無垢な誘惑者 2
電話を切ったボビーはそのまま横の椅子に座り、必死になって今聞いたジョンの言葉を整理していた
確かに厳しく狩りの知識を叩き込み、軍隊式肉体鍛錬にも幼いうちから借り出したディーンに対して、その後ろめたさを誤魔化す為過剰な接触で彼の求める愛情を埋めようとした記憶は有ると、ジョンは言った
だがある日を境に、急にディーンの自分を見る目が艶を増し、その魅力に逆らえなくなったのだとも言っていた
ある日
ボビーには、それがジョンに悪魔が取り憑き息子を犯した日なのだと分かったが、その時の記憶一切を失っていたジョンすれば突然のディーンの豹変に惑い、うろたえる気持ちも理解出来る
だが、どうにも分からないのは、僅か9歳になるかならぬかの子供の誘惑に打ち勝てなかったジョンの理性だ
そして、ディーンが16にもなるという今まで、そんな関係を続けているという事も
『だから、俺だって止めようとした
・・止めようとして、欲しがるディーンにある物を買い与えた』
そこまで考えたボビーの脳裏に、ジョンの悲痛な声が蘇る
『あれは麻薬と同じだ・・突然駄目だと言っても無理だ
・・だから、直接肌を合わせる事は避けて・・それ用の玩具を・』
どんな玩具かなど聞かなくても分かるそれをディーンが使用する様など想像したくなくて、ボビーは米神を押さえて俯くと耐えられず昼間にも関わらず傍らに置かれたウィスキーの瓶を開ける
そのまま、ストレートで2杯
そうして体の芯から燃えるような熱が湧き上がり、ディーンと顔を会わせる覚悟が出来たボビーは、漸く彼の居る書斎へと足を向けたのだ
「ボビー、こんな感じでいいかな?」
書斎の扉を開ければ、そこにはすっかり散らかっていた蔵書が片付いて、見違えるような空間が広がっていた
「・・あ・・ぁぁ・・」
「一応、題名のアルファベット順にここから並べたんだ・・そのほうが探し易いと思って」
「・・とても・・綺麗になったな・・助かるよ、ありがとうディーン」
ぎこちなく簡単な礼を言えば、日頃厳しく育てられているディーンはそれだけで嬉しそうに笑った
「何時もは・・サムの方がこういう事は得意なんだ、親父にも褒められる
・・俺は自分の部屋をいくら掃除しても、汚い汚いって怒られてばかりで・・」
「・・・そんなことはないさ、ディーン・・・充分だ」
「・・うん」
ボビーは、この目の前ではにかむ美しい少年が、ジョンから聞いたような行為を自分から仕掛けたなどと信じられなかった
だから、もう直ぐこの家にディーンを迎えに来るであろうジョンの到着より前に事の真相を彼の口から聞きだそうと、その部屋のソファに並んで腰を下ろし早々に話を切り出した
「・・ディーン・・さっきジョンに電話した」
「・・・・・」
「ジョンはお前との・・その・・・関係を止めようとしてる
・・確かに・・あの悪魔が幼いお前にあんな事を覚えさせたのは不幸だが
お前を抱いたのは正しくないと、ジョンは認識してるんだ・・だから・」
「嘘だ」
「・・?・・嘘?・・・・何がだ」
ボビーは、小さな声だがはっきりと言い切ったディーンを覗き込む
「親父は・・止めようなんて思ってない、ただ・・・・楽しんでるだけだ」
「・・何を・・?・」
「苦しむ俺を・・」
「ディーン・・そんな訳ない、ジョンは言ってた、だから・」
思春期に誤った道を進んでしまったディーンを説得しようと、ボビーは身を乗り出す
だが、ディーンは何かを決意した目でボビーを振り返った
「じゃあ・・教えてあげるよ」
「・・?・・」
「最近の親父との夜、俺がどんな事をさせられてるのか」
それを聞いたボビーは、慌てて立ち上がろうと体を起こした
「ディーンっ・・そんな事、聞きたくない・・やめろ」
「やめないよっ!・・・行かないで、ボビー!」
するとディーンは腕を伸ばしボビーの左腕を掴むと、そう体重も変わらなくなった体を凭れ掛らせた
そしてソファに横たわる格好で思わず硬直したボビーにしっかりしがみ付くと、耳元に唇を寄せて囁く
