新・お色気賞金首 1
僕はサム

両親の仇である『黄色い目の悪魔』って呼ばれる男を探して、父の元愛人で現在は僕の恋人であるディ−ンと旅をしている最中だ

ティーンは早撃ちのガンマンで、もの凄く強い

だけど強いだけじゃなく色っぽくて可愛くて、なにより彼とのエッチは有り得ない位に気持ちいい

だがその相棒は、今いたく機嫌が悪いようだった


















「・・・・・・・・・」

爽やかな朝焼けの空の中の旅立ちだというのに、馬上のディ−ンの表情は冴えない

「・・どうしたの?、ディ−ン」

声をかけた僕は、彼の愛馬のインパラも元気の無い主を心配しているのか二人の会話に聞き耳を立てるように両耳を後に向けているのに気付き、可笑しくなった

「・・どうしたもこうしたも無いだろ、サム
 こうなるのが嫌だから・・街で一緒に居るなって言ったのに・・」

「もう・・言ったってしょうがないだろ?、いつかはこうなるんだから・・覚悟してたよ」

ディ−ンはさっきまで滞在していた街に、自分のものだけでなく僕の似顔絵までが入ったお尋ね者の張り紙が隣に貼られていたのにショックを受け、落ち込んでいるのだ

「・・だって・・お前は人を殺すどころか、傷付けてもいないだろ?」

「そりゃ・・そうだけどさ」

「それに・・何かあったら可愛いサミ−を守ってくれって、ジョンから言われてたのに・・
 俺と同じ賞金首にしちまうなんて・・・死んであの世で彼に会ったらなんて言えばいいんだよ」

懸賞金の張り紙には明らかに保安官の捏造だと分かる犯してもない罪状が書かれていて、僕は怒る以前に笑ってしまったのだがディーンはショボ〜ンと音がする位に項垂れて、インパラの腹を蹴る力も弱く荒野をパコパコと進む歩みは酷く遅い

仕方なく僕は後を付いて行きながら、落ち込むディ−ンの気持ちを少しでも盛り上げようと腰のホルスタ−からピ−スメ−カ−を取り出し、クルクル回して見せた

「でもさ、お尋ね者になっても、もう僕は簡単には殺されなくなったよ・・だから心配しないで」

「・・・・・・・」

「随分上達したんだ・・後でさ、僕の射撃見てよ、ディ−ン」

「・・・・・・・」

「・・ね?」

「・・・・・・・」

「ねってば!」

「・・分かったよっ!、しつこいなっ」

嫌々なディ−ンに約束を取り付け 、僕は自分の馬の腹を蹴るのと一緒にインパラの尻を鞭で叩き、二人は次の町へと急いだ






























やがて二人は見えてきた小さな街の外のゲートを潜り、両脇に店が並ぶメインストリートを進む

放浪の旅の途中で街に寄って何よりもまずやるべき事は保存食の確保で、何時もなら僕が止めても一人真っ直ぐに酒場に行ってしまうディーンが、今日は食料品店の前で馬を降り手綱を店の横の柵に括り付けた

「俺から離れるなよ、サミー・・絶対だ」

「・・ぅ・・うんっ」

同じように賞金稼ぎに狙われる身になった自分を心配しての言葉と分かっていても、まるで熱烈な愛の告白みたいな台詞に店の中に入る僕の顔がデレっと崩れる

だが離れるも何もその店はとても小さくて、通路の幅に対して大柄な僕は彼に付いて奥へとは進めず、入り口近くに立って窓の外の通りを見つめてディーンの買い物が終わるのを待つことにした

そして好きな銘柄の酒の在庫を店主に尋ねている彼の声を聞きながら何気なく見えたものは、なんと自分達が消えた途端にディーンの愛馬インパラを盗もうと、柵に縛った手綱を解く一人の黒人の姿だった

「・・あっ・・あいつっ」

僕は咄嗟にディーンを店に残したまま、急いで外に出る

見ればインパラも悪党が分かるのか、その男を蹴ろうとして暴れていた

「やめろっ、馬泥棒は重罪だぞっ!」



カチッ



だが、その時叫んだ自分の米神の近くで、硬い感触と共に撃鉄を起こす音がした

硬直して目だけ動かせば、音も無く直ぐ横の路地から顔を出したもう一人の仲間らしい

「動くなよな・・サム・・だったか?」

名前を知っているという事は、ただの馬泥棒コンビではない

こうなってやっと、僕は街に貼られた僕のお尋ね者の張り紙にディーンがあんなに神経質になっていたのか、分かった気がした

「・・っ・・」

直ぐに懐の銃も奪われてしまった僕は、今ディーンが側を離れるなと言った矢先に彼の前で自分は殺されるのかと思い、全身から冷や汗が噴出する

せめてディーンだけは逃がさなければと考えたが、インパラの側に居た黒人の男が抜いた銃は真っ直ぐに僕の後ろの店の中の彼に向けられていて、ゆっくりと振り返ればディーンは静かにこちらを見ていた

