Galaxy Express 9
次に目覚めればディ−ンは、地球では考えられないような形の岩の塔の中の洞窟を利用した、彼等の隠れ家とも言える所に連れて来られていた

「・・っ・・」

「気付いたかい?、可愛い子ちゃん」

誰が可愛いんだと直後力の入らない体に唇を噛み締めて身を捩るが、しっかりと後ろに回されたディーンの手首には柔らかくて強靭な植物の蔦が巻き付けられていて、少しも緩まない

仕方なく首だけを上げて辺りを見渡したディーンは、その部屋の壁にある鉄柵の嵌った横穴の中に一つの人影を見出す

「・・!・・・サムっ?、無事だったかっ・・」

掠われたサムは食らった電気ショックのせいか気を失っている様子ではあったが、見たところ怪我をしている様子は無く取り敢えず会う事は叶ったとディーンは安堵するも、やがて這い始めた幾つもの武骨な手の感触にギクリと体を強張らせる

いつの間にか気を失う前に見た男達が、全員ディーンの周囲に集まって来ていたのだ

「へっへっへ・・・綺麗な肌だ、傷だらけなのが惜しいくらいにな」

「・・・」

もっと若い頃同性に体を任せた経験が無い訳ではないディーンだがそれは同意の上で、今のこの状況はもしかしたらこの後人生においての最低最悪の性的体験に成りそうな予感を感じさせる

それを示すように彼等の目は欲望でギラギラして口元はだらしなく開き唾液で濡れて光り、やがて嫌な予感通りやがて男の一人がディーンの上半身を近くのテーブルに乗せ、ジーンズを剥がし始める

「っ・・や・・やめろっ!・・」

「確かめてやるよ、兄ちゃん・・この体に機械の部分が有るか無いかをな」

「・・俺達だってこんな事はしたくねぇけどな・・他に方法もねぇんだよ」

「よーく触らねぇとわからねぇからなぁ・・尻から指も突っ込んで内臓もチェックだ」

口々に自分達の穢れた行いを正当化する言葉を吐きながら男達は取り合えずといった感じで下半身だけ裸にし、やがてディーンの脚の間に収まる順番を争い始めた

「・・畜生っ・・変態どもっ、殺してやるっ・・」

その隙に逃げようとするディーンだが、しっかり男の一人に髪を掴まれてテーブルに押し付けられていれば、虚しく悪態を付くしか出来ない

「うるせぇ、機械化人の仲間なんざ嬲り殺しされても文句は言えねぇんだよ」

「俺は・・・機械化人の仲間なんか・じゃ・・っっ」

「殺す前に気持ちよくしてやろうっい言ってんだ、ありがたく頂戴しろっ!」


聞く耳も持たず怒鳴り声とともに上から殴り付けられて、ディーンは息が詰まる

そしてその後も少し大人しくさせる必要があると考えたのか男達の拳は数回振り下ろされ、やがて両足もテーブルの脚に括られるに至って仕方なくディーンは諦めて体の力を抜いた

これからどうなるか分からないが、逃げる時の為の体力を温存する必要があるし、もし自分が助からないのならせめてサムだけでもと考えたからだ





「・・っ・・・・ディーンっ?!!」

「・・サム?!」

だがその時、最悪のタイミングでサムは意識を取り戻したのか、直ぐ横の牢の格子を掴んで立ち上がる姿が見えた

「・・サム・・っ・・み・・見るなよっ・・・嫌だっ・・」

何が行われようとしているのかは誰にでも明白なこの状況を、ディーンはサムにだけは見て欲しくなかったというのに神様は残酷な事をすると、首を振り見るなと訴えるが彼はこちらを凝視しその目を怒りに燃え上がらせている

「お前達っ・・それ以上ディーンに何かしてみろっ、全員命を貰うぞっ!!」

「・・ああん?・・なにやら煩いもう一人が目を覚ましたぜ」

「サムとやら・・指を咥えて見てなっ、相棒がいい声で啼くところをよっ」


サムが挑発するも牢の中からでは効き目も無く、リーダー格の男は余裕の態度で笑いながら開かせたディーンの脚の間に進み出ると、やがてサムの怒号交じりにカチャカチャとベルトの金具を外す音が部屋に響き、ディーンは自分が彼の目前で無様に犯されるのだと悟った

