妖蟲 6
いくら冗談だと言って笑ってくれるのを待っていても、サムはゾッとするほど冷たい目をしてディーンを見ていた
そしてブラインド越しに時折外からのライトが照らし出す部屋の中、押さえ付けて来たサムの手に紐状の物が握られているのに気付いたディーンは漸く我に帰り、猛然と抵抗を始める
「・・サム・・よせっ・・」
それでも上から体重を掛けられている今の体勢では下半身は一切動かせず、直ぐに両手一つに纏めて掴まれてしまったディ−ンは、サムが片手を離した隙を付いて上体を起こし頭突きをお見舞いした
だがサムが顔を押さえている間に逃げようとするも予想外にその反撃は素早く、腹部を強かに殴り付けられて一瞬呼吸が止まる
「・・っ・・・は・・・」
力が抜けたところを再び掴まれ、仰向けに倒されると頭上の格子に手をしっかりと縛り付けられると、ディーンはサムの手が着ていたシャツの襟元に伸びるのを見て、堪らずに叫んだ
「・・っ・・やめろっ・・こんなのは・・・許さないっ」
だがサムは一気に引き裂き、無惨な布の塊となったそれを床に投げ捨てる
「許さない?・・あんな化け物には許したのに」
「・・違うっ」
「なにが違う?・・こうゆうの、好きなんだろ?・・・あいつが言ってた」
そう言うとサムはまるで快楽を使った拷問のように、その手を感じ易い脇腹へと滑らせてディーンの反応を窺う
「・・っ・・・」
やがてそれは鎖骨を撫でて胸元へと滑り、胸の突起を探し出すと強く摘んだ
そしてクリクリと小さなそこを捏ねただけでピクンと跳ねる、そんな兄の体を確認するように見たサムの瞳は更に冷たさを増し、ディーンはどんなに押さえようとしても反応を素直に返してしまう自らの体を呪った
「・・・っ・・ん・・」
「ほら、何時も兄貴は嘘ばかりだ・・・だからもう全部、体に聞くのが早いんだよ」
そう言って顔を落としてきたサムは、まるで罰を与えるように乳首に歯を立てると舌先で先端を嬲り、電流が走る程の刺激を感じたディーンは必死になって不自由な体を捩った
こんな屈辱的な格好でも弟の手によるものだと思うだけでディーンの体は勝手に暴走し、もうジーンズの中の性器はズキズキと疼いている
「・・・・・・サム・・頼むから・・こんな事はやめろ・・」
ディーンは、こんなふうにサムと触れ合うのは耐えられなかった
今のサムは、ディーンが隠し続けた事実を暴こうとしている
いや、もうあの男によって暴かれた事が信じたくなくて、もう一度ディーンの肉体に問質す気なのだ
「頼むとまで言うのなら・・・話せよ」
「・・分かった・・・話すから・・この手の縄を解け・・」
ディーンはどうにかサムを落ち着けようと、首を立てに振って見せる
だがサムは好きを点いて逃げようという企みを見透かすように、こちらを覗き込んだまま動かない
「話して・・・それからだ」
それに不満そうにディーンが顔を背けると、手を伸ばしてきたサムはディーンの顎を掴み力づくで顔を正面に向けさせる
「こっちを向いてろよっ!」
「・っ・解けと言ってるだろっ!!」
更にディーンが睨み付け抵抗の姿勢を続けると、サムはまるで脅しのようにディーンの履いているジーンズのボタンに手を掛け、外し始めた
「素直に言わないなら、こうする・・」
「・・っ!?・・サム・・・っ・」
サムは、ジーンズの前を緩めるとディーンが脚をバタつかせるのにも構わず、下着ごと下半身の衣類を全て取り去ろうと引き下ろす
だがディーンは既にそこを熱くしている自分を知られたくなくて、体が離れた瞬間に蹴りを繰り出しサムをベッドから蹴落とした
