Galaxy Express 8
「タイタンは、太陽系で一番美しい所・・そして恐ろしい所だよ
 昔はアンモニアの海に液体メタンの島が浮いて、他の星の常識が全く通用しない自然だったけど
 人間は長い年月をかけて緑の星に変えたんだ・・・血の滲むような努力をしてね・・」

GEが巨大な星に吸い寄せられ、ゆっくりと高度を下げてやがて空に突き出したレールに乗るのを、ディーンはサムの話を聞きながら夢中で見ていた

前回地球を出発した時は悲しみに包まれていたから、今回漸く暗闇に浮かぶ星屑以外の物を見た感動が心に迫ってきたのだ

「・・本当に綺麗な星だな・・サム」

その感想は、ディーンが衛星タイタンに降り立っても変わらなかった

列車を降りてホームを一歩出れば太い幹の大木が広場の真ん中に鎮座して、周りの花壇にも花が咲き蝶がヒラヒラと飛んでいる

機械化人との戦闘に明け暮れ瓦礫と廃墟だらけになった地球に比べれば、楽園のような光景

「こんなのは・・・今までデーター映像でしか見た事無い、吃驚だ・・」

遠の小川には陽の光が反射して輝き、その美しさに引き寄せ似れるようにしてディーンは、長閑な街の道を何気なく横切ろうとした



その時



聞きなれたレーザー銃の音が聞こえ、次の瞬間には隣を歩いていた男が地面に崩れ落ちたのだ

「っ!・・なっ・・・・・この男っ・・殺されたぞ、サムっ!」

何処から撃ったのかとディーンが辺りを見まわして後ろに居る筈のサムに声を掛けると、丁度駆け出してきた数人の男達がサムを無理矢理連れ去ろうとしているところだった

そして不可解なことに、周りの人々は人が突然射殺されたのも人がさ攫われそうになっているのも全て見ている筈なのに、一向に助けを呼んだり悲鳴を上げる様子も見られない

「サ・・サムっ!!」

電気ショックでも受けたのか、グッタリとするサムを男達は奪った車に押し込め今にも走り出そうとしているのに、ディーンは必死でその車へと走る

「・・っ!」

だが丸腰ではどうにも出来ず、ただ締まりかけた窓に手を入れて車にしがみ付き引き摺られるしかない

「お前等、サムをどうするつもりだっ!!・・・・・・うわっ」

そして中の男に手首にスタンガンを押し当てられれば、全身が痺れて意識を失いその体は勝手に道路をゴロゴロと転がる

挙句、横の川へとディーンは落ちたのだ































「・・ぅ・・・ん・・・?・・」

「・・気が付いたかい・・?」

ボンヤリとした視界がゆっくりと鮮明になり、記憶が一瞬で戻ったディーンはガバっと起き上がった

「っ・・サムはっ?!、サムは何処にっ!!」

「・・まあ、落ち着きな
 サムってのは・・・お前のお連れさんかい?・・・攫われたよ、葡萄谷の山賊に・・」

目の前には一人の年老いた女性が居て、どうやら此処は彼女の住居らしい

この切迫した状況とは不釣合いに小さな畑と水車が回る、牧歌的な光景が小さな窓の外に見える

「葡萄谷?・・山賊って、どうゆうことだ?」

ディーンは急いでベッドを降りようとするが彼女は水の入ったコップを差し出して来て、途端に酷い喉の渇きを覚えてそれを一気に流し込むと、少しだけ落ち着きを取り戻して改めて尋ねた