「・・っ・・ディーンっ!」
「じっとして・・聞いてよ・・・頼むから・・」
「・・・・・」
熱い吐息が耳にかかって、ボビーはゾクリと背中に痺れが走るのを感じ動揺した
自分にそんな趣味は無い
無いはずだが、軽い力で押さえ込み揉むように体を擦り合わせて来るディーンを拒めない
「ボビー・・親父はね・・もう何ヶ月も、俺に指一本触れてない
でもその替わりいやらしい器具を、俺に目の前で使って見せろと毎晩要求してくるんだ」
「・・・・」
「まず・・俺は服を脱いでベッドに上がる
脚を見物する親父に向けて大きく開いて・・唾液で濡らした指を2本、アナルに入れて解すんだ
そしてローションの使用を親父は許してくれないから・・その間に性具もしゃぶって・・・」
「・・っ・・」
「そうして・・親父のお許しが出たら、初めて挿入出来る
乳首もペニスも自分で弄れと命令されて・・・でも勝手な射精は許されない
バイブのリモコンも親父の手の中だ・・・酷い時は何そのまま時間も我慢させられる」
「・・そ・・それで・・お前は、ディーン・・」
「前よりずっと溺れてるよ・・・・四六時中欲しがるいやらしい体にされた
親父が俺を直接抱かないのは・・ただ俺をもっと淫らにして楽しむ為だ」
「・・嘘だっ・・そんな・・」
「嘘じゃない・・俺は嘘なんか言わないよ、ボビー」
「・・っ・・ディーン、だが・・信じられない、そんな事をジョンが楽しむなんて・・」
「こうすれば信じるよ」
「・・?・・」
そう言うとディーンは、体を起こしボビーの性器をズボンの布越しに掴んだ
「っ・・!・」
「ほら、これ・・・俺の今の話であなたも興奮した・・そうでしょ?」
「・・・・ディーンっ・・?・・」
いつの間にか、目の前には妖艶な娼婦のように微笑む、ディーンがいた
「いいよ、ボビー・・・俺も欲しい・・・久しぶりに、生の男のペニスがね
・・だからあなたも・・親父みたいに俺を使って楽しんでいい」
「・・・っ・・」
これは誰だと、ボビーは思った
小さい頃から知っていた、可愛いディーンの筈なのに
今、肌の熱さまで感じる距離に居るのは、彼じゃない
まるで、魔物
まるで、悪魔
「・・っ!」
ボビーは突然ある可能性に気付き、傍らに転がっていた聖水入りのボトルを掴むと中の液体をディーン目掛けてぶち撒けた
だがそうあって欲しいという願いも虚しく、全身を濡らしたディーンはただ笑っただけだ
「ああもぅ・・・・止めてくれよ
俺に悪魔が憑いてるって思ったのか?・・でも残念ながら憑いてない」
「・・・・・」
「それとも・・この聖水はローション替わりってことなのか?」
「・・デ・・ィーン・・・」
「じっとしてていいよ・・俺が全部やるから・・」
やはり魔物だと、ボビーは思った
聖水の効かない、魔物
そして、飛び切り強力な暗示も使う
だってそうでなくては、今彼を拒めない自分を説明出来ない
親友の息子
16歳の少年を
「お前は・・魔物・・だ・・」
ボビーがそう言うと、ペニスを口に含んで舐め回していたディーンは声を立てて無邪気に笑った
「いいよ・・そう思い込みたいなら魔物でも
・・でもそれなら、これが終わったら俺を退治しないと・・聖水も効かない強い相手を」
「・・っ・・もうすぐ・・ジョンが来る・・・っ・・」
「二人で力を合わせて退治?・・それとも・・・?・・・・どうする、ボビー」
その瞬間
ボビーは屈服した
父親のジョンさえ逆らえなかった、恐ろしく美しい誘惑に
「どこかに閉じ込めて・・ジョンにはもうお前は帰ったと言って、退治する術を調べる・・っ
・・それが分かるまでは・・・っ・・ディーン・・」
完全に勃起したペニスに肛門を擦り付けて焦らしていたディーンは、その縋るような答えを聞いて嬉しそうに頷いた
「・・そうだね、ボビー・・それまで俺は、あなたのものだ」
そしてゆっくりと腰を下ろろすと、歓喜の表情でボビーの全てを飲み込んでいったのだ
end