Automatism 19








白い







白い世界






「・・・ここは何処だ?・・」




気が付くとディーンはたった一人、真っ白な世界に居た

心地のよい朝の靄のような空気が立ちこめ、その体を包んでくる



「・・・・・・・・誰か・・居ないのか?」


声をかけても応えは無く、少しずつ濃くなる靄に視界を奪われてゆく


やがて



『・・・・ごめ・・・・・ね・・・・・』

「っ?!・・」

いつの間にか周りを取り囲んでいる、複数の影



『ごめん・・なさい・・僕達の復讐にあなたを・・巻き込んで・・・・・』

「っ・・誰だっ!・・・何のことだ・・?」

それらが言う言葉を意味を考えても、ディーンには心当たりが無い



『あの男を殺そうと・・・・でも・・・僕達は罪の無い人まで・・
 同じ目に遭った貴方の命まで犠牲にしてしまうところだった・・間違ってたんだ・・・』

「・・あの男?・・殺す・・って・・?・・」

ブンブンと頭を振るが、思い出せそうで思い出せない

何かとても大切な記憶

それでも


『もういいんだ・・これであの男は罰を受けて地獄へ行く
 ・・・だから・・・だから貴方を解放するよ
 それと貴方は望んでないみたいだから・・ソレも向こうに返しておくから
 ・・・じゃあね・・・・さよなら・・・』

「っ、待てっ!・・待ってくれっ」


教えて欲しい

何が起こってるのか

これから何が起こるのか

酷く怖いから



『僕達に付いて来ちゃ駄目だよ、ディーン・・・あっちで・・待ってる人が居る』

「・・・・?・・」


そんなことを言われても、こんな所に一人は嫌だった

こんなところに留まるのなら、彼等と一緒に行きたい

それに彼等はまるで他人ではないような気がした

兄弟

家族

いや、どれも違うが、何かを分かり合える気がした


やがて消え行く彼らの影を追いかけ、ディーンは走り出した


「・・っ・・・一人は嫌だっ・・・誰かっ・・・」

しかし直ぐに影は消え去り、目標を失ったディーンは子供のように泣きじゃくって、白だけの世界を彷徨った



こんな時、誰を呼べばいい?

誰も居ない

自分には誰も



だが、その時




「っ!!」

見えない腕の感触が強い力でディーンの肩を掴み、その世界のある一点に引っ張って行った

そこはこの白よりも更に明るい光源

眩しくて眩しくて

遂にディーンは目を閉じた





目を閉じて、その腕の力に全てを委ねた



















































「・・っ・・」



最初に感じたのは、自分が何か固い物を咥えているという事

そして一定感覚で鳴る電子音

白い壁




まるで病院の一室のような


病院??



「・・・・・」

泣いていた後のようにバリバリ張り付く瞼を懸命になって上げて周りを見ていると、すぐ横に居たらしい人影が声を上げた

まるで何か奇跡を目撃した人のような表情で




ああ、看護婦さんか、とディーンは思った

そして美人だなと感じると同時に、これまでの記憶が全て戻った



































意識が戻って喉に入っていた不愉快な器具が外されると、最初にアッシュが病室へやって来た

これまで見たことも無い顔で、何かを我慢してるみたいだ

「・・・ディーン・・良かったよっ・・もう意識が戻らないかと・・っ」

ディーンはそれが泣くのを堪えているのだと気付き、いつもは飄々として医学の知識もあるアッシュのそんな様子で、改めて深刻だったらしい自分の状況を知る

「・・っ・・・っ・・」

だが何かを言いたくても喉が酷く痛んで、言葉が出てこない

「っ・・ああ、無理すんなっっ!
 声帯は無事だけど直ぐ横を縫ったから、痛いなら暫く黙ってろ」

「・・・・・・」

確かに少し喉の筋肉を動かしだけで、燃えるような激痛を感じる

「・・ディーン、あの後・・アルバートを逮捕して事件は無事解決したよ
 弾がお前の喉に当ったって事だけがヤバかったが、頚動脈は逸れてて・・助かった
 肩を狙ったと言ってたが、瞬間アルバートの野郎がお前を抱き寄せちまったからな
 ズレたんだろう・・・・・覚えてるか?」

そう言い、アッシュは手を握りイエスなら1回、ノーから2回握れと指示して来た

イエス

「・・・それで・・・・・ディーン、あの瞬間・・・お前、死のうとしたんだろ?」

・・・・イエス

「だったら・・・またあんな事が起こったら、そうするのか・・?」

・・・

あんな事?

ディーンは改めてアッシュに言われて考え、ふとこれまでと周りの世界が違うのに気付いた

誰の気配も感じない

病院などという死者の魂が満ちている場所なのに、これまで絶え間なく感じていた死者の気配が全く無い

いや

無いのではない


感じない、のだ


「・・お・・おい、なんだよ、周りなんか見て
 まさか・・ この病室で首吊りや飛び降りなんか許さないぞっ!
 ・・ってか、何処でも駄目だっ!、死ぬのなんかっ!」

全くの誤解にとりあえずディーンはアッシュの手を2回握って否定し、掌に人差し指でSALT?と書いてこの病室が塩によって既に守られているせいで気配を感じないのかを確かめようとした

だがまたもアッシュは誤解し、腕時計を見て言って来る

「っ・・ぁぁ、塩・・・・、買いに行かせた・・もう、帰ってくるって!
 あいつにお前が意識取り戻したなんて言ったら、絶対途中で事故るだろ?
 だから黙ってたんだけど・・・驚くだろうな」


帰ってくる?

あいつって・・






















「・・・っ・・・ディーン・・?・・・」

やがてディーンの前に、両手いっぱいの塩の袋を抱えたサムが戻ってきた

そしてその目からは、見る見る幾筋もの涙が流れ出した




PC用眼鏡【管理人も使ってますがマジで疲れません】 解約手数料0円【あしたでんき】 Yahoo 楽天 NTT-X Store

無料ホームページ 無料のクレジットカード 海外格安航空券 ふるさと納税 海外旅行保険が無料! 海外ホテル