猫科の彼 1
その夜ある事件を調べる為出掛けたマックスを見送ったロ−ガンは、何時ものように周囲への警戒を怠らないようにしながら車を発進させ家への道を急いでいた

そしてふと何気なく見た酒場の横の路地に、見知った顔を見つけて車の速度を落とす

「・・アレック・・?・・」


普通の人間に対しては無敵を誇る彼の筈なのに何故か今は3人の男に囲まれ、細く暗い路地の先の体はぐったりとして彼等のなすがままだ

そしてその周りを取り囲む逞しい男達の目的が何なのかは、そんなアレックを一人が運んできた車の後部座席に押し込もうとしているのを見ただけで、ローガンには察しが付いた

「・・っ・・まずいな・」

彼らが一般人だとしてもアレックは薬でも盛られているのか、さもなければ組織の手下に攫われるところだろうかと、ローガンは銃を握るとそっと車を降り彼等に近づいて行く





「早く乗せろってっ」

運転席のリーダー各らしき男が後ろを振り返り怒鳴っているのが聞こえ、足音を忍ばせたローガンは、背中を向けてアレックを車に押し込んでいた男の米神に素早く銃口を突き付けた

「動くな、手を上げろっ」

「・・っ!・・な?」

「・・な・・んだよっ・・?・」

男達はいかにも素人臭く銃を持った男の登場に驚き、これで組織の線は消えたとローガンは安堵したが、そのまま厳しい表情を崩さずに命令した

「彼を放してもらう、まだ死にたくないだろう?」

「・・っ・・・」

「・・う・・撃つなよっ!・・わかった・・わかったからっ・・」

怯えた男達は途端にアレックをポイっと車の外に投げ出し、慌てふためいて乗り込むと猛スピードで車を発進させて走り去った

後にはたった今攫われ損なったアレックが一人、地面に座り込みぼんやりとローガンを見つめている

「アレック、どうしたんだ?」

「・・ん・・なにぃ・・?・・」

ローガンが顔を近づければ、アレックからは酒とマリファナの混ざった匂いがする

「・・っ・・酔った挙句に葉っぱを吸って前後不覚か?、アレック
 それで攫われる?・・君みたいな奴がっ?、どうゆうことだ?」

「・・ん・・?・・さらわれ・・るぅ・・?・・」

「・・・・もういい・・」

ローガンは今何を言っても無駄だと、アレックをズルズル引き摺り車へと運んだ

そしてムニャムニャ言いながらやたら懐いて来る彼の手を無理矢理引き剥がし、荷物のように後部座席に放り込むと、とんだ拾い物だと思いながら家への道を急いだ
























最後に余計な仕事が付け加わったローガンの長い一日が漸く終わり、機械仕掛けの足を外そうとデスクの前椅子に座ったところで遠くのベッドに寝かせていたアレックがムクリと起き上がるのが見えた

キョロキョロと部屋の中を見渡しているが、彼の聴力ならマックスが留守の今この家には自分しか居ないと分かる筈だ

「・・アレック・・気が付いたか?・・」

「・・ぁぁ・・俺・・」

「遊びも程々とにしないと、今に唯の人間に殺されるぞ」

アレックはまだ酔いが醒めていないのか、ゆっくりとベッドに座って頭を抱えた

「・・もしかして・・あんたが・・奴等を・・」

「ああ、そうだ・・連れて行かれるところだったぞ」

「・・・・・」

ローガンは黙り込んでしまったアレックの様子を診ようと、脚はそのままにベッドの置かれたスペースへと歩いて行った

「・・大丈夫か?」

どうもアレックは助け出したというのに礼を言う気配も無く逆に困ったような、そしてもの欲しげな表情でこちらを見つめている

「・・大丈夫・・かな・・・・でも・・・・やっぱり・・ちょっと・・・」

「・・?・・」

不審に思って隣に座りローガンはアレック呑む顔を覗き込むが、フイっとその視線は逸らされる

そして暫く首筋や頭をポリポリ掻いて考えていたかと思うと、突然アレックは顔を上げ礼を言って来た

「・・すまなかったよ・・俺・・酔ってて・・」

「・・?・・ああ・・そうみたいだな・・」

「あんたには・・・・迷惑ばかりかけてるな・・マックスにも・・」

あの薬の件を言っているのだろう、アレックはまるで動物が飼い主に叱られた時のように膝を抱えて縮こまって見せた

そのどことなく可愛い動きに、ロ−ガンは彼にもマックスと同じ猫のDNAが入っているのだったと思い出す

「・・あの事ならいい・・命には代えられないだろう?」

そう言うと、アレックはとんでもないとでも言いたげにプルプル首を振った

「いずれ金はちゃんと返す・・俺は借りを作ったままってのは我慢できない」

クルンとカールした睫をバサバサさせるアレックが急に可愛く見えて、ロ−ガンはマックスが彼を評する言葉に反しそう悪党ではないのではないかと思った

ちゃんと付き合えば嫌いになるどころか、ローガンにとっては魅力的な生き物ではないかと感じてしまいうのは、恋人のマックスと同じ猫タイプだからか

「・・そうか・・好きにすればいい・・」

そしてローガンは、もう疲れた体を横たえようとベッドへ座って機械の足を取り外しに掛かった

「もう俺は休むぞ、アレック・・君は泊まってゆくか?」

だが、何故かアレックは焦った顔でローガンの手を止めてきた

「あっ・・それ、待ったっ!」

「・・?・・なんだ?」

「それを取っちまうと・・・・って・・ぁぁ、俺が上ならいいか・・」

「・・?・・」

うーん、と考え込むアレックに、ローガンは上?と聞き返して手を止める

するとアレックは、突然ロ−ガンをベットに押し倒した

「な・・なんだ?、アレック・・・お礼にマッサージでもしてくれるのか・・?」

「・・そうそう♪」

ロ−ガンは唐突な事に戸惑いながらも、優しく脚に触れて来たアレックを振り払えずそのまま彼の好意に甘える事にする

考えてみればマックスと触れ合えなくなってからはア−シャとも意識的にスキンシップを避けていて、筋肉が痛む脚は暫く誰にも揉んで貰っていなかったし、彼の手は意外にも繊細にロ−ガンを悩ます筋をピンポイントで刺激してくれる

