Galaxy Express 13
美人で、しかも若い異性に相手から積極的に腕を絡められると、俄然ディ−ンの中の女好きの部分に火が点いた

先程のサムとジョ−の会話から何故彼女がこんな事を要求するのかはなんとなく察しがついたが、ディーンは彼女に促されるまま海賊船に足を踏み入れる途中改めて尋ねる

「・・ちょっと・・待ってくれ、ジョー・・君はどうして・」

「どうして私があんたを一晩買ったのか、理由を聞きたいの?」

この状況を完全に理解、納得すれば、海賊の掟に基いた取引など無くてもこんな美人の据え膳を食わぬ手はないと思いながら、ディーンはジョーの自分を買ったと言う豪快な言い回しを感心して見つめた

「ぁ・・ああ・・なんだって俺なんかと、思うのが当然だろ?・・」

だが、次の瞬間には彼女は不意に目を伏せ、一人の女に変わる

「・・あんたは・・もう死んでしまった昔の恋人と
 夢の中でもいいから会いたいと思ったこと・・・無いの?」

「・・・そうか・・君はジェンセンと・・・・彼は死んだのか・・?」

やはりそうだったかと、ディーンは頷いた

「・・ええ、数年前に・・病気で・・」

「タイタンの彼のお母さんは知らなかった・・・・でも・・君はこのまま知らせないつもりなんだな?」

「・・そうね・・・年老いた母親には微かでも希望が必要・・そうじゃない?」

「・・ぁぁ、そうだな・・」

ただ今は亡き昔の恋人に似た自分と今夜一晩過ごしたいだけならこのまま彼女の要求に答えるべきだろうと、ディーンは宇宙船に乗り込んで直ぐ窓から見えるGEを振り返り、そこからサムが自分を責めている気がして小さく呟く

「・・なら・・いいだろ・・?、サム」

だがそれを鋭く聞きつけたジョーは、呆れたように言った

「・・?・・ねぇ、もしかしてあなたとサムも・・・こうゆう事に許可を貰う必要がある関係なの?
 昔ベタベタしてたジェンセンとハ−ロックみたいに?・・そんなとこまで似てるの?、冗談でしょ?」

「ん?・・いや・・違う、多分・・・・・・・・・っ?、ハーロックだって!?」

突然会話の中に出た、少年時代誰もが憧れた偉大な海賊の名前にディ−ンは、上昇するエレベータの中で何故か顔を顰めているジョーに慌てて聞き返す

「ええ、ハーロックよ・・・悔しいけど、ジェンセンと『親・友』だったわ」

「・・・・・・・だったら・・」

そっくりな自分なら、ハーロックに会えば簡単に友達になってもらえるかもしれないとディーンが期待に満ちた目をしてジョーを見ると、既に彼女は中指を立ててこちらを睨んでいた

「私もサムも、あなたをハーロックに会わせる気なんか無いわよっ
 それに彼は今この広い宇宙の反対側・・・余程の事が無い限り呼び出せないわ」

「・・・・別に・・呼んでくれなんて・・」

エレベータを降りたディーンは何故かハーロックを敵視するジョーの後ろから、直接彼女の船長室に通じる廊下なのか敷かれた豪華な赤い絨毯をフワフワと踏みしめて歩いて行く

「全く・・男はみんな彼に憧れるわね・・
 でも死んだジェンセンはハーロックと戦っても、きっと勝ってた・・それ位強かったのよ・・」

「・・凄いな」

「ええ」

「彼にも・・会ってみたかった・・」

やがて船長室の前に着いて足を止めたジョーの肩を、ディーンは力を込めて抱きしめた

そしてここから一歩部屋に入れば自分はジェンセンになってやると決心した気持ちが伝わったのか、ジョーも想いを振り切ったように顔を上げ弾けるような、それでいて何処か寂しげな笑顔で笑った










































