妖蟲  5
「ディーンっ!!・・」

黒い影に羽交い絞めにされたディーンを救おうと、彼の足元に転がっているガソリンが入ったボトルを取ろうと手を伸ばしたサムだったが、その時何かに足元を掬われ地面に叩きつけられる

「・・っぐっ・・」

見れば足首には弾力のある太い生物の一部が土の中から顔を出して絡みつき、抵抗するサムの体にグニュグニュと巻き付くと、ゆっくりと全身を締め上げ始めた

「・・離せっ、このっ・・ミミズ野郎・・」

「やめろっっ!、サムに手を出すなっ!!・・・・・っ・」

ディーンも叫びボトルを拾い上げようとするが、黒い影によって直ぐ側の木へと突き飛ばされ、押さえ付けられる

そして影の男は、地の底から響くような不気味な笑い声を立てて、愛しそうにディーンの顎を掴んだ

『くくく・・・久しぶりだな・・・ディーン・・・あれから18年か・・』

「・・っ・・・」

『だが・・お前は・・変らずに可愛い・・・いや、とても綺麗になった
 私は子供の頃のお前の愛したが・・・これなら今でも相手をしてやれる・・・』

「・・黙れ・っ・」

『・・それに今も・・あの邪魔な親父は居ないようだしな・・
 直ぐに思い出させてやるぞ、ディーン・・私に抱かれて喘いだ、あの日々を・・』

サムはその言葉に、弾かれたように顔を上げて男を見た

「・・なんだって?・・なんと言った・・・」

『・・ふふ・・弟だな?・・あの頃はまだ小さかった・・知ってるぞ、サム
 だが・・・ディーンから私の事を何も聞いていないようだな
 いいだろう、教えてやる・・・そのミミズが・・お前の兄の、初めての相手だ』

「・・やめろっ・・サム、聞くなっ!・・」

ディーンはそう言って男の手の中で暴れるが、一切の抵抗を許されないまま黒い影に首を絞められる

「・・っ・・」

『・・・ディーン、そう言うな
 ちゃんと聞いてもらった方がいい・・折角の私とお前の甘い思い出だぞ
 蟲に姿を変え毎夜のように忍んで行った私を・・お前は喜んで受け入れてくれた
 人間の時は拒んだのに・・・・化け物になら大人しく犯された、毎晩のように』

サムは己の耳を疑い、男に叫んだ

「ぅ・・嘘だっ!!・・そんなっ
 お前は親父に追い払われて、結界から中には入れなかった筈だっ!」

『・・ほう?・・悪い子だ、ディーン・・そんな嘘を付いて弟を騙してるのか?』

「・・嘘?・・」

『・・そうさ、サム・・幼いお前の兄はな・・直ぐ尻を掘られて得る悦楽に染まったよ
 そして誰にも俺の事を言わずに・・・俺の訪問を待ち侘びるまでになっていった
 昨日だって邪魔が入らなければ・・昔のようにたっぷり啼かせてやれたものを・・・』

サムは呆然とディーンを見つめた

「・・ディーン・・違うだろ・・違うって言えよっ!!」

「・・・サ・・ム・・」

首を掴まれて苦しげなディーンはサムの視線を避けるように目を閉じ、その頬を一筋の涙が零れ落ちた

「・・・・・」

『・・否定出来ないさ・・
 どうせ今でも・・お前は男好きの淫乱なんだろうからな、ディーン
 まだ金を貰って触らせたりする商売はしてるのか?・・それとも挿れさせてる?
 ・・親父が碌に金を稼げないハンターなんてものだと・・息子は苦労する
 特に兄はな・・・弟の為に体で金を稼ぐ羽目になる・・・そうだろ?・・』

その言葉に、サムの全身は怒りに燃え立った

「・・黙れ・・
 これ以上ディーンを侮辱するなっ!!、ディーンに触るなっ!!!」

『・・っ!』

「離れろぉぉっっ!!!!」

その叫びと共に、ディーンの足元に置いてあったナイフが独りでにサムの近くへと移動したのに男は動揺し、ディーンの首を絞めていた手を思わず離した

『・・馬鹿な・・っ・・』

そしてそれを掴んだサムの手でミミズの体が切り刻まれると男は苦悶の声を上げ、再びただの黒いモヤモヤとした影に形を変えて、漸くディーンは自由を取り戻した

「・・ディーンっ・・ガソリンを・・早くっ!」


「・・っ・・そいつも墓に落とせっ、サム・・一緒に焼くっ・・」

ディーンがガソリンのボトルを拾い上げ、棺桶に液体を振りかけると同時に、サムはバラバラになったミミズの体をその穴に蹴落とした

直後ライターをディーンの手から奪い取ったサムは火を投げ込み、男の骨が燃え上がると宙を漂っていた黒い影もその中に吸い込まれる

そして断末魔の悲鳴を残し、全ては聖なる炎に浄化され、煙となって天へと上って行ったのだ






























「・・サムっ・・何処に・・?・」

「どこでも」

全てが終わったと安堵の息を吐き出したディーンは、次の瞬間には凄い力でサムに腕を掴まれた

そして車まで、まるで引き摺るように連れて行かれると問答無用で助手席に放り込まれ、猛スピードで車は発進する

様子のおかしいサムに何か言おうと口も開くも、ディーンはたった今知られてしまった過去の後ろめたさから何も言えず、そのまま車は近くのモーテルの前に横付けされてしまう

「・・・町まで帰るんだろ・・どうして・・こんな所で・」

「煩い」

サムは無表情なまま乱暴にディーンの体を突き飛ばし、強引に部屋へと閉じ込める

「・・・・サム・・?・・」

背後でカチャリと鍵のかかる音に、怖いなどと感じた事が有る筈も無い弟が今ディーンは酷く恐ろしいモノに見え、ゆっくりと後ろにあとずさった

そのままジリジリと距離を詰めてくるサムは逆光で表情も伺い見れず、やがて背後に壁しか存在しなくなってしまったディーンは堪らずに首を振る

「・・やめてくれ、サミー」

「どうして?」

「・・・・」

「俺は真実が知りたいだけだ」

「・・言っただろ・・サム、俺は・」

「黙れっ!!
 もう・・・・もう兄貴の嘘にはうんざりなんだよっ!!」


「・・ぐっ・」

怒号と共にあの影に絞められて赤い痕が付いた首筋を、今またサムに掴まれてディーンは、信じられない思いで彼の顔を凝視した

そしてハイウェイの車のライトが照らし出したサムの瞳が、今まで見たことの無い色に染まってるのに気付く

激しい怒り

嫉妬

嫌悪

苛立ち

全ての感情がディーンの動きを止めてしまった

「喋って貰うぞ、ディーン・・・今日こそ・・全部」

ディーンはサムの手で傍らのベッドに突き飛ばすように押し倒されると、そのまま覆いかぶさってきた弟を信じられない気持ちで、ただ見つめているしか出来なかった













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