「・・上手いな、アレック」

ふぅ、とリラックスして息わ吐き出し、ローガンは目を閉じた

「気持ちいいか?」

「・・ああ」

「もっと気持ち良くも出来るぜ、ロ−ガン・・やるか?」

「・・う・・ん・」

アレックがそう言うのにも、目を閉じて眠気が訪れたロ−ガンにははっきりとは聞こえておらず生返事を返した

するとアレックは何やらガサゴソとロ−ガンのズボンのベルトを外し、グイっと下着ごとそれを下ろしたのだ

「・・っ?・なにっ??・・」

驚いて見ればアレックは今にもロ−ガンの下腹部に顔を埋めようとしているところで、その口は魚のように歯を立てず何かを含もうとする形になっているではないか

「・・あ・・アレックっっ!!・・・何をっっ・」

「・・なんれ?・・いいひゃにゃにゃいふぁ」

流石にアレックは素早い

制止する言葉を口にした時には、もうロ−ガンの男の象徴はすっぽりと彼の口の中だ

「・・・やめろって・・っ!」

ロ−ガンは慌てて上半身を起こし、アレックの顔を無理矢理引き離した

だがその拍子に、表面を彼の歯が掠って息を詰まらせることになる

「・・っ・・」

「・・もう・・・乱暴にするなよ、ロ−ガン
 あの金の利子を体で払おうと思っただけなんだから・・いいだろ?」

「・・・ど・・どうして・・そんな事・・」

「あんた今マックスと出来ないんだろ?、それって俺の責任だし・・」

アレックは呆然とするロ−ガンに、ニコっと笑いかけた

確かにマックスとのH禁止のこの数週間は溜まりに溜まっているローガンだが、それを、はいそうですか、と返せる訳無い

それにいくらなんでも突然マッサージとか、体で払うとかアレックの話は唐突過ぎるし、どうも笑顔の彼の目は泳いでいる

「・・・ちょっと待てっ、それは・・今考えた言い訳だろう?」

「・・・ヤだな・・なんで・」


ローガンの目には、背後で気不味げにクルンと丸まったアレックの尻尾が見えた気がした

「もしかして・・君はさっき、連れ去られそうになっていたんじゃなくて・・
 ・・・逆だったんだなっ!、そうだろっっ」

信じたくはないが3人もの男をお持ち帰りしようとしてたのは、お前だろと、ローガンはギロッとアレックを睨み付けた

「・・・・・・」

「・・・・・・」

そして頼むからその可愛い上目使いでの沈黙はやめてくれと内心叫ぶローガンに、やがてアレックは諦めたようにコクンと頷いて、ボソボソと言った

「・・は・・っ・・じよ・・き・・なんだよ・・」

「・・・?・・はぁ?、なんて??」











「・・・っ・・・・発情期っ!!!!」











ヤケクソでアレックが叫んだ途端に、ピッキーンと二人の間の空気が固まる

「・・・・・」

ローガンは、落ち着け落ち着けと自分に言い聞かせ、走馬灯のように脳裏に蘇るこれまでの人生の経験からベストな方法を模索し始める

だがマックスとアレックが同じ猫タイプならそっちの衝動も同じ筈なのだが、長年マックスと恋人同士のローガンも彼女のここまで酷いところは見たことも無いし、同性のアレックへの対処方も実を言えばあまり考えたくなかった

「・・その・・それは・・」

だがなんと切り出していいものか戸惑うローガンに、アレックは直ぐ気持ちを切り替えたのかスラスラとしゃべり始めた

「・・分かってるよ、マックスにはこんなじゃないから直し方なんか分からないんだろ?
 それもその筈で、彼女の猫DNAは雄と雌の混合だけど・・・俺のはギンギンに雌猫オンリーなんだ
 だからさ・・・時々犯られたくて堪らなくなるって事・・これでもかなり苦しいんだぜ?」

「・・・アレック・・」

「・・だ・か・ら・さ・・♪」

ゴロニャ〜ンとでもいう雰囲気で、アレックはローガンの太もも、腹、肩と手を付いて来て、とうとう押し倒し上に圧し掛かった

「・・ちょ・・ちょっと・・待てっ、アレックっ・・俺はっっ・・」

ついついその話に同情し、彼の余りの色っぽさにうっとり見入ってしまったローガンだが、こうなってしまっては普通の人の力ではもう抵抗も無駄だ

一方アレックは、漸く手に入れた今夜の相手をしてくれそうな雄の上で、ゴロゴロと喉を鳴らしてご機嫌になってきた

「大丈夫、俺男とのセックスの仕方もちゃんと習ったから」

「・・習った・・?」

ロ−ガンはアレックがそのままの体勢でポイポイと服を脱ぎ捨てているのも止めるのを忘れ聞き返し、それにアレックは、研究所でそっちの方面に関して俺は『特別』だった、と笑った

そして思わず黙り込んだロ−ガンに付け加える

「安心しろよ、マックスはそんな目には遭ってない・・あれは戦闘タイプだからな」

「君だって戦闘タイプだろう・・?」

「まあ・・色々あってな♪」

そしてローガンはその後、それじゃ始めようか、と嬉しそうに笑ったアレックを、呆然と見上げるしか出来なかったのだ












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