日付的には次の日、正確には17時間後にディ−ンはGEに戻った

心なしかスッキリした体の感覚をわざとしかめた顔をして隠して、迎えに出たサムの手前離れて行く海賊船の窓に見えるジョーに手を振る動きは控え目にする

「ぁ・・サム、ただいま
 ・・あの・・ジョ−は俺が死んだ恋人に似てるから、それで・・・だったらしい」

「・・・・・」

別に後ろめたく思う必要もないと考えようとするが、何故か今のサムは不機嫌そうに見えた

「・・そんなにジェンセンって男に似てたんだな、俺・・・な?」

「・・・・・」

「・・ハ・・ハ−ロックとジェンセンって親友だったって・・凄いよな」

「・・・・・」

「っ・・・でも・・彼は今遠くに行ってて会うのは無理・」

「ディ−ンっ!」

「っ!?、な・・なに?」

ディ−ンは突然怖い顔をしたサムに両肩を掴まれ、列車の連結部の壁に叩き付けられた

気不味くて一方的に一人喋り続けたのがいけなかったかとも思ったが、彼の真意を探っている隙にディ−ンの唇はサムのもので塞がれている

「ん!・・んん!??」

ディ−ンは初めてのサムからの行為に慌て、偶然その場に通り掛かって驚きから小さな悲鳴を上げたクレアを呼び止める事も出来ないまま、唇を完全に明け渡してしまう

それは昨夜のジョーの柔らかな唇の感触を奪い取るように激しく、苦しくなって顔を背け酸素を求めててもサムに無理矢理前髪と顎を掴まれて戻される

「・・っ・・・・はっ・・・ん・・」

やがて目の前の光景に耐えられず走り去るクレアの背中に伸ばしていたディ−ンの手はサムの背中に回り、そのシャツの生地を必死に引っ張った

しかしハァハァと息を整えるのに精一杯でディーンが言葉を紡げなくなった頃、サムの唇は首筋に滑り落ちるとそのまま下へ下へと、時折強く吸い痕を残しながら鎖骨までたっぷりと味わう

「・・・・・サムっ・・・ちょ・・」

次にサムの大きな手が信じられない部分を掴むのを感じたディーンは、初めて彼に怒りと恐怖を抱いて本格的な抵抗を始めた

体格で負けていても喧嘩慣れしているディーンは互角とサムに揉みあい、だが膝を使いそれが思いの他強く彼の腹部に衝撃を与えた事を案じて動きを止めると、その隙をついてサムはディーンの腕を捻り体を反転させて頬を窓ガラスに押し当てて拘束した

「・・・っ・・」

そしてシーンズのジッパーが下ろされると敏感な部分に潜り込んで来たサムに無理矢理連れ出されて強い刺激を与えられ、後ろから強く抱きしめているサムの手は胸を彷徨い、時折硬くなってしまった突起を無意識に引っ掻く

「・・っ・・ど・うして・・・っ・・」

サムのことは嫌いじゃない

嫌いじゃないところか、愛し始めていた

こんなふうにではなくこんな場所でもなく、優しさをもっての行為ならディーンも断る事など出来なかった筈だ

なのに、今のサムはまるで別人のように身勝手に振舞っている

「・・っ・・ぁ・・あっ・・」

だが、それでも勝手に快楽を拾い集めて高度を増したものの先端からは透明な液体が滲み始めて、嫌だと首を振ってもサムは更に手の動きを速めディーンを頂点に導く

「・・ぁっ・・ああっっ!・・ぁっ・・」

やがてディーンの体はビクビク震え、それと同じタイミングでサムに掴まれたままの部分からは白い液体が噴出し列車のドアに掛かると、ゆっくりと流れ落ちていった

しかし、そうしてディーンが虚しさと悲しさに包まれた気持ちを吐き出して見せても、サムは最後まで一言も話してはくれなかったのだ











































腕の中のディーンの体からガクリと力が抜けて、漸くサムは自分が彼を凄い力で締め上げていたのに気付いた

そして手を離せば、列車の窓ガラスに凭れ掛かって体を支えているディーンの頬に、大粒の涙が伝っていたのを知って愕然とする

「・・ディーン・・・」

自分は何をしたのか、サムは目の前で入らない手に懸命に力を入れてノロノロと服を整えるディーンを呆然と見た



昨夜は眠れなかった

眠るどころか、ジョーとの取引を止めるまもなくディーンが飲み、彼が海賊船に消えてからというものずっとサムは嫉妬に苦しんだ

自分のディーンへの気持ちを無いものとして扱おうしていたのに

彼を愛してなどいないと自分に言い聞かせて、友人よりは少しだけ深いこの関係を保とうと心に決めていたのに

だが、他の人の物になってゆくディーンの後姿を見て、そして一晩中彼が今何をしているのか考えたら堪らなくなった

許されないと、これ以上ディーンに深入りすればやがて苦しむだけだと分かっていて、もうサムは自分の気持ちが乱れるのを止められなくなったのだ













「・・最悪だ・・クレアに見られた・・っ・・」

ショックを受けているディーンの様子に冷静さを取り戻そうと努力していたサムを、その場からヨロヨロと立ち去ろうとした彼が漏らした一言が再び煽る

もちろん最初に謝るべきはサムだった

だが選りによってディーンは、無関係な機械化人のウェートレスの女の話題を口に上らせた

「そんなにっ・・人の目が気になるの?、ディーン・・女の目が」

「っ・・いい加減にしろよっ!、サムっ」

振り返ったディーンは、泣き腫らした赤い目でこちらを睨んでいる





醜い嫉妬

それをディーンに悟られた






サムはやがてディーンがその場から立ち去るのを止めることも出来ず、ただいつまでも窓の外の暗黒の宇宙空間を見つめて立ち尽くしているだけだった






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