「・・・・」

それでもただレイプされるのならもしこの後生き延びれたとして立ち直りようもあるだろうが、サムに全てを見られていたとなるときついものがあると、不思議に頭の中は冷静だ

だがそれも男の性器が下肢に宛がわれるまでで、ムッとする体臭と不愉快に熱い体温が背後から覆い被さって来るとディーンは改めて暴れ出した

それは嫌悪感からくる本能的なもので、理性では無駄と分かっていても抑えられない

「暴れても無駄だと言ってるだろう・・ほら、食らえよっ!」

先端がめり込むのを感じ、もうダメだ、とディーンはギュと目を閉じた








「お前達、何をしている?」









その時、男達が一瞬で凍りついた


「っ!!」

「・・ボ・・ボスっ!・・」

今にもディーンを犯そうとしていた体も弾かれたように後ろに退き、その野太い声が聞こえた方向に首をめぐらせばそには2メートルは有るかという逞しい体の男が肩に子供を乗せて階段を降りてくるところで、確かにそれはさっきディーンが助けて川から拾い上げた女の子だ

「・・ボス・・こ・・・これは・・・」

流石に子供の手前、男達も焦ってディーンにジーンズを元通りに急いで着せ、自分の服も正して苦しい言い訳を始める

「・・その・・子供を攫おうとして・・コイツが・・」

「そ・・そうですっ・・取調べをと・・」

だがボスと呼ばれた逞しい男は何も言わず傍らに置かれていたディーンが持っていた銃をジッと見つめるだけで、やがてシンと静まっていた部屋に女の子の高い声が響き、男達はビクリと体を竦ませた

「ちがうよっ、このお兄ちゃん・・あたしのこと助けてくれたのっ
 きかいかじんだって、やっつけてくれたのよ・・おじちゃんたち、かんちがいしてるっ」

「そっ・・そんな筈はねぇ、ボス・・こいつは・」

「この銃は・・お前のか?」

近寄って来るボスに慌てて男の一人が縛っていた蔦を切り、漸くディーンは男に向き直った

「・・・・そうだ」

「これは戦士の銃、機械人間を倒せる唯一のコスモ・ガンだ
 ・・・・お前、何処でこれを手に入れた?」

「それは・・」

ディーンも漸くまともに話を聞いてくれる人物だと、今までのことを全て正直に話した














「謝る、ディーンとやら・・・誤解があったらしい
 それに・・部下のした下品な真似は、いずれ彼等に償わせる」

自分を川から拾い上げてくれたおばあさんから借りた物だという事、ムーンに連れ去られそうになっていた女の子を偶然見た事などを話し、やがて機械化人の死体も運び入れられその致命傷がディーンの銃によるものだと証明されると、ボスと呼ばれた男は頭を下げて来た

