半神 3
ベッドの上でも揉みあって、片方が押さえ付けようとすれば片方が体を起す、その繰り返しだった

腰で繋がった体は完全に覆い被さる事も出来ず背後に乗り上げることも不可能で、やがてハァハァと切れた息をついた俺達は諦めて仰向けに転がるしかない



そして俺は暫く顔を背けていたが、ふと頬に触れる指の感触で振り返った

そこには、怒りを沈め俺に優しく触れるサムが居た

どうやら揉み合った時に爪で付いたらしい頬の傷を、申し訳無さそうな顔で撫でている

「・・・・・」



その時、弾かれたように俺の手は、勝手にサムの頭を掴んで引き寄せていた

そして驚いて息を飲む彼の唇に、キス


キス



初めてかどうかさえも分からないが、決して家族として交わす種類ではない、キスをした




「っ・・ディーン・・っ・・やめろっ・・」

「・・サムっ・・」

必死に上半身を折り曲げて俺はサムの口腔内を屠り、空いた右手は彼のジーンズのジッパーを下げた

本気とは思えない弱々しいサムの抵抗が、俺のこの行為を後押ししてくれる

「・・愛してるっ・・愛してるんだっ、サムっ!・・」

「・・っ・・言うなっ・・・駄目だっ・・駄目なんだよっ・・」

だが言葉とは裏腹に直ぐにサムの性器は滾り、彼の手は俺の背中を離さない

ずっと押さえられていた嵐のような衝動が、堰を切ったように吹き荒れ、二人を翻弄した

俺もサムも、完全に重ならない体をもどかしく思う苛立ちをぶつけるかのように、互いを手荒く愛撫して強引に絶頂と押し上げる




一つになってしまいたかった

既に一つなのに、もっと

もっと、深く






そして、全てが終わった後も俺達は、さっきと同じようにただ切れた息をついて仰向けに転がるしかなかった











































大学からの帰りに、ポストから手紙を取り出すのは俺の仕事だ

何故なら、ポスト側を歩いているのは常に俺だから

簡単な理由だ



「うは・・手紙が濡れちまってる」

だがその日は朝から激しい雨で、密封されていてるはずの箱の中まで雨が入り込んでいた

「開封して広げて乾かそう・・そのままだと読めなくなる」

「・・・彼女宛てだぞ、いいのか?・・」

サムと半同棲手状態になっていたジェシカは、最近緊急を要する手紙の宛先を俺達の家に変えていた

「読めなくなる方が困るんじゃないかな」

「・・確かに・・」

流石に恋人でも彼女宛の手紙を開封するとは思っていなかったが、サムとジェシカの間の信頼関係は俺が思っているよりもしっかりしたものだったらしい

サムは濡れた頭を拭く俺の横で、ソファの上に乾いたタオルを広げ、手紙の折り目を丁寧に伸ばしてゆく

「っ・・医者だ・・どうして・・」

だが最後に封筒の後ろに大きく押された送り主のスタンプだけが目に入ってしまったのか、サムは耐えられずその便箋の文面にも目を走らせ始めた

途端に息を飲む気配が分かったが、俺は目を逸らしじっと黙っていた

そして直後帰って来たジェシカとサムのやり取りの間も、俺はじっと黙って俯いていた

激しい怒号にも

泣き喚く金切り声にも




なぜなら




濡れた封筒を開けるか、開けないかの選択

そして、その文面を読むか読まないかの選択

その後の、ジェシカを信じるか信じないかの選択



それは、全てサムに委ねていたから













































「信じられないな・・彼女が勝手に俺達の分離手術を医者に相談してたなんて」

次の日、俺はサムと数時間の距離にある岬へとドライブに出かけた、車の中で呟いた

「それに、俺達は了承しているとも伝えてたんだろ?・・後は日程を決めるだけだって」

「・・・・・・」

まだ微かな暁の光の中、車は静かに走り続ける

「彼女が使ってた棚には、ちゃっかり睡眠薬も置いてあった
 もしかしたら俺達を眠らせて病院まで運んで、手術を受けさせる気だったのかも」

「・・・・・・」

「女の嫉妬って怖いよな?
 気が付いたら切り離されて、一人ぽっちだったなんて事になるとこだった」

「・・・・・・」








サムは昨日から、ずっと黙ってる

それまで黙っていた俺の代わりみたいに

そして俺は、サムの沈黙の理由を知っているから、ずっと喋っている




















やがて岬に着いて、車を止めたサムは大きく一つ深呼吸をした

その吐息は震えていて、俺もこれから何をサムがしようとしているのかが分かる


「・・ディーン・・」


差し出されたのは、鋭いナイフ

サムはその刃を自分の方に向けて握り、俺の方にも差し出した



「一緒に・・握れよ、ディーン・・分かってるだろっ・・」


「・・・・ぁぁ・・・・分かってる」







やっぱり、サムは知ってた

ジェシカを陥れた手紙を書いたのが誰なのか

どうしてそんな事をしたのか

全部



知っていて、愛してた筈の彼女を責めた

彼女を、追い出した















俺は離れたくなかった

でも、離れたかった






一つでいたかった

でも、一つではいられなかった











「・・愛してるんだ、サム・・・」

「僕も・・だよ、ディーン」


二人のこの感情がこれから、憎しみと区別がつかなくなる、その前に











俺はサムの握るナイフの柄に手を添えて、二人の腰の結合部にむけ、力いっぱい突き立てた





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