まだホルスターに手をやってはいなかったが、睨みつけられた男達は酷く緊張しているのが分かる

だがどう考えても、神業と言われるディーンの早撃ちでもこの状態から抜いての撃ち合いになら、4人の生死は五分五分

僕は一か八かで、隣で銃を突きつけている男に体当たりをしようと息を吸った

「サミー、じっとしてろっ!」

だが気配に敏いディーンはそれを察知し、僕の行動を制止するとその店の外に出てそのままインパラのそばに立つ男に近づき、フゥっと溜息を付いて手を広げた見せた

「・・又お前かよ、ゴードン・・・いい加減、しつこくないか?」

「ふふ・・何処までも追うと言っただろう?
 ずっと一匹狼だったお前が、最近相棒を連れていると聞いてな
 これは使えると思って・・わざわざこの小さな街を選んで張っていたんだ」

インパラを盗む芝居をして僕を外に誘い出した賞金稼ぎの黒人の男は以前からディーンを狙っていた様子で、直ぐに殺すつもりは無いのかいやらしい舐めるような目つきで彼を見ている

「ディーン、その・・サムって坊やを殺されたくなかったら、おとなしく一緒に来てもらう」

「・・この後、お前達がサミーに手を出さないとは信じられないけどな・・」

だが僕の命を人質取られた形のディーンは、ブツブツ言いながらもホルスターの中の銃を奪われるとゴードンに両手を縄で縛られ、馬に繋がれてしまう

僕は、こんなにもディーンが無抵抗のままなのは自分の身を気使ってなのだと、堪らない気持ちになった

「ディーン・・っ・僕のせいでっ・・」

しかしディーンは、いいんだ、と言うようにこんな時でも可愛いウィンクを一つくれて、同時に後は自分でどうにかしろと言っているように見えた

確かにゴードンという男は凄みが有り百戦錬磨の賞金稼ぎなのだうが、僕に銃を突きつけている仲間の男はそれに比べれば小物感が漂っている

僕はすぐにはディーンを殺す様子の無いゴードンをいったんこの場から立ち去らせ、チャンスを窺おうとディーンに視線だけで頷いて見せた

「ジェイク・・そのサムってのの賞金はショボイが・・・まあ、こずかい程度にはなるだろう?」

やがてゴードンは馬の向きを変え、僕の隣に居る男にその賞金が分け前だと言わんばかりに目配せをして去って行った

















「おらっ、こっち来いっ!」

馬上のゴードンと引き摺られるようにして去るディーンを目で追いかけていると、ジェイクと呼ばれた男は僕を路地裏のゴミ溜りに突き飛ばし狙いを定めた

「・・っ・・僕を殺す気か?・・」

「・・ぁ・・当たり前だろうがよ・・金が必要なんだっっ」

真っ直ぐ自分に向いた銃口を見つめ、咄嗟に僕は以前ディーンから聞かされていた言葉を思い出す

人は引き金を引く時、必ずその表情を観察していればタイミングが読めるのだと

銃を突きつけられてどうしようも無くなった時は、その瞬間に身を翻せば飛んでくる弾をかわせると言っていた

それに今前に立っている男は悪党だろうが殺しには慣れていない様子で、手が微かに震えているのが分かる

「・・っ・・・死ねっ!」

「・・!!」

ジェイクの眉がピクリと動いた瞬間、僕は横に跳んだ

すると弾はたった今居た所を射抜き、僕はゴミの中に頭から突っ込んだ

そして幸運な事に先日この砂漠地帯に珍しく降った雨水が溜まった木箱が目の前に有り、僕はその中の濁った水を思い切りジェイクに浴びせかけ、飛び掛る

箱の底には泥も澱んでいたらしく、それが目に入ったジェイクは僕の渾身の力を込めたパンチ数発で、さしたる抵抗も出来ずに地面に伸びた

「・・っ・・・ディーン・・っ・・」

ハァハァと切れる息を必死で整えながら、銃と馬を奪い返した僕は、急いで二人の後を追った







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