Galaxy Express +α
昨夜は眠れなかった

いや、自分だけでなく恐らくこのエリアに家を作った大多数が同じ気持ちで長い夜を過ごしたに違いない


「・・はぁ・・・」

マイクは隈のできた目元を擦り、ギィっと建て付けの悪い粗末な扉を開けて外に出た

当然というべきか、隣のディ−ンが住む小屋の前ではサムと名乗ったあのでかい新入りだけがスッキリした顔で朝日を浴びていて、本人の姿は見えない

「あ、おはようございますっ・・マイクさんでしたよね?」

「・・・・・・」

あの騒動の中、俺の名前を覚えてただけでもいいとしよう

「・・ああ・・おはよう、サム」

俺はさりげなくサムの背後の木箱に腰を下ろし、汲んだ水で体を拭き始めた彼のその逞しい肉体を観察する

そして蘇る昨夜この一画に響き渡ったディ−ンのあの悩ましい声が、俺の耳に蘇る


この薄い唇が彼の肌を舐めた?

この太い腕で彼を抱き上げた?

この腰が前後して突き上げた?

何度も?


「・・・・・・」

きっと昨日のディ−ンに男の恋人が居たという大事件は今日にも全て広まり、昨夜の悩ましい声が聞こえなかったエリアの人々も男はもっと早く口説けばよかったと後悔し、女はまさか彼がバイだったとはと驚くだろう










やがて朝から溜め息をついていたマイクの前で、サムの背後の扉が小さく開いた

中からはディ−ンが外を窺い、死角になっているからかマイクの存在には気付かぬまま小さく顔を出す

まるで巣穴から顔を出す小動物みたいにキョロキョロと周りを見回してから、ソロソロと出て来る

その足元も覚束ないその様子に昨夜彼がどれほど愛されたか分かる気がして、マイクはつい意地悪な気持ちになってわざと大声で言ってやった

「・・よう、新妻さんっ!、おはよう!、太陽が眩しいか?!」

「っ!!」

ビクっとディ−ンは跳ね上がり、次の瞬間にはカ−−っとその美しい造形の顔を真っ赤に染めた

「まったく・・いい声だったよなぁ〜もう、俺まで興奮しちまって・・」

更に言えば、金魚なようにパクパクと肉厚な彼の唇が開閉して、やがて凄い速さでシュポンと元の小屋の中に引っ込んだ

マイクは、そのこれまでの女垂らしでタフガイなディ−ンとは余りに違うその印象に益々彼を好きになりそうだと、参ったと呟きゴシゴシとその顔を擦った







end

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