「・・ぃや・・いいよ、未遂だったしな
 それより・・サムを早くあそこから出してやってくれ」

ボスの力は絶対なのか男達は手掌を返したように怯え、ディーンの言う通りサムが閉じ込められている牢の鍵をそそくさと開けたが、まだ完全に自由の身とはいかないようだ

「俺はこの葡萄谷を束ねる山賊の首領、アンタレス
 お詫びにあんた達を歓迎する・・と、言いたいところだが、まだ一つ確かめる事が残っててな」

「?・・なんだよっ、その子の証言と証拠で俺達の疑いは晴れたんじゃないのか?」

ディーンはまだ何かあるのかと、サムを庇うように前に出る

「この土地にもこれまで・・見かけだけは人間というスパイが何人も入り込んでる
 ・・最終確認だ、悪く思わないでくれ」

「・・?」

そう言ったアンタレスの命令で二人の前にゴロゴロ子と引っ張ってこられた装置はまるで旧式のレントゲン装置のようなもので、ディーンは呆れてアンタレスを見た

「それで俺の体の中を覗こうってんだな?、馬鹿馬鹿しい・・」

「・・悪いな」

子供を助けたと知って表情は和らげたアンタレスだかまだ真にディーンを信じていないらしく、その目は鋭さを失っていない

なら仕方がないとディーンは装置に乗って腕を組み、下から強烈に光が照射されると向こう側に骨格が表示されているらしき電子画面越しに男達を睨んでやった

あんなレイプ紛いの真似をしなくてもこんな簡単に確かめられる機械があるんじゃないかという視線に、心暗いところの有る男達は急いで目を逸らす

「うむ・・立派な戦士の体だ」

「・・どうだ、俺の体に機械の部分なんか無いだろ?」

顎に手を当てて感心したアンタレスに、ディーンはざまあみろと笑ってやった

「ああ・・折れた骨を繋ぎ褪せた原始的なボルトは有るが、機械化された体とは似ても似つかない 
 ・・お前は混じりっ気無しの立派な人間だ・・疑って悪かった」

「・・まぁ、いいよ・・機械化人が憎いのは俺も同じだ」

コスモ・ガンを返してもらい漸く面倒な事は済んだと安堵し肩竦めたディーンだか、アンタレスは次にサムの腕を掴んで前に引き出した

「っ・・アンタレスっ、サムに何する!?」

「もちろん、この装置に乗ってもらうのさ
 あんたは人間だったが・・・こいつの中身が内臓一つでも機械なら、この場でバラバラにしてやる」

「・・っ・・・・サ・・サム・・」

ディーンは突如として激しい不安に襲われた

確かにシャワーで裸を見た限りでは、サムは生身の人間だと思えた

だが中身までは、外からでは分からない

もしサムが機械化人だったら

もし今まで自分に言っていて事が嘘だったら

ディーンは少しも自分がサムのことを知らないのだと自覚し、愕然とする

「・・・大丈夫・・だよな・・・サム・・」

知らないのに、好きになっていた

失いたくないと思ってしまっていた

「・・ディーン・・」

無理矢理装置に乗せられるサムは、静かな目をしてこちらを見ている

「・・・・・」

やがてディーンの時と同じように一つの陰りも無い綺麗な骨格が画面に映し出されると、体を力を明らかに抜いて見せたアンタレス同様、ディーンもホっと張り詰めていた息を吐き出す

「悪かった、二人とも・・・お詫びに俺の骨格も見せてやる」

「そんなもの・」

見ても仕方が無いと言おうとしたディーンだが、次に映った画面を見て目を見張った

アンタレスの腹部には無数の弾丸が埋まっていたからだ

「こ・・これ・・は?・・」

「あっちこっちの戦場の修羅場で体にめり込んだ不発弾やエネルギー弾だ」

「・・じゃ、何時か爆発するんじゃないのかっ?」

ゾッとしたディーンに、アンタレスは豪快に笑い飛ばして言った

「その時は俺はなんにも残さず、消し飛ぶのさ・・ははは
 ・・・さあ、上に行こう、食事と酒を用意させる」

ポンポンとアンタレスに肩を叩かれその上助けた女の子に腰に懐かれて、ディーンはどうにか握ったサムの手離さないように苦労しながら階段を上って行った



















アンタレスが二人を連れてきたのは、一瞬ここは託児所かと間違うくらい多くの子供達が遊ぶ大きな空間だった

壁には無数の小部屋が作られ、その二階部分から滑り台やジャングルジムのような物も作られていて、ディーンは賑やかな声に包まれて食事をご馳走になる

「そうか・・お前は親を機械伯爵にな・・」

「ああ」

やがて満腹になったディーンは尋ねられるまま自分の事を話し、アンタレスも周りを見回して言った

「ここに居る子供達も同じ・・みんなそんな境遇さ」

「・・みんな?・・」

「機械伯爵に親を殺され身寄りが無くなった子を、引き取って育てている
 ・・みんなにとって俺が父親、ここが我家という訳だ」

「そうだったのか・・こんなに・・沢山の子が・・っ・」

「・・ディーン・・?」

怒りで震える手を握ってくるサムの温もりを感じながら、ディーンは改めて決意を言葉にした

「やっぱり・・機械伯爵は許せないっ・・・奴を殺すためなら俺は・・」

「どうするって言うんだ?、ディーン」

「・・機械の体を手に入れるっ・・その為にGEに乗ったんだっ」

アンタレスは驚いたように目を見張った

「GE・・ギャラクシィ・エクスプレスかっ・・・・・・・っ?」

だが直ぐ、何故かサムを見て眉を顰める

「・・・そういえば・・聞いたことが有る・・
 ・・サム・・・・サミュエル・・・・?・・・・・まさか・・」

「・・・・」

「・・?・・なんだ、アンタレス??」

ディーンは、突然何かに気付いたようにサムを見つめたまま動きを止めてしまったアンタレスを不思議な気持ちで見つめ、次に彼の口から出る言葉をじっと息を詰めて待った








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