Triple rainbow 4
「どうやらあいつ等、デキてるらしいぜ
 ディーンとゴードン・・・お前、知ってたか?」

「・・っ!?・・」

へへへと笑いながら男は、その日一人房に戻ったジャレッドの背後を取って言った

腰を擦り付ける不愉快な感触に鋭く振り返れば、道化のように大げさな仕草で壁際まで後退する

「おお・・こえぇぇ」

「・・気ぃ付けろよ、ディーンに殺されっぞ」

「違いねぇや・・・はは・・欲張りさんだからなぁ」

食堂での一件から彼らはジャレッドとディーンの間に有りもしない関係性を見出したらしく、四方から冷やかしの声が飛ぶ

「・・・・・」

「なぁ、教えてくれよ・・・あいつが、どうやってあのゴードン手懐けたのかをよ」

まるで、お前もディーンの女なのだから知っているだろうとでも言いたげだ

「マジわかんねぇんだよ・・・ゴードンはケツ掘る方専門の筈だぜ?
 だけど掘ってやっても色々便宜測って貰えるって分ったらよぉ・・・
 目瞑って頭に女を思い浮かべながら、嵌めてやるって奴も居る・・そうだろ?」

黙り込むジャレッドの前で、房の男達は、そうだそうだと笑った

だがジャレッドだけは、今の話を心の中で必死に否定していた

否定しきれるものではないと分っていても

考えたくない

あのディーンが、誰かを抱くところなんか



自分ではない、誰かを































「・・なぁ・・お前、やった?」

次の日の洗濯作業中、アンディはジャレッドに近づき聞いてきた

「・・・何を?」

「ディーンと」

「・・・・・・」

どうしてみんな自分に聞くのかと、ジャレッドは悪意は無くただ好奇心に満ちている目の前の小柄な男を見つめた

「・・・・やってないよ」

「・・そっか」

そう答えて自分が負けたような気がするのはどうしてかもジャレッドは考えたくなかった

今日も2人連れ立って姿を消すゴードンとディーンに、酷く不愉快な気分になるのも





そして、そんな2人を見てアンディは呟く

「あっ・・あの2人、まただ
 ・・でも、ディーンって何の取引をゴードンとしてんだろうな?
 別に楽な作業に変えて貰う訳でもないし、身を守ってもらう必要もないのに・・・なぁ?」








































眠れないジャレッドは、いつも隣のディーンを見ていた

いや、ディーンを見つめてしまうから眠れないのかもしれないが、何れにせよ手の届く所に有る限りなく遠い身体から、ジャレッドは目を離せない

この刑務所の中で、自分一人だけが鑑賞を許された月明かりのショータイム

一瞬の瞬きさえ、勿体無い


ディーン


ジャレッドは声を出さずに彼を呼んで、代わりにギュっと自分の膝を抱える

身動ぎするたびに、綺麗にうねる彼の筋肉

まるでもぎ取られた翼の痕のような、肩甲骨

「・・・・・」

どうすればいいのかも分らず、ただ速くなる自分の呼吸に戸惑う数時間







だがその夜、何時もはジャレッドが気を失うように眠りに就く朝方まで規則的に続くディーンの呼吸が、真夜中不意に乱れ始めた

苦しそうに、手がシーツと胸元を掴む

「・・・・・ん・・ぅ・・・うんっ・・・っ・」

まるで何かを恐れるかのように、ディーンは怯えて嫌々と首を振る

そして少しずつ浮き上がる、藍色の刺青

「・・・っ・・」

ジャレッドの心臓の鼓動は、唐突に跳ね上がった

不意に突き付けられた、彼のこんな姿に



境に格子の無いこの房ではそんな彼を揺さぶり起こしてやる事だって可能で、実際ジャレッドは弾かれたように起き上がりディーンに手を伸ばしかけた

だが、仰のいた彼の喉仏と伝う汗、汚れたシーツを蹴るピンク色の足首にその手は止められる

魘されているだけ

そう自分に言い聞かせても、そんなディーンの様子はある妄想をジャレッドに抱かせるのに充分だったから


ディーン


そっと粗末な布を掻い潜って、ジャレッドは自分の胸に手を入れた

とっくに立ち上がっていた小さな突起に触れればそれだけで全身が震え、目を閉じて魘されるディーンの声に集中すればゴードンを抱く彼の姿が脳裏に浮かぶ

「・・っ・・」

そして都合の良い妄想世界では、それは直ぐ自分に取って代わった

ただ射精の為だけの肉塊として、自分を扱うディーン

乱暴に、自分勝手に、快楽を追求すればいい

最後に達する時の彼の声は、こんなだろうか











だが

そんな淫らな想像は、突然起き上がるディーンの気配で霧散する

「っ・・」

小部屋の半分程までの仕切りに急いで身を隠して窺えば、枕元に何かを探るディーンの姿

やがて小さな物を取り出した彼は、独特の音と共にそれを掌に落し、水無しで飲み込んだ



それは、錠剤







「・・・・・」

その夜漸く、ジャレッドはどうしてディーンがゴードンの誘いに乗っていのかを、知ったのだ






































あんな物の為に

そんな言葉がその日一日、ジャレッドの頭の中を回っていた

あんな物の為にディーンはゴードンと肌を合わせている、そう考えただけで、腹が立った

だから自由時間のアンディからの誘いも断って、ジャレッドは一人で房に戻って来た

ここなら、自分だけのディーンの記憶が有る

自分の好きに彼を動かして、彼の匂いのするシーツにも顔を埋められる




しかし、廊下から真っ直ぐ誰も居ない筈の房を見れば、そこには思っても見なかった人影が有った

それは、格子付きの窓から外を見ているディーン 

静かに、真っ直ぐ、夕暮れの空を仰いでいる

まるで、中世の宗教画






ディーン











その時閃光のように、ジャレッドをあるイメージが貫いた

「・・っ・・」

違う

みんな、違っている

そうじゃない








やがて

「・・なんだよ・・」

最初から背後に立つジャレッドの存在に気付いていたのか、ゆっくりと首を廻らしてディーンは振り返った

そして、微かに微笑む

誰にも見せた事の無い表情で




「なんでもない・・」

だがジャレッドはただそう答えるだけで、精一杯だった



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