅっ」
「リッツさんの体ってすごいなぁ……」
気がつくと指は3本に増えていた。いつ増やされたのかわからないほど感じてたのか、俺。
くそ、なんか悔しい。俺も落ちたもんだぜ。
そんなに上手くないはずなのに、なんでこんなに気持ちいいんだ。わけわかんねぇ。
……それにしてもいつまでこいつは焦らすつもりなんだ。
「しつこいぞ、クソガキ! 早く……突っ込めよっ」
「は、はい! あれ……うまく入らない」
入り口に先端を押し付けたまま、アルファはもぞもぞしている。
中々満たされない苛立ちに、体が思わず動いていた。
「あーもう! 退けこの童貞!」
「ど、どうて……! ひどいです、リッツさん……」
何だか傷ついたふうな顔をするアルファを無視し、奴の上にまたがる。
これ以上焦らされたらどうなっちまうかわからない。早く体に燻る熱を解放したかった。
「くっ……うぅっ」
アルファ自身を中へ導いてゆく。尋常じゃなくきついが、こいつに任せてこれ以上焦らされるよりはましだ。
心配そうに見上げるアルファと目が合った。大丈夫だ、と視線で返す。
「……っ、はぁ……」
奴自身を収めきり、大きく息をつく。
呼吸を落ち着けると、ゆっくりと動く。俺、そしてアルファ。二人が気持ちよくなれるように。
「あ、あぁ……」
下でアルファが喘いでいる。突っ込んでるほうがそんな声出してんじゃねーっての。
奴は強く目を閉じていて、まるで攻められているような顔だった。いや、実際これって攻めてるっていうんだろうか。
「んんっ……は、あぁっ……」
少しでも早く達するために、俺は腰の動きを早めた。
その時だった。ずっと閉じられていたアルファの目が突然開いた。
「うあぁっ!?」
奴は突然俺の腰を掴むと、下から突き上げてきた。予想外の快感に、思わず変な声が出る。
「お、お前……いきなり、んんっ……何なんだ、よっ」
「最後までじっとしてなんていられません。僕はもう子供じゃありません。立派な大人です!
それを証明したい。……僕の動きで達して欲しいんです、あなたにはっ」
体重も手伝ってか、アルファ自身が奥の方まで入ってくる。
今まで焦らされて昂ぶっていた俺の体は、あっさりと昇りつめていった。
「あ、あぁっ……だめだアルファ、これ以上はもう……!」
「リッツさん、リッツさんっ……!」
アルファが、俺を深く突き上げる。俺も、奴自身を締めつける。
「ア、アルファ……! く、あぁぁっ」
「うぅぅっ……!」
俺たちが達したのは同時だった。急激に力が抜けてゆく。
……なんだか、すごく眠い。
崩れ落ちる自分を抱きとめる腕の感覚。それを感じながら俺は眠りに落ちていった。
「……。このエロガキ」
着衣を整え、一息ついた俺が発した第一声はこれだった。
「す、すみません。つい……」
本当に謝ってほしかったわけじゃないんだが、アルファは本気で申し訳なさそうにしている。
「謝るなよ。元はといえば俺が仕掛けたことだ。お前が謝る必要なんて一つも無いって」
「で、ですけど。結局襲う形になっちゃったわけですし」
「いいから。結構よかったし許してやるよ」
「ほ、ほんとですか!?」
俺の言葉を聞き、さっきまで沈みきっていたアルファの表情が輝いた。ほんと、ガキだな。
「ところで……聞いていいですか、リッツさん」
「……なんだよ」
「男とこういうことするの、今日が始めてじゃない……ですよね」
あ〜、やっぱり気づかれたか。当たり前だよな、上に乗ったりしたし。
といっても今まで上に乗って自分で動くことなんてなかったんだけどな。
「まぁ……な。何度かあるよ。襲われたり、自暴自棄になって誘いに乗ったり……な。
こんな世界だからな。そういうことだってあるさ。ましてや俺は……女でも男でも狙われやすい職業だったからな」
「アコライトってそうなんですか?」
「殴りに特化した奴もいるが、俺みたいな支援型は非力だし、魔法使いほど強力な魔法で攻撃することもできない。
それが一次職なら余計さ。まぁ、お前みたいな純な奴は知らないでいいことだよ」
「……すみません、変なこと聞いちゃって」
ほんとに、こいつは純真な奴だ。この世の中の暗い部分なんてろくに知ってはいないだろう。
まぁ、知ってもほしくないし……なによりそういう所がアルファのいい所だと思う。
そんなアルファをこういう状況に追い込んじまった俺の罪は重い…のか?
「そういえば、途中まで抵抗してたのにどうしてやめたんですか?」
「抵抗したって無理矢理やるつもりだったんだろ、お前は」
「そ、そうなんですけど。聞きたいじゃないですか」
……なんか照れくさいんだが。でも言うまで離してくれなさそうな雰囲気だな。
「お前、俺のこと好きだって言ったろ。それを聞いたとき、お前に抱かれるのがなぜか嫌じゃなくなったんだ。
ここまで俺を好きでいてくれるお前になら、抱かれてもいいんじゃないかって思ったんだ…と思う」
「リ……リッツさぁ〜〜〜ん!!」
「あ〜、抱きつくなうっとーしい!」
抱きついてくるアルファを引き剥がす。見ると奴は満面の笑みを浮かべていた。
感情の起伏が激しすぎだ。だからガキだっていうんだよ。
「でもリッツさん。これで僕が子供じゃないってわかりましたよね。もう子ども扱いはやめてくださいよ」
「いーや。お前が大人なんて笑わせるぜ。『男』っていうより『男の子』なくせによ」
「な、なんでですか! いつ認めてくれるんですか、リッツさぁん!」
子ども扱いを嫌がるうちはまだ子供だっての。
とりあえずその態度を改めて、俺を翻弄できるくらいのいい男になることだな。それまではまだガキだってこった。
……どれくらい先になるかはわからないけどな。少なくとも今言えるのは、先は長そうだってことだ。
まぁ、頑張って男を磨いて……俺を惚れさせてみろよ、アルファ。
書き直したら原文とまるで違う感じになってしまいました。
思えばこれの元を書いた時には二人には名前はなかったんだなぁ。そう思うとなんだか不思議な気分です。
なんだか初心に戻ったというか、すごく楽しかったです(w
内容なんてほとんど無い文ですが、少しでも楽しんでいただけたら幸いです。
タイトルセンスが悪いのは気にしちゃいけません(ぉ