そして例え無駄だと分かっていても、ディ−ンは両手を縛っている紐を口を使って解こうと体を起こし倒れたサムに背中を向けるが、その数秒で外れる筈もなく結び目に噛み付いたところを後ろから、髪を物凄い力で掴まれて引き倒されてしまう
「・・くっ・・」
そしてディ−ンは俯せにされた自分の上に乗り上げたサムが脚を大きく開かせたのを、信じたくない思いのまま振り返った
何故ならその中心には硬い物が、しっかりと押し付けられていると感じたからだ
「・・?!・・・サムっ・・・まさか・」
「叫べよ、ディ−ン」
その直後ディ−ンは力づくで捩込まれ、体を裂かれる痛みに絶叫した
「・・ひっ・・あっ・・あ・あ゛あ゛っっ!!」
後頭部と肩をしっかりと押さえられ、少しも逃れられない状態のまま後ろから挿入される瞬間、ディーンの頭に浮かんだのは中世の処刑、肛門から太い杭をゆっくりと通され最後は串刺しにされるその光景だった
その残酷な処刑の如くメリメリと渇いた肉を裂き、サムの太く長いペニスはこれでもかとディ−ンの体の奥深くまで侵略する
口からは勝手に叫び声が上がり、激痛に震えるディーンの手首には縄が強く食い込んで、その肌を赤紫に変えていった
「・・・・・・」
そして何も言わず残酷な仕打ちを続ける背後のサムに、ディーンは心の中で、どうして、と問い掛けていた
自分の過去を知れば嫌悪感を覚え指一本触れたくないと思うのが普通だろうに、選りによってこれまで同性に対して少しも性対象という態度を取った事も無いサムが、実の兄である自分を犯すなどと信じたくなかった
そこまで自分を苦しめたいのか
悲鳴を上げ、のた打ち回る様を見たいのかと
やがて全てを挿入し終えるとサムの手は、ガクガク震えるディーンの体をまるで自分を全て飲み込んだ事を確認するかのように撫で回し、最後にはその長い指が性器に纏わり付いたのにディーンは驚いて言葉を失う
そこは嫌だと思っていても既に硬度を増していて、更に先端を粘液で光らせサムに淫らな肉体だと証明していた
「・・なるほどね・・」
ふん、とサムは鼻で笑った
「・ぁっ・・あっ・・」
「・・これなら、あの話も信じる気になる
自分から喜んであの蟲を受け入れたって・・本当なんだろ?、証明してる」
「・・っ・・んっ・・・ちがっ・・・う・」
「それで、感じたの?、ケツに挿れられる味を覚えた?
奴は言ってた、直ぐだったって・・・・今も好きなのか?、ディーン」
「・・・っ・・・」
「・・好きだよな?・・目を盗んで体を売る商売をするくらいなんだ
あの日の夜だって・・・怪我をして帰ってきた時
・・・金の為だと無理矢理思おうとしたけど・・・だけど・・違ったんだっ・」
サムはディーンの細い腰をその大きな手でしっかりと掴むと、ズルズルと引き摺り出しにかかる
「・・っ・・サ・・ム・・っ・・い・・ゃ・・あっ・・」
「本当は金より・・男が欲しかっただけなんだろ?、そうだろっ?!」
これから何をされるのか分かるディーンは必死になって首を嫌々と振り擦り上がるが、サムは先端だけ残すまでになったペニスを乱暴にもう一度挿入して来た
「兄貴がこんなだなんて・・知らなかったっ・・・なんで・・」
「・・・・ひっ・・ぃ・」
「・・なんでっ・・なんでだよっっ!!、ディーンっ!!」
「・・っ・・・」
暗闇の中のベッドがギシギシと軋み、流れ出た血が泡立つグチュグチュという音が大きく鳴り響く
その肉の交わる気配だけになった部屋の中、やがて体の下に我が物として戒めた罪人が気を失っても、サムはその屠る動きを止めなかった
そして様々な感情を込めた体液を、兄であるディーンの体内深くに、たっぷりと注ぎ込んだ
まるで、自分の物だと教え込むように
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