「さっき・・・駅前で男が殺されるのを見た・・だが、他の人たちは知らぬふりだ
 サムが攫われてもみんな気にも留めてないっ、この星はどうなってるっ?!」

「このタイタンでは何をしてもいい・・
 個人のしたいように、したい事をしていい・・これがこの星の『楽園法』」

「ら・・楽園法?・・そんなもの冗談じゃないっ
 婆さんっ、さっき言ってた葡萄谷ってのは何処だ?・・教えてくれっ!」

「・・行って・・どうするんだい・・?」

「サムを助けるんだっ、決まってるだろっ!!」

「・・どうせ行っても・・命を取られるだけだと思うけどねぇ・・」

「っ・・いいからっ!言えっ!!」

女性でなかったら首の一つも絞めて吐かせるのにとディーンは声を荒げるが、彼女は肝が据わったタイプらしく少しも怯えた様子を見せない

「・・その人は友達かい?」

「と・・友達じゃ・・・・」

サムとの関係は何かと、ディーンは咄嗟に答えられなかった

肉親でもなく友達でもなく、ましてや恋人でもない


だけど、サムが好きだった

失いたくない

「でもっ・・俺はサムを守るって約束したっ、だからあいつを助けなくちゃならないんだっ」

ボディーガードはいい考えだね、と笑ったサムの顔を思い出してディーンは拳を握り締めた

「・・・・・」

すると彼女はゆっくりと立ち上がり、小さなその家の玄関を開ける

見ると直ぐ前には川が流れ、ディーンは此処を流れていた自分を彼女が拾い上げたのだと分かった

「ここからは・・川を下って葡萄谷に行ける・・あの小船を使うといい」

「・・悪いな、婆さん」

ディーンは小さな桟橋に向って走り出すが、後ろから彼女にシャツの裾を掴まれて慌てて立ち止まった

「ちょっとお待ち、ほら・・これを持っておゆき」

こちらに差し出した彼女の手の中に有るのは、見たことも無いような素晴らしい造りの銃

「こんな立派な物を・・・いいのか?」

「ああ・・・きっとこれがあんたを守ってくるだろう・・」

「・・ありがとう、助かる」

ディーン彼女に礼を言い、サムを山賊の手から救う為教えられるまま小船で下流を目指して行った





















「・・平気で人を攫うなんてとんでもない星だ・・ここの綺麗な自然と大違いだな」

ディーンはブツブツ言いながら慣れぬオールを懸命に動かし、船を操って深い森の中に入ってゆく

暫く進むと、遠くから何やら声が聞こえてきた

「・・?」




「たすけてぇぇぇ〜・・ぅわぁぁーん・・」




それは助けを求めて泣く、子供の声だった

「・・まさか・・」

声の近づいてくる方向を見上げると、やがてそこには下に女の子をぶら下げた小型の丸い飛行船

そして対岸には素早く木立に身を隠す、それを操作している思われる機械化人の姿

「っ・・この星でまでムーンに会うとはなっ・・」

ディーンは貰ったばかりの銃を構え、飛行船の方に狙いを定めて撃った



「・・っうわっ」

すると引き金を引いた途端に信じられない反動がディーンに襲い掛かり、その体を船から川へと投げ入れる

だがその光の軌跡は見事飛行船を捉え一発でバラバラに砕くと、子供は遠くで川の中に無事ポチャンと落ちた

しかしそれで安心したのも束の間機械化人が発砲して来て、ディーンは上流から流れて来るその小さな体を慌てて引き寄せると、機械化人も始末する

「・・もう・・大丈夫だ、な?」

胸に抱きしめたまま川岸に上がり、慣れぬ子供をディーンは必死にあやす

「・・お・・おにいちゃんっ・・ぅう・・」

「泣くなよ、家は何処だ?」






「おいっ!、大人しくその子を渡せっ!」

やがて子供の泣き声で居場所が知られてたのか、ディーンの前に男が立ち塞がった

それは確かに今朝サムを攫った、男達の中の一人

「ふっ・・冗談だろっ」

サム同様この子も彼等に攫われる途中だったのかと、フンと笑ってディーンは丸腰に見える男に向け威嚇の為に頬ギリギリを狙って撃った

「っ・・・この機械化人の手先め・・これでも食らえっ」

だがその弾丸をかわした男が叫んだ言葉に、何か重大な誤解があるのではと動きを止めてしまったディーンは、咄嗟に背後から足元に放られた麻酔弾の煙を思い切り吸い込んでしまった

「・・・・っ」

ヤバイと思ったときにはもう足元から崩れ落ち、同じように何も言えず眠ってしまった子供を傷付けずに、そっと柔らかな草の上に置くのだけで精一杯だったのだ

































「こいつ、人間の子供を攫おうとしてやがった」

「・・見かけは機械じゃないように見えるが・・中身はわからねぇからな」

眠った子供を優しく拾い上げた男達は、地面に横たわったディーンを足で突付きながら話し合っていた

「どっちにしろ、ボスが帰ってくるのを待つしかないぜ」

「・・構うかよ、こいつが居なくなった子供を抱えてたってのは事実
 俺に向けて銃をぶっ放しったってのも事実だ・・・ちょっと位可愛がってやっててもいいだろ?」

男は肌蹴たシャツの隙間から覗くディーンの白い肌に唾を飲み込み、ニヤニヤと目配せしあった

「確かに・・なかなか可愛い子兎ちゃんだな・・」

「・・そうと決まれば、さっさと葡萄谷に帰るぞ」


男はそう言うと軽々とディーンを抱え上げ、踵を返し森の奥に消えた

葡萄谷の山賊の、根城に向って








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